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《英国》ニュークリアウェイストサービス(NWS)が4つの調査エリアのサイト評価に着手

英国の放射性廃棄物処分の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2023年6月28日付けのプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)の立地可能性を検討している4つの調査エリアに対して、サイト評価に着手したことを明らかにした。サイト評価では、安全とセキュリティ、コミュニティ、環境、工学的成立性、輸送、支払いに見合った価値(Value for Money)などの指標に基づいた評価が行われる 1 。NWSは、今回のサイト評価の開始にあわせて、英国における地層処分施設(GDF)の計画とサイト選定プロセスの進捗や今後の予定をまとめた冊子「GDFレポート2023」を公表。NWSは、調査エリアごとにNWS及び地元自治体等をメンバーとして設立された「GDFコミュニティパートナーシップ」 2 での協力関係(engagement)を継続していく意向を表明しつつ、新たなコミュニティにもサイト選定プロセスへの門戸を開いていることを強調している。本記事では、サイト評価対象となる調査エリアの状況について、これまでにNWSが公表した文書を元に紹介するとともに、サイト評価作業の今後の予定について示す。

■サイト評価対象の調査エリアについて

図1 英国イングランドにおけるサイト選定プロセスに関心のある地域

図1 英国イングランドにおけるサイト選定プロセスに関心のある地域

英国では2020年12月から地層処分施設(GDF)の新たなサイト選定プロセスが開始され 、GDFの受け入れ可能性を検討したい地元の発意により、これまでにイングランド北西部のカンバーランド市に3カ所、イングランド東部のリンカンシャー州イーストリンジー市に1カ所の計4カ所の調査エリアが特定されている(図1参照)。これらの調査エリアは選挙区を最小単位として設定されている。

カンバーランド市は2023年4月の自治体再編によって誕生した新しい自治体であり、以前のカンブリア州を構成していた6自治体のうち、旧コープランド市、旧アラデール市を含む3つの自治体が合併したものである。カンブリア州を構成していた他の3自治体も合併して新たな自治体となっており、上層自治体であったカンブリア州は消滅している。

カンバーランド市の3カ所の調査エリアはいずれも自治体再編以前に特定されており、ミッドコープランド 、サウスコープランド 、アラデール と呼称されている。ミッドコープランド調査エリア内にはセラフィールド再処理施設、サウスコープランド調査エリア内には低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR) 3があり、アラデール調査エリア内 4には低レベル放射性金属の処理施設がある。カンバーランド市の大部分は、湖水地方として知られている英国最大の国立公園が広がっており、観光業が盛んな地域でもある。なお、自然保護や遺産保護の観点から国立公園の範囲は調査エリアから除外されている。

リンカンシャー州では、同州東部の北海に面したイーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナルの跡地での地層処分施設の立地可能性を検討している 。このガスターミナルでは、約100kmを超える沖合にある海上掘削基地と海底パイプラインで結び、日産約400万m3の天然ガスを生産していたが、2018年8月に生産を終了した。テッドルソープ調査エリアで設立されたGDFコミュニティパートナーシップは、放射性廃棄物を処分する地下部分を沖合の領海内(約22km)の海底下に建設する計画を前提としており、陸地に放射性廃棄物を処分しない方針である。

■今後の予定

NWSは「GDFレポート2023」において、サイト評価の作業は数年にわたって続くとして、特定の目標年を示していない。当面のサイト評価の作業にあたっては、既存の地質学的文献として、NWSが新たに購入した地震データを含める計画となっている。また、ミッドコープランドとサウスコープランドで設立されたGDFコミュニティパートナーシップは、サイト評価の初期において、GDFの地下施設部分を沖合海底下に設置する可能性を追求する意向であることから、NWSは2022年8月にコープランド沖で船舶を用いた物理探査 で取得したデータを2023年内に公表し、サイト評価で用いる予定である。

また同レポートでは、サイト調査の次フェーズについて、NWSは、2つのサイトが地下深部のボーリング調査を含む詳細なサイト特性調査に進むと想定している。NWSは、サイト評価の作業と並行して、将来的にサイト特性調査を実施する上で必要となる環境許可や、2008年計画法に基づく開発同意令(DCO) の申請に向けた準備も進める予定である。

【出典】


  1. これらの指標は2020年に策定されたGDF候補サイトの評価指標を示す文書 において、GDFの立地において検討すべき「立地要因」として挙げられていた。[]
  2. 調査エリアのそれぞれにおいては、NWS及び地元自治体等をメンバーとして、地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループである「GDFコミュニティパートナーシップ」が設立されており、英国政府から年間最大100万ポンド(1億6,600万円、1ポンド=166円)のコミュニティ投資資金(CIF)が提供されている。コミュニティ投資資金は、調査エリア内のモノやサービスを改善して、コミュニティの生活の質を高めようとする民間企業、公共団体及び第三セクターに対して給付されている。[]
  3. 低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)の敷地は、旧コープランド市で設立されたミッドコープランドGDFパートナーシップの調査エリアに含まれていたが、2023年4月の自治体再編後のカンバーランド市の選挙区の区割りの改定により、サウスコープランドGDFパートナーシップの調査エリアに変更となった。サウスコープランドGDFの当初の調査エリアは、旧コープランド市の南端部にあるギル・スコーア採石場と海岸の平原であった。現在のサウスコープランドの調査エリアは除外地域である湖水地方の国立公園を挟んで2カ所に分かれているが、いずれも同じ選挙区になっている。[]
  4. アラデールの調査エリアについては、当初13の選挙区にまたがる広範なエリアを特定していたが、コミュニティパートナーシップ内で調査エリアを絞り込んだうえで、コミュニティとの有意義な関係を築きたいという要望があり、自治体再編による選挙区の区割り改定も含めた調査エリアの再検討を行った。現在のアラデールの調査エリアは、8つの選挙区にまたがるものとして再設定されている。[]

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-10 )