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《米国》エネルギー省(DOE)が使用済燃料の中間貯蔵施設に関する同意に基づくサイト選定プロセスに係る資金提供先を決定

図1:同意に基づくサイト選定のコンソーシアム(チーム)

米国のエネルギー省(DOE)は、2023年6月9日に、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵サイトの選定のための同意に基づくサイト選定に関して、関心を持つコミュニティと協働して取り組むための資金提供先となる全米13のコンソーシアムを決定したことを公表した。DOEは、2022年9月20日に、同意に基づくサイト選定、使用済燃料管理、及び中間貯蔵施設のサイト選定時の考慮事項について、さらなる学びに関心があるコミュニティに対する資金提供公募(FOA)を行うことを公表していた。今回の資金提供先の決定は、2023年4月25日に公表された「連邦使用済燃料集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセス」(以下「サイト選定プロセス文書」という。)の更新に続く動きであり、サイト選定プロセス文書で示されたコミュニティ参加をサポートするための各段階での様々な資金提供機会の一つと位置付けられる。

DOEは、本資金提供を通して、同意に基づくサイト選定のコンソーシアムとDOEが協働して、公正及び環境正義の原則を構築し、関与プロセスに織り込んでいく意向を示している。なお、DOEは、今回の資金提供について、連邦集中中間貯蔵施設の立地コミュニティの募集を意図しているものではないことを明示している。

■資金提供を受けるコンソーシアム

DOEからの資金提供先として、地域の大学や非営利法人、民間部門パートナーなどから構成された計13のコンソーシアムであり、地理的にも組織的にも多様なチームが選定されている(図1及び表1を参照)。提供される資金は、各コンソーシアムに約2百万ドル(約2億6,600万円、1ドル=133円で換算)である。

各コンソーシアムに提供された資金は、以下の3領域の活動を支援するために使用される

  • 使用済燃料管理に関する、包括的で有意義なコミュニティ・ステークホルダーの関与プロセスを組織化し、主導し、維持する。
  • 集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセスに対して、コミュニティ主導のフィードバックや効果的な協働(collaboration)を促進し、実現可能とするような公共価値(public value)、関心事及び目標を同定する。
  • 使用済燃料に関連するトピックについて、ステークホルダーやコミュニティ、専門家の間の相互学習を支援するような成果及び戦略を開発し、実践し、報告する。

資金提供の規模は、13コンソーシアムの合計で26百万ドル(約34億6,000万円)である。当初は16百万ドル(約21億3,000万円)の予算で6~8件の選定が予定されていたが、2022年12月29日に成立した2023会計年度包括歳出法において、前年度の3倍近くとなる統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)予算がDOEの要求通りに承認された1 ことを受けて、最大16件の選定が可能な26百万ドルの予算へと拡大することが2023年1月19日に公表されていた。

■同意に基づくサイト選定プロセス:3ステージでのアプローチ

図2:同意に基づくサイト選定のロードマップ

DOEは「同意に基づくサイト選定プロセス」を3ステージのアプローチで進めていく計画である(図2参照)。現在は第1ステージの「計画立案及び能力開発」にある。資金提供公募(FOA)による資金提供先の決定によって、計画立案の作業は概ね完了しており、今後は13のコンソーシアムを通じた能力開発(Capacity Building)の作業が進められる。DOEは、今回選定した資金提供先と協力しつつ、相互学習を18~24ヶ月にわたって行う予定である。

 

表1:使用済燃料の中間貯蔵施設に関する同意に基づくサイト選定のコンソーシアム
資金提供先の主導主体 パートナー
米国原子力学会(ANS、IL) サウスカロライナ大学研究・教育財団(SC)、北アリゾナ大学(AZ)、ニューメキシコ大学(NM)、サウスカロライナ州立大学(SC)
アリゾナ州立大学(AZ)
ボイジー州立大学(ID) 全米先住民族エネルギー協会(NTEA、AZ)、コロラド州(CO)、アイダホ州(ID)、モンタナ州(MT)、アイダホ大学(ID)、ワイオミング大学(WY)、ミシガン大学(MI)
クレムゾン大学(SC) サウスカロライナ大学研究・教育財団(SC)
エネルギー自治体連合(ECA、DC) 州環境協議会(ECS、DC)、DOEの州・先住民族ワーキンググループ、全米司法長官協会(NAAG、DC)、全米州議会議員連盟(NCSL、DC)、全米知事協会(NGA、DC)
グッド・エナジー・コレクティブ(CA) ノートルダム大学(IN)
ホルテック・インターナショナル社(NJ) フロリダ大学、マクマホン・コミュニケーションズ(MA)、アジェンダ・グローバル(DC)、米国原子力学会(ANS、IL)、原子力エネルギー協会(NEI、DC)
キーストーン政策センター(CO) 社会環境研究所(SERI)、GDFWatch(英)、全米自治体協会(NARC、DC)
ミズーリ科学技術大学(MO) ミズーリ大学コロンビア校(MO)、イリノイ大学(IL)、マサチューセッツ工科大学(MIT、MA)、ネバダ大学(NV)、テイラー地球空間研究所(MO)、セントルイス大学(MO)
ノースカロライナ州立大学(NC) サンルイスオビスポ・北チュマシュ族(ytt、CA)、マザーズオブニュークリア(CA)、ディアブロキャニオン発電所-同意に基づく部族連合(CA)
レンセラー工科大学(NY) スケネクタディ財団(NY)、ストックブリッジ-マンシー・インディアンバンド(WI)
サウスウェスト研究所(SRI、TX) ディープ・アイソレーション(CA)、ウェストラ・コンサルティング(NE)、コミュニティ移行プラニング(MI)、プレーリーアイランド・インディアン政府(MN)
ヴァンダービルト大学(TN) ラトガーズ大学(NJ)、オレゴン州立大学(OR)
※( )内の2文字の英字は州の略号
AZ:アリゾナ、CA:カリフォルニア、CO:コロラド、DC:ワシントンDC、ID:アイダホ、IL:イリノイ、IN:インディアナ、MA:マサチューセッツ、MI:ミシガン、MN:ミネソタ、MO:ミズーリ、MT:モンタナ、NC:ノースカロライナ、NE:ネブラスカ、NJ:ニュージャージー、NM:ニューメキシコ、NV:ネバダ、NY:ニューヨーク、OR:オレゴン、SC:サウスカロライナ、TN:テネシー、WI:ウィスコンシン、WY:ワイオミング

 

〈参考〉使用済燃料の中間貯蔵施設に関する同意に基づくサイト選定プロセス:第1ステージの活動概況

DOEは、2023年4月に公表したサイト選定プロセス文書において、第1ステージ「計画立案及び能力開発」の活動を下表のように整理している。

フェーズ1A:計画立案(Planning)
活動 活動内容 状況
連邦議会からの承認の取得 2021会計年度包括歳出法、2022会計年度包括歳出法、2023会計年度包括歳出法において、連邦議会はDOEに対して、連邦中間貯蔵施設の開発を進めるよう指示し、予算を計上した。 完了
公衆との関与(public engagement)及び情報提供・支援活動(Outreach)の開始 DOEは、2021年12月1日に「連邦中間貯蔵施設の立地に同意に基づくサイト選定プロセスを用いることについての情報提供依頼(RFI)の告示」(連邦官報告示)を発行し、公衆との関与を開始した。RFIは、米国の使用済燃料を貯蔵する場所を特定するために同意に基づくサイト選定プロセスを使用することについての意見を求めた。また、DOEは、記者会見、ウェブ会議、一般から要請のあった様々な会合、議論、会議に参加した。この段階でDOEは、一般市民がどのようにDOEから情報を得たいと考えているか、また、一般市民や利害関係者がDOEにどのような情報を提供してほしいと考えているかについて、より深く知ろうと試みた。同意に基づくサイト選定プロセスの全期間を通じて、関与及び情報提供・支援活動は継続されるが、これらの活動は、フェーズによって変化するものとなる。 完了
公衆からの意見募集 2021年のRFIに対して、約225件の意見が提出された。RFIへの回答は、更新された同意に基づくサイト選定プロセスの文書の作成、関心のあるグループやコミュニティに対する資金提供の機会の検討、統合廃棄物管理システムの戦略など、次のステップに反映された。 完了
意見募集の集約・分析した報告書の作成 2021年のRFIへの回答は、2017年の同意に基づくサイト選定プロセス案へのコメントとともに分析され、「同意に基づくサイト選定―情報提供依頼(RFI)コメントの要約・分析」を2022年9月に公表した。 完了
更新されたサイト選定プロセスの公表 2017年以降の意見募集と連邦中間貯蔵に焦点を絞るとの連邦議会指示による政策変更を反映して、「連邦使用済燃料集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセス」を2023年4月25日に公表した。 完了
フェーズ1Bをサポートするための資金提供公募(FOA)の準備 2021年のRFIに応じた複数のコメントと事前のフィードバックでは、地域社会が自分たちの決めた条件でより多くを学び、教育できるような資源を提供する必要性が強調された。本フェーズでDOEは、フェーズ1Bで発行されるFOAを準備した。 完了

 

フェーズ1B:能力開発(Capacity Building)
活動 活動内容 状況
ロバストな公衆との関与及び情報提供・支援活動の実施 本フェーズでは、関与及び情報提供・支援活動が継続される。DOEは、FOA(後述)の発行と、同意に基づくサイト選定プロセスに関する認知度の向上に重点を置く。本フェーズのFOAは、関与と情報提供・支援活動に重点を置く。その他の活動は、一般的な認識を提供し、DOEがFOA受領者の活動における情報及び資源のニーズを分析するのを支援し、更なる関与の機会を提供するものである。 実施中
資金提供公募(FOA)の発行 DOEは、2022年9月に資金提供公募(FOA)を発行した。本FOAは、関心のあるコミュニティ、先住民族、政府関係者、学界のメンバー、非政府組織、産業界、一般市民に対して、これまでよりも包括的な関与を支援するための意味ある資源を提供することを目的としている。関与のテーマには、同意に基づくサイト選定プロセスへの追加的な意見、1つまたは複数の連邦集中中間貯蔵施設がコミュニティに果たし得る役割の検討、コミュニティ・ビジョンの構築、公衆の価値観や目標のマッピング、高レベル放射性廃棄物管理に関連するトピックなどが含まれる。 完了(応募期間は、当初の2022年12月19日から2023年1月31日に延長して終了)
FOA申請の評価及び資金提供 FOAの選択基準に従って、選択された申請者に資金を提供する。 2023年6月9日に資金提供先を決定
資金提供先と協力して相互学習を実施する DOEは、資金提供先と協力して、注意深く話しを聞き、相互学習が可能となるようにする。詳細は、FOA規定及びFOA申請内容に従う。 FOAの実施期間(18~24ヶ月)
サイト選定プロセスの更新 本フェーズで得られた対話と情報をもとに、サイト選定プロセスの文書は更新される見込みである。サイト選定プロセスの文書は、その後のフェーズでも必要に応じて更新される予定である。 今後実施
フェーズ2のFOA及び活動の準備 本フェーズで得られた知見により、フェーズ2でのFOAを計画する。 今後実施
注)本表は2023年4月25日公表のサイト選定プロセス文書からの引用であるが、一部項目については、その後の進展を反映して改定している。

 

【出典】

 

  1. 使用済燃料管理に係るDOEの研究開発予算のうち、中間貯蔵プログラムを含む統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)の予算は、2022会計年度包括歳出法(公法117-103)では18百万ドル(約23億9,000万円)であったが、2023会計年度包括歳出法(公法117-328)ではDOE要求通りの53百万ドル(約70億5,000万円)が承認された。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2024-03-07 )