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《ベルギー》短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可が発給

図1

図1:カテゴリーA廃棄物処分場の位置

ベルギーの連邦政府は、2023年4月23日付けの王令により、放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が申請していた短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場の建設と操業に関する許可を発給した。放射性廃棄物を受け入れる処分場としては、ベルギーで初めてのものとなる。本処分場はベルギー北東部のアントワープ州デッセル自治体の地表に設置され、国内の原子力発電所 1 や研究所、医療施設などから発生する短寿命・低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーA廃棄物と呼称される)を最大約70,500m3を受け入れる。

ONDRAF/NIRASは、短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(以下「カテゴリーA廃棄物処分場」という。)の建設を2024年に開始する予定である。建設に4年を要し、その後95年間にわたって操業を継続する計画である。ONDRAF/NIRASは、2013年1月に原子力安全の規制行政機関である連邦原子力管理庁(FANC)に本処分場の建設と操業に関する許可申請書を提出していた

■処分場の構造と操業計画

図2

図2:カテゴリーA廃棄物処分場の構成(施設建設後のイメージ)



図3

図3:処分施設の内部 (実際には施設全体が化粧鋼板で覆われており、内部は見えない)



図4

図4:処分施設閉鎖時の断面図(廃棄体の受け入れ開始から約50年後に覆土が施工される計画である)



図5

図5:カテゴリーA廃棄物処分場のスケジュール

カテゴリーA廃棄物処分場は、ONDRAF/NIRASの子会社ベルゴプロセス社が操業する放射性廃棄物中間貯蔵施設の敷地に隣接して設置される。処分場の敷地は約25万m2であり、地表に2つの処分施設(建屋)が建設される(図2参照)。処分場建設の第1期では、処分区画となるコンクリート製モジュール20基を収容する処分施設が建設される。モジュール1基の大きさは、縦約25m、横約27m、高さ約11m、側壁の厚さは0.7mである。処分場建設の第2期ではモジュール14基を収容する処分施設が建設される。

現在、カテゴリーA廃棄物は200Lドラムに収納されて中間貯蔵されているが、これらをコンクリート製角形容器に4本ずつ収納し、モルタルを充填して「モノリス」 2 と呼ばれる廃棄体とする。これを処分施設のモジュール内に積み上げて定置する(図3参照)。1つのモジュール内には約900個のモノリスが収容されるため、第1期の処分施設には約18,000個、第2期の処分施設には約12,600個のモノリスが定置されることとなる。

廃棄体の定置が長く継続するため、処分施設の外観デザインに特に配慮した設計となっており、側面と天井はレンガ風の装飾が施された化粧鋼板で覆われている。この化粧鋼板は、施設内への雨水浸入や風化を防止する役割も果たす。

廃棄物の受け入れ開始から約50年後には化粧鋼板を撤去し、止水や排水の機能を有する厚さ4mの様々な層で処分施設全体を覆土する(図4参照)。操業開始から約95年後までは検査坑道から処分場内部を目視確認し、操業開始から350年後までモニタリングプログラムによる監視を継続する計画である(図5参照)。

■カテゴリーA廃棄物処分場のサイト選定経緯

ベルギーでは1990年代に、潜在的なサイトの適格性を重視した処分地選定が行われたが、自治体や地域住民から拒否された経緯がある。ONDRAF/NIRASは、処分場サイト選定を進めるには、技術的側面だけではなく、社会的側面も考慮する住民参加型のアプローチを採用する必要性を認識し、原子力関連施設が立地するデッセル自治体とパートナーシップを1999年に締結し、STOLA(2005年にSTORAに改組)と呼ばれるパートナーシップのグループを設立した 3 。2004年にSTOLAは、自治体内での処分場の実現見通しを検討した報告書を取りまとめ、処分場受入れの前提として以下の条件を提案し、デッセル自治体議会の承認を受けた。

  • 安全が確保され、環境・健康へのフォローアップ、技術面での進展を継続すること。
  • STOLAによって開発された地表または地層処分場概念オプションによること。
  • STOLAが目的を果たして終了した後も、地域社会の参加とコミュニケーションを図る恒久的なフォーラムが設立されること。
  • デッセル持続性基金の設立、環境計画への参加など、地域社会にプラスがあること。
  • 処分の最終段階まで、放射性廃棄物管理に対する透明性の確保、原子力に関する中核的拠点としての機能維持および雇用確保などが確約されること。

これを受けて、2006年の王令において、カテゴリーA廃棄物の長期管理に関する国家計画が定められ、この中でデッセル自治体内に処分場を設置する方針が決定された

ONDRAF/NIRASは、処分場の具体的な設計開発や調査を進めていく中で、STORAパートナーシップと協力してカテゴリーA廃棄物処分場の概念を検討し、今回建設・操業許可を取得した地表設置型の概念を開発した。本処分場概念では、①モジュール下部に点検通路を設置して目視検査を可能とする、②処分場全体を自然公園とするために自然と人工物との調和を図った施設デザインを採用する、③処分場全体を展望できるコミュニケーションセンターを建設し、住民への情報提供や観光事業へ活用するなどの工夫や配慮がなされている。

 

〈参考〉放射性廃棄物処分場プロジェクトが生み出す文化的価値

ベルギーのデッセル自治体に建設されるカテゴリーA放射性廃棄物処分場の周辺エリアは、森林遊歩道やサイクリングロードを備えた総合自然公園として整備する計画である。既に2022年には「タブロー」(テーブルを意味するエスペラント語)と呼ばれる情報・コミュニケーションセンターがオープンしており、パートナーシップの運営グループSTORAの活動拠点として、さらには近隣住民も利用可能な劇場ホールや会議室を備えた多目的施設としての活用が始まっている。ONDRAF/NIRASは、放射性廃棄物の貯蔵状況、廃棄物を閉じ込めるモノリス(廃棄体)の製造工程、それを処分場内のモジュールに定置して処分するまでの一連の工程を見学できる巡回コースを設ける計画である。

コンクリート製モジュールを地表(または浅い地中)に設置して廃棄体を収容し、覆土する浅地中処分概念は国内外で多くの実績があり、フランスのオーブ短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場や日本原燃(株)の低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)でも採用されているピット処分と同様である。ベルギーやフランスではコンクリートピットを地表に設置しており、覆土後には丘状の跡地となる。

放射性廃棄物の処分場という産業施設は、廃棄物を長期にわたって安全に管理することを第一目的として設計されるが、その上で綿密にデザインすることによって、立地コミュニティに機能的・文化的な付加価値を生み出す可能性があることが国際的にも注目されている 4 。「隠すのではなく、見せる」ことによって安心感をもたらすとともに、放射性廃棄物が発生した理由から処分されるまでの物語が人々の記憶に残り、具体的な「感謝」の姿につながるという期待がある。

ベルギーで処分場の実現見通しが検討された2004年時点では、デッセル自治体のパートナーシップは、処分場跡地を約300年後まで利用できず、地元に何らの価値をもたらさないと考えていた。しかし、ONDRAF/NIRASはパートナーシップとの共働を通じて、情報・コミュニケーションセンターだけでなく、処分場の外観デザインに美しさや魅力を加味することで、地元が期待する社会的・経済的・文化的な価値の創出に成功している。こうした文化的な価値の見方は国によって異なり、万能な解決策は存在しないものの、多くの国で放射性廃棄物管理計画における地元との関係構築における国際的な共通課題の一つと認識されている。

 

【出典】


  1. ベルギーでは2023年5月現在、2か所に7基の原子力発電所があり、5基が運転中である。[]
  2. モノリスの大きさは縦横が約2m、高さは収納物の違いにより1.35mもしくは1.62m、壁の厚さは0.12mである。[]
  3. ONDRAF/NIRASとサイト選定に向けて協働するために設立されたパートナーシップには、デッセル自治体のSTOLAのほか、モル自治体との協議グループ(MONA)、フルール自治体と及びファルシネ自治体が参画したパートナーシップ(PaLoFF)がある。[]
  4. 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)では、放射性廃棄物管理施設の地元社会の便益に関する知見の共有に取り組んでおり、それらの活動成果の一つとして報告書「放射性廃棄物管理施設とその地域コミュニティ間での永続的関係の構築~デザインとプロセスを通じた価値の付加(2015年版)」が取りまとめられている。[]

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )