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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で地下処分施設の第11パネルの掘削を開始

WIPP第11処分パネルの掘削模様

図1 WIPP第11処分パネルの掘削模様

米国の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)において、新たな地下処分施設となる処分パネルのうち、第11パネルの掘削が開始された。エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)の2024年1月23日付ニュース記事によれば、2024年の新年を迎える直前にテープカットセレモニーが行われ、大型掘削機による掘削活動が開始された。WIPPでの新たな処分パネルの掘削は、第8パネルの掘削が始まった2013年から約10年ぶりとなる。

第11パネル及び第12パネルは、2023年11月3日に発効したニューメキシコ州環境省(NMED)による資源保全・回収法(RCRA)に基づく許可更新1 (以下「更新許可」という。)において建設が承認されたものであり、2014年2月の放射線事象で汚染された処分エリアを避けて建設される代替処分パネル(第11パネル及び第12パネル)の一部である2。第11パネル及び第12パネルの建設は、WIPPの処分容量や目的を拡張するものではない。

DOEのニュース記事で、第11パネルの掘削が順調に開始されたことは、規制当局やステークホルダーとの開かれた対話やコミュニケーションが任務成功に貢献するものであることを実証した旨の、DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)担当官の発言も紹介されている。WIPPでは、従来からプロジェクトの最新状況などをステークホルダー向けに説明するタウンホール・ミーティング等が開催されているが(2021年11月の実施例)、地元ニューメキシコ州からは改善を求める声が示されることもあった。今回の代替処分パネルの建設を認めた更新許可も、パブリックコメント募集を経て、規制機関のNMED及びステークホルダーとの間での協議、合意に基づくものとなっている[ERROR: 既報(33498)がみつかりません]。更新許可には、州や地元のステークホルダーとの関係強化に関する規定も含まれており、直近ではCBFOが2023年10月にコミュニティ・フォーラム及びオープンハウスを開催している

■廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について

WIPPの地下処分施設(2023年3月時点)

図2 WIPPの地下処分施設(2023年3月時点)

WIPPは、ニューメキシコ州南東部のカールスバッド市から26マイル(約42km)に位置しており、米国の過去の国防活動から発生したTRU廃棄物の処分のために設置された地層処分場として、1999年から処分が続けられている。

処分エリアは2億5,000万年前の岩塩層内の約2,150フィート(約655m)の深度に建設されており、8つの処分パネルで構成されていたが、代替処分パネルの建設により10の処分パネルで構成されることとなる。WIPPにおける現在の廃棄物定置活動は、2021年に掘削が完了した第8パネルに設けられた処分室で行われており、既に一つ目の処分室での定置は完了し、二つ目の処分室での定置が行われている 。また、換気施設等の更新なども進行中である

 

【出典】

  1. WIPPについては、1992年WIPP土地収用法により、連邦環境保護庁(EPA)の定める連邦規則(CFR)への適合を条件に処分場の操業が認められており、5年ごとに適合性再認定が行われている。直近では2022年にEPAによる4度目の適合性再認定を受けている。一方、WIPPで処分されるTRU廃棄物のほとんどは化学的有害性も有する混合廃棄物であることから、連邦資源保全・回収法(RCRA)による規制も受ける。RCRAの下での許可は、EPAから権限を委譲されたニューメキシコ州環境省(NMED)が発給している。 []
  2. WIPPの既存処分エリアでは、第1パネル~第8パネルのアクセス坑道として使用されていた部分を第9パネル(相当)及び第10パネル(相当)として廃棄物を定置する予定であったが、2014年2月の放射線事象による一部エリアの汚染、及び岩盤管理状態の悪化による作業安全上の問題から、未使用のまま閉鎖することとなった。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2024-05-21 )