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英国の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2020年8月4日に、英国内の地層処分に関する科学技術や専門知識の結集と形成、及び次世代の研究者の育成サポートを目的として、マンチェスター大学、シェフィールド大学と共同で「RWM研究サポートオフィス」(以下「RWM RSO」という)を設立したことを公表した。RWM社は、RWM RSOに対して最長10年間、総額約2,000万ポンド(約27.6億円、1ポンド=138円で換算)の資金提供を行うとしており、地層処分に関連する広範な研究活動を支援し、その成果をRWM社の活動に活用していく考えである。

■RWM RSOのスタッフ構成

RWM RSOは、地層処分に関連する9つの学問領域の研究開発を支援するとして、事務所はマンチェスター大学に設置されている。RWM RSOは発足時点で28名のスタッフで構成されており、このうち、支援対象となる研究プロジェクトの企画、組織化を担当するRSOプロジェクトチームには、マンチェスター大学から5名、シェフィールド大学から1名の計6名が参画している。また、RWM RSOの運営と活動を支援するため、RWM社から16名が参画している。その他に、学問領域ごとに研究リーダーを置いており、現在は9つの学問領域のうち、6領域の研究リーダーをマンチェスター大学から4名、シェフィールド大学から2名選任している。RWM RSOは、不在となっている3領域の研究リーダーを英国内の大学から募集している。

■RWM RSOが支援する地層処分に関連する学問領域

「RWM研究サポートオフィス」(RWM RSO)は、RWM社が行う地層処分と関連性をもつ学術的な研究を支援するとしており、支援対象となる学問領域を9領域に大別している。

  1. 先進製造(Advanced manufacturing)
  2. 応用数学(Applied mathematics)
  3. 応用社会科学(Applied social science)
  4. 環境科学(Environmental science)
  5. 地球科学(Geoscience)
  6. 材料科学(Materials science)
  7. パブリック・サイエンスコミュニケーション(Public communication of science)
  8. 放射化学(Radiochemistry)
  9. トレーニング(Training)

なお、RWM社は、これまでに地層処分の研究開発を行っており、2013年から地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて、『科学技術プログラム』を取りまとめている。RWM RSOは、支援対象となる上記の9つの学問領域は、RWM社が実施している研究開発活動のニーズに対応するものであるとしている。また、前述したRWM社から参画している16名については、RWM社で「一般的な条件における処分システムセーフティケース」(gDSSC)の開発などを担当した科学技術の専門家、コミュニティの参画や持続的開発などの専門家であり、RWM RSOの枠内で行われる研究活動を支援することとなっている。

【出典】

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第14回評価報告書を2020年7月16日に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。なお、前回の第13回報告書は、2019年6月27日に公表されている

フランス政府は2020年4月に、2019年から2028年を対象として、温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率向上、再生可能エネルギーの開発促進等を目標とした基本政策となる「多年度エネルギー計画」(PPE)を発行している。原子力発電に関しては、2035年までに発電量に占める比率を50%とすること等を示しており、これを実現するため、現在MOX燃料が装荷されている90万kW級原子炉の閉鎖等を計画する等、燃料サイクルや放射性廃棄物等の管理のあり方にも影響を与えるものとなっている。CNEは、第14回評価報告書において、多年度エネルギー計画(PPE)による燃料サイクルへの影響を分析し、以下のような章構成にて報告書を作成している。

第Ⅰ章:多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル
第Ⅱ章:廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物
第Ⅲ章:長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
第Ⅳ章:地層処分場(CIGÉO)
第Ⅴ章:貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望

各章におけるCNEの主な勧告と見解は以下の通りである。

<多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル>

  • 原子力発電比率の縮減を達成するには、早い時期に導入された原子炉を閉鎖することになる。閉鎖される原子炉には、現在MOX燃料の装荷許可を受けている24基の90万kW級原子炉のうち、12基が含まれる。EDF社は、MOX燃料需要を維持するため、130万kW級原子炉にMOX燃料を装荷する計画である。CNEは、130万kW級原子炉へのMOX燃料装荷に必要となる許認可の取得に要する作業を過小評価しないよう勧告する1
  • 政府は、多年度エネルギー計画(PPE)において、天然ウラン資源が豊富に存在し、ウラン価格が低い水準で安定していること等から、第4世代のナトリウム冷却高速炉(SFR)の原型炉ASTRID開発計画を中止し、高速炉研究プロジェクトを長期的に再検討していく方針を示した。しかしながら、このことは、将来的に天然ウラン燃料を必要とせず、再処理で回収されたプルトニウムを主体として発電を行うクローズド燃料サイクルの実現を可能とするとともに、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)において主要な発熱源となっているマイナーアクチノイド核種の変換を実施する上で必要な高速炉開発に関して、プロジェクトが延期されることに結び付いている2 3。CNEは、これまでの蓄積されてきた科学技術的知見の喪失を避けるには、野心的な研究計画を立案する必要があると指摘する。CNEは、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が提案している研究計画は不十分であり、国際協力の可能性も限定的であることから、少なくとも欧州レベルで、中性子照射施設を設置することに意義があることを強調する。
  • 多年度エネルギー計画(PPE)において政府は、使用済燃料の再処理による分離プルトニウム及び使用済燃料のストックを一定水準以下に抑制するため、軽水炉を利用したプルトニウムのマルチリサイクルに関する研究を継続する方針を示している。軽水炉でのマルチリサイクルの実施計画はまだ具体化していない。CNEは、事業者等に対して、2020~2021年に予定しているヒアリングにおいて、より具体的な計画を提示するよう要請する。

<廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物>

  • フランス国内で発生し、処分が必要な極低レベル放射性廃棄物の大半は廃止措置作業により発生するものである。CNEは、多年度エネルギー計画(PPE)に示された既存炉の閉鎖計画に照らして、極低レベル放射性廃棄物の発生量予測をアップデートするよう勧告する。また、極低レベル放射性廃棄物の発生量の縮減や、リサイクルを想定した除染等の研究を継続するよう、強く勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の管理>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、原子炉のみでなく様々な活動から発生しており、総量も比較的多いことから、各廃棄物の放射能レベルや化学組成に応じた処分方法を検討しなければならない。長寿命低レベル放射性廃棄物のうち、黒鉛及びラジウム含有廃棄物の処分場に関しては、2008年にANDRAが開始したサイト選定が途上であるが、1カ所あるいは複数個所のサイトを特定するため、ANDRAは取組を継続すべきである。

<地層処分場(CIGÉO)>

  • ANDRAは2020年春に、政府による公益宣言(DUP)4 申請に必要な文書を提出し、2020年末に設置許可申請を行う予定である。過去数年、設置許可申請は何度も先送りされている。CNEは、ANDRAに対して、より適切にスケジュール管理を行うよう勧告する。
  • ANDRAは設置許可申請の提出に向けて、十分に成熟した科学技術的知見を獲得している。CNEは、ANDRAに対して、処分予定の放射性廃棄物の基準インベントリと整合する形で、地層処分場のレファレンスとなる形状や配置を特定するよう勧告する。
  • CNEは、地層処分場の150年にわたる操業期間を通じた長期的な作業の枠組みを明確にするために、デジタル模型等を活用し、地層処分場の形状や配置の管理プロセスを確立するよう勧告する。
  • CNEは、ANDRAに対して、ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューで提示された、急激な発熱反応のリスクを排除するための地層処分場の設計変更等の勧告内容に早急に着手し、その結果を地層処分場の設置許可申請において提示するよう勧告する。
  • 地層処分場設置に関してANDRAが実施中の社会経済的影響評価については、評価結果が出次第、CNEに報告するよう要請する。

<貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望>

  • 多くの国では、使用済燃料並びに高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の貯蔵が長期にわたっている。CNEは、長期貯蔵は成り行きを見守る方針であるため、これと同時に永続的な処分によるソリューションを開発するための積極的な方針が必要であることを指摘する。
  • 世界における長寿命低レベル放射性廃棄物(黒鉛含有廃棄物、ラジウム含有廃棄物等)の管理計画は初期的な段階にある。地表付近での処分よりも地下深部で処分する方が、より高度な廃棄物の閉じ込めと隔離を提供するため、推奨される。

【出典】


  1. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月14日に修正致しました。 []
  2. 高レベル放射性廃棄物の発熱量は、地層処分場の面積を大きくする要因の一つとなっている。 []
  3. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月9日に修正致しました。 []
  4. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []

ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2020年7月13日のプレスリリースにおいて、ロシア中部のトムスク州セベルスク市で計画している浅地中処分場に対して、安全規制機関である連邦環境・技術・原子力監督局(Rostekhnadzor)が立地・建設許可を発給したことを公表した。
NO RAO社は、立地・建設許可を受けた浅地中処分場において、セベルスク市にあるシベリア化学コンビナート1 から発生する低中レベル放射性固体廃棄物を主に処分する計画であり、処分容量は15万立方メートルになるとしている。また、処分場の建設は2021年の第3四半期から開始する予定であるとし、建設の第一段階では、管理棟などの建屋や処分場の輸送インフラ、サイトへのアクセス道路の建設等が実施されるとしている。
今回の許可発給に先立ち、地元自治体において2018年11月に公聴会が開催されていた。また、2019年5月にNO RAO社は、国家環境審査において環境影響評価書に対する肯定的声明を受け取っていた。国家環境審査での肯定的声明は連邦環境・技術・原子力監督局による許可発給に必要な条件となっている。

ロシアではこれまでに、スヴェルドロフスク州のノヴォウラリスク市において、国内で最初となる浅地中処分場の操業が2016年に開始されている。NO RAO社は、チェリャビンスク州オジョルスク市などでも低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場を立地する計画である。

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(トムスク州セヴェルスク市)

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(トムスク州セヴェルスク市)

【出典】


  1. シベリア化学コンビナート(SCC)では過去に軍事用プルトニウムの生産が行われていた。現在は商業用のウランの精錬、転換、濃縮等が行われている。 []

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は2020年7月10日に、スコットランド北部にあるドーンレイサイトのサイト許可会社1 (SLC)及びイングランド北西部のドリッグ村近郊に位置する低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)のSLCの2社を、NDAの完全子会社に移行することを公表した。ドーンレイサイトのSLCは2021年3月に、LLWRのSLCは2021年7月に、NDAの完全子会社となる予定である。

ドーンレイサイト及びLLWRの操業は、両サイトを所有するNDAとの契約に基づき、SLCであるドーンレイサイト復旧会社(DSRL)及び低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)がそれぞれ行っている。SLCの株を所有して経営する親会社(PBO)は、競争入札によって選定されており 、現在DSRLのPBOはキャベンディッシュ・ドーンレイ・パートナーシップ社2 、LLWR社のPBOは英国放射性廃棄物管理会社(UKNWM社)3 となっている(下図参照)。

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

今回のSLCの子会社化についてNDAは、強固に結集したNDAグループを構築し、サイトのクリーンアップや廃止措置をより効率的・効果的に実施しようとするNDAの戦略的な計画の一環であると説明している。また、先行してNDAの完全子会社化が実施されたセラフィールド社及びマグノックス社では、グループ間の協力が強固となり、組織横断的な相乗効果が得られたことも、今回の決定につながったとしている。

【出典】


  1. 原子力施設のサイト許可を持ち、サイトの管理・運営を行う会社 []
  2. キャベンディッシュ・ニュークリア社、ジェイコブズ社及びアメンタム社の共同企業体 []
  3. アメンタム社、スタズビック社及びOrano社の共同企業体 []

スイスの環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2020年6月8日付で、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)がサイト選定第3段階において、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」でのボーリング調査の許可申請について、合計21の調査候補地点に対する許可発給を完了した。NAGRAは2016年9月、2017年8月の2回に分けてボーリング調査に必要な許可申請書を提出しており、必要な地点数に余裕をとって23地点でボーリング調査を行う予定としていたが、北部レゲレンの2地点の申請を取り下げていた。UVEKは、NAGRAによるボーリング調査の許可申請書の審査を順次進め、2018年8月に発給した3地点を皮切りに  、16回に分けて許可を発給した。

■ボーリング調査の実施状況

NAGRAは、許可を受けた複数の地点でボーリング調査を実施しており、最大2,000mの深度までボーリング孔を掘削する計画である。2020年6月現在のボーリング調査の実施状況は以下のとおりである。

  ボーリング地点 地質学的候補エリア 期間
1 ビューラッハ 北部レゲレン 2019年4月~2019年11月
2 トリュリコン-1 チューリッヒ北東部 2019年8月~2020年4月
3 マルターレン チューリッヒ北東部 2020年2月~ (実施中)
4 ベツベルク-1 ジュラ東部 2020年4月~ (実施中)

※複数箇所ボーリングする場合は、ハイフン(-)以降の数字で識別

NAGRAはボーリング調査の作業場所に情報公開コーナーを設置し、現地見学を受け入れている   。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年3月から見学者の受け入れを停止していたが、2020年6月12日にベツベルク-1で「オープン・パビリオン」と題する見学ツアーを開催するとともに、マルターレンでも現地見学の受け入れを再開する。

■今後の予定

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアの計21地点でボーリング調査の許可発給を受けているが、これら全てでボーリング調査を実施するものではなく、先行したボーリング調査で得られた結果に基づいて、他の地点でのボーリング調査の実施必要性を個別に判断していくとしている。NAGRAはボーリング調査の結果を踏まえて、2022年頃に高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の処分場を異なる地質学的候補エリアに設置するか、両処分場を1つの地質学的候補エリアに設置するかを決定する予定である。

 

<参考:ボーリング調査の許可手続き>

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認(詳細はこちら)の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするために、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。

 

【出典】

スウェーデン議会(国会)は2020年6月10日に、政府が提出してした法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)を可決した。法改正パッケージの可決にともなって、2020年11月1日に発効する改正原子力活動法においては、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管される旨が規定された。また、使用済燃料や放射性廃棄物の地層処分場の閉鎖は、政府の許可が必要な許認可プロセスの一つとして位置づけられた。さらに、地層処分場が閉鎖された後は、政府が定める機関が必要な対応を行う旨が規定された。

■法改正の背景

スウェーデン政府(環境省)は、2017年に原子力活動調査委員会を設置し、法制度の見直しを進めていた。当時、スウェーデンの原子力発電事業者は、経済的理由から2020年までに原子炉4基を早期に運転終了する計画を公表しており、政府は、閉鎖された原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処分を安全に行う責任と、それらの活動に要する資金確保の責任とを区別して明確化する必要があると考えていた。また、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等の審査が進むなか、政府は、地層処分場の「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きを法律において規定する必要性を認識していた。

2019年4月に原子力活動調査委員会は、調査報告書(SOU 2019:16)の中で、スウェーデンが締約国となっている原子力安全条約や放射性廃棄物等安全条約の義務を履行するため、原子力活動に係わる国の副次的責任(subsidiary responsibility)を明示的に国内法に反映するとともに、国の究極的な責任(ultimate responsibility)として、地層処分場の閉鎖後の責任を国に移管する規定を設けるよう提案した。原子力活動調査委員会は、現行の原子力活動法の規定内容は維持するものの、制定から35年の間に30回以上の改正を行った法律を刷新すべきものとして、法律を全面改正するよう提案していた。この提案を受けた環境省は、大幅な法改正を伴わない法改正パッケージ案を検討し、2020年4月16日に国会に提出していた。今回成立した法改正パッケージは、原子力活動法の他、環境法典及び原子力活動に伴って発生する残余生成物の取り扱いのための資金確保措置に関する法律(資金確保法)の一部を改正するものである。

今回の法改正により、SKB社の使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等に関して、環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所が2018年1月に政府に宛てた審査意見書で指摘した「処分場の閉鎖後における責任の所在を予め明確にする必要性」への対応が整ったことになる。使用済燃料処分場の建設予定地があるエストハンマル自治体は、同自治体が最終的な責任を負うことに対して反対していた。

今回の法改正を受けてSKB社は2020年6月11日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料処分場と短寿命の放射性廃棄物処分場(SFR)が立地するエストハンマル自治体にとって、これらの処分場の閉鎖後の責任の所在を明確にすることは重要な問題であったと指摘するとともに、SKB社にとって、処分場の責任を国に移管するために必要な条件が今後整備されることが明確になったことを歓迎するとしたコメントを公表している。

【出典】

カナダの使用済燃料処分場のサイト選定プロセスに参画している2地域のうち、サウスブルース自治体で、処分場が立地する場合の将来ビジョン(まちづくり計画)を考える地域ビジョン・ワークショップが2019年12月から2020年2月にかけて計9回開催され、合計で144名の住民が参加した。サウスブルース自治体は、オンタリオ州南部に位置しており、人口は約5,600人である。サウスブルース自治体の地域連絡委員会は2020年5月27日に、地域ビジョン・ワークショップでの議論をまとめた報告書案をウェブサイトで公表し、ワークショップの参加者に限らず、広く住民からの意見を募集している。意見募集の期間は2020年6月30日までとなっている。

■サウスブルース自治体での地域ビジョン・ワークショップ

今回の地域ビジョン・ワークショップは、カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)の使用済燃料処分場プロジェクトに対して、サウスブルース自治体住民がどのように思っているのかを住民間で共有する機会をつくり出し、住民の考えや期待を探ることを目的として開催された。ワークショップの企画・運営のため、外部コンサルタント会社2社、サウスブルース自治体とNWMOの各代表で構成される合同チームが組織された。全9回のワークショップへ各回の参加者は10~30名であり、最初の2回を自治体議会と行政職員を対象に試験的に開催した後、続く6回を住民参加のワークショップ、最後の1回が若年層(中学生及び高校生)を対象としたワークショップとしている。ワークショップ参加者は、以下の3つの話題について少数のグループに分かれて議論した。

  1. NWMOの使用済燃料処分場プロジェクトが重視すべきこと、目標とすべきこと
  2. 同プロジェクトについて不安に思うこと、知りたいこと
  3. サイト選定プロセス第4段階において、技術的安全性と地域社会の福祉面の評価を目的として建設が予定されている「専門技術センター」のデザインや活動についての意見

地域ビジョン・ワークショップの報告書案では、サウスブルース自治体の住民参加者は、地域の住民と環境の安全・セキュリティ確保が大前提であるという認識のもと、サウスブルース自治体が優先すべき最重要事項として、使用済燃料処分場プロジェクトの全体を良く知り、地域にとってのメリットとデメリットを理解することが不可欠であると考えていることを明らかにしている。その上で、サウスブルース自治体の福祉と係わる将来ビジョンづくりの取組において、住民が重視する事項として寄せられた様々な意見について、①地域のインフラ、②人(人口変動や住民にとっての魅力)、③文化、④地域経済、⑤自然環境の5つの観点で整理している。参加者が表明した意見が正しいか、誤っているかといった区別はせず、どのような意見も貴重なものであるとして記録している。

■サウスブルース自治体でのサイト選定プロセスの経緯

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2010年から9つの段階で構成されるサイト選定プロセスを開始している。サウスブルース自治体は、オンタリオ州南部のブルース郡に属する自治体であり、ブルース郡のキンカーディン自治体には、ブルースパワー社が運転するブルース原子力発電所がある。サウスブルース自治体を含むブルース郡内の5自治体は、2012年前半にNWMOに対して「知識を深めることの関心表明」を順次行っていた。これら5自治体でサイト選定プロセス第3段階第1フェーズの机上調査が行われ、その結果から2014年12月にNWMOが3自治体を除外した 

NWMOは2019年5月に、サウスブルース自治体とヒューロン=キンロス・タウンシップにおいて、サイト選定第3段階第2フェーズのフィールド調査の実施に向けて、土地所有者の許可を得るために「土地アクセスプロセス」を公表した 。サウスブルース自治体内でのティーズウォーター・コミュニティ北西の土地の複数の所有者との合意に達したことを受けて、NWMOは2020年1月にヒューロン=キンロス・タウンシップを除外している 。NWMOは、2020年後半からサウスブルース自治体でボーリング調査を開始する予定である。

現在、カナダの使用済燃料処分場サイト選定プロセスは、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップと同州南部のサウスブルース自治体の2つに絞り込まれている。NWMOは、サイト選定における検討事項として、安全性を確保するための基準に加えて、地元自治体と地域の長期的な福祉の向上に関する要素を組み込んでいる。NWMOは、1カ所の好ましいサイトを2023年に特定する計画である 

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

 

【出典】

原子力規制委員会(NRC)は、2020年5月8日付けの連邦官報において、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料等の中間貯蔵施設について、建設・操業・廃止措置等に係るドラフト環境影響評価書(DEIS)に対するパブリックコメントの募集を開始することを告示した。NRCは、2020年5月6日付けのニュースリリースにおいて、DEISを公表するとともに、DEISに対するパブリックコメントの募集及びパブリックミーティングを開催することを公表していた。先に公表されたDEISにおいては、ISP社が計画している使用済燃料等の貯蔵による環境への影響は小さいとして、許認可発給を勧告するとしたNRCスタッフの評価が示されている。NRCスタッフは、パブリックコメントのレビューを行った上で、2021年5月までに、最終環境影響評価書(FEIS)を発行する予定としている。

DEISでは、ISP社が2018年6月8日及び7月19日付けでNRCに提出した中間貯蔵施設の許認可申請書の改定2版(Revision 2)を踏まえて、プロジェクトの第1段階(Phase 1)として行われる5,000トンの使用済燃料等の貯蔵についての評価が行われている。ISP社は、全8段階で貯蔵プロジェクトを実施し、最終的には最大4万トンの使用済燃料等の貯蔵を行う計画である。NRCは、保守的な境界条件の下での解析(bounding analysis)を行うものとして、第2~8段階の実施を含む貯蔵プロジェクト全体についての評価も行っており、予測される環境影響は小さいとしている。

DEISは、500ページ近くに及ぶ文書となっており、2018年5月6日付けのNRCニュースリリースでは、DEIS本体のファイル、及び環境影響評価書(EIS)の読者ガイドへのリンクも掲載されている。読者ガイドでは、DEISの概要とともに、ISP社の中間貯蔵プロジェクトの概要、NRCの許認可審査手続きの概要などについても、図等を含めて示されている。

ISP社の集中中間貯蔵施設の建設予定サイト

DEISに対するパブリックコメントの募集は2020年9月4日までの期間1 で行われるものとされており、NRCは、パブリックコメントの募集と並行してパブリックミーティングやウェビナー(ウェブを活用したセミナー)も開催する予定としている。

ISP社の中間貯蔵施設については、テキサス州アンドリュース郡のウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の自社所有サイトで、WCSテキサス低レベル放射性廃棄物処分場に隣接する区画において、使用済燃料等の中間貯蔵施設の建設を計画するものである。WCS社は、2016年4月28日に、使用済燃料等の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書をNRCに提出していたが、WCS社の売却の動きなどもあり、WCS社とOrano USA社との合弁会社として設立されたISP社が、2018年6月8日に、中間貯蔵施設の許認可審査の再開をNRCに申請していた。WCS社サイトにおいては、エネルギー省(DOE)が環境影響評価を実施するなど、クラスCを超える(GTCC)低レベル放射性廃棄物(以下「GTCC廃棄物」という。)の処分に関する検討も行われており、NRCによるGTCC廃棄物処分の規制に係る検討が続けられている

【出典】

 

【2020年12月3日追記】

中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料等の中間貯蔵施設については、原子力規制委員会(NRC)が策定したドラフト環境影響評価書(DEIS)に対するパブリックコメントの募集が2020年11月3日まで実施された。コメント募集においては、施設の建設が計画されているテキサス州の知事に加え、隣接するニューメキシコ州の知事がそれぞれ、ISP社の中間貯蔵施設の建設・操業に反対するコメントを提出した。

テキサス州知事は、2020年11月3日付けで提出したコメントにおいて、NRCが策定したDEISは、テロリズムによるリスクを適切に評価していないこと、使用済燃料の地層処分場が建設されない場合には中間貯蔵施設で永久に貯蔵される可能性があるにも拘わらず評価を行っていないことを指摘するなど、DEISには不備があるとしている。特に、テロリズムについては、ISP社が建設を計画しているウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社サイトが立地するテキサス州アンドリュース郡は世界最大の原油産出地域であるパーミアン盆地にあるため、テロリストの攻撃による被害が甚大であること、その影響の大きさもあってテロリストの主要な標的となり得ることなど、特異なリスクがあるため、DEISで示された一般的な評価では不適切であるとしている。

一方、隣接するニューメキシコ州の知事が2020年11月3日付けで提出したコメントにおいて、ISP社の中間貯蔵施設の建設が計画されているWCS社サイトはニューメキシコ州境から数百メートルに位置しており、ニューメキシコ州への影響が非常に大きいとした上で、中間貯蔵施設が事実上の恒久的な処分場となった場合の影響などの安全上の懸念がDEISでは適切に評価されていないこと、ISP社プロジェクトは大きな輸送リスクへの対応を資金提供なしにニューメキシコ州自治体に強いるものであること、ニューメキシコ州の経済に受容しがたいリスクがあることなどを指摘するなど、DEISは不適切であるとしている。

なお、NRCは、テキサス州知事に対しては2020年11月12日に、ニューメキシコ州知事に対しては2020年11月30日に、それぞれコメント受領を伝える書簡を送付し、最終環境影響評価書(FEIS)を準備する上で両知事のコメントを十分に配慮するとしている。

【出典】

 

【2021年7月30日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料等の中間貯蔵施設について、最終環境影響評価書(FEIS)を発行したことを2021年7月29日付けのニュースリリースで公表した。FEISでは、ISP社の中間貯蔵施設の建設・操業が環境に与える影響を評価した結果として、ISP社が提出した許認可申請書に係るNRCの安全審査の決定を条件として、ISP社の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可の発給を勧告するとのNRCスタッフの結論が示されている。

ISP社の中間貯蔵施設の環境影響評価については、2020年5月にドラフト環境影響評価書(DEIS)がNRCから公表され、オンライン形式による4回のパブリックミーティングの開催を含め、パブリックコメントの募集が行われた。NRCは、FEISの策定に当って、約10,600人2 からパブリックコメントが提出され、それらを評価した。NRCは、FEISで示された許認可発給の勧告は、以下に基づくものと記している。

  1. 許認可申請書(ISP社の環境報告書及び補助文書、NRCの追加情報要求(RAI)に対する回答を含む)
  2. NRCスタッフと連邦・州・先住民族・地方組織との協議、及び一般公衆を含むその他のステークホルダーからの意見等
  3. NRCスタッフによる独立的な審査
  4. 本FEISで示されているNRCスタッフの評価

NRCの環境影響評価に係る連邦規則(10 CFR Part 51)では、NRCが環境保護庁(EPA)にFEISを提出し、EPAが連邦官報においてFEISの受領を告示してから30日間は、許認可の発給に係る決定を行うことはできないものと規定されている。NRCは、FEIS発行をISP社に伝える書簡の中で、許認可に係る決定は2021年9月末までに行う予定であることを伝えている。また、NRCは、許認可に係る決定を公表する際に、ISP社の許認可申請書の技術審査の詳細を示した最終安全性評価報告(FSER)を発行する。

【出典】


  1. NRCのパブリックコメントの募集期間は60日間とされることが多いが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考慮して長期のコメント募集期間を設定するとして、120日間のコメント募集期間が設定されている。 []
  2. 文面が同一のものを集約したコメント数は約2,500件とされている。 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は2020年4月15日に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する方針を示した国家計画案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を公表し、2020年6月13日までの予定で公衆からの意見聴取を開始した。

ONDRAF/NIRASとは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。今回公表された国家計画案及びSEAレポートは、2006年2月13日付けの法律に基づいて作成されたものであり、作成された国家計画案とSEAレポートは、公衆からの意見聴取後に最終化して連邦政府に提出する予定である。なお、ベルギーでは、ONDRAF/NIRASが2011年9月に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方針に関する国家計画とSEAレポートを連邦政府に提出し、国内の粘土層での地層処分を推奨するとの見解を示していたが、現在に至るまで国としての方針は決定していない状況であった。

今回公表された地層処分に関するSEAレポートにおいて、ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する理由を以下のように説明している。

  • 地層処分に代わる合理的な管理方法はない。
    安全確保や環境保護の観点から、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物を、最大で100万年程度の期間、人間や環境から隔離する必要がある。こうした廃棄物を地下深くに処分できるという国際的な合意がある。地層処分の方針を決めた各国においても、長期貯蔵を含む代替案を検討した上で、地層処分以外の方法は拒否されている。連邦原子力管理庁(FANC)も長期貯蔵を安全な管理方法として認めていない。
  • 国家計画の策定は、EU指令(2011年7月12日付け)において定められたベルギーの義務であり、これ以上先送りすべきではない。
    国家計画によって長期管理方法が決定されなければ、地層処分の実施やそのための研究が進捗しない。また、現在は一時的に使用済燃料が貯蔵1 されている原子力発電所等の立地地域の住民は、貯蔵期間が見通せないままとなる。
  • 国家計画を決定しないことで、環境へのマイナス影響が発生しうる。
    現行の一時的な貯蔵施設は、耐用期間を迎えた時点で別の施設にリプレースする必要がある。リプレースにはコストがかかるだけでなく、放射性廃棄物の移動が必要となるために、管理すべき廃棄物の量が増大する可能性がある。
  • 国家計画の決定を先送りしても、将来的により適切な国家計画を決定することはできない。
    高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法の政策決定に必要な知見は、ベルギーや世界中で蓄積されている。長寿命核種の分離・変換技術は、これらの放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の量を低減する可能性はあるものの、産業レベルでの適用は困難である。

今回公表された国家計画案では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の国家計画の決定・実施プロセスとして、以下のような流れを規定している。

  • 長期管理方法の決定
  • 決定された長期管理方法を実施していくための意思決定プロセス、主要なマイルストーン、意思決定に関わる関係者の役割と責任の割当て
  • 決定された長期管理方法を実施する1カ所あるいは複数のサイトの決定

ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分が決定されれば、全ての関係者と協議するとともに、公衆との対話も行っていく考えを明らかにしている。

 

【出典】


  1. ベルギーでは、商用原子力発電所等から発生した使用済燃料は、再処理またはONDRAF/NIRASによる最終処分が実施されるまで、廃棄物発生責任者である事業者が安全に貯蔵する方針である。ただし、ベルギー政府は1998年に締結済みの再処理契約をキャンセルし、新たな再処理契約を結ばないことを決定している。 []

ドイツの放射性廃棄物処分の実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は2020年3月27日、アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物回収計画を公表した。回収計画では、廃棄物の回収方法、新たに建設する中間貯蔵施設での貯蔵などを含む回収後の廃棄物の取り扱い、2033年に回収を開始するとしたスケジュールや費用見積りなどが示されている。BGEは今後、回収のための新たな施設建設に向けた土地取得を行うとともに、回収計画の詳細化などのために、規制機関や住民と対話を開始するとしている。

アッセⅡ研究鉱山では、放射性廃棄物処分に関する調査を目的として、1967年から1978年まで低中レベル放射性廃棄物が試験的に処分された。その後、地下水の流入などにより、岩塩から成る処分坑道の安定性が確保できなくなる可能性が示されたことから、2010年に処分された廃棄物を回収し、アッセⅡ研究鉱山を閉鎖することを決定していた

アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物の回収計画

アッセII研究鉱山では、深度511m、725m、750m付近に設けられている13の処分室に合計約4万7,000m3の放射性廃棄物が処分された(下図参照)。回収対象となる廃棄物量は、廃棄物周囲の汚染された岩塩屑などを含め最大約10万m3程度と見積られている。

BGEは、既存の鉱山の東側に、廃棄物の回収に用いる立坑(回収用立坑)を建設するとともに、地下に作業用の新たな坑道(回収用坑道)などを建設する計画である。

回収した廃棄物は地上に搬出して、新たに建設される廃棄物処理施設で特性評価した後、コンディショニングされる。その後、最終処分場が操業を開始するまで、廃棄物処理施設に併設される中間貯蔵施設で貯蔵される。この廃棄物処理施設及び中間貯蔵施設は、放射線防護の観点などから回収した廃棄物の移動距離を最小限にするため、アッセⅡ研究鉱山の地上施設の近辺に設置する計画である。

アッセII研究鉱山での回収用立坑や坑道の模式図

スケジュール及び費用

BGEは、2023年に回収用立坑等の建設を開始する予定である(下図参照)。また、廃棄物処理施設及び中間貯蔵施設については、詳細な設置場所を今後決定し、2033年までに操業可能とする計画である。さらに、これらの施設建設と並行して、制御不能な量の地下水流入などを想定した緊急時計画の策定も行われる。これらの廃棄物回収作業のための準備が整った後、2033年に回収を開始するとしている。なお、廃棄物回収作業の期間に関しては、具体的な終了時期は示されておらず、専門家の見積りとして数十年との期間が示されている。

アッセⅡ研究鉱山からの廃棄物回収のスケジュール

また、BGEは、2019年以降、2033年に廃棄物回収が開始されるまでの準備期間中にかかる費用の総額を約33.5億ユーロ(不確実幅±30%、約4,020億円、1ユーロ=120円で換算)と見積っている。内訳は、既存坑道の保全費用が9億ユーロ(約1,000億円)、回収用立坑の建設に2億ユーロ(約240億円)、その他地下施設の建設に5億ユーロ(約600億円)、地上の廃棄物処理施設の建設に4.5億ユーロ(約540億円)などとされている。

なお、アッセII研究鉱山から回収された放射性廃棄物の処分先に関しては、現在サイト選定法に基づく選定プロセスが進められている高レベル放射性廃棄物処分場とすることが検討されている

 

【出典】