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英国

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2016年7月19日に、2015年度1 の年次報告書を公表した。CoRWMは、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)2 のプログラム及び計画、英国政府が主導するサイト選定の手続及び基準、政府及びRWMが行う公衆・ステークホルダーの関与に関するアプローチ等の活動をレビューしており、それらのレビュー活動に関する年次報告書を英国政府に提出することになっている

CoRWMは2015年度の年次報告書において、英国政府及びRWMに対して、次の3つの勧告を行っている。

  • 勧告1:放射性廃棄物管理会社(RWM)は、一般的な条件における地層処分システム・セーフティケース(gDSSC)の更新版を2016年に取りまとめる予定である。このセーフティケースには、地層処分場の設置が考えられている3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)について、岩種による施設設計の違いが分かるような概念図を示すとともに、安全特性に関する説明を含めるべきである。
  • 勧告2:放射性廃棄物管理会社(RWM)の組織体制が地層処分施設を実現するという目的に合致しているかを評価するため、英国政府は、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューを実施すべきである。
  • 勧告3:過去の文書へのアクセスは、地層処分を成功裡に終わらせるための重要な鍵となるため、英国政府は、公衆が放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)及び放射性廃棄物管理会社(RWM)の過去の文書に容易にアクセスできる方法を検討すべきである。

地層処分の実施主体であるRWMは、NDAの内部組織であった放射性廃棄物管理局(RWMD:Radioactive Waste Management Directorate)を分離し、2014年4月に政府外公共機関(NDPB)であるNDA所有の100%子会社として設立された。その後、2014年8月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、RWMが地層処分の実施主体と位置付けられた。このためCoRWMは、地層処分施設を設計、建設、操業するエンジニアリング・プロジェクト組織としての中核機能をRWMが備えるべきと考えている。一方、2015年11月に開催されたCoRWMとRWMとの会合において、RWMは当面の組織開発において、①サイト選定、②ステークホルダーの関与、③放射性廃棄物管理の3つの主要作業項目を軸とする考えを表明していた。これを受けてCoRWMは、公衆及び主要ステークホルダーがRWMの本来の役割を認識するのが難しくなることを懸念し、英国政府に対して勧告2として、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューの実施を勧告すると説明している。

【出典】


  1. 英国の年度は日本と同じ4月開始 []
  2. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、地層処分に関する研究開発の概要を示した『科学技術プログラム』を公表した。科学技術プログラムは、RWMの地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて取りまとめたものであり、RWMは、科学・技術研究の進捗を管理するツールとして使用していくとしている。

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

RWMは、科学・技術研究を4つの分野(図の中央部分にある緑色のボックス)に分け、各分野において目標とする主要な研究成果(合計62)をマップしている。RWMは、科学・技術研究を構成する一連の研究プロジェクトを設けており、各プロジェクトの成果の中で重要なもの、または複数のプロジェクトの成果を基に達成されるものを「主要成果」と位置づけている。なお、研究プロジェクトの詳細内容は、『科学技術プログラム』と同時に公表された『科学技術プラン』1 において示されている。

主要成果は、必ずしも単独の成果文書である必要はなく、RWMが発行する廃棄物パッケージの仕様遵守確認書(LoC)や廃棄物受入基準(WAC)、地球科学データ管理システムのようなデータベースやモデルも含まれている(図の下側のアウトプット部分を参照)。

科学技術プログラムにおける研究開発内容の策定・実施プロセスは、繰り返し行われることになっており、この反復プロセスの中で主要成果が提示される。

4つの科学・技術研究分野と各分野での主要成果の例

■科学・技術研究分野1:処分システム仕様(主要成果として6件を設定)

  • 処分システム機能に関する仕様
  • 処分システム技術に関する仕様
  • 処分対象となる放射性廃棄物インベントリ
  • 処分概念
  • 地層処分の代替管理方法

■科学・技術研究分野2:処分システム設計(主要成果として14件を設定)

  • 処分システム設計に関する仕様
  • 地層処分施設の一般設計
  • 処分システムのコスト評価

■科学・技術研究分野3:評価(主要成果として20件を設定)

  • 一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)
  • 一般的な条件における、環境、社会・経済、健康に関する評価
  • 処分可能性評価
  • 地質学的スクリーニング

■科学・技術研究分野4:知見の拡充(主要成果として22件を設定)

  • 高レベル放射性廃棄物等に関するプログラム
  • 科学技術プラン
  • サイト特性調査

 

RWMは、地層処分施設に関する活動期間を、①予備調査、②地上からのサイト調査、③処分施設の建設及び地下におけるサイト調査、④処分施設の操業、⑤処分施設の閉鎖の5つのフェーズに分割しており、今回の科学技術プログラムで設定した主要成果は、①~③のフェーズ(処分施設の操業開始前までの期間)に焦点をあてたものであると説明している。なお、RWMは、地層処分施設の開発の進捗状況に応じて、科学技術プログラム自体も定期的にレビューし、更新するとしている。RWMは、④と⑤(処分施設の操業開始以降の期間)の主要成果は、今後の活動フェーズが進むにつれて変わる可能性があるため、今回の科学技術プログラムでは基本的に含めていないが、今後提示する科学技術プログラムにおいて設定するとしている。

 

【出典】


  1. RWMは、これまでに科学技術プログラムの初版(2013年9月)、第2版(2014年3月)を策定しており、いずれもNDAの文書として発行されている(当時の文書名は技術プログラム)。今回RWMが公表した『科学技術プラン』は、科学技術プログラム(第2版)に含まれていた研究開発計画の詳細部分の記述を独立させたものである。 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2016年4月21日、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングのガイダンスを公表した。RWMは、本ガイダンスに基づいて地質学的スクリーニングを実施し、2017年までにスクリーニング結果を公表した上で、自治体を含む地域との正式な協議を開始する予定としている。

RWMは、地質学的スクリーニングにより、地層処分施設の長期安全性との関連性の高い地質学的な情報を取りまとめ、アクセスしやすい形で利用可能にすることを目標としている。地質学的スクリーニングの成果は、地層処分施設の立地に係わる地質学的可能性に関して、地域との初期の検討を行うために使用することになる。

RWMは、地層処分施設に係わる長期安全要件に関して考慮すべき5つの地質特性として、①岩種、②岩盤の構造、③地下水、④自然プロセス、⑤資源の賦存に着目し、過去に英国で実施された採鉱活動に関する情報を収集した資料などに基づいて、スクリーニング作業を進める。スクリーニング作業から得られた成果情報は、当該地域の地質環境の重要な特性と安全性とがどのような関連性を持っているかについて、一連の簡略な説明文書として提示するとしている。地質学的スクリーニングの成果情報の概要を下表に示す。

英国地質学的スクリーニング置ける地域区分

図:BGSが「地域別指針」(Regional Guide publication series)を発行するために採用している地質学的地域(スコットランドを除く)

RWMは、英国の地質学的状況に関して信頼すべき情報の多くを有する「英国地質調査所」(BGS)と協力して地質学的スクリーニング作業を行い、BGSが「地域別指針」(Regional Guide publication series)を発行するために採用している地質学的地域ごとに、「成果情報パッケージ」を作成する。なお、地質特性の一部については、13の地質学的地域のいずれに対しても当該情報がきわめてまばらであるか、あるいは、ほとんどばらつきが存在しないため、全国レベルの情報のみを示す場合があるとしている。

また、BGSは13の地質学的地域に関して一連の「技術情報レポート」及び「マップ」を作成することになっている。これらの技術資料の作成手順及び実施要綱(プロトコル)についてRWMは、BGSと協力して技術文書に取りまとめており、今回公表した地質学的スクリーニングのガイダンスとともに公表している。

 

表:地質学的スクリーニングにおいて着目する地質特性と成果情報の提示方法

地質特性

地質学的スクリーニング成果情報の提示方法
内容 地図(62万5千分の1)

岩種

  • 地層処分施設が設置される深度にある、母岩となりうる岩種(比較的高強度の岩石、低強度の堆積岩、蒸発岩)の分布
  • 母岩の周囲にある岩石層の特性

候補対象となりうる母岩、その深度、及び特性・場所に関する不確実性についての記述

候補対象となりうる母岩周辺の岩層と安全性に寄与しうる特性についての記述

当該地域に存在する岩盤全体を示す地質柱状図による岩種の表示

地下200~1,000mの深度にある、候補対象となりうる母岩の分布を示した地域図(一般的な3種類の岩種(比較的高強度の岩石、低強度の堆積岩、蒸発岩)の分布図)

少なくとも候補対象となりうる母岩が1つ存在する地域の概要地域図

岩盤の構造
(断層・破砕帯、褶曲の位置等)

  • 多数の褶曲が発達した地域
  • 大規模な断層が存在する地域

地域内にある、安全性に関連する岩盤の構造の性質(大規模な断層、断層帯、複雑な特性を持つ褶曲した岩石のある地域など)についての説明

岩盤構造の分布を示した地域図

地下水

  • 帯水層の存在
  • 浅部地下水と深部地下水の分離を示唆する地質特性と岩種の存在
  • ニアフィールド環境に地下水が急速に流れ込む可能性がある地域
  • 地下水の年代と化学組成

既知の浅部・深部の地下水流動、地下水化学、塩分濃度、年代についての説明

当該地域における地下水流動及び浅部地下水と深部地下水との相互作用に影響を及ぼしうる岩種及びその他の地質特性についての考察

深部ボーリング孔、鉱物、温泉の所在を示す地域図

自然プロセス
(地震・断層活動、氷河作用等)

  • 地震活動の分布とパターン
  • 過去の氷河作用の範囲

英国全土の地震活動、隆起速度、侵食速度、過去の氷河作用中の氷冠に関する情報を当該地域へ適用した解釈

最近の地震活動分布に関する英国全土の地図

過去の氷河作用の程度を示す英国全土の地図

資源の賦存

  • 深部鉱物の存在地域
  • 集中的に深部掘削が実施された地域
  • 将来における開発または資源探査の可能性

当該地域における将来の資源開発の可能性を考慮した、深部の資源探査と開発の歴史についての記述

深度100m以深における、過去及び現代の金属鉱石、工業用鉱物、石炭及び炭化水素の開発状況を示した地域図

■地質学的スクリーニングのガイダンス公表までの経緯

RWMは、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』に基づき、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階において、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施することになっている。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、既存の地質情報を活用し、地質学的スクリーニングのガイダンスを適用して実施するものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。

RWMは、2015年9月8日に地質学的スクリーニングのガイダンス案を公表し、意見提出期限を2015年12月4日まで公開協議を実施していた。RWMは、公開協議で得られた意見を踏まえ、ガイダンス案を更新し、独立評価パネル(IRP)  の評価を受けた後、最終化したガイダンスを2016年4月に公表した。

放射性廃棄物管理会社(RWM)は公開協議において、地質学的スクリーニングのガイダンス案について4つの質問事項を示し、一般からの意見を募集した。この公開協議では、学会、学術界、地域自治体、地球科学の専門家、NGO、関心を有する個人などから合計78の意見が寄せられた。ガイダンスにおける不明確さを無くすよう改善を図るべきとの意見が多数あったものの、その多くがガイダンスの内容に肯定的なものであったため、ガイダンス案を大きく変更する必要はないと判断したとしている。

独立評価パネル(IRP)は、地質学的スクリーニングのガイダンス案において、RWMが作成したガイダンスは技術的に健全であり、RWMが既存の適切な地質情報を利用して実施する地質学的スクリーニングに適用できると評価している。また、IRPは、RWMがガイダンスに示している、より詳細な調査を実施する地域を特定するための基本情報となる地質学的スクリーニング結果の提示方法(上図参照)を支持するとしている。その一方で、IRPは、RWMによって作成される各地域の報告書の品質と利用可能性の向上、コミュニケーションの改善を今後の課題と指摘している1

【出典】


  1. IRPは、RWMが作成する地質学的スクリーニングのガイダンス案の評価だけでなく、今後RWMが実施する地質学的スクリーニング作業におけるガイダンスの適用状況についても評価も行うことになっている。 []

廃棄物ヒエラルキー

英国政府は2016年2月10日に、原子力産業から発生する低レベル放射性廃棄物の管理戦略(以下「管理戦略」という)を公表した。本管理戦略は、①「廃棄物の段階的管理方法」(以下「廃棄物ヒエラルキー」という)の適用1 、②既存の低レベル放射性廃棄物の管理及び処分関連施設の最善利用、③新たな廃棄物処理方法及び処分ルートの開発・利用の3部で構成されており、廃棄物発生者にこれらの管理戦略の実施を求めるものである。ここで「廃棄物ヒエラルキー」とは、廃棄物発生の回避・最小化・再利用・リサイクル・処分のことを意味している。前回の管理戦略は、2010年に策定されている。既存の低レベル放射性廃棄物処分施設としては、カンブリア州西部のドリッグ村近郊にある、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)がある。

英国政府は2014年4月から、前回2010年に策定された管理戦略のレビュープロセスを開始し、2015年1月に新しい管理戦略の協議文書を公表するとともに、2015年4月まで公開協議を行っていた。今回公表された管理戦略は、公開協議の結果を反映したものとされている。英国政府は今回の管理戦略のレビューの結果、低レベル放射性廃棄物の管理に関して、以下のような進捗があったとしている。

  • 従来は低レベル放射性廃棄物として低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)での処分が想定されていたが、廃棄物特性評価が行われることにより、極低レベル放射性廃棄物、あるいはクリアランス廃棄物として区分できることが判明し、LLWRでの処分予定量の低減が図られている。
  • 低レベル放射性廃棄物の管理・処分関連事業者による代替処理方法と代替処分ルートの開発と利用が行われている。
  • 廃棄物発生者による廃棄物ヒエラルキーが実施されるようになっている。
  • 低レベル放射性廃棄物の管理を改善するための機会の特定、及び良好事例・知見の共有が行われている。
  • 低レベル放射性廃棄物の管理プロセスにおいて、幅広いステークホルダーが関与していること。

上記のような成果が得られたことから、前回2010年で策定した管理戦略の3つのテーマを変更せず、今回の管理戦略でも継続するとしている。英国政府は、本管理戦略を成功させるには、廃棄物ヒエラルキーの適用において、以下の点が重要であると指摘している。

  • 廃棄物ヒエラルキーの適用は、低レベル放射性廃棄物の管理における良好事例であると認識する。
  • 英国政府の方針において、廃棄物ヒエラルキーをより高いレベルで実現すべきこと認識する。
  • 低レベル放射性廃棄物処分場の処分容量を貴重な資源と捉え、むやみに処分場への処分に頼らないようにする。
  • 低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)や他の処分サイトの操業期間を延長させるため、処分以外の廃棄物管理を行う。
  • 廃棄物発生者は実施可能な限り、より早い段階で廃棄物ヒエラルキーの適用を開始すべきである。

 

【出典】


  1. 2007年の「低レベル放射性廃棄物の長期管理に関する政策文書」では、処分オプションを検討する前に、発生の抑制、利用する放射性物質の量の最小化、リサイクル及び再利用を通じて、低レベル放射性廃棄物の発生量の低減を図ることを廃棄物発生者に求めている。 []

欧州委員会(EC)は、2015年10月9日に、英国の新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等の所有権及び地層処分の費用負担責任を廃棄物発生者から英国政府に移転させる契約(Waste Transfer Contracts, WTC.以下「放射性廃棄物移転契約」という)について、契約価格の設定方法が、欧州連合(EU)の国家補助禁止規則に抵触しないとして、価格設定方法を承認することを公表した。

英国では、2008年エネルギー法により、原子力発電事業者に対し、新規原子炉の建設前に、廃止措置、放射性廃棄物の管理・処分費用のうち、自らの負担分の全額を賄うため、確実な資金確保措置を講じること1を義務付けており、原子力発電事業者は、廃止措置資金確保計画(FDP)を担当大臣に提出し、承認を得る必要があるが、このFDP承認の際に、放射性廃棄物移転契約の締結が望まれている。こうしたことから、エネルギー・気候変動省(DECC)は、2010年12月より放射性廃棄物移転契約の価格設定方法に関する公開協議を行い、その結果を踏まえ、2011年12月に「新規原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物等の処分のための廃棄物移転価格設定方法」を公表している。この放射性廃棄物移転契約の価格設定方法については、事業者支援のために公的資金が利用されるおそれがあるため、欧州条約において原則禁止となっている国家補助禁止規則2に抵触していないかを欧州委員会が2012年6月から審査していた。

欧州委員会は、放射性廃棄物移転契約の価格設定方法がEUの国家補助禁止規則に抵触しないとした理由として、以下の点を挙げている。

  • 現在は地層処分の費用について不確実な点が多いが、契約価格が最終的に決定するのは新規原子炉における発電開始から30年後であり、現在の地層処分スケジュールから見ても、費用はほぼ明確になっていること
  • 契約価格には地層処分に係る全ての変動費と固定費が含まれており、契約価格設定後の処分費用の上昇リスクを考慮した適切な額が価格に上乗せされていること
  • 新規原子炉の発電開始から契約価格が最終的に決定する30年後まで、5年ごとに地層処分費用が見直され、事業者にはそのための資金を確実に確保していく義務が課せられていること
  • 英国政府が地層処分費用の上限額を保守的な方法で見積っていることから、実際の地層処分費用が、放射性廃棄物移転契約に基づいて事業者が支払う上限額を超過し、英国政府が超過分を負担することになるリスクが極めて低いこと
  • 設定価格には、英国政府が上記リスクを負うことに対する補償額が含まれていること
  • 英国政府が最終的に超過分を負担するという事業者支援が発生したとしても、支援によって生じる市場の歪曲は極めて限定的であること

【出典】


  1. 英国では、日本のような地層処分のための資金確保制度(外部独立基金)はなく、廃棄物発生者である事業者が必要な資金を確保することとなっている。 []
  2. EUにおける市場競争の歪曲、または歪曲するおそれのある国家補助に関する規則。 []

英国の原子力安全規制機関である原子力規制局(Office for Nuclear Regulation, ONR)とイングランドを所管する環境規制機関(Environment Agency, EA)は、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)について、RWMの活動に対するレビュー報告書(2015年8月付)を2015年9月16日に公表した。RWMとONR及びEAとは、規制プロセスに入る前のRWMによる地層処分に関する活動について、RWMにアドバイスを行うことに合意しており、この合意に基づき今回のレビューが実施されている。

英国では、使用済燃料や放射性廃棄物の管理及び処分施設を含む、原子力施設の建設・操業などについては、原子力施設法に基づき、原子力規制局(ONR)から原子力サイトとしての許可を取得する必要がある。また、原子力サイトにおいて放射性廃棄物を処分するためには、イングランド及びウェールズでは環境許可規則、スコットランドと北アイルランドでは放射性物質法に基づいた許可をそれぞれの環境規制当局1から取得する必要がある。

また、英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、現在のところ高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針を採用しているのは英国政府(イングランドを所管)とウェールズ政府のみ2である。なお、ウェールズ政府は、今回のレビューの実施期間(2013年4月から2015年3月)の後の2015年6月に地層処分する方針を決定したため、レビュー報告書は原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)によって発行されている。

原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)は今回のレビューの目的を、放射性廃棄物管理会社(RWM)が将来提出する地層処分施設に関する許可申請書において、環境保護、安全、セキュリティ、放射性廃棄物輸送、保障措置等の規制要件を満足するようにするためとともに、RWMによる廃棄物発生者に対する廃棄物パッケージ方法に関するアドバイスが適切であることを規制機関が確証するためとしている。

原子力規制局(ONR)とイングランド所管の環境規制機関(EA)は、放射性廃棄物管理会社(RWM)の地層処分に関する活動を毎年レビューする意向であり、今回のレビュー報告書と同様、以下の8つの分野をレビュー対象として、規制機関からのコメントや改善点などを年次報告書として示していくとしている。

  1. 地層処分の実施に向けた計画策定
  2. 処分システムの仕様・設計
  3. セーフティケースの開発
  4. 持続可能性・環境アセスメント
  5. 研究開発(R&D)
  6. サイト評価・特性調査
  7. 廃棄物パッケージに関するアドバイス・評価
  8. 実施組織体制の整備

【出典】


  1. 環境規制機関(EA)、天然資源ウェールズ(NRW)、スコットランド環境保護局(SEPA)、ならびに北アイルランド環境省(DoENI) []
  2. 北アイルランド政府も地層処分方針を支持しているが、北アイルランドでは地層処分対象となる高レベル放射性廃棄物等が発生していない。また、スコットランドについては、スコットランド政府が地層処分する方針を採用しておらず、地表近くに設置した施設で高レベル放射性廃棄物等の長期管理を継続することとしている。 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2015年9月8日、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニング(下記コラム参照)のガイダンス案を公表するとともに、意見提出期限を2015年12月4日までとする公開協議を開始した。RWMは一般への情報提供を目的として、公開協議期間中の10月から11月初めにかけて、ロンドンを含めて11の地域でワークショップを開催する予定である1

英国では2015年3月に、英国政府の要請を受けた英国地質学会(The Geological Society)が、放射性廃棄物管理会社(RWM)の作成する地質学的スクリーニングのガイダンスが技術的な知見に立脚していることを確保するため、独立評価パネル(IRP)を設置している2 。2015年6月に、RWMはIRPのレビュー用にガイダンス案を作成し、IRPはガイダンス案の評価を実施している(2015年6月16日の追記を参照)。RWMは、このIRPの評価結果を踏まえ、今回公表した地質学的スクリーニングのガイダンス案を作成している。ガイダンス案は以下のものから構成されている。

① 地質環境が関与する地層処分施設の7つの長期安全要件の提示

  1. 地層処分施設の人工バリア機能が維持されること
  2. 地下水に溶け込んだ放射性核種または毒性物質によって安全性が損なわれないこと
  3. 地層処分施設内で発生したガスによって安全性が損なわれないこと
  4. 自然事象や自然変動によって安全性が損なわれないこと
  5. 安全性を立証するためにサイト特性調査が十分に実施できること
  6. 長期挙動が安全性に与える影響が理解可能なこと
  7. 潜在的な人間侵入の影響が評価可能であること

② 長期安全要件に関して考慮すべき5つの地質特性についての説明
  (1)岩種、(2)岩盤の構造(断層・破砕帯、褶曲の位置等)、(3)地下水、(4)自然現象(地震・断層活動、氷河作用等)、(5)資源の賦存

③ 上記5つの地質特性を理解するために使用する既存の地質情報の情報源についての説明

④ 既存の地質情報を基に実施する地質学的スクリーニングの結果の提示方法の説明:イングランド、ウェールズ、北アイルランドを13の地域に区分し(下図参照)、地域ごとに地質学的スクリーニングを実施する。地質学的スクリーニングの結果は、各地域の地質環境の主な特徴と安全性の関連を説明したものを適宜、地図でわかりやすく例示する。

英国地質学的スクリーニング置ける地域区分

また、放射性廃棄物管理会社(RWM)は、今回の公開協議において、地質学的スクリーニングのガイダンス案について以下の4つの質問事項を示し、一般からの意見を募集している。

  • 長期安全性に関する既存の地質情報の提供方法は適切なものか。
  • 既存の地質情報の情報源は適切かつ十分なものか。
  • 地質学的スクリーニングの結果の提示方法に賛成か反対か。
  • 地質学的スクリーニングのガイダンス案で示された内容について他に意見があるか。

放射性廃棄物管理会社(RWM)は、公開協議で得られた意見を踏まえ、地質学的スクリーニングのガイダンス案を更新し、独立評価パネル(IRP)の評価を受ける予定である。RWMは2016年中に最終版の地質学的スクリーニングガイダンスを公表し、これに基づいて地質学的スクリーニングを実施するとしている。

地質学的スクリーニングについて

RWMは、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 に基づき、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階において、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施することになっている。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、既存の地質情報を活用し、地質学的スクリーニングのガイダンスを適用して実施されるものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。 

【出典】


  1. ワークショップにおいて表明された見解や意見は、公開協議において提出された意見とはみなされない。 []
  2. IRPは、RWMが作成する地質学的スクリーニングのガイダンス案の評価だけでなく、RWMが実施する地質学的スクリーニングへのガイダンスの適用についての評価も行う。 []

英国政府のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2015年8月4日に、地層処分事業を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト(NSIP)」と位置付ける上で必要となる持続可能性評価(AoS,Appraisal of Sustainability)と生息環境規制評価(HRA,Habitats Regulations Assessment)の実施内容案を示した技術的な協議文書を公表した1

英国では、2008年計画法(2015年3月改正)により、イングランドに設置する場合の高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設(GDF)に加えて、候補サイトを評価するために実施する地上からのボーリング調査も「国家的に重要な社会基盤プロジェクト(NSIP)」の一つと位置づけられており、その実施には計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令が必要となっている2 。英国政府は、地層処分施設に関する開発同意令の発給審査の基礎となる国家政策声明書(NPS)3 のドラフト版の策定を進めており、この国家政策声明書には、2008年計画法に従った、持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の評価結果を含むことになっている。

また、英国政府は、今回公表した協議文書についての意見等を2015年9月25日まで受け付けるとしており、今後、寄せられた意見等を踏まえて、持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の実施内容を確定し、評価を実施することとなる。英国政府は、国家政策声明書のドラフト版及びそれぞれの評価結果をまとめた報告書について、2016年に公開協議を行うとしている。

■持続可能性評価(AoS)の目的と協議文書で示された内容

国家政策声明書(NPS)の前提となる持続可能性評価(AoS)では、一般的なサイトを対象とした地層処分に関する国家政策声明書のドラフト版に対して、環境に影響を与える計画及びプログラムの環境アセスメントに関する欧州連合(EU)の「戦略的環境アセスメント(SEA4 )指令」(2001/42/EC)で求められている環境アセスメント、及び環境アセスメントと同様の手法による社会・経済的影響評価が行われる。なお、EUのSEA指令は、計画及びプログラムに対する影響評価だけでなく、計画及びプログラムの目的や地理的範囲を考慮した合理的な代替案に対する影響評価も実施することを定めている。

国家政策声明書のドラフト版に対する持続可能性評価の目的は以下の通りである。

  • 持続可能な開発に貢献し、気候変動の緩和と適応、景観への配慮がされていることを保証すること
  • 環境及び社会・経済的影響を特定して定量化すること
  • 好ましい影響を増強し、好ましくない影響を回避・抑制・管理するための適切な措置を特定すること
  • 法定諮問機関、ステークホルダー、より広範な公衆、事業者、事業者のコミュニティ、利害に関係する環境及び社会・経済的影響について認識させ、見解を出させること。また、国家政策声明書のドラフト版への見解提出や改善提案を促すこと

国家政策声明書(NPS)のドラフト版についての持続可能性評価(AoS)に当たっては、NPSの全般的な目的、地層処分事業の開発原則、一般的な影響とサイト選定で考慮されるべき点、一般的な緩和措置を特に考慮して、持続可能性への影響が評価される。また、EUのSEA指令に沿って、AoSではNPSドラフト版に対する影響評価だけでなく、NPSドラフト版の代替案に対する影響評価も実施される。英国政府によるSEA指令についてのガイダンスでは、計画及びプログラムの実施の必要性、実施方法、実施地域、実施時期、実施内容の詳細についての代替案を作成すべきとしている。

英国政府は、国家政策声明書(NPS)の代替案として、①特別な環境影響が懸念される地域を除外するなどの除外基準を設けたNPS、②地層処分施設の複数の立地候補サイトを示したNPS、③NPSを定めず地層処分事業を実施した場合の3案を挙げている。また、地層処分を高レベル放射性廃棄物等の管理方針として決定しているため、持続可能性評価(AoS)において地層処分の代替案を設定しないとしている。

■生息環境規制評価(HRA)の目的と協議文書で示された内容

国家政策声明書(NPS)の前提となる生息環境規制評価(HRA)では、一般的なサイトを対象とした地層処分に関するNPSのドラフト版に対して、EUの生息環境指令(1992/43/EEC)で求められている土地利用計画による欧州のある地域への影響評価が行われる。

国家政策声明書(NPS)のドラフト版についての生息環境規制評価(HRA)に当たっては、NPSの全般的な目的、地層処分事業の開発原則、一般的な影響とサイト選定で考慮すべき点、一般的な緩和措置を特に考慮して、影響評価が実施することとなっている。

生息環境規制評価(HRA)を実施する英国政府は、国家政策声明書(NPS)は特定のサイトを対象としていないため、HRAではイングランドの特定の地域を対象として、その地域への影響について評価することは適切ではなく、欧州のある地域を全般的に保護するために必要な措置を特定するための評価を行うことが、より適切であるとしている。なお、英国政府は持続可能性評価(AoS)で取り扱う3つの代替案を対象としたHRAを実施するとしている。

【出典】


  1. 持続可能性評価(AoS)及び生息環境規制評価(HRA)は、国家政策声明書(NPS)が策定される前に、国レベルで見込まれる環境及び社会・経済効果を特定し、考慮に入れられるようにするために実施される。 []
  2. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []
  3. このNPSは、特定のサイトではなく一般的なサイトを対象とした地層処分施設等について作成される。 []
  4. 戦略的環境アセスメント(SEA)は、事業の計画決定過程、立地選定段階などで実施される環境アセスメントを指す。 []

英国の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社の放射性廃棄物管理会社(Radioactive Waste Management Limited, RWM)は、地層処分対象となる放射性廃棄物を抽出した報告書「地層処分:2013年版抽出インベントリ」(以下「インベントリ報告書」という)を2015年7月22日に公表した。RWMは、これまでもインベントリ報告書を定期的に作成しており、2007年版と2010年版を作成している。RWMは2007年版のインベントリ報告書をもとに、一般的な条件における処分システム・セーフティケース1 (gDSSC)を作成したが、今回RWMが公表した2013年版のインベントリ報告書は、2016年末に予定されているgDSSCの更新版の作成において活用するとしている。

英国政府は2014年に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設の設置に向けた新たなサイト選定プロセス等を示した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』 において、処分場立地の可能性を検討する自治体を含む地域に対して、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリの全体像を予め提示することを方針としている。これは、地層処分対象の放射性廃棄物地層処分の受け入れを検討している地域に対して、地層処分場に処分される廃棄物を明確に把握してもらうためとしている。

今回RMWが公表したインベントリ報告書では、地層処分対象の放射性廃棄物として、高レベル放射性廃棄物(HLW)、中レベル放射性廃棄物(ILW)、浅地中処分できない一部の低レベル放射性廃棄物(LLW)のほか、再処理の対象とならない使用済燃料(SF)、再処理によって分離・回収した余剰のプルトニウム(Pu)及びウラン(U)を含めている(表1参照)。なお、英国では、安全基準を満足するセーフティケースが実現することを前提として、費用の削減の観点から、地層処分施設は1カ所を想定している。

 

表1 地層処分対象の放射性廃棄物インベントリ

廃棄物分類 廃棄物量(m3
(貯蔵時)
廃棄物量(m3
(処分容器収納時)
高レベル放射性廃棄物(HLW) 1,410 9,290
中レベル放射性廃棄物(ILW) 267,000 456,000
低レベル放射性廃棄物(LLW) 9,330 11,800
プルトニウム(Pu) 0.567 620
使用済燃料(SF) 9,850 66,100
ウラン(U) 26,300 112,000
合計 314,000 656,000

※表1には、地層処分を実施しない方針のスコットランドが保有する、高レベル放射性廃棄物等のインベントリは含まれない。

RWMは、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリを抽出する上での将来の原子力発電の導入と再処理計画に関する想定として、英国で初期に導入されたガス冷却炉(GCR,マグノックス炉)の使用済燃料約55,000トン(ウラン換算、以下同じ)は2017年まで再処理してガラス固化体として地層処分するとしている。既存の原子炉から発生する使用済燃料のうち、改良型ガス冷却炉(AGR)の使用済燃料の一部と加圧水型原子炉(PWR、1基)の使用済燃料のほか、今後新設が計画されている原子炉計12基分から発生する使用済燃料約22,050トンは高レベル放射性廃棄物に含めておらず、再処理せずに使用済燃料として処分すると想定してインベントリを計上している。なお、RWMは、地層処分対象の放射性廃棄物インベントリは、2013年版の放射性廃棄物インベントリ報告書 で示された英国全体での全放射性廃棄物インベントリの約6%程度であるとしている。

 

【出典】


  1. 英国で見つけられるような地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場が所在するイングランドの環境規制機関(Environment Agency、EA)は、環境セーフティケース(ESC)が安全規制要件等を満たすものであるとのレビュー結果を示した上で、低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)からの許可申請を承認する決定案を2015年5月28日に公表するとともに、意見提出期限を2015年7月23日までとする公開協議を開始した。カンブリア州西部で1959年より操業を行っているドリッグ処分場は、既に処分の許可を得ている施設が満杯であることから、処分場を操業するLLWR社は、同処分場内の新たな施設での処分の許可申請とともに、処分場全体の安全性や環境影響などに関する環境セーフティケース(ESC)を提出していた。

英国で発生する低レベル放射性廃棄物は、ドリッグ処分場のほか、スコットランド北部にあるドーンレイ処分場で処分されている。LLWR社は、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する原子力施設の操業・廃止措置等をNDAとの契約に基づいて実施するサイト許可会社(SLC。原子力施設法に基づいて原子力サイトとする許可を受けた者)であり、ドリッグ処分場を操業する事業者である。

■ドリッグ処分場の現状と今後の計画

ドリッグ処分場では1959年の操業開始以降、7つのトレンチ処分施設で80万m3の低レベル放射性廃棄物が処分されてきたが、1988年以降はコンクリートボールト施設での処分に切り替えられている。8号コンクリートボールト施設として1988年より処分を開始した20万m3の容量をもつコンクリートボールト施設は既に満杯であるため、新たな施設での処分の許可が必要であった。なお、既に9号コンクリートボールト施設が完成しているが、処分施設としての許可は取得していないため、現在は一時貯蔵施設1 として利用されている。

新たな施設での処分の許可に関するLLWR社の申請では、ドリッグ処分場内に9号から20号までの新たな12のコンクリートボールト施設を増設し、2010年から2130年までに発生が見込まれる440万m3の低レベル放射性廃棄物を処分する計画である。

■英国における放射性廃棄物処分の許可及び環境セーフティケース(ESC)の提出

使用済燃料や放射性廃棄物の管理及び処分施設を含む、原子力施設の建設や操業などについては、原子力施設法に基づき、原子力規制局(ONR)から原子力サイトとしての許可を取得する必要がある。また、原子力サイトにおいて放射性廃棄物を処分するためには、イングランド及びウェールズでは環境許可規則、スコットランドと北アイルランドでは放射性物質法に基づいた許可をそれぞれの環境規制当局から取得する必要がある。

※環境規制機関(EA)、天然資源ウェールズ(NRW)、スコットランド環境保護局(SEPA)、ならびに北アイルランド環境省(DoENI)。

上記の環境規制当局の連名により策定された「放射性固体廃棄物を対象とする陸地における浅地中処分施設:許可要件に関するガイダンス(GRA)」は、浅地中処分施設の操業許可申請者に、規制当局が求める要件を満たしていることを示す処分施設に関する環境セーフティケース(ESC)を提出することを要求しており、ESCで示されるべき放射線防護要件などをGRAで規定している。ESCは、放射性廃棄物の処分の安全性や環境影響などについて説明するものであり、公衆の健康と環境が適切に防護され、放射性廃棄物を安全に処分できることが示されなければならない。また、操業期間中に行われる定期的なレビューの際には、ESCの更新版が提出されなければならない。

■今回の公開協議までの経緯

9号コンクリートボールト施設での処分を含むドリッグ処分場に関する環境セーフティケース(ESC)は、2002年9月に環境規制機関(EA)に提出された。これに対してEAは、ESCのレビュー結果として、例えば、海岸部の浸食や氷河作業の影響の詳細な評価や処分場全体としてのより包括的な評価の必要性など、いくつかの懸念が残されたことから、2006年2月に8号コンクリートボールト施設での処分継続は許可したものの、新設された9号コンクリートボールト施設での処分は許可を発給しなかった。

環境規制機関(EA)は、レビューで指摘した懸念などに対処した環境セーフティケース(ESC)の更新版の提出をLLWR社に求め、同社は更新版を2011年5月に提出した。このESCの更新版では、9号だけではなく、将来の20号までのコンクリートボールト施設での処分計画が含められた。EAは、ESC更新版について、レビューを実施するために必要となる追加資料の提出を2013年10月までLLWR社に要求し続けた。

このような経緯を経てLLWR社は、2013年10月28日に、ドリッグ処分場での処分許可の範囲を拡大する許可申請を環境セーフティケース(ESC)の更新版とともにEAに提出した。EAは、2013年11月から2014年2月にかけて申請内容の検討及びESCのレビューを実施し、今回、許可申請を承認する決定案について公開協議を実施することとした。

■EAによるECS更新版のレビュー結果

環境規制機関(EA)は、環境セーフティケース(ESC)の更新版及び追加資料のレビューにおいて、特に以下の観点から評価を実施したとしている。

  • 最終的に処分施設の表面を覆う設計となっている8号コンクリートボールト施設に関する、廃棄体露出の潜在的可能性やその場合の影響の評価
  • 処分場サイトの沿岸域の海水による浸食あるいは施設への人間侵入に伴う影響の評価(成分や組成の異なる廃棄体の混合の影響など)
  • 非放射線学的影響の評価(化学毒性など)
  • 影響が合理的に達成可能な限り低く抑えられることを立証するための工学設計と最適化

また、環境規制機関(EA)はレビューの結果として以下の3点を示している。

  • LLWR社が提出した環境セーフティケース(ESC)の更新版及び追加資料から、同社は、許可要件に関するガイダンス(GRA)の要件及び環境許可要件を満たしている。
  • ドリッグ処分場での今後の処分に対して、環境許可を発給するに足る適切な水準かつ品質の証拠が示されている。
  • ESCの更新版及び追加資料が、今後のドリッグ処分場での放射性廃棄物の処分について、現在及び長期の双方の面で人間や環境にとって安全なものであることを立証していることにEAは満足している。

【出典】

【2015年10月30日追記】

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場が所在するイングランドの環境規制機関(Environment Agency、EA)は、2015年10月29日に、操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)が提出した処分場内での増設施設における処分の許可申請について、承認する決定を行ったことを公表した。

環境規制機関(EA)は、2013年10月28日にLLWR社から提出された許可申請書及び処分場全体の安全性や環境影響などに関する環境セーフティケース(ESC)について、2013年11月から2014年2月にかけてレビューを実施した。2015年5月28日に環境規制機関(EA)は、レビュー結果を示した上で、許可申請を承認する決定案を公表し、2015年5月28日から2015年7月23日まで同案に関する公開協議を行い、寄せられた見解を踏まえて、今回の決定に至ったものである。

環境規制機関(EA)による許可では、公衆の健康と環境が適切に防護されるため、以下のような制限・条件が付されている。

  1. 廃棄体の劣化を最低限に抑え、環境への放射性物質の放出を最小限とするため、最終的に処分施設の表面を覆う設計となっている8号コンクリートボールト施設と新設された9号コンクリートボールト施設について、廃棄体の保護方法に関する提案、及び9号以降のコンクリートボールト施設における長期的な廃棄体の保護プログラムを含んだ計画を環境規制機関(EA)に提出すること
  2. 環境セーフティケース(ESC)が変更される場合、その変更が処分場の管理に対して、重大な影響を及ぼしうるか否かを決定する方法を策定すること
  3. 過去に処分された廃棄体内にあって、将来的に外部に露出し、多量の放射性物質を放出する可能性がある廃棄物等についての最適な管理方法を示した報告書を環境規制機関(EA)に提出すること
  4. 環境セーフティケース(ESC)の継続的な改善と実施に向けた、包括的な作業計画を環境規制機関(EA)に提出し、実施すること
  5. 8号と9号コンクリートボールト施設に定置されている廃棄物の処分方法を詳細に示した計画書を環境規制機関(EA)に提出すること
  6. 2011年版の環境セーフティケース(ESC)の環境規制機関(EA)によるレビュー結果を踏まえ、非放射線学的な水文地質学的な観点からのリスク評価のアップデート版を提出すること
  7. 環境規制機関(EA)が示した「放射性固体廃棄物を対象とする陸地における浅地中処分施設:許可要件に関するガイダンス(GRA)」の最新版に規定している全ての要件を満たしていることについて、ドリッグ処分場についての環境セーフティケース(ESC)のアップデート版を提出すること

また、9号以降のコンクリートボールト施設に廃棄体を処分する場合には、事前に環境セーフティケース(ESC)に沿って各施設が建設されていることの証明などを含む報告書を環境規制機関(EA)に提出し、承認を得なければ、処分を開始できないとしている。

【出典】

【2015年11月5日追記】

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は、2015年11月3日のウェブサイトにおいて、1990年都市田園計画法に基づいて、処分場の増設施設の建設等の計画申請(planning application)をカンブリア州に行ったことを公表した。

低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)が申請した主な計画は、以下の通りである。

  • 8号コンクリートボールト施設と9号コンクリートボールト施設に仮置き中の放射性廃棄物を処分すること
  • 3つのコンクリートボールト施設(9a号コンクリートボールト施設(9号コンクリートボールト施設の増設に相当)、10号コンクリートボールト施設及び11号コンクリートボールト施設)の新規の建設
  • 既存の1~7号トレンチ処分施設、8号コンクリートボールト施設、新規に建設するコンクリートボールト施設の最終的な覆土(cap)の施工

低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)は、計画申請に対する許可が発給されれば、9a号コンクリートボールト施設の建設を2016年中に開始し、約4年で建設を終了するとしている。なお、LLWR社は、最終的には最大で14のコンクリートボールト施設を建設する計画である。

【出典】

【2016年7月19日追記】

英国のドリッグ村近郊の低レベル放射性廃棄物処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は2016年7月15日に、1990年都市田園計画法に基づいてカンブリア州に申請していた処分場の増設施設の建設等の計画申請(planning application)(2015年11月5日の追記を参照)について、同州に承認され、計画許可の発給を受けたことを公表した。LLWR社は、計画していた9a号コンクリートボールト施設等の新設・増設の作業を2017年から開始するとしている。

また、今回の計画許可により、処分場は2050年頃まで操業が継続できることになる。LLWR社は地元の雇用維持に加えて、新たに建設関連の雇用創出に貢献するとしている。

【出典】


  1. 放射性廃棄物の貯蔵に関しては、原子力規制局(ONR)からの許可取得が必要である。 []