英国の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2020年8月4日に、英国内の地層処分に関する科学技術や専門知識の結集と形成、及び次世代の研究者の育成サポートを目的として、マンチェスター大学、シェフィールド大学と共同で「RWM研究サポートオフィス」(以下「RWM RSO」という)を設立したことを公表した。RWM社は、RWM RSOに対して最長10年間、総額約2,000万ポンド(約27.6億円、1ポンド=138円で換算)の資金提供を行うとしており、地層処分に関連する広範な研究活動を支援し、その成果をRWM社の活動に活用していく考えである。
■RWM RSOのスタッフ構成
RWM RSOは、地層処分に関連する9つの学問領域の研究開発を支援するとして、事務所はマンチェスター大学に設置されている。RWM RSOは発足時点で28名のスタッフで構成されており、このうち、支援対象となる研究プロジェクトの企画、組織化を担当するRSOプロジェクトチームには、マンチェスター大学から5名、シェフィールド大学から1名の計6名が参画している。また、RWM RSOの運営と活動を支援するため、RWM社から16名が参画している。その他に、学問領域ごとに研究リーダーを置いており、現在は9つの学問領域のうち、6領域の研究リーダーをマンチェスター大学から4名、シェフィールド大学から2名選任している。RWM RSOは、不在となっている3領域の研究リーダーを英国内の大学から募集している。
■RWM RSOが支援する地層処分に関連する学問領域
「RWM研究サポートオフィス」(RWM RSO)は、RWM社が行う地層処分と関連性をもつ学術的な研究を支援するとしており、支援対象となる学問領域を9領域に大別している。
- 先進製造(Advanced manufacturing)
- 応用数学(Applied mathematics)
- 応用社会科学(Applied social science)
- 環境科学(Environmental science)
- 地球科学(Geoscience)
- 材料科学(Materials science)
- パブリック・サイエンスコミュニケーション(Public communication of science)
- 放射化学(Radiochemistry)
- トレーニング(Training)
なお、RWM社は、これまでに地層処分の研究開発を行っており、2013年から地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて、『科学技術プログラム』を取りまとめている 。RWM RSOは、支援対象となる上記の9つの学問領域は、RWM社が実施している研究開発活動のニーズに対応するものであるとしている。また、前述したRWM社から参画している16名については、RWM社で「一般的な条件における処分システムセーフティケース」(gDSSC) の開発などを担当した科学技術の専門家、コミュニティの参画や持続的開発などの専門家であり、RWM RSOの枠内で行われる研究活動を支援することとなっている。
【出典】
- 放射性廃棄物管理会社(RWM社)2020年8月4日付プレスリリース、
https://www.gov.uk/government/news/rwm-launches-new-venture-to-lead-groundbreaking-research-into-geological-disposal - RWM Research Support Officeウェブサイト
https://www.research-support-office-gdf.ac.uk/ - マンチェスター大学のウェブサイト
https://www.manchester.ac.uk/discover/news/manchester-and-sheffield-launch-25m-research-project-into-safe-geological-disposal-of-nuclear-waste/
(post by f-yamada , last modified: 2023-10-17 )