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《英国》放射性廃棄物管理会社(RWM社)が地層処分施設の一般的な条件でのセーフティケース(2016年版)を公表

英国の高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)1 は、2017年8月3日に一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC2 )の2016年版(以下「2016年版gDSSC」という。)の報告書を公表した。RWM社は、想定しうる英国内の地質環境において、安全に地層処分を実施できると結論付けている。今回のgDSSC報告書は、英国政府が2014年8月に公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という。)に基づき、RWM社が実施している地質学的スクリーニングと並行かつ連動した形で取りまとめたものであり、2014年白書に基づく初期活動終了後に開始予定である地層処分施設の受入れに関心のある地域(コミュニティ)との協議において、提供される情報の一つとなる。

2016年版gDSSCは、地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階に分けて、放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する目的で作成された一連の文書であり(下記コラムを参照)、2010年12月に最初のgDSSCが取りまとめられた(以下「2010年版gDSSC」という。)。RWM社は今回の更新の主な理由として、2010年版gDSSCの策定のための基礎情報であった2007年版インベントリ及び地層処分対象となる放射性廃棄物を抽出した報告書「地層処分:2007年版抽出インベントリ」がそれぞれ2013年版に更新されたこと 、また、2014年白書において新規原子力発電所から発生する放射性廃棄物の追加等、地層処分される放射性廃棄物インベントリが更新されたことを挙げている。

2016年版gDSSCの主要成果

  • 想定しうる英国内の地質環境において、安全な地層処分が可能
  • 法律で規定された線量限度及び放射線防護基準を遵守してRWM社の地層処分施設を設計・建設・操業が可能
  • 通常作業における作業員への被ばく線量を法定限度以下に抑えた状況で、放射性廃棄物を地層処分施設に安全に輸送が可能
  • 地層処分施設の操業時のみならず閉鎖後も含め、長期間にわたる環境安全を確保する方法の立証が可能

また、RWM社は、今回公表した2016年版gDSSCが、前回2010年版と比較して、以下のような点において改善・進捗があったことから、地層処分施設の安全性が向上したと説明している。

  • 地層処分施設が設置される深度にある、母岩となりうる3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)の定量評価
  • 放射性廃棄物インベントリに関する代替シナリオの検討
  • 原子力規制局(ONR)や国際原子力機関(IAEA)のガイダンスに沿った、将来的にRWM社が作成する地層処分施設の予備的安全報告書(PSR)の要件と、一般的な条件における操業セーフティケースの主要報告書(OSC)との整合
  • 廃棄体の劣化によって放出される放射性物質の挙動についての理解、地層処分施設の閉鎖後における臨界評価の改善、ガス評価におけるアプローチの策定などに関する知識ベースの改善

RWM社は、処分実施可能性の検討のために必要とされる限り、また、一般的な条件における地層処分施設の開発研究を進めるため、一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)を更新し続けるとしている。さらに、今後、地層処分施設の候補サイトが明らかになった際には、そのサイト固有のセーフティケースを作成するとしている。

2016年版gDSSC の目的と構成

一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)は、①gDSSCを構成する文書全体の構成、目的、主要成果を示した概要報告書(Overview)、②地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階におけるセーフティケース報告書(Safety Cases)、③3つのセーフティケースの根拠となる評価報告書(Assessments)、④評価のために利用された基礎情報文書(System Information)で構成されている(下図参照)。

2016年gDSSCの文書校正

図:2016年gDSSCの文書構成

<2016年版gDSSCの目的>

  • 放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する
  • 規制機関及び廃棄物発生者や原子力廃止措置機関(NDA)のようなステークホルダーとの協議に利用できる
  • 放射性廃棄物管理会社(RWM社)が廃棄物発生者に対して、廃棄物パッケージに関するアドバイスの根拠となること、及び廃棄物パッケージの処分可能性評価のための基礎情報となること
  • 地層処分施設の受け入れに関心のある自治体(コミュニティ)に情報提供を行うことで、サイト選定プロセスを支援する
  • 研究開発が必要な分野を特定し、RWM社の科学技術プラン3  の策定に資する
  • 地層処分施設の開発における明確な処分概念と設計に関する情報を提供し、サイト選定プロセスの早期段階において、潜在的な候補サイトの適合性を評価するための基礎情報となること
  • サイト固有の設計及びセーフティケースの開発を支援する情報となること

【出典】

  1. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []
  2. 英国における地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []
  3. 『科学技術プラン』はRWMによる地層処分のための研究開発の詳細内容が示されている。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-10 )