スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2017年8月3日に、地層処分場プロジェクトにおけるENSIの役割を記したポジションペーパー「地層処分場の規制監督」を公表した。スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下、特別計画という)に基づくサイト選定手続きが実施されており、現在、サイト選定第2段階にある。実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の地質学的候補エリアの絞り込み提案について、今後、連邦評議会1 の承認プロセスを経て、2018年末までにサイト選定第3段階へ進む予定である。ENSIは、サイト選定第3段階においてNAGRAが実施するボーリング調査を含む地球科学的調査に対するレビューや安全評価報告書の審査を行うなど、今後のENSIの役割が拡大していくことを見据え、今回、地層処分場の規制監督を担うENSIの役割と姿勢をポジションペーパーとして整理したとしている。
ENSIは、地層処分場プロジェクトにおける自らの役割と姿勢について、以下の5つの基本方針を示している。
- 基本方針1:地層処分場プロジェクトの特徴を踏まえた監督の実施
ENSIは、地層処分場に対する監督を行う期間が、原子力発電所の場合よりもはるかに長期にわたることを踏まえた規制を実施していく。また、バックエンド関連の人材確保と育成は課題である。 - 基本方針2:指針の策定と精緻化
ENSIは、法令の要件を具体化する指針を策定し、安全目標や基本原則、安全基準を規定する。また、ENSIは、指針について、処分場の安全確保のための指針「ENSI-G03:地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」を2009年に策定しているが、こうした要件や規定内容の精緻化に取り組み、最新の科学技術水準に適合した基準値を適時に提示し、地層処分場の安全・技術面の規制枠組みを構築していく。 - 基本方針3:実施主体との役割分担について
実施主体は地層処分場の設置に関する提案を行う一方で、ENSIはそれらの提案を専門的見地から審査し、安全目標や基本原則、安全基準に適合しているかを評価する。 - 基本方針4:ステークホルダーへの対応
ENSIは、全てのステークホルダーから早期に安全上の疑問を受理し、これらの疑問点を考慮に入れて安全面の監督を行う。 - 基本方針5:法整備への働きかけ
ENSIは、地層処分に関連する法令の改正が必要であると判断した場合には、所轄官庁である環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)及び連邦エネルギー庁(BFE)に対して改正手続きを促す。
【出典】
- 連邦原子力安全検査局(ENSI)ウェブサイト、2017年8月3日、
https://www.ensi.ch/en/2017/08/03/position-paper-defines-supervision-deep-geological-repositories/ - ENSIポジションペーパー「地層処分場の規制監督」、2017年7月
https://www.ensi.ch/de/wp-content/uploads/sites/2/2017/08/positionspapier-ENSI-Rat_web.pdf
- 日本の内閣に相当 [↩]
(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )