高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、地層処分に関する研究開発の概要を示した『科学技術プログラム』を公表した。科学技術プログラムは、RWMの地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて取りまとめたものであり、RWMは、科学・技術研究の進捗を管理するツールとして使用していくとしている。
RWMは、科学・技術研究を4つの分野(図の中央部分にある緑色のボックス)に分け、各分野において目標とする主要な研究成果(合計62)をマップしている。RWMは、科学・技術研究を構成する一連の研究プロジェクトを設けており、各プロジェクトの成果の中で重要なもの、または複数のプロジェクトの成果を基に達成されるものを「主要成果」と位置づけている。なお、研究プロジェクトの詳細内容は、『科学技術プログラム』と同時に公表された『科学技術プラン』1 において示されている。
主要成果は、必ずしも単独の成果文書である必要はなく、RWMが発行する廃棄物パッケージの仕様遵守確認書(LoC)や廃棄物受入基準(WAC)、地球科学データ管理システムのようなデータベースやモデルも含まれている(図の下側のアウトプット部分を参照)。
科学技術プログラムにおける研究開発内容の策定・実施プロセスは、繰り返し行われることになっており、この反復プロセスの中で主要成果が提示される。
4つの科学・技術研究分野と各分野での主要成果の例
■科学・技術研究分野1:処分システム仕様(主要成果として6件を設定)
■科学・技術研究分野2:処分システム設計(主要成果として14件を設定)
- 処分システム設計に関する仕様
- 地層処分施設の一般設計
- 処分システムのコスト評価
■科学・技術研究分野3:評価(主要成果として20件を設定)
■科学・技術研究分野4:知見の拡充(主要成果として22件を設定)
- 高レベル放射性廃棄物等に関するプログラム
- 科学技術プラン
- サイト特性調査
RWMは、地層処分施設に関する活動期間を、①予備調査、②地上からのサイト調査、③処分施設の建設及び地下におけるサイト調査、④処分施設の操業、⑤処分施設の閉鎖の5つのフェーズに分割しており、今回の科学技術プログラムで設定した主要成果は、①~③のフェーズ(処分施設の操業開始前までの期間)に焦点をあてたものであると説明している。なお、RWMは、地層処分施設の開発の進捗状況に応じて、科学技術プログラム自体も定期的にレビューし、更新するとしている。RWMは、④と⑤(処分施設の操業開始以降の期間)の主要成果は、今後の活動フェーズが進むにつれて変わる可能性があるため、今回の科学技術プログラムでは基本的に含めていないが、今後提示する科学技術プログラムにおいて設定するとしている。
【出典】
- 放射性廃棄物管理会社(RWM)、『科学技術プログラム』(Science and Technology Programme)、2016年5月
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/526331/NDA_Report_no_NDA_RWM_112_-_GD_-_Science_and_Technology_Programme.pdf - 放射性廃棄物管理会社(RWM)、『科学技術プラン』(Science and Technology Plan)、2016年5月
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/526404/NDA_Report_no_NDA_RWM_121_-_GD_-_Science___Technology_Plan_-_2016.pdf
- RWMは、これまでに科学技術プログラムの初版(2013年9月)、第2版(2014年3月)を策定しており、いずれもNDAの文書として発行されている(当時の文書名は技術プログラム)。今回RWMが公表した『科学技術プラン』は、科学技術プログラム(第2版)に含まれていた研究開発計画の詳細部分の記述を独立させたものである。 [↩]
(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )