フランスの原子力安全機関(ASN)は2016年6月16日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物の地層処分における「可逆性」の技術的解釈に関する2016年5月31日付の見解書を公表した。フランスでは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法により、高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物について、「可逆性のある地層処分」を行う方針を定めている。2016年3月30日には、地層処分場の設置に関する法案1 が提出されており、国会で審議が行われている。ASNは今回の見解書の公表にあたり、審議中の法案には「可逆性」に関する規定が盛り込まれており、この規定が今後、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が地層処分場の設置許可申請を行う際の条件になるとしている。
ASNは、今回の見解書において、可逆性の原則は以下の2つの必要性によって説明されるとしている。
①適応性: 地層処分場は、以下の条件を考慮することが可能でなければならない。
- 経験のフィードバックと科学の進歩(例えば、地層処分場の開発において採用される産業プロセスの変更につながるもの)。
- エネルギー政策や事業方針の変更(例えば、使用済燃料の直接処分、または地層処分場の閉鎖が先送りされるなど)。
②回収可能性: 放射性廃棄物は以下の条件で、地層処分場から回収できなければならない。
- 法律によって定められる期間にわたって回収可能であること。
- 地層処分場の構造物や廃棄物パッケージが劣化した場合であっても、原子力安全と放射線防護を確保した形で回収可能であること。
ASNは、適応性及び回収可能性に関するこれらの条件は、透明性が確保され、あらゆるステークホルダーとともに、定期的に再評価されなければならないとしている。また、ASNは、適応性に関して考慮すべき条件のうち、エネルギー政策や事業方針の変更に関連して、ANDRAによる地層処分プロジェクトのコスト評価報告書に関する2015年2月10日付のASN見解書 において必要性に言及した、将来的な政策変更等を考慮した廃棄物インベントリについて、地層処分場の設置許可申請以降、速やかに提出される必要があると指摘している。
さらに、ASNは、可逆性の原則の実現に際しては、安全確保の上で必要な以下の2つの事項が達成されなければならないことを指摘している。
- 可逆性を担保した状態で地層処分場を機能させるために採用される措置は、操業中及び閉鎖後における原子力安全及び放射線防護の目標と整合していなければならない。
- 地層処分場の操業期間は有限でなければならず、地層処分場の長期安全性を確保するためには、処分場の閉鎖が不可欠である。
なお、ASNは2014年12月に、ANDRAが設置許可申請に先立ってASNに提出する「地層処分場の主要な技術オプション」等に対する記載要求事項をまとめた書簡をANDRAに送付し2 、この中で、可逆性に関する考え方を示しており 、可逆性には「適応性」と「回収可能性」の2つの概念を含むことが適切であるとの判断を示していた。
【出典】
- 原子力安全機関(ASN)、2016年6月16日付プレスリリース
http://www.asn.fr/Informer/Actualites/Reversibilite-du-stockage-de-dechets-radioactifs-en-couche-geologique-profonde - 原子力安全機関(ASN)、2016年5月31日付見解書
http://www.asn.fr/content/download/103432/762427/version/1/file/Avis+n%C2%B0+2016-AV-0267+de+l%E2%80%99ASN+du+31+mai+2016.pdf
(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )