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ベルギー

海外情報ニュースフラッシュ

このWebサイトでは、諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、 "海外情報ニュースフラッシュ"として 最新の正確な情報を迅速に提供しています。 ニュースフラッシュを発行した後も、記事トピックをフォローしています。必要に応じて、情報の"追記"を行っています。


図1

図1:カテゴリーA廃棄物処分場の位置

ベルギーの連邦政府は、2023年4月23日付けの王令により、放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が申請していた短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場の建設と操業に関する許可を発給した。放射性廃棄物を受け入れる処分場としては、ベルギーで初めてのものとなる。本処分場はベルギー北東部のアントワープ州デッセル自治体の地表に設置され、国内の原子力発電所1 や研究所、医療施設などから発生する短寿命・低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーA廃棄物と呼称される)を最大約70,500m3を受け入れる。

ONDRAF/NIRASは、短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(以下「カテゴリーA廃棄物処分場」という。)の建設を2024年に開始する予定である。建設に4年を要し、その後95年間にわたって操業を継続する計画である。ONDRAF/NIRASは、2013年1月に原子力安全の規制行政機関である連邦原子力管理庁(FANC)に本処分場の建設と操業に関する許可申請書を提出していた

■処分場の構造と操業計画

図2

図2:カテゴリーA廃棄物処分場の構成(施設建設後のイメージ)



図3

図3:処分施設の内部 (実際には施設全体が化粧鋼板で覆われており、内部は見えない)



図4

図4:処分施設閉鎖時の断面図(廃棄体の受け入れ開始から約50年後に覆土が施工される計画である)



図5

図5:カテゴリーA廃棄物処分場のスケジュール

カテゴリーA廃棄物処分場は、ONDRAF/NIRASの子会社ベルゴプロセス社が操業する放射性廃棄物中間貯蔵施設の敷地に隣接して設置される。処分場の敷地は約25万m2であり、地表に2つの処分施設(建屋)が建設される(図2参照)。処分場建設の第1期では、処分区画となるコンクリート製モジュール20基を収容する処分施設が建設される。モジュール1基の大きさは、縦約25m、横約27m、高さ約11m、側壁の厚さは0.7mである。処分場建設の第2期ではモジュール14基を収容する処分施設が建設される。

現在、カテゴリーA廃棄物は200Lドラムに収納されて中間貯蔵されているが、これらをコンクリート製角形容器に4本ずつ収納し、モルタルを充填して「モノリス」2 と呼ばれる廃棄体とする。これを処分施設のモジュール内に積み上げて定置する(図3参照)。1つのモジュール内には約900個のモノリスが収容されるため、第1期の処分施設には約18,000個、第2期の処分施設には約12,600個のモノリスが定置されることとなる。

廃棄体の定置が長く継続するため、処分施設の外観デザインに特に配慮した設計となっており、側面と天井はレンガ風の装飾が施された化粧鋼板で覆われている。この化粧鋼板は、施設内への雨水浸入や風化を防止する役割も果たす。

廃棄物の受け入れ開始から約50年後には化粧鋼板を撤去し、止水や排水の機能を有する厚さ4mの様々な層で処分施設全体を覆土する(図4参照)。操業開始から約95年後までは検査坑道から処分場内部を目視確認し、操業開始から350年後までモニタリングプログラムによる監視を継続する計画である(図5参照)。

■カテゴリーA廃棄物処分場のサイト選定経緯

ベルギーでは1990年代に、潜在的なサイトの適格性を重視した処分地選定が行われたが、自治体や地域住民から拒否された経緯がある。ONDRAF/NIRASは、処分場サイト選定を進めるには、技術的側面だけではなく、社会的側面も考慮する住民参加型のアプローチを採用する必要性を認識し、原子力関連施設が立地するデッセル自治体とパートナーシップを1999年に締結し、STOLA(2005年にSTORAに改組)と呼ばれるパートナーシップのグループを設立した3 。2004年にSTOLAは、自治体内での処分場の実現見通しを検討した報告書を取りまとめ、処分場受入れの前提として以下の条件を提案し、デッセル自治体議会の承認を受けた。

  • 安全が確保され、環境・健康へのフォローアップ、技術面での進展を継続すること。
  • STOLAによって開発された地表または地層処分場概念オプションによること。
  • STOLAが目的を果たして終了した後も、地域社会の参加とコミュニケーションを図る恒久的なフォーラムが設立されること。
  • デッセル持続性基金の設立、環境計画への参加など、地域社会にプラスがあること。
  • 処分の最終段階まで、放射性廃棄物管理に対する透明性の確保、原子力に関する中核的拠点としての機能維持および雇用確保などが確約されること。

これを受けて、2006年の王令において、カテゴリーA廃棄物の長期管理に関する国家計画が定められ、この中でデッセル自治体内に処分場を設置する方針が決定された

ONDRAF/NIRASは、処分場の具体的な設計開発や調査を進めていく中で、STORAパートナーシップと協力してカテゴリーA廃棄物処分場の概念を検討し、今回建設・操業許可を取得した地表設置型の概念を開発した。本処分場概念では、①モジュール下部に点検通路を設置して目視検査を可能とする、②処分場全体を自然公園とするために自然と人工物との調和を図った施設デザインを採用する、③処分場全体を展望できるコミュニケーションセンターを建設し、住民への情報提供や観光事業へ活用するなどの工夫や配慮がなされている。

 

〈参考〉放射性廃棄物処分場プロジェクトが生み出す文化的価値

ベルギーのデッセル自治体に建設されるカテゴリーA放射性廃棄物処分場の周辺エリアは、森林遊歩道やサイクリングロードを備えた総合自然公園として整備する計画である。既に2022年には「タブロー」(テーブルを意味するエスペラント語)と呼ばれる情報・コミュニケーションセンターがオープンしており、パートナーシップの運営グループSTORAの活動拠点として、さらには近隣住民も利用可能な劇場ホールや会議室を備えた多目的施設としての活用が始まっている。ONDRAF/NIRASは、放射性廃棄物の貯蔵状況、廃棄物を閉じ込めるモノリス(廃棄体)の製造工程、それを処分場内のモジュールに定置して処分するまでの一連の工程を見学できる巡回コースを設ける計画である。

コンクリート製モジュールを地表(または浅い地中)に設置して廃棄体を収容し、覆土する浅地中処分概念は国内外で多くの実績があり、フランスのオーブ短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場や日本原燃(株)の低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)でも採用されているピット処分と同様である。ベルギーやフランスではコンクリートピットを地表に設置しており、覆土後には丘状の跡地となる。

放射性廃棄物の処分場という産業施設は、廃棄物を長期にわたって安全に管理することを第一目的として設計されるが、その上で綿密にデザインすることによって、立地コミュニティに機能的・文化的な付加価値を生み出す可能性があることが国際的にも注目されている4 。「隠すのではなく、見せる」ことによって安心感をもたらすとともに、放射性廃棄物が発生した理由から処分されるまでの物語が人々の記憶に残り、具体的な「感謝」の姿につながるという期待がある。

ベルギーで処分場の実現見通しが検討された2004年時点では、デッセル自治体のパートナーシップは、処分場跡地を約300年後まで利用できず、地元に何らの価値をもたらさないと考えていた。しかし、ONDRAF/NIRASはパートナーシップとの共働を通じて、情報・コミュニケーションセンターだけでなく、処分場の外観デザインに美しさや魅力を加味することで、地元が期待する社会的・経済的・文化的な価値の創出に成功している。こうした文化的な価値の見方は国によって異なり、万能な解決策は存在しないものの、多くの国で放射性廃棄物管理計画における地元との関係構築における国際的な共通課題の一つと認識されている。

 

【出典】


  1. ベルギーでは2023年5月現在、2か所に7基の原子力発電所があり、5基が運転中である。 []
  2. モノリスの大きさは縦横が約2m、高さは収納物の違いにより1.35mもしくは1.62m、壁の厚さは0.12mである。 []
  3. ONDRAF/NIRASとサイト選定に向けて協働するために設立されたパートナーシップには、デッセル自治体のSTOLAのほか、モル自治体との協議グループ(MONA)、フルール自治体と及びファルシネ自治体が参画したパートナーシップ(PaLoFF)がある。 []
  4. 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)では、放射性廃棄物管理施設の地元社会の便益に関する知見の共有に取り組んでおり、それらの活動成果の一つとして報告書「放射性廃棄物管理施設とその地域コミュニティ間での永続的関係の構築~デザインとプロセスを通じた価値の付加(2015年版)」が取りまとめられている。 []

ベルギーの連邦政府は、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物を自国内で地層処分するとの方針を決定し、これらの放射性廃棄物の安全かつ責任のある長期管理を行っていくための正式な国家政策の確立に向けて法整備を行った。2022年12月2日に発効した新たな王令に基づいて、ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)1 は、地層処分の実施に向けて、これまで未確定だった処分場の概念や母岩の種類、サイト選定方法、実施スケジュールなどの国家政策について、段階的に決定していくための可逆性のある意思決定プロセスを検討し、提案する役割を担うことになる。

ベルギーの原子力発電所

図:ベルギーの原子力発電所の位置

ベルギーでは2022年11月末現在、電力会社であるエレクトラベル社(親会社はフランスのEngie社)が所有する2カ所の原子力発電所で合計6基の原子炉が運転中である2 。これらの原子力発電所から発生する使用済燃料を含め、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物について、ONDRAF/NIRASは2020年4月に、国家政策として地層処分の方針を規定する王令案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を取りまとめていた。今回の王令制定の必要性について連邦政府は、①欧州連合(EU)で2011年に採択された「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令」 を国内法制化するEU加盟国としての義務に対応すること、②放射性廃棄物管理の世代間及び世代内の公平に関する義務を果たすこと、③最終的な財務責任者として連邦政府が負担しなければならない可能性のある原子力債務の発生を回避することが可能となると説明している。

■高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の国家政策の正式な確立に必要となる事項

連邦政府は、今回制定された「高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する国家政策の最初の部分を制定し、この国家政策の他の部分を段階的に制定するプロセスを規定する王令」の条文において、国家政策は段階的に確立されるものであり、少なくとも以下の4つの事項によって構成されると規定している。

  • 国家政策の段階的な確立及び運営維持に関する意思決定プロセス
  • あらゆるステークホルダーとの協議を経て決定される、可逆性、回収可能性及びモニタリングの期間に関する取り決め
  • 高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理方法の選定
  • 処分が実施されるサイトの選定

高レベル及び長寿命の放射性廃棄物に関する正式な国家政策は、今後ONDRAF/NIRASが提案する意思決定プロセスの実施を通じて確立されていくため、それまでの間は、予備的な長期管理方法の概念を「ベルギー国内での1カ所以上のサイトでの地層処分」とする旨を王令で規定した。意思決定プロセスに関して、ONDRAF/NIRASは以下の事項を考慮に入れる必要がある。

  • 放射性廃棄物管理の様々な側面とその相互依存性、すなわち安全、核セキュリティ、環境保護の側面だけはでなく、科学、技術、財政、社会、規制の側面も考慮すること
  • 意思決定の準備が、特に審議プロセスや専門家及び市民からなる代表パネルを通じて、参加型で、公正かつ透明な方法で行われ、各段階において、国、地域及び地方レベル、また、適切な場合には国際レベルにおいて、市民社会を含む全ての関係者に情報が与えられ、情報に基づいた関与の機会が与えられること
  • 地層処分技術の開発に必要となる社会基盤、及び地層処分施設と同施設が立地する地域社会との調和が長期間にわたって可能であるようにすること
  • 国家政策を監視する際のあり方が含まれるようにすること

ONDRAF/NIRASは、2022年11月24日付けのプレスリリースにおいて、今回の王令制定はONDRAF/NIRASが公共的使命を果たしていくための第一歩であり、地層処分の実施を伴う意思決定プロセスの優先順位を明確にしていくとともに、可逆性の枠組みの元で、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していくために、広範な社会的議論が2023年に行われることを表明している。

【出典】

 

【2023年4月25日追記】

ベルギーで高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する公衆の意見収集と議論を目的とした対話活動『放射性廃棄物の未来に関する対話』(Dialogue sur l’avenir des déchets radioactifs)が2023年4月19日から開始された。対話活動の運営は、ベルギーの公益財団であるボードワン財団3 が担当しており、専用のウェブサイトが開設された。今後1年間を通じた対話活動において、自治体などの関連機関や組織、ステークホルダーを交えたワークショップを開催するほか、以下に示す3つの取り組みが行われる予定である。

  • 地域のグループ、組織や協会などを対象とした『グループディスカッション』
  • 16歳以上のすべての市民を対象とした『討論会』
    参加者は、複数回の議論を経て、提言を含めた報告書を作成する。募集人数は32名であり、幅広い意見が得られるように参加者が選定される。関係者や本テーマに積極的に取り組んでいる者は除外される。
  • 16~18歳の学生を対象とした『出張授業』

ベルギーでは、2022年10月22日付けの王令により、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の地層処分方針が法制化されたが、処分場サイトの選定方法や意思決定プロセスを含む正式な国家政策は今後、段階的に確立していくことになっている。ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していく広範な社会的議論の場として、今回の対話活動の企画・運営をボードワン財団に依頼していた。対話活動には、ONDRAF/NIRASは専門家として参加する。

規制機関である連邦原子力管理庁(FANC)は、公衆の意見が国家政策に反映される機会となるとして今回の対話活動に賛同するとともに、自らの権限と役割に関する情報を広く提供していく意向を表明している。

【出典】


  1. ONDRAF/NIRASは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。 []
  2. ベルギーでは7基の原子炉が導入されたが、2003年に脱原子力法が制定し、2025年までに原子力発電から撤退する方針であった。しかし、ベルギーの総発電電力量の半分を賄う原子力発電に代わるエネルギーを見いだせなかったことから、7基のうち5基の原子炉の延長が決定している。なお、2022年9月に1基閉鎖しており、2023年中にもう1基が閉鎖予定である。 []
  3. ボードワン財団は、ボードワン国王治世25周年を記念して1972年に設立された多元的な公益財団である。様々な社会問題に対する人々の意識を高め、前向きな変化をもたらすことを目的として、中立かつ、透明性及び客観性のある対話の場を企画・運営している。なお、ボードワン財団は2009年と2010年に、高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する討論会を実施した実績がある。 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は2020年4月15日に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する方針を示した国家計画案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を公表し、2020年6月13日までの予定で公衆からの意見聴取を開始した。

ONDRAF/NIRASとは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。今回公表された国家計画案及びSEAレポートは、2006年2月13日付けの法律に基づいて作成されたものであり、作成された国家計画案とSEAレポートは、公衆からの意見聴取後に最終化して連邦政府に提出する予定である。なお、ベルギーでは、ONDRAF/NIRASが2011年9月に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方針に関する国家計画とSEAレポートを連邦政府に提出し、国内の粘土層での地層処分を推奨するとの見解を示していたが、現在に至るまで国としての方針は決定していない状況であった。

今回公表された地層処分に関するSEAレポートにおいて、ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する理由を以下のように説明している。

  • 地層処分に代わる合理的な管理方法はない。
    安全確保や環境保護の観点から、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物を、最大で100万年程度の期間、人間や環境から隔離する必要がある。こうした廃棄物を地下深くに処分できるという国際的な合意がある。地層処分の方針を決めた各国においても、長期貯蔵を含む代替案を検討した上で、地層処分以外の方法は拒否されている。連邦原子力管理庁(FANC)も長期貯蔵を安全な管理方法として認めていない。
  • 国家計画の策定は、EU指令(2011年7月12日付け)において定められたベルギーの義務であり、これ以上先送りすべきではない。
    国家計画によって長期管理方法が決定されなければ、地層処分の実施やそのための研究が進捗しない。また、現在は一時的に使用済燃料が貯蔵1 されている原子力発電所等の立地地域の住民は、貯蔵期間が見通せないままとなる。
  • 国家計画を決定しないことで、環境へのマイナス影響が発生しうる。
    現行の一時的な貯蔵施設は、耐用期間を迎えた時点で別の施設にリプレースする必要がある。リプレースにはコストがかかるだけでなく、放射性廃棄物の移動が必要となるために、管理すべき廃棄物の量が増大する可能性がある。
  • 国家計画の決定を先送りしても、将来的により適切な国家計画を決定することはできない。
    高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法の政策決定に必要な知見は、ベルギーや世界中で蓄積されている。長寿命核種の分離・変換技術は、これらの放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の量を低減する可能性はあるものの、産業レベルでの適用は困難である。

今回公表された国家計画案では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の国家計画の決定・実施プロセスとして、以下のような流れを規定している。

  • 長期管理方法の決定
  • 決定された長期管理方法を実施していくための意思決定プロセス、主要なマイルストーン、意思決定に関わる関係者の役割と責任の割当て
  • 決定された長期管理方法を実施する1カ所あるいは複数のサイトの決定

ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分が決定されれば、全ての関係者と協議するとともに、公衆との対話も行っていく考えを明らかにしている。

 

【出典】


  1. ベルギーでは、商用原子力発電所等から発生した使用済燃料は、再処理またはONDRAF/NIRASによる最終処分が実施されるまで、廃棄物発生責任者である事業者が安全に貯蔵する方針である。ただし、ベルギー政府は1998年に締結済みの再処理契約をキャンセルし、新たな再処理契約を結ばないことを決定している。 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2019年4月5日に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の設置に関する環境影響評価(EIA)報告書案について、公開協議を開始したことを公表した。ONDRAF/NIRASは、ベルギー北部のデッセル自治体に浅地中処分場を建設する予定であり、EIA報告書案の環境に関する分野について、下記の3点についてコメントを求めている。なお、公開協議は、2019年5月3日まで実施される予定である。

  • 地域レベルでの環境条件や問題点、懸念
  • 計画されている処分場の建設・操業に関する懸念
  • 想定される代替オプション、影響の緩和策等

今後、ONDRAF/NIRASは、寄せられた意見等を踏まえてEIA報告書を最終化して環境許可申請書を取りまとめ、デッセル自治体を管轄するフランダース地域政府に提出することとなっている。フランダース地域政府は、EIA報告書の内容を審査し、環境許可発給の是非を判断することになっている。なお、審査段階においても、公衆の意見聴取が実施される予定である。

デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ

図 デッセル自治体に建設予定の浅地中処分場の概観イメージ(EIA報告書案より引用)

ベルギーでは2006年6月に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することが決定され、2013年1月には、ONDRAF/NIRASが浅地中処分場の建設許可申請書を連邦原子力管理庁(FANC)に提出していた。ONDRAF/NIRASは2019年2月に、浅地中処分場の安全報告書の改訂版をFANCに再提出しており、安全審査が進められている。今回の浅地中処分場の設置に関するEIA報告書は、安全報告書とともに、許認可取得に向けて必要となる提出書類の一つである1 。なお、FANCとフランダース地域政府は、それぞれの審査を円滑に進めるため、協定を結んでいる。

 

【出典】

 


  1. ベルギーの浅地中処分施設の許認可プロセスは、「電離放射線の危険に対する公衆、職業人、環境の防護に関する一般規則を定める2001年7月20日の王令」(GRR-2001)に基づくものである。また、環境影響評価に関しては、欧州指令1985/337/EEG及びユーラトム条約第37条の適用に関する欧州委員会の勧告2010/635/Euratomに基づき作成する必要がある。 []

ベルギーの原子力安全の規制行政機関である連邦原子力管理庁(FANC)は、2015年11月9日に、放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)と協議し、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の建設許可に係る新たなスケジュールを公表した。

ベルギーでは、2006年6月に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することを決定しており、2013年1月には、ONDRAF/NIRASが浅地中処分場の建設許可申請を提出していた。連邦原子力管理庁(FANC)は、浅地中処分場の建設許可申請の審査において、補足が必要な点についての質問を提示しており、ONDRAF/NIRASは申請書類を補完するため、質問に対する回答を準備している。このような状況のもと、今回、ONDRAF/NIRASとFANCは、申請書類を効率的に最終版とするため、建設許可において重要なマイルストーンとなる科学審議会(CS)1 の見解を得る2 までのスケジュールを以下のように設定した。

スケジュール

  • 2016年第3四半期まで: FANCの質問に対する回答及び新たな評価結果等の追加情報をONDRAF/NIRASが提出
  • 2017年第1四半期まで:建設許可申請とともに提出する安全報告書の改訂
  • 2017年第2四半期半ばまで:FANCが科学審議会(CS)に提出する評価報告書を作成
  • 2017年6月:科学審議会(CS)が見解を提示

【出典】

 

【2017年6月15日追記】

デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ(STORA)は2017年6月13日に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の建設許可までの手続を半年程度遅らせるとするスケジュールを公表した。STORAは、処分の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)とパートナーシップを構築して、本計画に参加・関与している。

ONDRAF/NIRASは2013年1月に、浅地中処分場の建設許可申請を連邦原子力管理庁(FANC)に提出しており、現在、FANCが審査を行っている。FANCは2015年11月に、審査結果について取りまとめた報告書を2017年第2四半期半ばまでに科学審議会(CS)に提出し、2017年6月には科学審議会(CS)の見解を得るとしていた。

今回公表されたSTORAの情報では、以下のようなスケジュールが示されている。

  • 2017年夏頃まで:建設許可申請に関して、FANCが提示した約300件の質問に対して、ONDRAF/NIRASが回答を提出
  • 2018年初め:科学審議会(CS)が見解を提示
  • 2018年:科学審議会(CS)の見解が肯定的であった場合、処分場周辺5km圏内の自治体に対する意見募集を実施
  • 2019年:科学審議会(CS)が自治体の見解も踏まえて提示する最終見解が肯定的であった場合、王令による建設許可が発給され、建設開始
  • 2022年:処分場への廃棄物の定置開始

 

【出典】

 

【2017年12月19日追記】

デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ(STORA)は2017年12月14日に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場の建設許可手続きの進捗状況を公表した。STORAは、処分の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)とパートナーシップを構築して、本計画に参加・関与している。

ONDRAF/NIRASは2013年1月に、アントワープ州デッセル自治体に立地する浅地中処分場の建設許可申請を連邦原子力管理庁(FANC)に提出しており、現在、FANCが審査を行っている。審査で行われた質疑応答の結果として、ONDRAF/NIRASは、浅地中処分場について、以下のような改善を図るとしている。

  • プルトニウムのような長寿命放射性核種の含有量制限を強化する
  • 外部から浸入した水が廃棄体付近に滞留しないように処分場設計を変更する
  • 処分場の下部に放射性核種の吸着層を追加する

今後ONDRAF/NIRASは、建設許可申請に係る安全報告書を改訂し、FANCに再提出する予定である。今回公表されたSTORAの情報では、以下のようなスケジュールで、浅地中処分場の操業までの手続きを進めるとしている。

  • 2018年:処分場周辺5km圏内及びアントワープ州の自治体に対する意見募集を実施
  • 2019年:王令による建設許可の発給
  • 2022年末:処分場への短寿命の低・中レベル放射性廃棄物の定置開始

【出典】

 

【2019年2月6日追記】

ベルギーの放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は2019年2月5日に、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場建設の許認可手続きにおいて、連邦原子力管理庁(FANC)に対し、安全報告書の改訂版を提出したことを公表した。

ONDRAF/NIRASは2013年1月に、浅地中処分場の建設許可申請をFANCに提出したが、FANCは安全報告書の内容に関して約300件の補足情報等を要求していた。ONDRAF/NIRASは、2017年末に、FANCに対して最後の補足情報を提出した後、安全報告書の改訂作業を行い、今回、FANCに安全報告書を再提出したものである。

FANCは、改訂された安全報告書の内容を審査し、その結果を取りまとめた審査報告書を科学審議会(CS)に提出し、科学審議会の見解を得る予定である。今後、ONDRAF/NIRASは、以下のような流れで許認可手続きを進める予定としている。

  • FANCからの諮問に対し、科学審議会が肯定的な見解を示した場合、FANCが処分場周辺自治体や欧州委員会(EC)に対する意見募集を行い、取りまとめ
  • 処分場周辺自治体等から提出された意見を踏まえ、再度、科学審議会は見解案と許認可条件案を提示
  • ONDRAF/NIRASは、科学審議会の見解案と許認可条件案について、30日以内に意見を示し、その後、科学審議会が最終的な見解を決定
  • 2020年半ばに、ONDRAF/NIRASが王令による建設許認可を取得
  • 2024年に、ONDRAF/NIRASが処分場への放射性廃棄物の定置を開始

 

【出典】


  1. FANC内部に設置されている諮問組織 []
  2. 「電離放射線に起因する危険からの公衆及び環境の防護、並びに連邦原子力管理庁(FANC)の設置に関する法律」において、放射性物質が存在する施設の建設操業に係る許可申請を審査する際、FANCは科学審議会(CS)の見解を得ることになっている。 []

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2013年1月31日付のプレスリリースにおいて、短寿命の低中レベル放射性廃棄物(カテゴリーAと呼称されている)の浅地中処分場に係る建設許可申請書を原子力安全の規制行政機関である連邦原子力管理庁(FANC)に提出したことを公表した。

ベルギーでは、短寿命の低中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することが2006年6月に決定され、ONDRAF/NIRAS、デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ(STORA)及びモル自治体のモル放射性廃棄物協議グループ(MONA)のパートナーシップの構築により、統合プロジェクトとして処分場建設に向けた準備が進められてきた。

ONDRAF/NIRASでは、建設許可申請に際して提出する安全報告書のドラフト版を2011年11月に取りまとめ、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)による国際ピアレビューを受けており、長期安全戦略と長期安全評価の信頼性及び頑健性が立証されたとの評価を得ていた

今回、ONDRAF/NIRASからFANCに提出された安全報告書の最終版は、以下のような構成となっている。
第1章:報告書の構成
第2章:安全戦略と安全性の概念
第3章:放射性廃棄物の統合管理システム
第4章:処分場サイトの特性
第5章:処分場のバリアの構成と機能
第6章:処分される放射性廃棄物の種類
第7章:処分パッケージの設計及び製作
第8章:処分場の建設
第9章:処分場の操業
第10章:処分場の閉鎖
第11章:閉鎖後の重要な措置
第12章:放射線防護
第13章:操業の安全性
第14章:長期的な安全性
第15章:放射性廃棄物の処分場への受入を判断する基準
第16章:処分場における検査とフォローアップ
第17章:処分場の技術仕様

FANCは、安全報告書に基づいて許可申請書を審査し、その後、デッセル、モル、ヘール、レティ、カステルレーの関係機関や一般住民を対象に、安全報告書に関する意見調査を実施する方針としている。また、この意見調査と並行して、欧州原子力共同体(EURATOM)も、処分場の設置による越境影響評価を行う予定としている。

処分場建設予定サイト (ONDRAF/NIRAS、安全報告書に関する一般公衆向け資料より引用)

処分場建設予定サイト
(ONDRAF/NIRAS、安全報告書に関する一般公衆向け資料より引用)

処分場の概念図 (ONDRAF/NIRASウェブサイトより引用)

処分場の概念図
(ONDRAF/NIRASウェブサイトより引用)

【出典】

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である、放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2012年9月17日付のプレスリリースにおいて、ONDRAF/NIRASが2011年11月に、デッセル自治体に建設予定1 の短寿命・低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分場建設の許可申請に向けたドラフト版の安全報告書について、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)による国際ピアレビュー結果を公表した。

ベルギーでは、浅地中処分場の建設許可申請に向けて、ONDRAF/NIRASがセーフティケース及びその主要部となる安全報告書の作成を進めており、2011年11月にドラフト版の安全報告書を取りまとめていた。今回の国際ピアレビューは、このドラフト版安全報告書を対象としてベルギー連邦政府の要請により実施されたものであり、チェコ、フランス、スペイン、スイス、英国から各1名の専門家、NEAから2名の専門家の計7名で構成された国際レビューチーム(IRT)がピアレビューを実施している。

ONDRAF/NIRASのプレスリリースによると、今回のピアレビュー結果では、ONDRAF/NIRASのドラフト版の安全報告書について、長期安全戦略と長期安全評価の信頼性及び頑健性が立証されたとしている。

また、OECD/NEAも2012年9月17日付けのプレスリリースにおいて、今回の国際ピアレビュー報告書を公表しており、今回のピアレビューの主要な結論を以下のように整理している。

  • 国際的な観点から判断して、ONDRAF/NIRASの長期安全戦略及び安全評価は、長期安全を支援するための能動的・受動的な要素を十分に有し、概ね、信頼性があり頑健なものである。この戦略は、深層防護、システム設計の最適化及び、受動的安全原則に基づいており、国際的なガイドライン、勧告及び最善の慣行に従っている。
  • 提案されている処分システムの設計は、長期安全戦略を考慮している。また、暫定的な放射性核種インベントリ及びデッセルの地質環境特性においても、適切な設計となっている。処分施設の処分概念及び設計は適切に記述されている。処分場の様々な構成要素の安全機能についても、長期的な安全評価が実施できるよう明確に示されている。ONDRAF/NIRASが実施した実証試験により、システム設計が改良され、様々なシステムの構成要素について、建設の実現可能性が確認された。
  • ONDRAF/NIRASが用いた長期安全評価のための反復アプローチは、国際的な慣行に従っており、合理的なものである。いくつかの解析結果は、レビューの終盤になって初めて提示されたため、安全評価結果の包括的な解釈はこのレビューでは行われていない。現在の安全評価の分析によると、ONDRAF/NIRASが処分システムの設計、廃棄物や環境を考慮に入れた非常に多くのシナリオや評価ケースを検討したことがわかっている。シナリオ設定は原則として、適切である。最終報告書において、改善のための勧告を示している。
  • コンクリートや他の人工バリアに関するONDRAF/NIRASの科学的知見や技術的基礎は、最先端のものであり、適切に記述され、用いられている。技術的な制限についても特定されており、現行及び将来の研究開発プログラムにおいて評価される。

今回のOECD/NEAによる国際ピアレビュー報告書の取りまとめを受けて、ONDRAF/NIRASは、国際レビューチームが指摘した勧告を検討し、浅地中処分場の建設許可申請に必要な安全報告書などの最終化を進めていくとしている。

また、ベルギーにおける放射性廃棄物管理に関する規制行政機関である連邦原子力管理庁(FANC)は、2012年9月19日に、自身のウェブサイトにおいて、OECD/NEAによるピアレビュー報告書内容を確認したことを明らかにした。また、FANCは、現行法令に基づきONDRAF/NIRASが提出する処分場の建設・操業許可申請を独立した立場で審査するとしている。

 

【出典】


  1. ベルギーでは、2006年6月に短寿命・低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分場をデッセル自治体に設置することが決まっており、2008年4月からデッセル自治体において、地質調査を実施していた。 []

ベルギーの放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、9月23日付のプレスリリースにおいて、「高レベル放射性廃棄物及び長寿命・低中レベル放射性廃棄物の長期管理に関する国家廃棄物計画」(以下「国家廃棄物計画」という)及び関連文書を同日開催の理事会において承認し、連邦政府に提出したことを明らかにした。

ベルギーでは高レベル放射性廃棄物及び長寿命・低中レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針は定まっていない。ONDRAF/NIRASが作成した国家廃棄物計画は、連邦政府がそれらの廃棄物の長期管理に関する方針を決定する上での判断材料となる。この国家廃棄物計画においてONDRAF/NIRASは、国内の粘土層での地層処分を推奨するとの見解を示している。

プレスリリースによれば、ONDRAF/NIRASは、国家廃棄物計画の検討作業を2009年春から開始した。地層処分及び長期中間貯蔵を含む複数オプションについて、国内外の研究成果を踏まえて比較評価を行い、その結果を戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」)としてとりまとめるとともに、2010年6月に国家廃棄物計画案を公表。その後、戦略的環境アセス法(2006年に国内法制化)1 に基づき、9月までの3ヶ月間にわたり、市民へのコンサルテーションを実施した。市民から得られた意見等を考慮して国家廃棄物計画を最終化したとしている。

今後、連邦政府は、高レベル放射性廃棄物及び長寿命・低中レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針の決定に向けて検討を行う。連邦政府の決定がなされることによって、ONDRAF/NIRASが作成した国家廃棄物計画が効力を持つことになる。

ONDRAF/NIRASは、連邦政府の決定がなされた後から、処分地層や立地候補地域の選定、社会との協議プロセス・体制の確立、1つあるいは複数のサイトの選定、立地地域の関与、許認可手続き等からなる一連のプロセスを開始したい考えである。ただし、ONDRAF/NIRASは、このような放射性廃棄物管理政策を段階的に進めるための法的枠組みを新たに整備する必要性を指摘している。

【出典】


  1. 「計画及びプログラムの環境評価並びに公衆参加に関する2006年2月13日の法律」をさす。環境に影響を与える計画及びプログラムの環境評価に関するEUの戦略的環境アセスメント(SEA:Strategic Environmental Assessment)指令2001/42/ECを受けて、2006年にベルギーの国内法として制定された。同法では、計画及びプログラムの策定に際して、想定される複数のオプションについて技術面・経済面・環境面・倫理面から比較評価を行い、公衆参加のプロセスを経てオプション選定を行うことが規定されている。 []

ベルギーのモル自治体のモル放射性廃棄物協議グループ(MONA)は、2008年4月4日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が、2008年の春から夏にかけて、デッセル自治体における短寿命・低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分場の建設に向けた準備として、地質調査を実施することを公表した。調査は処分場予定地の周辺の広範囲の領域を対象としており、デッセル及びその周辺自治体で実施される。なお、ベルギーでは、短寿命・低中レベル放射性廃棄物の処分場をデッセル自治体に設置することが2006年6月に決定されており、ONDRAF/NIRAS、STORA(デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ)及びMONAが統合プロジェクトを共同で推進することで2007年11月に合意している

プレスリリースによれば、今回の調査は、処分場建設に伴う地下環境への影響評価を行う上で必要となる、地質の構造、地下水流の動き、及び処分場施設の荷重に対する地耐力といった地盤の特性を明らかにすることを目的としている。

プレスリリースによると、今回の調査ではボーリング孔の掘削及び物理探査が実施される。ボーリング調査においては、10~200mの深さの35本のボーリング孔が掘削され、数年間にわたり地下水の計測やサンプルの採取が行われる。また、物理探査では150カ所で最大30mの深さを対象にして検層が行われるとしている。

【出典】

  • モル放射性廃棄物協議グループ(MONA)、2008年4月4日付のプレスリリース
    http://www.monavzw.be/nieuwsdetail/506/default.aspx?_vs=0_N&id=23

【2008年4月23日追記】

2008年4月11日付のSTORA(デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ)のプレスリリースでは、放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)によるボーリング孔掘削などの調査が、4月11日の週に開始されたとしている。

【追記部出典】

  • STORA(デッセル自治体の放射性廃棄物調査・協議グループ)、2008年4月11日付のプレスリリース
    http://www.stora.org/webpage.asp?WebpageId=13

ベルギーの放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2007年11月9日付けのプレスリリースにおいて、ONDRAF/NIRAS、デッセル自治体のパートナーシップである放射性廃棄物調査・協議グループ (STORA)、並びにモル自治体のパートナーシップであるモル放射性廃棄物協議グループ(MONA)が、短寿命・低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分に関する統合プロジェクトを共同で推進していく意思表明書に署名したことを公表した。ベルギーでは2006年6月に浅地中処分場をアントワープ州デッセル自治体内に設置することが閣議決定されたが、政府はデッセルでの統合プロジェクトにモル自治体及びMONAが参加可能であるべきとの考えを示していた

同プレスリリースによると、今回署名された意思表明書は、統合プロジェクトの事前計画段階におけるONDRAF/NIRAS、STORA、MONA、関係自治体間での協力・協議の諸原則を確認するものとされている。今後の協力は以下の2つのレベルにおいて具体的に進められるとされている。

  • 行政レベル:ONDRAF-STORA-MONA合同ステアリンググループを介しての統合意思決定とプロジェクト運営を行う。デッセル自治体とモル自治体の首長が諮問機関的役割を担う。
  • 実務レベル:STORA及びMONAのワーキンググループを介して予備折衝、フォローアップ、研究調査、活動を行う。

また、統合プロジェクトのスケジュールについて、同プレスリリースでは以下のように示されている。

  • 2007~2008年:プロジェクトのコスト積算と資金調達方法を含む統合プロジェクトの細目の検討・提出
  • 2007~2011年:処分場の設計
  • 2012~2016年:処分場の建設
  • 2016年~   :処分場の操業

同プレスリリースによると、統合プロジェクトの実現を図るためのチームがデッセルに設置された。同チームにはONDRAF/NIRAS、地元企業の代表、設計事務所の専門家も参加している。また、統合プロジェクトは相互に関連する以下についてのサブプロジェクトにより構成されるとしている。

  • コミュニケーションセンター
  • 資金確保
  • 地域振興基金
  • 空間利用の可能性
  • 処分場概念(安全性、許認可、モニタリング、緊急時計画を含む)
  • 原子力に関する知識及び雇用の維持
  • 参加の維持

【出典】

  • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)、2007年11月9日付けプレスリリースhttp://www.niras.be/francais/PDF/20071109_CP_CatA-intentieverklaring.pdf
  • 放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)、2007年11月9日付けプレス資料http://www.niras.be/francais/PDF/20071109_DosPres_CatA-Intentieverklaring.pdf
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