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《ベルギー》放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が高レベル放射性廃棄物及び長寿命低・中レベル放射性廃棄物の長期管理方針に関する国家計画案への意見聴取を開始

ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は2020年4月15日に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する方針を示した国家計画案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を公表し、2020年6月13日までの予定で公衆からの意見聴取を開始した。

ONDRAF/NIRASとは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。今回公表された国家計画案及びSEAレポートは、2006年2月13日付けの法律に基づいて作成されたものであり、作成された国家計画案とSEAレポートは、公衆からの意見聴取後に最終化して連邦政府に提出する予定である。なお、ベルギーでは、ONDRAF/NIRASが2011年9月に、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方針に関する国家計画とSEAレポートを連邦政府に提出し、国内の粘土層での地層処分を推奨するとの見解を示していたが、現在に至るまで国としての方針は決定していない状況であった。

今回公表された地層処分に関するSEAレポートにおいて、ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分を採用する理由を以下のように説明している。

  • 地層処分に代わる合理的な管理方法はない。
    安全確保や環境保護の観点から、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物を、最大で100万年程度の期間、人間や環境から隔離する必要がある。こうした廃棄物を地下深くに処分できるという国際的な合意がある。地層処分の方針を決めた各国においても、長期貯蔵を含む代替案を検討した上で、地層処分以外の方法は拒否されている。連邦原子力管理庁(FANC)も長期貯蔵を安全な管理方法として認めていない。
  • 国家計画の策定は、EU指令(2011年7月12日付け)において定められたベルギーの義務であり、これ以上先送りすべきではない。
    国家計画によって長期管理方法が決定されなければ、地層処分の実施やそのための研究が進捗しない。また、現在は一時的に使用済燃料が貯蔵1 されている原子力発電所等の立地地域の住民は、貯蔵期間が見通せないままとなる。
  • 国家計画を決定しないことで、環境へのマイナス影響が発生しうる。
    現行の一時的な貯蔵施設は、耐用期間を迎えた時点で別の施設にリプレースする必要がある。リプレースにはコストがかかるだけでなく、放射性廃棄物の移動が必要となるために、管理すべき廃棄物の量が増大する可能性がある。
  • 国家計画の決定を先送りしても、将来的により適切な国家計画を決定することはできない。
    高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法の政策決定に必要な知見は、ベルギーや世界中で蓄積されている。長寿命核種の分離・変換技術は、これらの放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の量を低減する可能性はあるものの、産業レベルでの適用は困難である。

今回公表された国家計画案では、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の国家計画の決定・実施プロセスとして、以下のような流れを規定している。

  • 長期管理方法の決定
  • 決定された長期管理方法を実施していくための意思決定プロセス、主要なマイルストーン、意思決定に関わる関係者の役割と責任の割当て
  • 決定された長期管理方法を実施する1カ所あるいは複数のサイトの決定

ONDRAF/NIRASは、高レベル放射性廃棄物及び長寿命の低中レベル放射性廃棄物の長期管理方法として地層処分が決定されれば、全ての関係者と協議するとともに、公衆との対話も行っていく考えを明らかにしている。

 

【出典】

  1. ベルギーでは、商用原子力発電所等から発生した使用済燃料は、再処理またはONDRAF/NIRASによる最終処分が実施されるまで、廃棄物発生責任者である事業者が安全に貯蔵する方針である。ただし、ベルギー政府は1998年に締結済みの再処理契約をキャンセルし、新たな再処理契約を結ばないことを決定している。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-17 )