ドイツの放射性廃棄物処分の実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は2020年3月27日、アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物回収計画を公表した。回収計画では、廃棄物の回収方法、新たに建設する中間貯蔵施設での貯蔵などを含む回収後の廃棄物の取り扱い、2033年に回収を開始するとしたスケジュールや費用見積りなどが示されている。BGEは今後、回収のための新たな施設建設に向けた土地取得を行うとともに、回収計画の詳細化などのために、規制機関や住民と対話を開始するとしている。
アッセⅡ研究鉱山では、放射性廃棄物処分に関する調査を目的として、1967年から1978年まで低中レベル放射性廃棄物が試験的に処分された。その後、地下水の流入などにより、岩塩から成る処分坑道の安定性が確保できなくなる可能性が示されたことから、2010年に処分された廃棄物を回収し、アッセⅡ研究鉱山を閉鎖することを決定していた 。
アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物の回収計画
アッセII研究鉱山では、深度511m、725m、750m付近に設けられている13の処分室に合計約4万7,000m3の放射性廃棄物が処分された(下図参照)。回収対象となる廃棄物量は、廃棄物周囲の汚染された岩塩屑などを含め最大約10万m3程度と見積られている。
BGEは、既存の鉱山の東側に、廃棄物の回収に用いる立坑(回収用立坑)を建設するとともに、地下に作業用の新たな坑道(回収用坑道)などを建設する計画である。
回収した廃棄物は地上に搬出して、新たに建設される廃棄物処理施設で特性評価した後、コンディショニングされる。その後、最終処分場が操業を開始するまで、廃棄物処理施設に併設される中間貯蔵施設で貯蔵される。この廃棄物処理施設及び中間貯蔵施設は、放射線防護の観点などから回収した廃棄物の移動距離を最小限にするため、アッセⅡ研究鉱山の地上施設の近辺に設置する計画である。
スケジュール及び費用
BGEは、2023年に回収用立坑等の建設を開始する予定である(下図参照)。また、廃棄物処理施設及び中間貯蔵施設については、詳細な設置場所を今後決定し、2033年までに操業可能とする計画である。さらに、これらの施設建設と並行して、制御不能な量の地下水流入などを想定した緊急時計画の策定も行われる。これらの廃棄物回収作業のための準備が整った後、2033年に回収を開始するとしている。なお、廃棄物回収作業の期間に関しては、具体的な終了時期は示されておらず、専門家の見積りとして数十年との期間が示されている。
また、BGEは、2019年以降、2033年に廃棄物回収が開始されるまでの準備期間中にかかる費用の総額を約33.5億ユーロ(不確実幅±30%、約4,020億円、1ユーロ=120円で換算)と見積っている。内訳は、既存坑道の保全費用が9億ユーロ(約1,000億円)、回収用立坑の建設に2億ユーロ(約240億円)、その他地下施設の建設に5億ユーロ(約600億円)、地上の廃棄物処理施設の建設に4.5億ユーロ(約540億円)などとされている。
なお、アッセII研究鉱山から回収された放射性廃棄物の処分先に関しては、現在サイト選定法に基づく選定プロセスが進められている高レベル放射性廃棄物処分場とすることが検討されている 。
【出典】
- 連邦廃棄物管理機関(BGE)ウェブサイト、2020年3月27日、
https://www.bge.de/de/aktuelles/meldungen-und-pressemitteilungen/meldung/news/2020/3/440-asse/ - 連邦廃棄物管理機関(BGE)ウェブサイト、2020年3月29日、
https://www.bge.de/de/aktuelles/meldungen-und-pressemitteilungen/meldung/news/2020/3/441-asse/ - BGE、「アッセⅡ研究鉱山からの放射性廃棄物回収計画」、2020年2月19日、
https://www.bge.de/fileadmin/user_upload/Asse/Wesentliche_Unterlagen/Rueckholungsplanung/Der_Rueckholplan/2020-02-19_Rueckholplan_Rev00.pdf
(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-17 )