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《ドイツ》連邦政府が国家放射性廃棄物管理計画を承認

ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)は、2015年8月12日付けプレスリリースにおいて、BMUBが策定した「使用済燃料及び放射性廃棄物の責任ある安全な管理のための計画」(以下「国家放射性廃棄物管理計画」という)について、連邦政府が承認したことを公表した。今回、連邦政府が承認した国家放射性廃棄物管理計画は、欧州連合(EU)理事会が2011年7月に採択した「使用済燃料及び放射性廃棄物の責任ある安全な管理に関する、共同体(EURATOM)の枠組みを構築する理事会指令」(2011/70/Euratom)(以下「EU指令」という)に基づき、ドイツを含むEU加盟国が2015年8月23日までに欧州委員会(EC)に提出することが義務付けられている「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」に相当するものである 。連邦政府は、今回承認した国家放射性廃棄物管理計画を欧州委員会に提出する予定である。

EU指令に基づいて、EU加盟国は、「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」において、使用済燃料及び放射性廃棄物管理に関する全体的な目標、スケジュール、インベントリ及び将来の発生量、関連研究、放射性廃棄物管理費用の見積り、資金確保の枠組み等を示すことになっている。また、EU加盟国は、国家計画を定期的に改訂することも義務付けられている。

国家放射性廃棄物管理計画によれば、ドイツ国内で2080年までに発生が見込まれる放射性廃棄物量は、既発生分を含めて以下の通りである。

○発熱性放射性廃棄物1

  • 原子力発電所の運転に伴い発生する使用済燃料:キャスク約1,100体分(約1万500トン)
  • 使用済燃料の海外再処理に伴う返還廃棄物(ガラス固化体やハル・エンドピースの圧縮体など):キャスク約300体分
  • 研究炉、実証炉等の運転に伴う使用済燃料:キャスク約300体分

○非発熱性放射性廃棄物

  • 原子力施設の運転・解体に伴い発生する放射性廃棄物、医療・産業等における放射線利用に伴い発生する放射性廃棄物等:約60万m3(アッセⅡ研究鉱山から回収される放射性廃棄物約20万m3、及びウラン濃縮施設で発生する放射性廃棄物約10万m3を含む)

■放射性廃棄物の管理計画

ドイツでの放射性廃棄物の処分方針として、非発熱性放射性廃棄物と発熱性放射性廃棄物のために1カ所ずつ、合計2カ所の処分場を設置するとしている。このうち1カ所は、非発熱性放射性廃棄物の処分を行うコンラッド処分場であり、すでにサイトが確定し、建設・操業等の許認可も発給されており、現在は操業に向けた準備が進められている。国家放射性廃棄物管理計画によれば、コンラッド処分場は2022年の操業開始が見込まれている。

発熱性放射性廃棄物処分場については、現在、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の処分場サイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づいて、サイト選定に向けた取り組みが行われており 、2031年までに処分場サイトを確定し、2050年までに操業を開始する計画が示されている。

なお、アッセⅡ研究鉱山は、閉鎖のためにすでに処分された放射性廃棄物を回収する方針が決定している。国家放射性廃棄物管理計画では、回収される廃棄物量を約20万m3と見込んでいる。このアッセⅡ研究鉱山から回収される放射性廃棄物及びウラン濃縮施設から発生する放射性廃棄物については、非発熱性放射性廃棄物の処分場であるコンラッド処分場を拡張2 して処分するオプションも完全には排除していないが、基本的には発熱性放射性廃棄物処分場に処分することを想定していることが示されている。

■放射性廃棄物管理費用

放射性廃棄物の管理費用の見積りについては、国家放射性廃棄物管理計画の添付文書として欧州委員会に提出される「使用済燃料及び放射性廃棄物管理に係る費用及び資金確保に関する報告書」に示されている。放射性廃棄物管理費用のうち、非発熱性放射性廃棄物及び発熱性放射性廃棄物の処分場の建設・操業・閉鎖に係る費用は、以下のように見積られている。

  • 非発熱性放射性廃棄物処分場(コンラッド処分場):約75億ユーロ(約1兆200億円。2007年までに支出した計画や探査作業等の費用約9.3億ユーロ(約1,260億円)を含む)
  • 発熱性放射性廃棄物処分場(サイト未定):約77億ユーロ(約1兆500億円)

【出典】

  1. ドイツでは発熱による処分空洞壁面の温度上昇が3℃以下である放射性廃棄物を「非発熱性放射性廃棄物」と定義している。それ以外が「発熱性放射性廃棄物」に分類され、使用済燃料や海外再処理に伴い返還されるガラス固化体やハル・エンドピースの圧縮体などがこれに該当する。 []
  2. 現在計画されているコンラッド処分場の処分容量は約30万m3であり、国家放射性廃棄物計画で示されている非発熱性放射性廃棄物の発生量60万m3(2080年まで)より小さい。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-11 )