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《ベルギー》高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の地層処分方針を法制化

ベルギーの連邦政府は、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物を自国内で地層処分するとの方針を決定し、これらの放射性廃棄物の安全かつ責任のある長期管理を行っていくための正式な国家政策の確立に向けて法整備を行った。2022年12月2日に発効した新たな王令に基づいて、ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)1 は、地層処分の実施に向けて、これまで未確定だった処分場の概念や母岩の種類、サイト選定方法、実施スケジュールなどの国家政策について、段階的に決定していくための可逆性のある意思決定プロセスを検討し、提案する役割を担うことになる。

ベルギーの原子力発電所

図:ベルギーの原子力発電所の位置

ベルギーでは2022年11月末現在、電力会社であるエレクトラベル社(親会社はフランスのEngie社)が所有する2カ所の原子力発電所で合計6基の原子炉が運転中である2 。これらの原子力発電所から発生する使用済燃料を含め、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物について、ONDRAF/NIRASは2020年4月に、国家政策として地層処分の方針を規定する王令案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を取りまとめていた。今回の王令制定の必要性について連邦政府は、①欧州連合(EU)で2011年に採択された「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令」 を国内法制化するEU加盟国としての義務に対応すること、②放射性廃棄物管理の世代間及び世代内の公平に関する義務を果たすこと、③最終的な財務責任者として連邦政府が負担しなければならない可能性のある原子力債務の発生を回避することが可能となると説明している。

■高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の国家政策の正式な確立に必要となる事項

連邦政府は、今回制定された「高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する国家政策の最初の部分を制定し、この国家政策の他の部分を段階的に制定するプロセスを規定する王令」の条文において、国家政策は段階的に確立されるものであり、少なくとも以下の4つの事項によって構成されると規定している。

  • 国家政策の段階的な確立及び運営維持に関する意思決定プロセス
  • あらゆるステークホルダーとの協議を経て決定される、可逆性、回収可能性及びモニタリングの期間に関する取り決め
  • 高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理方法の選定
  • 処分が実施されるサイトの選定

高レベル及び長寿命の放射性廃棄物に関する正式な国家政策は、今後ONDRAF/NIRASが提案する意思決定プロセスの実施を通じて確立されていくため、それまでの間は、予備的な長期管理方法の概念を「ベルギー国内での1カ所以上のサイトでの地層処分」とする旨を王令で規定した。意思決定プロセスに関して、ONDRAF/NIRASは以下の事項を考慮に入れる必要がある。

  • 放射性廃棄物管理の様々な側面とその相互依存性、すなわち安全、核セキュリティ、環境保護の側面だけはでなく、科学、技術、財政、社会、規制の側面も考慮すること
  • 意思決定の準備が、特に審議プロセスや専門家及び市民からなる代表パネルを通じて、参加型で、公正かつ透明な方法で行われ、各段階において、国、地域及び地方レベル、また、適切な場合には国際レベルにおいて、市民社会を含む全ての関係者に情報が与えられ、情報に基づいた関与の機会が与えられること
  • 地層処分技術の開発に必要となる社会基盤、及び地層処分施設と同施設が立地する地域社会との調和が長期間にわたって可能であるようにすること
  • 国家政策を監視する際のあり方が含まれるようにすること

ONDRAF/NIRASは、2022年11月24日付けのプレスリリースにおいて、今回の王令制定はONDRAF/NIRASが公共的使命を果たしていくための第一歩であり、地層処分の実施を伴う意思決定プロセスの優先順位を明確にしていくとともに、可逆性の枠組みの元で、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していくために、広範な社会的議論が2023年に行われることを表明している。

【出典】

 

【2023年4月25日追記】

ベルギーで高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する公衆の意見収集と議論を目的とした対話活動『放射性廃棄物の未来に関する対話』(Dialogue sur l’avenir des déchets radioactifs)が2023年4月19日から開始された。対話活動の運営は、ベルギーの公益財団であるボードワン財団3 が担当しており、専用のウェブサイトが開設された。今後1年間を通じた対話活動において、自治体などの関連機関や組織、ステークホルダーを交えたワークショップを開催するほか、以下に示す3つの取り組みが行われる予定である。

  • 地域のグループ、組織や協会などを対象とした『グループディスカッション』
  • 16歳以上のすべての市民を対象とした『討論会』
    参加者は、複数回の議論を経て、提言を含めた報告書を作成する。募集人数は32名であり、幅広い意見が得られるように参加者が選定される。関係者や本テーマに積極的に取り組んでいる者は除外される。
  • 16~18歳の学生を対象とした『出張授業』

ベルギーでは、2022年10月22日付けの王令により、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の地層処分方針が法制化されたが、処分場サイトの選定方法や意思決定プロセスを含む正式な国家政策は今後、段階的に確立していくことになっている。ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していく広範な社会的議論の場として、今回の対話活動の企画・運営をボードワン財団に依頼していた。対話活動には、ONDRAF/NIRASは専門家として参加する。

規制機関である連邦原子力管理庁(FANC)は、公衆の意見が国家政策に反映される機会となるとして今回の対話活動に賛同するとともに、自らの権限と役割に関する情報を広く提供していく意向を表明している。

【出典】

  1. ONDRAF/NIRASは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。 []
  2. ベルギーでは7基の原子炉が導入されたが、2003年に脱原子力法が制定し、2025年までに原子力発電から撤退する方針であった。しかし、ベルギーの総発電電力量の半分を賄う原子力発電に代わるエネルギーを見いだせなかったことから、7基のうち5基の原子炉の延長が決定している。なお、2022年9月に1基閉鎖しており、2023年中にもう1基が閉鎖予定である。 []
  3. ボードワン財団は、ボードワン国王治世25周年を記念して1972年に設立された多元的な公益財団である。様々な社会問題に対する人々の意識を高め、前向きな変化をもたらすことを目的として、中立かつ、透明性及び客観性のある対話の場を企画・運営している。なお、ボードワン財団は2009年と2010年に、高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する討論会を実施した実績がある。 []

(post by f-yamada , last modified: 2024-07-24 )