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スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2023年4月3日付けのプレスリリースにおいて、短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張部分の建設に関して、原子力活動法に基づく申請書を放射線安全機関(SSM)に提出したことを公表した。SKB社が操業するSFRは、ストックホルムの北120kmのエストハンマル自治体フォルスマルクにあり、国内4カ所の原子力発電所から発生した運転廃棄物を1988年から受け入れ、処分している。スウェーデンでは、国内3カ所の原子力発電所で6基の原子炉の廃止措置が進められている。SKB社は、これらの廃止措置に伴う放射性廃棄物の受け入れに対応するために、既存部分との合計で約180,000m3の処分容量を確保する計画である。

短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張計画(SKB社提供)

短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張計画(SKB社提供)

SFRはバルト海の浅い海岸部(水深は約5m)の地下60~140mの岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図下側の白色部分)。当初、処分容量63,000m3の処分場として建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療・研究・産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。2021年末時点での処分量は約40,500m3である。

SFRの拡張部分(図左下の青色部分)は、既設部分よりやや深い地下120~150mの岩盤内に新たに6つの処分坑道を掘削することにより、117,000m3の処分容量を確保する。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される計画である。また、SFRの既存部分でも、廃止措置廃棄物の一部が処分されることとなっている。

■SFR拡張計画の経緯と今後の予定

SKB社は2014年12月にSFR拡張計画に関する申請を行っており、2021年12月にスウェーデン政府による承認を受け、2022年12月に環境法典に基づく許可を取得していた。今後SKB社がSFR拡張部分の建設を開始するには、2014年12月の拡張許可申請時の安全評価書を更新した予備的安全評価書(PSAR)、建設フェーズにおける安全確保に関する報告書、処分場システムの説明書、及び廃止措置計画書について、放射線安全機関(SSM)の審査を受け、SSMから建設認可を受ける必要がある。

SKB社が2022年9月に公表した「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022」(RD&Dプログラム2022)によると、SFRの拡張部分の建設開始は2020年代半ば、操業開始は2030年頃となる計画である。

なお、SKB社はエストハンマル自治体のフォルスマルクの地下約500mに使用済燃料処分場を設置する計画である。SKB社の使用済燃料処分事業計画については、2022年1月にスウェーデン政府の承認を受けており、現在は事業許可の条件を設定するプロセスが継続している。SKB社は、先に実施することになるSFR拡張部分の建設で得られる経験を、使用済燃料処分場の建設に反映する考えである。

【出典】

  • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2023年4月3日付けプレスリリース(スウェーデン語)
    https://skb.se/nyheter/ansokan-for-sfr-ar-nu-inlamnad-till-ssm/
  • SKB社、フォルスマルクの短寿命放射性廃棄物処分場の閉鎖後安全性、PSAR版、メインレポート(2023年3月)(英語)
    SKB TR-23-01
  • SKB社、放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022(RD&Dプログラム2022)(2022年9月)〔英語:RD&D Programme 2022. Programme for research, development and demonstration of methods for the management and disposal of nuclear wasste〕
    SKB TR-22-11
フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

スウェーデン政府は2022年1月27日に、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に申請していた使用済燃料の最終処分事業計画を承認する決定を行った。SKB社は、国内の原子力発電所から発生する約12,000トン(ウラン換算)の使用済燃料をキャニスタと呼ばれる銅製の容器に封入し、地下約500mに建設する処分場において処分する計画である。スウェーデン政府は、SKB社が提案している処分概念は、環境法典で求められている「予防原則」(Precautionary principle)に関わる要件と「利用可能な最善技術を使用する」という要件を遵守しており、処分場近傍に生じる影響を可能な限り低減するために計画されている慎重な防護措置が講じられることを条件として、最終処分事業による環境影響は許容可能であると判断した。

■使用済燃料処分場の建設計画

スウェーデンの使用済燃料処分場は、首都ストックホルムから約170km北方、バルト海に面したエストハンマル自治体のフォルスマルクに建設される。使用済燃料を銅製キャニスタに封入し、地下約500mの結晶質岩に掘削した処分孔内に、ベントナイト製の緩衝材でキャニスタを取り囲むようにして定置する。この処分概念はKBS-3概念と呼ばれており、最終処分事業が先行するフィンランドでも採用されている1 。処分場は段階的に建設・操業される計画である。処分場の建設に約10年、使用済燃料を収納したキャニスタ約6,000体の処分に約60年を要する見込みである。最終的な処分場の面積は3~4km2、地下坑道の総延長は60km以上になる 。

使用済燃料のキャニスタ封入施設は、ストックホルムから約220km南方、オスカーシャム自治体に立地している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)を拡張する形で建設される。SKB社は、使用済燃料を封入したキャニスタを自社の輸送船でフォルスマルクの処分場まで輸送する計画である。

■事業の許可にあたってスウェーデン政府が指定した条件

使用済燃料のキャニスタ封入施設と処分場とは異なる場所に立地されるが、最終処分事業を構成する一つのシステムとした安全審査が進められてきた。2018年1月23日には、環境法典に基づく審理を実施していたナッカ土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、それぞれが担当する申請に関する意見書を政府に提出していた 。その後、2019年4月にSKB社は、土地・環境裁判所の指摘に対応したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を取りまとめ、SSMの審査を受けていた

※:使用済燃料処分場の実現に向けてSKB社が提出した申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新、2015年3月31日補足)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

スウェーデン政府は今回の決定において、フォルスマルクは使用済燃料処分場の建設に適していると判断したことを述べている。また、KBS-3概念に基づく最終処分には技術的な細部の詰めや課題が残されており、それらは処分場の建設を妨げるものではないが、今後も進められる技術開発や研究の成果が一連のプロセスを構成するように、SSMが段階的な審査を行うよう指示している。SKB社は処分場建設を開始する前に、2011年の申請以降の進展を反映した安全報告書の更新版を作成し、SSMの審査を受ける必要がある。

さらに、スウェーデン政府は、環境法典に基づく最終処分事業の許可条件として、SKB社が最終処分システムを構成する施設が立地するオスカーシャム自治体及びエストハンマル自治体、SSMを含む関係規制当局、環境団体とで年次会合を開催し、情報を提供して継続的な参加の機会を提供することを設定した。

今回の政府決定により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の実現に関して、SSMによる建設前・操業前の段階的な審査と承認を受けることを前提として、SKB社は原子力活動法に基づく許可を取得したことになる。スウェーデン政府は、フォルスマルクの使用済燃料処分場の閉鎖に関しては、最終処分の完了が70年以上先であることから、その時の政府が判断する事項とした。

■今後の許認可プロセス

環境法典の規定に基づき、政府がSKB社の最終処分事業計画に対する判断を行う前に、原子力施設が新設される地元自治体がその受け入れを承認していることが条件となっている。キャニスタ封入施設に関しては2018年6月にオスカーシャム自治体議会において、使用済燃料処分場に関しては2020年10月にエストハンマル自治体議会において、各施設の受け入れを議決していた 。

スウェーデン政府は今回の政府決定において、環境法典及び原子力活動法に基づく許可発給の条件を指定しており、今後は、環境法典に基づく審理を担当したナッカ土地・環境裁判所、並びに原子力活動法に基づく審査を実施した放射線安全機関(SSM)により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の建設に向けた条件が決定されることになる。

今回の政府決定を受けてSKB社は、オスカーシャム自治体とエストハンマル自治体は最終処分の実現に関する国家的責任を引き受けていると述べ、我々の世代が生み出した使用済燃料の最終処分を可能とする歴史的な決定を歓迎する旨のプレスリリースを発出している。

【出典】


  1. KBS-3概念は1970年代にスウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、その名称は当時の検討報告書の略称に由来している []

スウェーデン政府は2021年12月22日付けプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2014年12月に提出した短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張許可申請に関して 、拡張を承認する決定を行ったことを公表した。今回の政府決定を受けて本案件は、スウェーデンにおける原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)と、環境法典に基づく審理を実施したナッカ土地・環境裁判所に戻され、各組織によってSFR拡張に伴う地下施設の建設工事等の計画の実施に関する許可条件が決定されることとなっている。

今回の政府決定の前に安全審査を実施したSSMは、SKB社が放射線安全の要件を遵守して原子力活動を遂行できることを立証しているとした意見書を2019年10月に政府に提出していた。また2019年11月には、ナッカ土地・環境裁判所がSFRの拡張を許可できるとした意見書をスウェーデン政府に提出していた。SFRが立地するエストハンマル自治体は、2021年4月にSKB社のSFR拡張計画の受け入れを議決していた。スウェーデン政府は今回、SSM及びナッカ土地・環境裁判所の意見書、並びにエストハンマル自治体の判断を踏まえ、SKB社の申請が原子力活動法及び環境法典の要件を満足していると判断し、SFR拡張計画を承認する決定に至っている。

SFRの拡張計画

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SKB社が操業している短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)は、バルト海の浅い沿岸部(水深は約5m)の海底から約60m以深の岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図の右側の灰色部分)。現行のSFRは、約63,000m3の短寿命低中レベル放射性廃棄物を処分できるように建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療、研究、産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。

SFRの拡張計画では、地下約120mに6つの処分坑道を増設(図の左側の青色部分)し、既存部分との合計で約180,000m3の処分容量とする。SKB社が2014年12月に申請書を提出した当初は、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心を収める圧力容器(RPV)9基をそのままの形で専用の処分区画に搬入する計画であったが、現在の計画ではRPVを切断して容器に収納して処分する方式に変更されている。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される。また、既存部分でも廃止措置廃棄物の一部を処分する計画である。

なお、SFRがあるエストハンマル自治体のフォルスマルクにおいて、SKB社が使用済燃料の最終処分場の立地を予定している。SKB社は、2011年3月に使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等を提出しており、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく審査が最終局面にある。エストハンマル自治体は2020年10月に、使用済燃料処分場の立地を受け入れる意向を示している。スウェーデン政府は、使用済燃料処分場に関する決定を2022年1月27日に行う予定である。

【出典】

 

【2022年12月22日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2022年12月21日付けのプレスリリースにおいて、短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張計画に関して、環境法典に基づく許可を取得したことを公表した。SFR拡張計画は、2021年12月にスウェーデン政府の承認を受けた以降、環境法典に基づく審理を実施したナッカ土地・環境裁判所に戻され、サイトでの活動の規制を担当する各当局の合議による許可条件の設定が行われていた。SFRが立地するエストハンマル自治体のフォルスマルクは建設工事用水の確保が難しいため、SKB社は、現地に海水淡水化施設を新たに建設する計画である。今回の環境法典に基づく許可では、バルト海からの取水/排水に関する条件のほか、工事に伴う騒音や周辺交通の利用条件などが定められた。

SKB社は、SFRの拡張工事の工期を6年と予定しており、第1期として地盤工事や海水淡水化施設などのインフラ整備を進めた後、第2期では、地下の岩盤における坑道の掘削を行う予定である。なお、SKB社が2022年9月に公表した「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022」(RD&Dプログラム2022)によると、第2期におけるSFRの拡張工事に着手するために、SKB社は、2014年12月の拡張許可申請時の安全評価書を更新し、予備的安全評価書(PSAR)として放射線安全機関(SSM)の審査を受ける必要がある。SKB社は、この予備的安全評価書を2023年初頭に提出する予定である。

【出典】

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

スウェーデン政府は2021年8月26日付けプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が操業している使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB、1985年操業開始)の貯蔵容量に関して、現行の8,000トンから11,000トンへの引き上げを許可する決定を行ったことを明らかにした。今回の貯蔵容量引き上げは、SKB社がKBS-3概念1 と呼ばれる処分概念を採用した使用済燃料の最終処分システムの実現に向けて、同社が2011年3月に環境法典及び原子力活動法に基づく許可申請書を提出した以降、安全審査等が実施されている事業案件を構成する原子力活動の一部を構成するものである。スウェーデン政府は、審査中の事業案件について部分的な決定を行った理由について、CLABの貯蔵容量が逼迫する可能性のある2023年以前に許可プロセスが完了しない場合、スウェーデンにおける安定的な電力供給が脅かされるリスクがあり、これを回避するためであると説明している。

スウェーデン政府は、CLABの貯蔵容量引き上げ以外の使用済燃料のキャニスタへの封入及び最終処分に関する審査は継続する。スウェーデン政府は、使用済燃料の最終処分場に関する審査を進めているが、その決定に至るにはまだ数ヶ月を要するとの見通しを明らかにした。

■使用済燃料の最終処分システムに関する今後の審査プロセスへの影響

現在、スウェーデンでは、使用済燃料の最終処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請として、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの許可申請書の審査が並行して進められている(以下の囲みを参照)。このうち、キャニスタ封入施設に関しては、オスカーシャムに立地している使用済燃料集中中間貯蔵施設(CLAB)を拡張する形で建設し、一体の施設として運用する計画である。

SKB社は、2011年3月に最終処分場とキャニスタ封入施設に関する申請書を提出した時点では、CLABの貯蔵容量引き上げは将来的に必要であるものの、実際に必要となる貯蔵容量幅が不透明であったことから申請内容に含めていなかった。しかし、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所事故後に実施されたストレステスト(原子力施設の安全性に関する総合評価)で特定された脆弱性対策に対応すべく、SKB社は2015年3月にCLAB及びキャニスタ封入施設の設計変更に伴う申請書の補足を行っており、使用済燃料を稠密に配置するなどの方法により、CLABの地下プールを増設せずに対応可能な貯蔵容量である11,000トンへの引き上げを申請内容に盛り込んだ。

※使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新、2015年3月31日補足)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、2018年1月に、それぞれの審査意見書を政府に提出している。これまでの審査プロセスでは、それらの意見書を踏まえた政府決定を待ち、その内容を受けて土地・環境裁判所及びSSMにおいて許可条件を定める手続きが行われることが想定されていた。

SKB社は2021年8月27日に、CLABが立地するオスカーシャム自治体が最終処分システム全体に関する最終的な決定が行われずにCLABの貯蔵容量だけを引き上げることに反対していることに触れ、今回の政府決定はオスカーシャム自治体の考えに沿ったものではないとのコメントを公表した。さらに、SKB社は、環境法典に基づき土地・環境裁判所で審理された事業案件の一部に限って政府が判断を行ったケースは前例がないことから、使用済燃料の最終処分システムに関する今後の審査プロセスの停滞を懸念するとしたコメントを公表した。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというものである。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様の処分概念を採用している。 []

スウェーデンの使用済燃料処分場の建設予定地フォルスマルクがあるエストハンマル自治体の議会は2020年10月13日、エストハンマル自治体における使用済燃料処分場の立地・建設の受け入れ意思に関する議決を行った。議員総数49名のうち48名が投票を行い、賛成38、反対7、棄権3で使用済燃料処分場の受け入れ意思を表明することを可決した。

エストハンマル自治体は、1995年にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)から使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの最初の段階である「フィージビリティ調査」(わが国の文献調査に相当)の申し入れを受諾した以降、25年にわたって処分場の立地に関わる地元や周辺自治体を含めた社会影響、処分技術の研究開発動向、スウェーデン政府の政策に対応する法整備の検討状況など、幅広い分野についての学習を続けている。SKB社は、2002年からエストハンマルとオスカーシャムの二つの自治体でサイト調査(わが国の概要調査に相当)を行い、2009年に使用済燃料処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定していた。

SKB社は、2011年3月に使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等を提出しており、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく審査が最終局面にあり、2020年10月現在は政府の判断を待つ状況にある。環境法典において地元の拒否権が規定されており、政府が許可発給の判断を行う前に、地元自治体に処分場の受け入れ意思を書面にて確認する手続きが必要になっている。

今回のエストハンマル自治体議会での議決は、政府から受け入れ意思の確認要請がなされていない状況において、自治体独自の判断で行われたものであり、今後、政府から処分場の受け入れ意思の確認要請がなされた場合、エストハンマル自治体は拒否権を行使しないことを政府に対して先行的に明らかにするものである。エストハンマル自治体は、今回の議決を行う上で十分な知識を備えているという認識を共有して議決を行った点を強調した上で、今後、政府(環境省)における審査手続きや法整備の検討が進むことを期待するとしている。

エストハンマル自治体は、自治体の最も重要な懸念事項として、処分場の閉鎖後における最終的な責任について、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管されること等を規定した法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)が2020年6月10日にスウェーデン議会(国会)で可決されたことによって解消されたものの、使用済燃料処分場の建設、操業、閉鎖などの「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きにおいて自治体が判断を行う必要があり、その手続きを法律において明確化するよう要望するとしている。

 

【出典】

 

スウェーデン議会(国会)は2020年6月10日に、政府が提出してした法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)を可決した。法改正パッケージの可決にともなって、2020年11月1日に発効する改正原子力活動法においては、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管される旨が規定された。また、使用済燃料や放射性廃棄物の地層処分場の閉鎖は、政府の許可が必要な許認可プロセスの一つとして位置づけられた。さらに、地層処分場が閉鎖された後は、政府が定める機関が必要な対応を行う旨が規定された。

■法改正の背景

スウェーデン政府(環境省)は、2017年に原子力活動調査委員会を設置し、法制度の見直しを進めていた。当時、スウェーデンの原子力発電事業者は、経済的理由から2020年までに原子炉4基を早期に運転終了する計画を公表しており、政府は、閉鎖された原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処分を安全に行う責任と、それらの活動に要する資金確保の責任とを区別して明確化する必要があると考えていた。また、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等の審査が進むなか、政府は、地層処分場の「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きを法律において規定する必要性を認識していた。

2019年4月に原子力活動調査委員会は、調査報告書(SOU 2019:16)の中で、スウェーデンが締約国となっている原子力安全条約や放射性廃棄物等安全条約の義務を履行するため、原子力活動に係わる国の副次的責任(subsidiary responsibility)を明示的に国内法に反映するとともに、国の究極的な責任(ultimate responsibility)として、地層処分場の閉鎖後の責任を国に移管する規定を設けるよう提案した。原子力活動調査委員会は、現行の原子力活動法の規定内容は維持するものの、制定から35年の間に30回以上の改正を行った法律を刷新すべきものとして、法律を全面改正するよう提案していた。この提案を受けた環境省は、大幅な法改正を伴わない法改正パッケージ案を検討し、2020年4月16日に国会に提出していた。今回成立した法改正パッケージは、原子力活動法の他、環境法典及び原子力活動に伴って発生する残余生成物の取り扱いのための資金確保措置に関する法律(資金確保法)の一部を改正するものである。

今回の法改正により、SKB社の使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書等に関して、環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所が2018年1月に政府に宛てた審査意見書で指摘した「処分場の閉鎖後における責任の所在を予め明確にする必要性」への対応が整ったことになる。使用済燃料処分場の建設予定地があるエストハンマル自治体は、同自治体が最終的な責任を負うことに対して反対していた。

今回の法改正を受けてSKB社は2020年6月11日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料処分場と短寿命の放射性廃棄物処分場(SFR)が立地するエストハンマル自治体にとって、これらの処分場の閉鎖後の責任の所在を明確にすることは重要な問題であったと指摘するとともに、SKB社にとって、処分場の責任を国に移管するために必要な条件が今後整備されることが明確になったことを歓迎するとしたコメントを公表している。

【出典】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2014年12月に提出していた短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張許可申請に関して 、環境法典に基づく申請書の審理を実施していたナッカ土地・環境裁判所は、2019年11月13日に、SFRの拡張を許可できるとした意見書を政府に提出した。土地・環境裁判所は、今回の政府への意見書の提出に先立って、土地・環境裁判所による主要審理プロセスとなる口頭弁論を2019年9月23日から10月3日まで開催し、環境団体のほか、原子力活動法に基づく申請書の審査を行っている放射線安全機関(SSM)からも意見を聴取していた。

また、SSMは、土地・環境裁判所での口頭弁論の後の2019年10月に、SKB社が放射線安全の要件を遵守して原子力活動を遂行できることを立証しているとした意見書を政府に提出した。SSMは、政府が原子力活動法に基づく許可を発給するのに際して、SFRでの処分量に上限を設定することのほか、SKB社がSFR拡張部分の建設、操業を行う前に、安全報告書を更新し、SSMの承認を受けることなどの許可条件を設定するよう提案している

今後、政府は、土地・環境裁判所及びSSMの意見書を踏まえ、SFRの拡張の可否を判断することになる 。政府がSFRの拡張の可否を判断する前に、地元エストハンマル自治体の意見を確認する手続きが必要となっている。

SFRの拡張計画

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SKB社が操業している短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)は、バルト海の浅い沿岸部(水深は約5m)の約60m以深の岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図の右側の灰色部分)。当初SFRは、約63,000m3の短寿命低中レベル放射性廃棄物を処分できるように建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療、研究、産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。

今回のSFRの拡張では、地下約120mに6つの処分坑道で108,000m3を増設(図の左側の青色部分)することにより、既存部分との合計で約171,000m3の処分容量となる。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される。また、SFRの既存部分でも、廃止措置廃棄物の一部が処分される。

SKB社は、2019年9月に取りまとめた「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2019」(RD&Dプログラム2019)1 において、SFRの拡張部分の建設を2023年に開始する計画としている。

【出典】


  1. RD&Dプログラムとは、使用済燃料を含む放射性廃棄物の安全な管理・処分、及び原子力施設の廃止措置に関する包括的な研究開発などの計画であり、原子力活動法に基づいて原子力発電事業者が3年毎に策定するよう義務づけられているものである。原子力発電事業者4社の委託によりSKB社が取りまとめを行っている。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2019年4月4日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等に関して、キャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を、政府(環境省)に提出したことを公表した 。今回の補足説明書の提出は、環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として、土地・環境裁判所による2018年1月23日付けの意見書での指摘に対応したものである。SKB社は、この補足説明書を同社の技術報告書として発行しており、KBS-3概念1 を採用した処分により、放射線安全機関(SSM)が定めている安全要件を遵守できるとの結論を示している。

図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

■銅製キャニスタの腐食に関する補足説明の内容

土地・環境裁判所は、2018年1月23日にスウェーデン政府に宛てた意見書において、SKB社による安全性の立証は信頼に足るものであると評価しつつも、使用済燃料を閉じ込める銅製キャニスタの腐食や機械的強度に影響を与えるプロセスの影響の大きさに関する説明は不十分であるとし、銅製キャニスタの腐食に関する以下の5点について補足説明の必要性を指摘していた 。

①無酸素水との反応による腐食
②硫化物との反応による孔食(熱水効果〔塩濃縮〕の影響の考慮を含む)
③硫化物との反応による応力腐食(熱水効果の影響の考慮を含む)
④水素脆化
⑤放射線照射が孔食、応力腐食及び水素脆化に及ぼす影響

SKB社は、今回提出した補足説明の技術報告書において、地下水に含まれる硫化物が銅製キャニスタと接触した際に、銅の母相界面に形成される局部電池が誘発するガルバニック腐食現象に起因する孔食(上記②)の可能性は無視できないとした。SKB社は、キャニスタでの孔食発生を組み込んだ安全解析を実施し、銅製キャニスタと地下水とが接触する時期が早まる悲観的なケースにおいても、スウェーデンにおいて自然放射線によって受ける被ばく線量の約100分の1、放射線安全機関(SSM)のリスク基準の約10分の1にとどまるとの結果を示している。

SKB社は、今回のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書の提出にあたり、技術的・科学的な品質を確保するために外部のピアレビューを受けたと説明している。また、SKB社は、今回の補足説明書の提出により、環境省において、使用済燃料の最終処分場の立地・建設許可申請に対する政府としての意思決定に向けた検討作業を進めることができるようになったと述べている。

【出典】

 

【2019年4月26日追記】

スウェーデン政府(環境省)は2019年4月25日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対する意見募集を開始したことを公表した。意見募集先は、環境法典と原子力活動法のそれぞれを根拠として、放射線安全機関(SSM)や他の政府機関、大学、環境団体のほか、エストハンマル自治体などを対象としているが、指定された組織以外の個人等も意見書を提出することが可能となっている。意見書の提出期限は2019年9月13日となっている。

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

放射線安全機関(SSM)は、2019年10月1日付けのプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書について、SSMの意見書を政府(環境省)に提出したことを公表した。SSMは、環境法典と原子力活動法のそれぞれに基づく意見書を政府(環境省)に提出しており、いずれの意見書においても、SSMが2018年1月に政府に提出した意見書の結論と同様に、SKB社に対する許可発給は可能であるとの結論を示している。
なお、政府(環境省)は、SKB社のキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書に対して、大学や環境団体等から提出を受けた22件の意見書を公表している。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、地下約500メートルに設けられる処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等に関して、環境法典に基づく審理を実施していた土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、2018年1月23日に、それぞれの意見書を政府に提出した。このうち、土地・環境裁判所は、フォルスマルクに立地する使用済燃料処分場に対して、政府が環境法典に基づく許可の発給が可能となる条件が整うためには、使用済燃料を封入するキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明が必要であるとした意見書を政府に提出した。また、土地・環境裁判所は、キャニスタ封入施設に関しては環境法典に基づく許可発給が可能な条件は整っていると結論している。一方、SSMは、政府が原子力活動法に基づく許可を発給する際には、処分場の建設開始に先立ち、SKB社が処分場の様々な活動時期と閉鎖後の両方の期間における安全性を統合的に扱った安全解析書(SAR)を取りまとめ、SSMの審査・承認を受けることを条件とすべきであるとした意見書を提出した。今後、政府は、両方の意見書を踏まえて、SKB社が申請した処分事業が許可可能であるかの判断を行うことになる。

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設のイメージ(SKB社提供)

SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念による使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月に、オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を提出し  、その後、2011年3月にフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。これまで、スウェーデンにおける使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請では、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められてきた(下記の囲みを参照)。

※使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

放射線安全機関(SSM)の意見書

スウェーデンにおける原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)は、政府に提出した意見書において、SKB社の申請書に対する審査結果として、SKB社は使用済燃料を安全に処分するという原子力活動法の要求を実現する能力を有していると評価した上で、フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場、及びオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設を許可するよう勧告するとしている。また、原子力活動法に基づく段階的な許可プロセスのもとで、SKB社は今後、処分場の安全解析書(SAR)を取りまとめ、処分場及び関連施設を現実のものとする努力を続けることになるが、SKB社はそれらを達成する能力を備えていることを立証したとSSMは評価した。SSMは、処分場の建設、試験操業及び通常操業のそれぞれの開始に先立ち、処分場の安全性を最新の知見に基づいて精査可能とするために、SKB社が安全解析書(SAR)をSSMに提出し、承認を受けることを条件とする旨を許可条件に記載すべきとしている。

土地・環境裁判所の意見書

環境法典に基づいてSKB社が申請した使用済燃料の処分事業については、その方法及び関連施設の立地選定に関する許可判断は政府が行うことになっている。土地・環境裁判所は、申請案件についての環境法典に基づく許可発給が可能であるかに関する意見書を政府に提出することになっている。その意見書を受けて、政府が許可発給可能と判断した場合には、申請案件の審理が土地・環境裁判所に戻され、処分事業に関する許可及びその条件に関する審理が継続される。

土地・環境裁判所は、SKB社による立証は信頼に足るものであると評価しつつも、使用済燃料を閉じ込める銅製キャニスタの腐食や機械的強度に影響を与えるプロセスの影響の大きさに関する説明が不十分であり、現時点において提示されている安全解析の結果に基づいて、最終処分場が長期安全性を有しているという結論を導き出すことはできないと判断した。このため、土地・環境裁判所は政府への意見書において、SKB社が申請する処分事業に対する許可発給の可能性に関しては、今後、キャニスタの耐久性能を考慮に入れた形で処分場の安全性を立証する追加資料がSKB社から提出される場合に限り、政府が環境法典に基づく処分場の許可を発給することが可能になるとの結論を示した。

また、土地・環境裁判所は、現行の環境法典に基づく許可の取得者に対して、許可条件において別途指定されない限り、当該活動に対する責任が無期限に負わされている問題に言及している。土地・環境裁判所は、2017年9月から10月にかけて開催した口頭弁論において、エストハンマル自治体が最終的な責任を負うことに対して反対している事実を挙げ、最終処分場に関して国が最終的な責任を負うとした場合でも、処分場の閉鎖後における責任の所在を予め明確にする必要性を指摘している。また、土地・環境裁判所は、今後SKB社が追加資料を提出することによって処分事業に対する許可発給が可能となる条件が整うのに先立ち、政府は環境法典において放射線安全機関(SSM)に対して、より強い権限を与えることを含め、いくつかの法改正を行うことを検討すべきであると勧告している。

今後の進捗

環境法典の規定に基づき、政府が許可発給に関する決定を行う前には、使用済燃料処分場の建設予定地フォルスマルクがあるエストハンマル自治体と、キャニスタ封入施設の建設予定地があるオスカーシャム自治体の議会がその受け入れを承認していることが条件となっている。エストハンマル自治体は、2017年4月に、自治体としての判断を行う際の参考とするため、2018年3月4日に住民投票を行うことを決定している 。使用済燃料の処分事業の実施可否は、放射線安全機関(SSM)及び土地・環境裁判所の意見書や地元自治体の受け入れ意思の確認を踏まえて、最終的に政府が判断することになる 。

なお、土地・環境裁判所及びSSMの意見書の公表を受けてSKB社は、2018年1月23日のプレスリリースにおいて、SSMが処分場の建設の開始に先立って提出するように求めている安全解析書(SAR)等の追加資料をSKB社が提出した時点で、政府が環境法典に基づく許可を発給できる条件が整うという認識を表明している。

【出典】

 

【2018年2月22日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は2018年2月21日付のプレスリリースにおいて、政府による環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として土地・環境裁判所が提示したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明について、2018年内に作成できるとの見通しを示した。SKB社によれば、現状、土地・環境裁判所の意見書を受けた政府(環境省)からの対応指示を受けていないものの、SKB社は補足説明の作成に自主的に先行して取り組んでいるとのことである。土地・環境裁判所が補足説明の必要性を指摘したのは、具体的には以下の5点である。

  • 無酸素水との反応による腐食
  • 硫化物との反応による孔食(熱水効果〔塩濃縮〕の影響の考慮を含む)
  • 硫化物との反応による応力腐食(熱水効果の影響の考慮を含む)
  • 水素脆化
  • 放射線照射が孔食、応力腐食及び水素脆化に及ぼす影響

SKB社は、これらの銅製キャニスタの腐食に関する問題は既に数年にわたって取り組んでいるものであり、また、いくつかの点については規制当局である放射線安全機関(SSM)に提出予定の報告書において対応するために詳細調査を実施中であると説明している。

また、土地・環境裁判所は、2018年1月23日に提出した政府への意見書において、政府による環境法典に基づく許可発給が可能となるための条件として、最終処分施設の長期における責任の所在を明確にする必要性も指摘している。最終処分場の建設予定地があるエストハンマル自治体は、最終的な責任を負うことに反対している。エストハンマル自治体は、今後の許可プロセスの先行きが不透明になったことを受け、2018年1月30日の自治体議会において、自治体としての判断を行う際の参考とするために予定していた2018年3月4日の住民投票を中止することを決定している。

【出典】

 

【2018年6月4日追記】

スウェーデン政府は、2018年6月1日付のプレスリリースにおいて、土地・環境裁判所及び放射線安全機関(SSM)がそれぞれ2018年1月23日に政府に提出した意見書について、SKB社の見解を2019年1月7日までに提出するよう指示したことを公表した。また、政府が環境法典に基づいて許可発給可能と判断するための条件として、土地・環境裁判所が指摘したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明に関しても、2019年1月7日までに政府に提出するよう指示している。

政府(エネルギー・環境省)からの指示を受けたSKB社は、2018年6月1日付けのプレスリリースにおいて、当面の作業スケジュールが明確になったとし、銅製キャニスタの腐食に関する問題の一部は、今後SSMに提出することになる安全報告書において対応するよう、既に数年間にわたって詳細な研究を進めていると説明している。

【出典】

 

【2018年10月16日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2018年10月15日付のプレスリリースにおいて、土地・環境裁判所及び放射線安全機関(SSM)が政府に提出した意見書に基づいて、政府(エネルギー・環境省)がSKB社に要求している補足説明の提出期限が2019年4月30日に改訂されたことを公表した。政府は当初、銅製キャニスタの腐食に関する問題等に関する補足説明を2019年1月7日までに提出するよう指示していたが、SKB社は補足説明の根拠となる研究成果に関する外部レビューを受けた後に提出したいとの理由から、政府に提出期限の繰り延べを求めていた。

SKB社のプレスリリースによれば、政府は現在、環境法典と原子力活動法のそれぞれに基づく許可発給にあたって設定する許可条件の内容を検討しているところである。SKB社は、政府からの要請を受けて、これらの許可条件の内容に関する提案を取りまとめる作業を進めている。なお、SKB社は、自社の活動計画を策定する上で、許可発給に関する政府の判断時期を2020年前半と想定していることを明らかにしている。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 []

スウェーデンにおける使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書の審理を行っているナッカ土地・環境裁判所(所在地 ストックホルム)は、2017年7月4日に、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した環境法典に基づく申請書について、主要審理プロセスとなる口頭弁論を2017年9月5日から10月27日までの間の計22日で開催する旨の公告を行った。

図 フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場のイメージ(SKB社提供)

SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念を採用した使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月にはオスカーシャム自治体でのキャニスタ封入施設の建設許可申請書を、2011年3月にはエストハンマル自治体のフォルスマルクにおける使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。現在、スウェーデンでは、使用済燃料最終処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請として、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められている(下記の囲みを参照)。

※使用済燃料処分場の実現に向けて審査中の申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請
口頭弁論カレンダ

口頭弁論カレンダ

今回、2017年9月に開催される口頭弁論は、環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請(上記囲みの③)の審理のために実施されるものである。口頭弁論のスケジュールについては、2017年9月5日から14日までの期間(8日間)はストックホルムで開催され、2017年10月2日から6日の期間(5日間)はオスカーシャム自治体において、2017年10月9日から13日の期間(5日間)はエストハンマル自治体で開催される。その後、2017年10月23日から27日までの期間(4日間)は再度、ストックホルムにおいて総括の意見陳述が行われる予定である。口頭弁論の結果に基づいて土地・環境裁判所は、SKB社が申請する処分事業を認めるか否かに関する意見書を政府に提出することになる。

口頭弁論の開催に先立って土地・環境裁判所は、SKB社が計画する処分事業に関係する規制・行政機関、地方自治体、環境団体などから意見書を収集している。このうち、原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)は、2016年6月に、SKB社は安全要件を遵守して処分場を建設する能力を有しているとする意見書を土地・環境裁判所に提出している

SKB社の処分事業に関しては、原子力活動法に基づく放射線安全機関(SSM)による審査も並行して行われている(上記囲みの①②)。SSMも政府に対して意見書を提出することになっており、土地・環境裁判所が政府に意見書を提出するのと同時期になるよう調整が図られることになっている。

土地・環境裁判所と放射線安全機関(SSM)から政府への意見書が提出された後、政府が判断を行うには、環境法典の規定により、地元のエストハンマル自治体とオスカーシャム自治体の議会がSKB社の計画する処分事業を承認していることが条件となっている。使用済燃料の処分場が立地されるフォルスマルクがあるエストハンマル自治体は、2017年4月に、自治体としての判断を行う際の参考とするため、住民投票を2018年3月4日に行うことを決定している。使用済燃料の処分事業の実施可否は、SSM及び土地・環境裁判所の意見書や自治体の承認を踏まえて、最終的に政府が判断することになる

【出典】

【2017年9月21日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した環境法典に基づく申請書について、主要審理プロセスとなる口頭弁論が2017年9月5日から開始された。口頭弁論はのべ5週間にわたって開催されるが、ストックホルムで開催される前半の第2週目までの日程が2017年9月14日に終了した。次の口頭弁論は会場を移し、2017年10月2日からオスカーシャム自治体で、2017年10月9日からエストハンマル自治体で開催される。

ストックホルムで2017年9月5日から14日の期間に開催された口頭弁論は、ナッカ土地・環境裁判所の近くの会議場において公開形式で行われた。SKB社が申請している使用済燃料の処分方法、使用済燃料処分場などの関連施設の立地選定、処分場の閉鎖後の安全に関して、SKB社のほか、処分場建設予定地が所在するエストハンマル自治体、放射線安全機関(SSM)、環境団体などが意見陳述を行った。エストハンマル自治体は、使用済燃料処分場の受け入れに関する住民投票を2018年3月4日に実施する予定であり、今回の口頭弁論においては正式な意思表示を行わないことを説明した。

SKB社は、2017年9月8日付け及び9月15日付けのプレスリリースにおいて、2017年9月5日から14日の期間での口頭弁論の概要を以下のように紹介している。

開催日 概要
9月5日(火)
  • 使用済燃料の処分方法、使用済燃料処分場などの関連施設の立地選定に係る許可申請についてSKB社が意見陳述
  • 放射線安全機関(SSM)やその他の政府機関、オスカーシャム自治体はSKB社に賛成、環境保護団体は反対を表明。エストハンマル自治体は住民投票まで態度を保留
9月6日(水)
  • SKB社が使用済燃料の処分方法として申請したKBS-3概念やその他に研究した処分概念、サイト選定、閉鎖後の安全性、安全解析等について説明
9月7日(木)
  • SSMが、SKB社の処分概念やサイト選定、閉鎖後の安全性に対して実施した審査、及び同社が安全な処分システムを構築できるとした審査結果について説明
  • エストハンマル自治体が口頭弁論における同自治体の役割について説明
  • 複数の環境団体が、SKB社の処分方法やサイト選定、安全解析について意見陳述
9月8日(金)
  • 環境団体が、放射線、銅の腐食、深部における処分坑道等のテーマについて意見陳述し、SKB社に対して質問を提示
9月11日(月)
  • SKB社が無酸素環境における銅の腐食、沿岸部におけるサイトの選定、深部における処分坑道の掘削、放射線リスク等の質問に対して回答
  • ウプサラ大学が無酸素環境における銅の腐食に関する研究結果を提示
9月12日(火)
  • SKB社がベントナイト、緩衝材における亀裂、岩盤の圧力、地震、キャニスタの耐久性、閉鎖後の安全性等について説明
  • SKB社が使用済燃料処分場の立地選定について説明
9月13日(水)
  • SKB社がベントナイト、緩衝材における亀裂、岩盤の圧力、地震、キャニスタの耐久性、閉鎖後の安全性等について説明
  • SKB社が、フォルスマルクのバックグラウンド放射線量、地球潮汐、処分場閉鎖方法等の質問について回答
  • 処分場の閉鎖後の責任や環境影響評価手続についてSKB社等が説明
9月14日(木)
  • 土地・環境裁判所がSSMに対して、生物多様性や生態系に対する長期的な影響について質問
  • 土地・環境裁判所がSKB社に対して、原子力活動法と環境法典に基づき並行して進められている許認可手続きについて質問
  • SKB社が無酸素環境における銅の腐食への対応方法やそれが処分場の長期安全性に影響を与えないとする理由について説明

【出典】

 

【2017年10月20日追記】

スウェーデンにおける原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)は、2017年10月17日付のプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)による環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る申請に関して、土地・環境裁判所が実施している口頭弁論におけるSSMの役割を示した。

SSMはプレスリリースにおいて、2017年10月23日からストックホルムで開催される口頭弁論でSSMは、SKB社が申請している使用済燃料の処分計画において現時点で残存している不確実性を概括的に説明した上で、このような不確実性を伴う処分計画を実施に移しうる理由を陳述することになるとの認識を明らかにした。また、SSMが土地・環境裁判所から意見陳述を求められている事項を以下のように説明している。

  1. 処分場閉鎖後の放射線安全に関して、環境法典(第2章第1条)において規定されている事業実施者の立証責任の裏付けはどのようにあるべきか。
  2. 上記との関連において、処分場閉鎖後の放射線安全の立証要件は、原子力安全と放射線防護に関してSSMが定めている規則とどのように関係しているのか。
  3. 環境法典に基づく許可と原子力活動法に基づく許可の関係性を踏まえた上で、環境法典に基づいて土地・環境裁判所が設定する許可条件において、放射線防護に係る許可条件を一定期間にわたって定めずにおく観察期間を設定することは適切かつ必要であるか否か。また、そのような観察期間を設定する場合、何を観察の対象とすべきか。さらに、観察期間において事業者から報告してもらう事項及びその継続期間の長さをどのように定めるべきか。
  4. 事業が許可された場合、原子力活動法による規制下においてSKB社は、今後も段階的に調査・試験を行って処分場に関する様々な立証活動を実施していく必要がある。そのような状況において、処分場に関する未解明の不確実性について、SSMが現時点において概括的に説明することが可能であるか否か。
  5. 不確実性が残存しているにもかかわらず、環境法典の下でSKB社が申請している事業活動を許可しうると判断する理由をSSMが説明できるか否か。

【出典】

 

【2017年10月30日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に提出した環境法典に基づく申請書について、土地・環境裁判所による主要審理プロセスとなる口頭弁論が2017年9月5日から合計で5週間にわたって行われ、10月26日に終了した。土地・環境裁判所は、政府への意見書を2017年12月20日に提出する予定である。

SKB社のプレスリリースによれば、口頭弁論の最終日には、SKB社が計画する処分事業に関係する規制・行政機関、地方自治体、環境団体などから、SKB社が申請書において提示した実施条件や予防措置等の下で事業許可を発給しうるか否か(許容性)に関する意見陳述が行われた。このうち、オスカーシャム自治体、放射線安全機関(SSM)、環境保護機関(Swedish EPA)及びウプサラ県域執行機関(国の地方出先機関の一つであり、使用済燃料処分場の建設予定地フォルスマルクがあるエストハンマル自治体を含むウプサラ県域を管轄)は、SKB社が提案する事業は、環境法典の下で許容可能であるとの見解を示した。また、エストハンマル自治体は、使用済燃料処分場の受け入れに関する住民投票を2018年3月4日に実施する予定であり、今回の口頭弁論においては正式な意思表明を行わないとしているが、オスカーシャム自治体とともに、SKB社が口頭弁論で行った説明の内容や見解は、自治体側の理解に沿ったものであるとの認識を表明したとされている。

【出典】

 

【2017年12月12日追記】

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)による環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書に関して、審理を行っているナッカ土地・環境裁判所は、2017年10月26日に終了した口頭弁論に係る政府への意見書の提出日について、当初予定していた2017年12月20日から、2018年1月23日に延期したことを公表した。

【出典】


  1. KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様の概念を採用している。 []