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スウェーデン政府がSKB社の使用済燃料処分事業計画を承認

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

スウェーデン政府は2022年1月27日に、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に申請していた使用済燃料の最終処分事業計画を承認する決定を行った。SKB社は、国内の原子力発電所から発生する約12,000トン(ウラン換算)の使用済燃料をキャニスタと呼ばれる銅製の容器に封入し、地下約500mに建設する処分場において処分する計画である。スウェーデン政府は、SKB社が提案している処分概念は、環境法典で求められている「予防原則」(Precautionary principle)に関わる要件と「利用可能な最善技術を使用する」という要件を遵守しており、処分場近傍に生じる影響を可能な限り低減するために計画されている慎重な防護措置が講じられることを条件として、最終処分事業による環境影響は許容可能であると判断した。

■使用済燃料処分場の建設計画

スウェーデンの使用済燃料処分場は、首都ストックホルムから約170km北方、バルト海に面したエストハンマル自治体のフォルスマルクに建設される。使用済燃料を銅製キャニスタに封入し、地下約500mの結晶質岩に掘削した処分孔内に、ベントナイト製の緩衝材でキャニスタを取り囲むようにして定置する。この処分概念はKBS-3概念と呼ばれており、最終処分事業が先行するフィンランドでも採用されている1 。処分場は段階的に建設・操業される計画である。処分場の建設に約10年、使用済燃料を収納したキャニスタ約6,000体の処分に約60年を要する見込みである。最終的な処分場の面積は3~4km2、地下坑道の総延長は60km以上になる 。

使用済燃料のキャニスタ封入施設は、ストックホルムから約220km南方、オスカーシャム自治体に立地している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)を拡張する形で建設される。SKB社は、使用済燃料を封入したキャニスタを自社の輸送船でフォルスマルクの処分場まで輸送する計画である。

■事業の許可にあたってスウェーデン政府が指定した条件

使用済燃料のキャニスタ封入施設と処分場とは異なる場所に立地されるが、最終処分事業を構成する一つのシステムとした安全審査が進められてきた。2018年1月23日には、環境法典に基づく審理を実施していたナッカ土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、それぞれが担当する申請に関する意見書を政府に提出していた 。その後、2019年4月にSKB社は、土地・環境裁判所の指摘に対応したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を取りまとめ、SSMの審査を受けていた

※:使用済燃料処分場の実現に向けてSKB社が提出した申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新、2015年3月31日補足)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

スウェーデン政府は今回の決定において、フォルスマルクは使用済燃料処分場の建設に適していると判断したことを述べている。また、KBS-3概念に基づく最終処分には技術的な細部の詰めや課題が残されており、それらは処分場の建設を妨げるものではないが、今後も進められる技術開発や研究の成果が一連のプロセスを構成するように、SSMが段階的な審査を行うよう指示している。SKB社は処分場建設を開始する前に、2011年の申請以降の進展を反映した安全報告書の更新版を作成し、SSMの審査を受ける必要がある。

さらに、スウェーデン政府は、環境法典に基づく最終処分事業の許可条件として、SKB社が最終処分システムを構成する施設が立地するオスカーシャム自治体及びエストハンマル自治体、SSMを含む関係規制当局、環境団体とで年次会合を開催し、情報を提供して継続的な参加の機会を提供することを設定した。

今回の政府決定により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の実現に関して、SSMによる建設前・操業前の段階的な審査と承認を受けることを前提として、SKB社は原子力活動法に基づく許可を取得したことになる。スウェーデン政府は、フォルスマルクの使用済燃料処分場の閉鎖に関しては、最終処分の完了が70年以上先であることから、その時の政府が判断する事項とした。

■今後の許認可プロセス

環境法典の規定に基づき、政府がSKB社の最終処分事業計画に対する判断を行う前に、原子力施設が新設される地元自治体がその受け入れを承認していることが条件となっている。キャニスタ封入施設に関しては2018年6月にオスカーシャム自治体議会において、使用済燃料処分場に関しては2020年10月にエストハンマル自治体議会において、各施設の受け入れを議決していた 。

スウェーデン政府は今回の政府決定において、環境法典及び原子力活動法に基づく許可発給の条件を指定しており、今後は、環境法典に基づく審理を担当したナッカ土地・環境裁判所、並びに原子力活動法に基づく審査を実施した放射線安全機関(SSM)により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の建設に向けた条件が決定されることになる。

今回の政府決定を受けてSKB社は、オスカーシャム自治体とエストハンマル自治体は最終処分の実現に関する国家的責任を引き受けていると述べ、我々の世代が生み出した使用済燃料の最終処分を可能とする歴史的な決定を歓迎する旨のプレスリリースを発出している。

【出典】

  1. KBS-3概念は1970年代にスウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、その名称は当時の検討報告書の略称に由来している []

(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )