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《フィンランド》ポシヴァ社がオルキルオトでの使用済燃料処分場の操業許可を申請

使用済燃料処分場のイメージ図(ポシヴァ社操業許可申請書より引用(Source:Posiva))。黄色矢印は地上のキャニスタ封入施設の位置を示す(現在建設中)

使用済燃料処分場のイメージ図(ポシヴァ社操業許可申請書より引用(Source: Posiva))。黄色矢印は地上のキャニスタ封入施設の位置を示す(現在建設中)

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2021年12月30日付けプレスリリースにおいて、フィンランド南西部エウラヨキ自治体のオルキルオトにおいて建設中の使用済燃料処分場に関して、操業許可申請書をフィンランド政府に提出したことを公表した。使用済燃料処分場は、地上部に設置されるキャニスタ封入施設と、地下400~450mに設置される最終処分場(地下施設)で構成される。高レベル放射性廃棄物処分場の操業許可申請が行われるのはフィンランドが世界初となる。

ポシヴァ社は、2015年に政府から使用済燃料処分場の建設許可発給を受けた後、2016年12月から地下施設の建設を開始しており、キャニスタ封入施設も2019年6月から建設が進められている。2021年5月からは、地下約450メートルにおいて、実際の使用済燃料を収納したキャニスタを定置する最初の処分坑道5本の掘削工事が開始されていた

ポシヴァ社は、今回の操業許可申請書において、同社を共同出資によって設立した2つの電力会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が現在運転している計4基の原子炉から発生する使用済燃料4,000トン(ウラン換算)を処分するとしている。2022年に商業運転が開始される予定のTVO社のオルキルオト3号機から発生する使用済燃料の処分については、2070年以降にポシヴァ社が別途の操業許可申請を行う予定であり、最終的に2120年代までに合計で6,500トンの使用済燃料(キャニスタ数は3,304体)を処分する計画である1

使用済燃料の処分概念(出典:Posiva Oy)

使用済燃料の処分概念(出典:ポシヴァ社[Source:Posiva])

使用済燃料は地上のキャニスタ封入施設において、外側が銅製で、内側が鋳鉄製の2重構造の容器(キャニスタ)に封入した上で、深度400~450mの地下の最終処分場にてキャニスタ周囲を緩衝材(ベントナイト)と岩盤からなる多重バリアによって安全性を確保した上で処分される。ポシヴァ社は今回の申請書で対象としている4,000トンの使用済燃料(キャニスタ数は2,129体)を2024年3月から2070年末までの約45年間にわたって処分する計画である。

 

■今後の予定

フィンランドの原子力に関する管理・監督を所管する雇用経済省は、2021年12月30日付けのプレスリリースにおいて、処分場の操業許可発給に関する政府の意思決定の準備のために、原子力法令に規定されている意見聴取手続きに従って、原子力安全に係る規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)、環境省、内務省、原子力施設の立地自治体または近隣自治体を管轄する県行政庁、経済開発・交通・環境整備センター2 等の国の行政機関、並びにエウラヨキ自治体とその周辺自治体に意見書の提出を求めるほか、一般市民や地域社会にも処分事業に対する意見を求める予定を明らかにした。

今回のポシヴァ社による操業許可申請を受けてSTUKは、使用済燃料処分場の操業許可の発給条件に係る安全性に関する審査を実施するほか、ポシヴァ社が操業許可申請書とともに提出が求められた、実際の地下施設の建設で得られた情報に基づいて更新したセーフティケースを評価する。これらの評価結果は審査意見書として雇用経済省に提出される予定である。

ポシヴァ社は、建設中の地下施設において、2023年から試運転(コミッショニング)の一部として、使用済燃料を収納していないキャニスタを用いて、処分環境下で実際に使用される機器・装置を用いて小規模スケールで模擬的な処分を実施する統合機能試験を実施する予定である。使用済燃料を収納したキャニスタの処分開始は、政府から操業許可発給を受けた後の2020年代半ば以降になる見込みである。

(参考)フィンランドにおける使用済燃料処分の経緯

フィンランドでは原子力発電から生じる使用済燃料を再処理せず、高レベル放射性廃棄物として地層処分する方針としている。使用済燃料の処分場のサイト選定は1983年に開始され、ポシヴァ社は1999年にオルキルオトを処分地として選定し、同年、原子力施設の建設がフィンランド社会全体の利益に合致することを政府が判断する「原則決定」と呼ばれる原子力法の手続きに基づいて(詳しくはこちら)、オルキルオトに使用済燃料の処分場を建設することについて、政府へ原則決定の申請を行った。政府はポシヴァ社の申請に対して2000年に原則決定を行い、翌2001年に国会が政府の原則決定を承認したことにより、オルキルオトが処分地として決定していた。

ポシヴァ社が使用済燃料の処分を開始するためには、原則決定の後に政府から処分場の建設許可、及び操業許可の発給をそれぞれ受ける必要がある。ポシヴァ社は建設許可の申請に向けて2004年には地下特性調査施設(ONKALO)の建設を開始し、並行して建設許可申請に必要な岩盤や地下水等のデータ取得や、坑道の掘削による地質環境への影響等について調査をしてきた。

ポシヴァ社は2012年に使用済燃料処分場の建設許可申請書を政府へ提出した。雇用経済省は原子力法・原子力令に規定されている意見聴取手続きに従って、関係省庁、エウラヨキ自治体及び周辺自治体などに対して意見書の提出を求め、その一環としてSTUKは2015年2月に処分場を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出した。これらの意見を踏まえて政府は2015年11月に処分場の建設許可を発給した。ポシヴァ社は2016年から使用済燃料処分場の建設を進めてきた。

【出典】

 

【2024年1月23日追記】

フィンランドの原子力安全に係る規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は2024年1月18日付けプレスリリースにおいて、ポシヴァ社の使用済燃料処分場の操業許可申請について、安全審査意見書の雇用経済省への提出が2024年末になる見通しを明らかにした。STUKは、安全審査は大きな問題がなく進んでいるものの、審査対象書類が極めて膨大であること、また、ポシヴァ社が当初提出したデータのみでは審査を進められず、ポシヴァ社によるデータの更新を待つ必要があったことから、結果として書類の処理に時間を要していると述べている。

STUKは安全審査と並行して、ポシヴァ社及び進行中の建設作業の監督も行っている。監督対象となっている建設作業には、処分場の地上部にあるキャニスタ封入施設への機器据え付け、様々な設備・機器の試運転、地下処分施設の岩盤掘削作業がある。また、STUKは、処分場の操業開始に向けたポシヴァ社の準備状況を追跡しつつ、処分場の安全確保対策、組織の安全文化の検査も進めている。

【出典】

 

  1. オルキルオト3号機から発生する2,500トン分の使用済燃料をオルキルオトに建設される使用済燃料処分場において処分する計画は、2002年の政府の原則決定により、すでに認められている。 []
  2. 経済開発・交通・環境整備センター(ELYセンター)は、広域レベルの経済開発・交通・環境整備を促進するために、フィンランドに15箇所設置されている。 []

(post by t-yoshida , last modified: 2024-07-24 )