フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2021年2月26日付けプレスリリースにおいて、地下特性調査施設(ONKALO)において、統合機能試験(Joint Functional test(フィンランド語の略称はYTK))1 と呼ばれる試験のための試験用坑道の掘削を開始していることを公表した。統合機能試験は、処分施設の試運転(コミッショニング)の一部と位置付けられ、使用済燃料を収納していないキャニスタを用いて、処分環境下で実際に使用される機器・装置を用いて小規模スケールで模擬的な処分を実施する。Posiva社は、統合機能試験により、最終処分作業に関連する作業工程を計画どおりに実施可能であることを実証したいとしている。
ONKALOでは、地下約420mにおいて、処分場を構成する主要坑道の一部(約60m分)が掘削済である。ポシヴァ社は統合機能試験の開始に向けて、この主要坑道から側面方向に分岐する長さ80mの処分坑道の掘削を今冬から開始しており、2021年2月時点で48m分の掘削を完了させている。ポシヴァ社は現在、掘削が完了した処分坑道のうち19m~48mの区間において、掘削に伴う亀裂や水みちの発生状況や岩盤への影響を確認する調査を実施している。この調査の後に残る32m分の掘削を再開し、2021年4月から5月頃には、全長約80mの処分坑道を完成させる予定である。なお、実際の処分坑道の典型的な長さは350mであり、統合機能試験のために掘削される処分坑道はこれより短いものとなっている。
■統合機能試験は2023年に開始予定
統合機能試験(YTK)では、今回掘削している処分坑道の床面に4つの処分孔を掘削し、実規模の模擬キャニスタを定置し、その周囲に緩衝材(ベントナイト)を設置した後、処分坑道を埋め戻すまでの一連の運用性を試験し、検証する。処分坑道の埋め戻し後においては、処分孔を対象としたモニタリングは行わないが、処分孔周辺の地下水流動等のモニタリングは実施する予定である 。
統合機能試験に使用される処分坑道は実際の処分坑道と同等であることから、ポシヴァ社は、今回の坑道掘削作業の計画段階から、規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)と協力して実施している。STUKは、将来の操業許可申請に伴う安全審査を視野に入れて、統合機能試験を監督することになっている。
ポシヴァ社は、統合機能試験のための処分坑道が完成した後に、実際の最終処分に使用する最初の5本の処分坑道の掘削を開始する予定であり、処分施設の操業許可を得た後に、使用済燃料を収納したキャニスタを用いた最終処分を行う予定である。ポシヴァ社は、今回のプレスリリースにおいて、この5本の処分坑道のうちの1本での最終処分が2025年頃に始まる見通しを明らかにしている。
【出典】
- ポシヴァ社、2021年2月26日付けプレスリリース
Excavation of joint functional test final disposal tunnel started at Posiva’s ONKALO
https://www.posiva.fi/en/index/news/pressreleasesstockexchangereleases/2021/excavationofjointfunctionaltestfinaldisposaltunnelstartedatposiva8217sonkalo.html - ポシヴァ社ウェブサイト、「最終処分」
https://www.posiva.fi/en/index/finaldisposal.html - 使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全性に関する条約、条約の第32条による第7回フィンランド国別報告書
https://www.julkari.fi/handle/10024/140601
- ポシヴァ社は、以前は統合作動試験(Joint operation test)と表現していた。 [↩]
(post by t-yoshida , last modified: 2024-07-24 )