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スイス

「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2015年1月30日に、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果として、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを提案したことを公表した。NAGRAは、絞り込んだ2つの地質学的候補エリアについて、高レベル放射性廃棄物、低中レベル放射性廃棄物のいずれの処分場にも適しているとしている。今回のNAGRAによる提案については、今後、連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)等による審査を経た上で、連邦評議会1 が承認することにより、サイト選定第3段階に進む候補として確定することとなっている。確定時期は2017年半ばと見込まれている

「サイト地域の安全性比較結果」 (NAGRA、パンフレット「地層処分場の地質学的候補エリア---第3段階に向けたNAGRA提案」、2015年1月より)

「サイト地域の安全性比較結果」
(NAGRA、パンフレット「地層処分場の地質学的候補エリア—第3段階に向けたNAGRA提案」、2015年1月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。この目標に向けてNAGRAは、科学的・技術的な基準に基づいて、安全性の観点からサイト(地下施設及び付属する地上施設の設置区域を含む)を比較する作業を進めていた。具体的には、「天然バリアの有効性」「天然バリアの長期安定性」「天然バリアの探査可能性・評価可能性」「建設上の適性」の4つの評価項目を設けて、その下に複数の指標を設定し、これらを「最適」(右図中の濃緑色)、「適格である」(薄緑色)、「条件付きで適格である」(黄色)、「あまり適格ではない」(桃色)の4段階で評価した。なお、NAGRAは、今回の地質学的候補エリアの絞り込みにおいて、社会・政治的な基準は考慮していないとしている。

今回、NAGRAが提案したチューリッヒ北東部、ジュラ東部は、高レベル放射性廃棄物処分場、低中レベル放射性廃棄物処分場のいずれについても、上記の4つの評価項目及び指標のすべてに対して「最適」または「適格である」との評価がされている。NAGRAは、これら2つの地質学的候補エリアでは、不透水性の岩盤であるオパリナス粘土が適切な深度にあり、氷河等による侵食の影響を受けず長期に安定して存在しているため、放射性廃棄物を安全に閉じ込めることができると結論付けている。高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアとして検討していた北部レゲレンについては、「建設上の適性」が「あまり適格ではない」と評価しており、第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保することを提案している。

今後は連邦原子力安全検査局(ENSI)が2016年を目途に、NAGRAが取りまとめた選定根拠に関する報告書を審査することとなる。チューリッヒ北東部及びジュラ東部がサイト選定第3段階に進む候補として確定するまでの間、NAGRAは2つの地域を対象に地表からの三次元弾性波探査を実施する予定である。なお、ボーリング調査は、サイト選定第3段階(2017年半ば以降)で実施することになっている。NAGRAは、ボーリング調査の実施候補区域として、チューリッヒ北東部の7カ所、ジュラ東部の8カ所を示しており、最終的には各地域とも4カ所程度でボーリング調査を実施する計画である。NAGRAは、サイト選定第3段階において最終的な候補サイトを提案できるようになる時期を2020年頃としており、2027年頃には処分サイトが確定する見込みである。

【出典】

 

【2015年4月20日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2015年4月16日の記者会見において、絞り込んだ2つの地質学的候補エリアで実施する三次元弾性波探査及びボーリング調査のスケジュールを公表した。

NAGRAは、地質学的候補エリア及びその周辺において、三次元弾性波探査を実施する予定である。地質学的候補エリア「ジュラ東部」については、地権者から探査の了承を2015年7月~8月に得た上で、2015年10月には探査を開始するとしている。「ジュラ東部」での三次元弾性波探査は約3カ月を予定している。その後、2016年1月から地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」で三次元弾性波探査を開始し、3週間程度で終了するとしている。

また、今回公表のスケジュールでボーリング調査については、地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」のそれぞれ7カ所から8カ所の地点について、2015年末までに調査の実施に必要な申請をNAGRAが行う予定としている。ボーリング調査などの地球科学的調査の実施に当たっては、原子力法による許可が必要となっており、具体的には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)が地質学的候補エリアでの地球科学的調査の許可を発給することとなる。実際の掘削作業は、NAGRAが提案した2つの地質学的候補エリアを連邦評議会が承認する2017年以降に開始するとしている。

【出典】

 

【2015年9月11日追記】

スイスにおける放射性廃棄物処分場のサイト選定手続を監督する連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)は2015年9月9日、実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)に対し、NAGRAが2015年1月に提案した第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果の根拠に関する報告書について、技術情報に不足があるとして、今後数カ月以内に追加資料を提出するよう指示したことを公表した。

BFEによる今回の指示は、NAGRAの報告書を審査中の連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)の指摘に基づくものである。NAGRAは第2段階での地質学的候補エリアの絞り込み結果の提案において、処分に適した地層の最大深度が深いため、「建設上の適性」の面で不利であることを理由に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」を第3段階において検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。これについてENSIは、NAGRAが提示した「建設上の適性」の項目に関する根拠データは不完全であり、審査を行うには不十分であることを指摘した。ENSIは指摘部分以外について審査を継続する。

BFEは、NAGRAに対する追加資料の提出指示に伴い、サイト選定のスケジュールが半年から1年遅延する見込みとしている。なお、BFEは、複雑な検証プロセスにおける科学技術的データの追加要求は何ら特別なことではなく、今後も同様の追加指示を出す可能性があるとしている。

【出典】

【2015年11月20日追記】

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は2015年11月9日、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)に対する要求書「特別計画『地層処分場』第2段階における指標『建設上の適性の観点から見た最大深度』に関する追加要求」を公表した。

現在、ENSIは、NAGRAが2015年1月に提案したサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果の根拠に関する報告書を審査している。今回のENSIの要求書は、ENSIが2015年9月に建設上の適性に関する技術情報の不足を指摘したことに関して、ENSIの依頼に基づく外部専門家による2件のレビュー結果をまとめるとともに、レビュー結果に基づく具体的な追加要求事項を示したものである。(【2015年9月11日追記】参照)。

サイト選定第1段階における地質学的候補エリアの境界設定にあたり、NAGRAは安全性と技術的実現可能性に関する13の基準に対応する指標を複数設定した。このうちの1つの指標である「建設上の適性の観点から見た最大深度」に関しては、オパリナス粘土等の堆積岩層において処分空洞やシーリング構造物を十分な信頼性をもって建設可能な最大深度について、低中レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下800mまで、高レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下900mまでとすることを最低限の要件として提案を行っていた。

NAGRAは、サイト選定第2段階の絞り込み作業においても本指標を引き続き用いているが、指標の名称を「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」へと変更するとともに、スイス北部の地質学的候補エリアにおける最大深度を、低中レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下600m、高レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下700mまでとする「最適化要件」を設定し、この最適化要件に合わせて指標の評価基準を変更した。

しかし、外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないとする指摘がされた。これを受けてENSIは、上記の指標「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」の最適化要件、並びに評価基準の妥当性を検証できないとする立場を取り、この指標に基づいて地質学的候補エリアの優劣を評価することは疑問の余地があるとしている。

外部専門家によるレビュー結果を踏まえ、ENSIは、今回の要求書においてNAGRAに対し、指標を用いて評価できるようにするために必要な補足事項を示した。

ENSIがNAGRAに求めた補足事項のうち、主要なものは以下の通りである。

  • NAGRAが地層処分概念に修正を加えた概念をいくつか提案していることについて、それらの修正した概念に基づく処分場の建設・操業及び長期安全性に及ぼす影響についての検討・評価結果を、各々の修正した概念の優劣を含めて記載した文書を作成すること。
  • 構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて、地質学的候補エリアの地質工学的条件を評価すること。
  • 処分場の建設段階及び操業段階における崩落などの事故シナリオについて示すとともに、こうした事故への対処方法を示すこと。
  • 処分場の範囲や深度に応じた坑道の支保についての概念や、坑道の支保に用いられる物質等が、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期的安全性の観点から評価すること。

 

【出典】                                        

【2016年2月10日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年2月8日のプレスリリースにおいて、地層処分場の地質学的候補エリアの「サイト地域」を持っているすべての州の機関として設置されている州安全ワーキンググループ(AG SiKa)2 及び州安全専門家グループ(KES)3 が、NAGRAのサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果を評価した報告書を提示したことを公表した。これら2つのグループは報告書の中で、地質学的候補エリアの北部レゲレンを第3段階における予備候補とするのではなく、引き続き調査対象として残すべきとの見解を示した。

NAGRAは2015年1月に地層処分場のサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果を公表し、6つの地質学的候補エリアのうち、ジュラ東部とチューリッヒ北東部の2エリアを優先候補として調査を継続し、北部レゲレンを高レベル放射性廃棄物処分に係る予備候補とし、ジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ヴェレンベルクを低中レベル放射性廃棄物処分に係る予備候補として留保することを提案していた。これに対して、AG SiKaとKESは、NAGRAが提案した2つの優先候補に北部レゲレンを加えた3エリアで調査を継続すべきとの意見を表明したことになる。一方、AG SiKa、KESは、NAGRAの提案のうち、以下の点について賛同している。

  • 全種類の放射性廃棄物について、処分場の母岩としての検討対象をオパリナス粘土に集中すること
  • ジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ヴェレンベルクの3カ所を第3段階において検討する優先候補ではなく、低レベル放射性廃棄物処分の予備候補として留保すること

北部レゲレンに関しては、NAGRAの提案を審査している連邦原子力安全検査局(ENSI)が技術情報の不足を指摘し、これを受けてサイト選定手続を監督する連邦エネルギー庁(BFE)がNAGRAに対し、2015年9月に、追加資料の提出を指示している。

NAGRAは2016年中頃までに追加資料をENSIに提出する予定である。ENSIは、技術情報が不足している部分以外の審査を継続しており、審査結果の取りまとめは2017年の春頃となる見込みとされている。

なお、ENSIによる審査の結果により、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補とされた場合でのスケジュールの遅延を避けるため、NAGRAはすでに、北部レゲレンにおける第3段階の探査を想定した準備作業(探査計画策定、三次元弾性波探査及びボーリング候補地点の検討等)に着手ずみである。

 

【出典】

 

【2016年4月20日追記】

連邦原子力安全検査局(ENSI)は2017年の春頃を目途に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)によるサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果に対する審査を行っているが、NAGRAは、2016年4月14日に、ENSIの審査結果を待たずに、NAGRAがサイト選定プロセス第2段階での絞り込みの段階で予備候補とした地質学的候補エリア「北部レゲレン」において、2016年秋に三次元弾性波探査を実施することを公表した。

NAGRAが優先候補として提案していた地質学的候補エリア「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」においては、三次元弾性波探査を実施しており、2016年2月に終了している。これら2つの地質学的候補エリアについて、今後のサイト選定プロセス第3段階で実施するボーリング調査については、原子力法に基づく地球科学的調査の許可申請を2016年夏に行う予定である。ボーリング調査は、それぞれの地質学的候補エリアについて8カ所で行うとしている。なお、北部レゲレンについても、三次元弾性波探査の終了後、ボーリング調査に必要となる許可申請を2016年末から2017年初頭に行うとしている。

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. 州安全ワーキンググループ(AG SiKa)は、1つまたは複数のサイト地域を含む州に対する安全性の評価に係る計画・調整を担う。 []
  3. 州安全専門家グループ(KES)は、安全性に関する資料の評価において州を支援し、助言する機関として特別計画「地層処分場」に設置が規定されており、州安全ワーキンググループ(AG SiKa)の支援を受けている。 []

スイスの連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)は、2014年11月18日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物の地層処分場が立地地域に与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の最終報告書を公表した。BFEは、評価対象の地上施設の設置区域案(計7つ)における経済影響の差異は小さいものであるとしているが、環境影響と社会影響については、差異が大きい評価項目があるとしている。

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づく3段階のサイト選定プロセスが進められており、現在は第2段階にあり、地層処分場が立地される可能性がある6つの「地質学的候補エリア」が検討されている。2014年5月には、各地質学的候補エリアについて、地層処分場の地上施設の設置区域案が設定された。これにより社会影響・経済影響・環境影響を具体的に評価する条件が整ったことから、BFEは最終報告書において、それぞれの地上施設の設置区域案を相互比較できる形で評価結果を取りまとめた。

サイト選定手続きにおける社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の位置づけ

特別計画に基づく地層処分場のサイト選定手続においては、安全基準が最重要とされているが、安全性が同等であるサイトが残った場合には、地域開発計画と社会経済的観点を考慮してサイト選定を行うとしている。

現在進められている第2段階では、最終的に低中レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物用にそれぞれ2カ所以上の候補サイトを確定することが目標である。これに向けて、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が安全性の観点から比較する作業を進めている一方で、連邦エネルギー庁(BFE)は地層処分場立地地域における社会経済の観点から比較する役割を担っている。なお、連邦エネルギー庁(BFE)のプレスリリースによると、安全性の観点での比較による地層処分場の候補サイトは、2015年初頭にNAGRAから提示される予定である。

BFEが今回公表した社会影響・経済影響・環境影響に関する調査結果は、安全性の観点から絞り込みができない場合にのみ考慮されることになっている。また、第2段階で確定した候補サイトについては、今回の調査結果が第3段階で実施される立地地域の開発戦略策定に活用されることになる。

社会影響・経済影響・環境影響の評価項目と評価結果

社会経済の観点からの比較材料を整えるため、社会・経済・環境の評価項目ごとに複数の評価指標を設定しており(下表参照)、評価指標に重み付けを反映させることにより、6つの大項目の評価値を算出している。こうした方法により、サイト条件が異なる地上施設の設置案を相互比較できるようにしている。

連邦エネルギー庁(BFE)はプレスリリースにおいて、今回の調査の結果を以下のように要約して示している。

  •  経済影響について
    地元経済への影響は、地層処分場の建設に対する投資額の多寡に直接左右される。今回の調査では、投資額は全地域同額の設定となっている。処分場建設に関連する産業の占める割合が高い地域は、処分場建設に伴う経済効果を期待することができる。一方、農業や観光の比率が比較的高い地域では、マイナスの影響が及ぶ可能性が高い。処分場受け入れに対する立地地域への補償金については、第3段階で決定される予定であり、本調査の段階では補償金の経済効果の差異は考慮していない。なお、現時点では6つの地質学的候補エリアのいずれについても、処分場の立地が他の都市計画の開発案件に干渉することはない見込みである。
  •  環境影響について
    地層処分場設置により土地利用の観点で最も懸念されるのは、耕作好適区域1 や掘削土、野生動物の移動経路などの問題である。また、地上施設への鉄道や道路のアクセスの状況の違いによっても、処分場設置に伴う環境影響に差異が発生する。なお、地上施設の設置区域は自然保護区域や地下水源保護区域を避けて選定しているため、そのような観点からの環境影響はほとんど確認されなかった。
  • 社会影響について
    人口密度が高い、住宅地域の拡大が著しい、地上施設が目につきやすいといった傾向が高ければ高いほど、処分場がもたらすマイナスの影響は大きくなる。一方、すでに産業・商業施設が近隣に立地しているような場所では、マイナス影響は小さい。なお、保護対象とされている景観については、ごくわずかな例で軽微な影響が認められるのみであった。

 

表 地層処分場の地上施設の設置案に対して実施された社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の評価項目

 

分野 評価項目(大項目) 評価項目(中項目)

経済

地元経済へのプラス影響

・処分場建設に伴う直接的な経済効果、雇用へのプラス影響(処分場への投資)

・特定業種に対する副次的経済効果(経済的枠組みの変化)

・経済価値の変化におけるプラス影響

地元自治体の財政へのプラス影響

・公的財政へのプラス影響

環境

資源保全

・土地への負荷の回避

・地下水、鉱泉、温泉資源の保護

・生物多様性の保全

温室効果ガス等排出の回避

・大気汚染の回避

・騒音の回避

・原子力以外の事故影響の回避

・輸送に伴う環境影響の回避

社会

住宅地域開発

・都市計画(土地開発)上のプラス効果

・人口構成及び社会としての価値に対するプラス効果

住宅地域保護

・住宅地域保護

・住宅近隣の憩いの場の保護

・土地・自然景観保護

それぞれの地質学的候補エリア及び対応する地上施設の設置区域の場所、処分場の種類は以下の表の通りである。

地質学的候補エリア名 地上施設設置区域の名称 地上施設の設置区域が位置する自治体の名称 地上施設の設置区域が位置する州 設置される処分場の種類
ジュラ東部 JO-3+ フィリゲン アールガウ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用
ジュラ・ジュートフス JS-1 デニケン ゾロトゥルン州 低中レベル放射性廃棄物用
北部レゲレン NL-2 ヴァイアッハ チューリッヒ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用
NL-6 シュターデル
ジュートランデン SR-4 ノイハウゼン アム ラインファルとベリンゲンをまたぐ シャフハウゼン州 低中レベル放射性廃棄物用
ヴェレンベルグ WLB-1-SMA ヴォルフェンシーセン ニドヴァルデン州 低中レベル放射性廃棄物用
チューリッヒ北東部 ZNO-6b ライナウ、マルターレン、ベンケンをまたぐ チューリッヒ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用

 

 

 

【出典】

 


  1. スイスの都市計画法で耕作好適地として指定がなされている区域。特別計画「耕作好適区域」の対象。 []

スイスの連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は、2014年8月28日付プレスリリースにおいて、サイト選定の第2段階の作業項目である「予備的安全評価及びサイトの比較」を実施する上で、現時点で放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が有している地質学的知見は必要な水準に達しているとの判断を示した。これは、NAGRAが2010年11月に地質学的知見の充足度について取りまとめた報告書1 をENSIに提出し、この報告書を審査したENSIが2011年3月にNAGRAに対して41項目の補足を要求する報告書2 を提出していたことに対応したものである。ENSIは、NAGRAからの説明を受けるために専門家が参加する会議を開催し、それに対する専門家からの肯定的な意見を得た上で、一部に最終的な判断を保留する項目があるものの、補足を要求した41項目について、NAGRAが有している地質学的知見がサイト選定の第2段階での予備的安全評価及びサイトの比較の実施に必要な水準に達していることを確認したとしている。

~専門家会議を通じた地質学的知見の検証~

2011年3月にENSIが地質学的知見に関する41項目の補足をNAGRAに要求した後、2011年6月に、地層処分場のサイト地域を含む州の機関である州安全ワーキンググループ(AG SiKa)3 及び州安全専門家グループ(KES)4 、ならびに連邦評議会5 設置の諮問機関である原子力安全委員会(KNS)6 は、NAGRAの地質学的知見の水準に対するENSIの判断を検証する機会を設ける必要性があるとの見解を示した。

こうした意見を受けてENSIは、2013年3月から2014年7月にかけて、スイスの連邦、州ならびに隣国ドイツからの専門家が参加する専門家会議(Fachsitzung)を計11回開催して、NAGRAの地質学的知見の水準に対するENSIの判断を検証した。NAGRAは、専門家会議の場で、ENSIが要求した地質学的知見に関する41項目の補足について、今後十分に調査を行えるだけの知識やノウハウを有していることを説明した。

ENSIが開催した専門家会議の参加組織は以下の通りである。

  • 州安全ワーキンググループ(AG SiKa)
  • 州安全専門家グループ(KES)
  • 連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)
  • 連邦原子力安全検査局(ENSI)
  • 地層処分場専門家グループ(EGT)
  • 原子力安全委員会(KNS)
  • ドイツ連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(Bundesministerium für Umwelt, Naturschutz, Bau und Reaktorsicherheit, BMUB)

専門家会議の最終会合において、地層処分場専門家グループ(EGT)7 、原子力安全委員会(KNS)、州安全ワーキンググループ(AG SiKa)、州安全専門家グループ(KES)は、地質学的知見の水準の判断に至る経過や、十分な地質学的知見を有するという専門家会議の結論について、肯定的な見解を示し、サイト選定の第1段階当時と比較して、NAGRAの地質学的知見の水準が顕著に向上したとの見解を示している。

専門家会議の結論を受け、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、連邦エネルギー庁(BFE)に対して、NAGRAによる地質学的知見に関する41の補足項目についての審査結果を報告した。この報告においてENSIは、補足事項に関する地質学的知見の水準の検証作業は十分に慎重かつ遺漏なく行われたと述べている。

~「予備的安全評価及びサイトの比較」の実施に向けて~

連邦原子力安全検査局(ENSI)は2014年8月28日付プレスリリースにおいて、サイト選定の第2段階の実施に必要な水準に達しているとの判断を示したものの、先にENSIが補足を要求していた41項目のうち必要な水準を完全に満たしているのは10項目であり、その他31項目についてはサイト地域の提案が今後詳細に検討されるまでは最終判断を保留するとしている。また、ENSIはNAGRAに対し、サイト選定の第2段階での実施内容について報告書を作成するにあたっては、専門家会議での指摘事項や補足事項を考慮するよう要求している。

サイト選定の第1段階で選定された地質学的候補エリアについて、サイト選定の第2段階では7カ所の地上施設の設置区域が選定されており、今回の連邦原子力安全検査局(ENSI)の確認によって、予備的安全評価及び候補として検討されているサイトの比較に向けた環境が整っている。予備的安全評価とサイトの比較の実施後、2カ所以上の候補サイトが選定されるが、連邦エネルギー庁(BFE)は、NAGRAがBFEへ候補サイトを提案するのは2015年初頭となる見込みとしている。その後ENSIが2016年初頭にかけて、NAGRAの提案及び関連文書を詳細に審査し、見解を取りまとめる見込みである。

 

【出典】

 


  1. NAGRA、技術報告書10-01「特別計画第2段階における予備的安全評価のための地質学的知見の評価 補完的な地質学的調査の必要性の検討」、2010年10月、
    http://www.nagra.ch/data/documents/database/dokumente/%24default/Default%20Folder/Publikationen/NTBs%202001-2010/NTB%2010-01.pdf []
  2. ENSI、NAGRA技術報告書10-01「特別計画第2段階における予備的安全評価のための地質学的知見の評価」に対する見解(2011年3月)
    http://static.ensi.ch/1314197404/ensi_33_115.pdf []
  3. 州安全ワーキンググループ(Arbeitsgruppe Sicherheit Kantone, AG SiKa)は、一つまたは複数のサイト地域を含む州に対する安全性の評価を実施・調整する。 []
  4. 州安全専門家グループ(Kantonale Expertengruppe Sicherheit, KES)は、安全性に関する資料の評価において州を支援し、助言する。 []
  5. 日本の内閣に相当する。 []
  6. 原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit, KNS)は、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  7. 地層処分場専門家グループ(Expertengruppe Geologische Tiefenlagerung, EGT)は、地層処分場に関する地球科学的問題及び建設技術的な問題でENSIに助言する。 []

スイスの連邦評議会1 は2014年6月25日に、「廃止措置・廃棄物管理基金令」(以下「基金令」という)の改正案を閣議決定した。今回の改正は、将来の原子力発電所の廃止措置や放射性廃棄物管理に必要な費用を基金によって賄えなくなった場合、連邦が不足分を補填するようなリスクの低減を目的としたものであり、2015年から発効となる。基金令のうち、放射性廃棄物管理基金に関係する改正では、不測の事態に備えた予備費(コンティンジェンシー)として放射性廃棄物管理の費用見積に30%を上乗せするとともに、基金への拠出終了時期を原子力発電所の運転終了から廃止措置完了まで延長することにより、原子力発電事業者の費用負担を増加させている。他方、早期閉鎖する原子力発電事業者に対しては、拠出金負担総額の軽減措置を盛り込んでいる。

今回の改正のもう一つの背景となっているのは、スイスのエネルギー政策である「エネルギー戦略2050」により、2011年3月の東京電力(株)福島第一原子力発電所事故を受け、段階的脱原子力の取組を進めていることである。原子炉の運転期間に法的な制限は設けていないものの、新設やリプレースは認めない方針となっている。今回の改正案は、原子力発電事業者に対して拠出金軽減のインセンティブを与えることにより、原子炉の早期閉鎖を促すものとなっている。

 

廃止措置基金と放射性廃棄物管理基金

スイスでは、バックエンドに関連して廃止措置基金と放射性廃棄物管理基金の2つの基金が設置されている。両基金の目的は以下の通りであり、基金令は、これら2つの基金の設置・運営に関する詳細を規定している。

  •   廃止措置基金:原子力施設の廃止措置費用の資金確保・管理を目的とする。
  •   放射性廃棄物管理基金:原子力発電所の運転終了後の期間において、放射性廃棄物管理に係る費用の資金確保・管理を目的とする。2

放射性廃棄物管理基金及び廃止措置基金に関連する主な現行の規定と、今回の改正における変更点を下表で比較した。

放射性廃棄物管理基金及び廃止措置基金に関連する主な規定と変更

 

現行の基金令
(2014年末まで有効)

改正した基金令
(2015年1月1日発効)

対象となる費用

原子力発電所の運転終了後の期間において、運転にともなって発生した放射性廃棄物及び使用済燃料の管理に関する全ての費用及び原子力施設の廃止措置の際に生じる全ての費用

費用見積

5年毎に事業者の見積に基づき算定(第4条)

費用見積における想定運転期間

明示なし

原則50年(第4条)

拠出金負担者

原子力発電事業者(第6条)

基金への拠出期間

運転開始から運転終了まで(第7条)

運転開始から廃止措置終了まで(第7条)

拠出金の算定

・廃棄物管理費用
・廃止措置費用
・基金の管理費用
・運転期間想定:50年
・基金の投資利回り:5%
・物価上昇率:3%
を元に算定
(第8条)

・廃棄物管理費用に30%の予備費を上乗せした費用
・廃止措置費用に30%の予備費を上乗せした費用
・基金の管理費用
・運転期間想定:50年
・基金の投資利回り:3.5%
・物価上昇率:1.5%
を元に算定
(第8a条)

原子炉早期閉鎖(50年未満)に関する規定

なし

拠出額の分担計算において、50年運転後に閉鎖したものとみなして計算。早期閉鎖年数分の差額は、拠出済みと見なされる。
(第9c条)

2014年6月25日の連邦エネルギー庁(BFE)のプレスリリースによると、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金の両基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)は、改正した基金令に基づく2015年以降の事業者拠出金の額を2014年末までに決定する予定である。

 

基金令の改正経緯

1.拠出金の増額の必要性

スイスでは5年に1度、原子力発電事業者が廃止措置及び放射性廃棄物管理に係る費用の見積りを作成し、これを元に基金委員会が、事業者が支払う拠出金の額を決定する。この見積りは、これまでに2001年、2006年、2011年に実施されているが、この間の見積額の増加傾向が著しいことに加え、両基金の運用実績も目標に到達していない。このため、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金は共に廃止措置・放射性廃棄物管理のために将来必要となる費用を賄えなくなるリスクが高まっている。また、万一、原子力発電事業者が基金への拠出義務を履行できない場合、連邦による不足分の補填が必要となる可能性がある。政府は、こうしたリスクの低減を今回の基金令改正の目的に挙げている。

今回の基金令の改正では、将来的な費用増大を中心とした不確実な要素に対応するためとして、見積られた費用に対して30%の予備費3 を上乗せする内容である。あわせて、拠出期間を原子炉の廃止措置終了までに延長することにより、基金への積み立て不足の回避を図っている。廃止措置には15年から20年を要すると見込まれており、この期間相当分、拠出年数が増加することになる。原子力発電事業者としては、運転終了後は販売収入がなくなることから、30%の予備費とともに負担は大幅に増加することになる。

2. 原子炉の早期閉鎖に関する規定の追加(第9c条)

基金令の改正案は2013年8月に公表され、意見聴取に付された。連邦上下両院は、それぞれ2013年6月と9月に、基金への拠出に関連して、原子炉の早期閉鎖に対するインセンティブを与えるよう求める動議「古い原子炉の自主的な早期閉鎖促進」を採択した。これを受け、政府は2013年11月の意見聴取終了後に基金令改正案に対して、原子炉の早期閉鎖に関する規定(第9c条)を追加した。これにより、費用算定上の基準である50年より早期に閉鎖する原子炉は、閉鎖時点で50年分が拠出済みと見なされる。早期に閉鎖するほど、廃止措置・廃棄物管理基金の拠出負担総額が軽減できる仕組みである。なお、こうした低減措置が適用された場合には基金に払い込まれる拠出金が減少することになるが、30%の予備費の上乗せや拠出期間の延長等により、原子力発電事業者が払い込む拠出金の額を増額することで減少分の埋め合わせを図っている。

3. 基金令改正をめぐる事業者の反応

今回の閣議決定に先立ち、2013年8月から11月にかけて実施された基金令改正案に対する意見聴取手続きでは、原子力発電事業者各社から、30%にのぼる予備費の上乗せは「負担が大きすぎる」とする意見が寄せられていた。

このような意見があったものの、連邦評議会が2014年6月25日に閣議決定を行ったことから、各原子力発電事業者はプレスリリースを出し、予備費の上乗せは「不要である」「事実に即した根拠に基づかない、政治的な決定である」との見解を表明している。

 

【出典】

【2015年10月22日追記】

スイスの連邦評議会4 は2015年10月8日に、「廃止措置・廃棄物管理基金令」(以下「基金令」という)の改正案を閣議決定した。今回の改正案は、2015年1月1日に発効した基金令の改正に加えて、基金のガバナンス及び監督強化に係る改正が主となっており、2016年1月1日に発効する。

今回閣議決定された改正案の主な内容は、以下の通りである。

  • 政府機関の職員による基金委員会委員の兼任禁止
    基金委員会5 の独立性保持の観点から、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)や連邦原子力安全検査局(ENSI)の職員による委員の兼任が禁止された(基金委員会傘下の小委員会を含む)(第21条第2bis項)。
  • 基金に対する監督強化
    環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に対して、新たに基金の組織・運営についての規則を定める権限が与えられた(第29a条第2項a)。さらに、UVEKは、原子力発電事業者が負担する拠出金の算定において、枠組等に大きな変動が生じた場合、連邦財務省及び連邦経済・教育・研究省と合意の上で、算定根拠となる投資利回り、物価上昇率及び予備費の調整を行う役割を担う(第8a条第2項)。
  • 原子力発電事業者による費用見積報告書に係る手続きの明文化
    現行の基金令は、「廃止措置費用及び廃棄物管理費用の想定額は、5年毎に各原子力施設の所有者の申告に基づいて算出される」と規定しているのみであるが、今回の基金令の改正案では、現在既に運用されている費用算定の流れが明文化された。具体的には、事業者が原則5年毎に費用見積りの報告書を作成し(第4条第1項)、この報告書を連邦原子力安全検査局(ENSI)及び会計専門家が審査した上で(第4条第4項)、審査を経た報告書に基づいて、基金委員会が廃止措置費用、廃棄物管理費用の見積額の確定を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に申請する(第4条第5項)、という手続きが規定された。

今回の基金令の改正に基づいて、原子力発電事業者は廃止措置費用及び放射性廃棄物管理費用の見積りを実施し、2016年に公表する予定である。

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. 原子力発電所の運転中に係る放射性廃棄物管理費用は、原子力発電所の所有者が引当金を計上することにより確保している。 []
  3. この予備費が30%に設定された明確な算定根拠は示されていない。 []
  4. 日本の内閣に相当 []
  5. 廃止措置基金、廃棄物管理基金に対して、両基金を管理する1つの基金委員会が設置されており、費用の想定額や拠出金額を決定している。現在の基金委員会の委員でUVEKやENSIの職員による兼任はない。委員の名簿については以下を参照。https://www.admin.ch/ch/d/cf/ko/gremium_10223.html []
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地質学的候補エリアに対応する「地上施設設置区域」の絞り込み状況(BFEウェブサイトより作成)

スイスにおける地層処分場のサイト選定手続きを主導する連邦エネルギー庁(BFE)は、2014年5月24日付のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定プロセスの第2段階の実施項目の1つである地上施設の設置区域の選定結果を取りまとめた。今後は、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が6つの地質学的候補エリアについて、地上施設の設置区域と地下施設を含めて優劣を比較することになっている。

それぞれの地質学的候補エリアに対する地上施設の設置区域の選定作業は、第2段階開始直後の2012年1月から開始され、最初にNAGRAが6つの地質学的候補エリアごとに1~4カ所、合計20カ所を提案した 。BFEが主導して設置し、州と自治体の当局のほか、一般市民が参加する地域会議では、NAGRAによる地上施設の設置区域案のみならず、独自に地上施設の設置区域案を追加し、地上インフラの形態、設置、開発等について検討を行った。6つの地質学的候補エリアの合計で、当初のNAGRA案(20カ所)に加えて14カ所を追加検討しており、これら合計34カ所から、2014年5月までに7カ所の地上施設の設置区域が選定された

それぞれの地質学的候補エリア及び対応する地上施設の設置区域の場所、処分場の種類は以下の表の通りである。

地質学的候補エリア名 地上施設設置区域の名称 地上施設の設置区域が位置する自治体の名称 地上施設の設置区域が位置する州 設置される処分場の種類
ジュラ東部 JO-3+ フィリゲン アールガウ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用
ジュラ・ジュートフス JS-1 デニケン ゾロトゥルン州 低中レベル放射性廃棄物用
北部レゲレン NL-2 ヴァイアッハ チューリッヒ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用
NL-6 シュターデル
ジュートランデン SR-4 ノイハウゼン アム ラインファルとベリンゲンをまたぐ シャフハウゼン州 低中レベル放射性廃棄物用
ヴェレンベルグ WLB-1-SMA ヴォルフェンシーセン ニドヴァルデン州 低中レベル放射性廃棄物用
チューリッヒ北東部 ZNO-6b ライナウ、マルターレン、ベンケンをまたぐ チューリッヒ州 低中レベル放射性廃棄物用/高レベル放射性廃棄物用

2014年5月24日のBFEのプレスリリースによると、今後、NAGRAは、これら7つの地上施設の設置区域及び地下施設に係る建設上のリスク評価を実施し、環境影響評価の仕様書を作成する。その後、予備的安全評価を実施し、候補として検討されているサイト(地下施設及び付属する地上施設の設置区域を含む)について安全面から比較を行う1 。この検討結果をもとに、NAGRAが低中レベル用、高レベル用の地層処分場のそれぞれについて、2カ所以上の候補サイトを提案する。NAGRAの提案を連邦原子力安全検査局(ENSI)等が審査し、連邦評議会2 の承認を受けることによって、2カ所以上の候補サイトが確定する流れである。確定時期は2017年と見込まれている。

引き続き第3段階では、第2段階で確定した候補サイトから、最終的に低中レベル用、高レベル用の地層処分場それぞれ1カ所のサイトを選定する。低中レベル放射性廃棄物処分場が高レベル放射性廃棄物処分場と同じサイトとなる可能性もある。特別計画に従って、第3段階でNAGRAは提案したサイトについて概要承認の申請書をBFEに提出し、連邦評議会が概要承認を発給することになっている。また、概要承認を有効とするためには、連邦議会の承認が必要である。さらに、連邦議会の承認後の一定期間内に、概要承認を不服とする国民投票3 が実施されない場合、または国民投票で概要承認を不服とすることが否決された場合、地層処分場のサイトが確定することになる。

 

【出典】


  1. ENSI、予備的安全評価と安全性の比較に係わる要件、2010年4月
    http://static.ensi.ch/1362658841/ensi_33_075_anforderungen_provisorische_sicherheitsanalysen.pdf
    [
    ]
  2. 日本の内閣に相当 []
  3. スイス連邦憲法第141条では連邦議会の承認から100日以内に5万人の署名が集まれば、国民投票の実施が可能である。 []

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2014年4月15日に発行したニュースレター1 において、放射性廃棄物の地層処分場のサイト選定スケジュールの改訂を公表した。改訂されたスケジュールでは、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の操業開始が2060年頃(改訂前:2050年頃)と10年遅らせており、低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場の操業開始は2050年頃(改訂前:2035年頃)と15年遅らせることとなっている。

○サイト選定スケジュール

スイスでは、原子力令によって策定され、連邦評議会2 が2008年4月に承認した特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて3段階からなるサイト選定プロセスが実施されており、連邦エネルギー庁(BFE)はスケジュールを含めた計画全体の進捗管理・監督を行っている。2014年4月現在、サイト選定プロセスは第2段階にあり、地層処分場の地上施設の設置区域の絞り込みが行われている。今回、BFEがニュースレター及びBFEウェブサイトにおいて公表したサイト選定スケジュールは、下表の通りである。

 

スイスにおける地層処分場サイト選定スケジュール(改訂後)

第1段階(終了)

2008年~2011年

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の技術的観点での提案に基づいて、6つの地質学的候補エリアを確定

第2段階

2011年~2017年半ば(5.5年)

(改訂前:~2016年)

3年間:地質学的候補エリアの調査

2014年末:NAGRAが2カ所以上の候補サイトを提案

2.5年間:提案された候補サイトの検証、意見聴取(3カ月間)

2017年半ば:連邦評議会による候補サイト承認(改訂前:2016年)

第3段階

2017年半ば~2027年(10年)

(改訂前:2016年頃~2019年頃)

3年間:候補サイトの詳細調査

2020年頃:NAGRAによる処分サイトの提案

2年間:NAGRAによる概要承認申請準備

2022年頃:概要承認申請

5年間:概要承認手続き、意見聴取

2027年頃:連邦評議会による概要承認発給(改訂前:2019年頃)

2028/29年頃:概要承認を連邦議会が承認、連邦議会が承認した後、一定数の署名があれば、国民投票の実施

地下特性調査施設の建設・操業、地層処分場の建設

2029年以降

高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の操業開始

2060年頃(改訂前:2050年頃)

低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場の操業開始

2050年頃(改訂前:2035年頃)3

(BFEニュースレター及びウェブサイトをもとに作成)

 

2008年の特別計画策定当時、サイト選定プロセス全体の実施期間は約10年と見込まれていた。しかし、プロセスに組み込まれている州や地域の参画に関する手続きが複雑であり、前例がない規模での公衆参加型のプロセスであることから、BFEは当初の約10年の実施期間が短かったと判断し、上記の通りスケジュールの改訂を決定した。

また、連邦エネルギー庁(BFE)は、連邦国土計画庁(ARE)、連邦環境庁(BAFU)、連邦原子力安全検査局(ENSI)、原子力安全委員会(KNS)、州、地域会議、ドイツからの代表及びNAGRAと、サイト選定プロセスの第3段階の実施内容の策定に向けた協議を行っている。この協議の結果は2014年5月に公表される予定である。

○サイト選定プロセス長期化の影響

ニュースレターによると、NAGRAは、国内の中間貯蔵施設が十分な容量を確保しており、原子力発電所の廃止措置により発生する放射性廃棄物を勘案しても、サイト選定プロセスの長期化によって収容能力が不足することはないとの見方を示している。NAGRAは、2016年に連邦評議会への提出が予定されている「放射性廃棄物管理プログラム」4 において、処分場操業までの中間貯蔵についても報告を求められている。

また、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアは、ニュースレターにおいて、サイト選定プロセスの長期化により放射性廃棄物管理費用5 は増加するものの、放射性廃棄物管理基金の積立金に対する利子も増加するため、費用増加による影響は小さいとしている。2011年時点の見積額からの増額は5%以下に留まるとの見通しを示している。今回のサイト選定スケジュールの改訂とその影響については、2016年に更新予定の費用見積に反映されるとしている。

 

【出典】


  1. 2011年11月にサイト選定の第1段階が終了したことを受けて、2012年12月に連邦エネルギー庁(BFE)は、一般を対象として地層処分に関連する内容を取り扱う「ニュースレター『地層処分場』」の発行を開始した。これまで不定期に12回発行された。http://www.bfe.admin.ch/radioaktiveabfaelle/01277/01309/01328/index.html?lang=de&dossier_id=05183 []
  2. 日本の内閣に相当。 []
  3. BFEのニュースレターにおいて、処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は低中レベル放射性廃棄物用の処分場の操業開始予定が15年遅れになった理由を説明している。連邦評議会は、NAGRAが2008年に提出した放射性廃棄物管理プログラムを2013年8月に承認した際に、2016年提出予定の次回の管理プログラムにおいて、低中レベル放射性廃棄物についても地下研究所を設置し、そこでの研究成果を処分場の建設許可申請書に反映することを含めた内容とすることを求めた。NAGRAはこの連邦評議会からの指示を反映させるためには、サイト選定プロセスの10年間の遅延に加え、さらに5年間の期間延長が必要になると見込んでいる。 []
  4. 原子力法第32条は、処分義務者が放射性廃棄物管理プログラムを策定し、連邦評議会が作成・更新する期限を定めるとしており、原子力令第52条では同プログラムの5年ごとの更新が規定されている。NAGRAは2008年に初の管理プログラムを提出した。連邦評議会は2013年8月に同プログラムを承認するとともに、サイト選定スケジュールの遅延等を考慮し、次回のプログラム提出を2016年とするようNAGRAに指示した。 []
  5. 「廃止措置・廃棄物管理基金令」に基づいて、スイスニュークリアは5年ごとに廃止措置及び放射性廃棄物管理費用の見積りを行っている。 []

スイス連邦エネルギー庁(BFE)は、2014年2月3日付のプレスリリースにおいて、外部機関に委託して実施した社会学的調査の報告書『地層処分場サイト選定プロセスにおける地域参加の構築-実施と経験』を公表した。スイスのサイト選定プロセスでは、過去に類似例がない大規模な地域参加の取組が進行している最中であり、本調査は地域参加の実際を、同時並行的に追跡・記録・分析することを目指している「地域参加調査」プロジェクトの一環として実施されたものである。サイト選定プロセスの第2段階が終了する(2016年の見込み)まで継続する計画であり、今回の報告書はその中間成果として取りまとめられたものである。

スイスでは、2008年に3段階からなるサイト選定プロセスが開始され、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が6つの地質学的候補エリアを提案した。それぞれの地質学的候補エリアを取り囲む形で設定されたサイト地域に対して、BFE主導のもと、2009年から2011年にかけて、6つの地域会議が設置された。このような地域参加を通じて、スイスでは現在、500を超えるステークホルダーがサイト選定プロセスに関与している。

BFEは、今回の社会学的調査の目的について、「スイスにおける地域参加の構築に係る知見を確かなものとし、現行のプロセスのみならず、他の類似プロジェクトにも役立てたい」と説明している。

BFEのプレスリリースでは、本調査の結論を以下のように要約して示している。

  • 実施方法と概念
    ほとんどの地域が、BFEが例示した地域会議の組織構成1 を踏襲した。サイト地域の地方自治体の代表により構成される準備チームを設置し、準備調整役を置く方法が適切であった。
  • BFEによる地域会議の設置方針提示
    自らのアイデアを活用することを望む準備チームがある一方で、BFEに対し、地域会議をどのように設置すれば良いか、より具体的に示すよう要望する準備チームもあった。設置手順を受け入れてもらうためには、実際の設置作業において地域が一定の裁量権を有していることが重要である。
  • 参加者の募集
    すべてのサイト地域で地域会議が設置されたが、いずれの地域でも参加者を集めるのに苦労した。
  •  地域会議の構成
    ほとんどのサイト地域で、地層処分場について賛成・反対双方の立場にある種々の団体・組織・政党・住民の参加を得ることに成功したが、一般的に主張の弱い傾向がある女性や若年層を引き入れることが非常に難しかった。
  •  参加の可能性と範囲
    準備チームのメンバーと住民の双方が、サイト選定プロセスに参加することと、その地域における地層処分場の立地に同意することは同一ではないということをよく理解していることが重要であった。また、地域会議がどのような枠組みでサイト選定における意思決定に関与するのかを示すことが重要である。
  • 作業時間
    BFEは当初、地域会議の設置に要する作業時間を過小に見積っていた。他に職業を持ちながら議員を務める兼業議員が長時間に亘る関与を求められるケースもあった2

 

 BFEのプレスリリースによると、今回の社会学的調査は、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の「放射性廃棄物関連研究プログラム(2013年~2016年)」3 の一環として実施されている研究プロジェクトであり、処分場のサイト選定プロセス自体とは異なる枠組みで実施されている。今回取りまとめられた報告書は、地域会議の2009年から2011年にかけての設置作業に注目したものであり、この作業の実経験から得られた重要な教訓(Lessons-Learned)を取りまとめている。

 

【出典】


  1. 特別計画「地層処分」地域参加の方針:第1段階と第2段階における基礎と実施
    http://www.news.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/22188.pdf
    地層処分場への抵抗が根強いヴェレンベルクでは 、地域会議設置の準備チームをメンバーとする組織「プラットフォーム・ヴェレンベルグ」が設置された。同プラットフォームは地域会議との名称は使用していないが、BFEが特別計画「地層処分」地域参加の方針で提示した地域会議の構成にかなり近い。
    「プラットフォーム・ヴェレンベルグ」ウェブサイト
    http://www.plattform-wellenberg.ch/index.php/plattform-wellenberg-sp-387/organisation []
  2. スイスでは、議会の議員やその他の公的な職務を、他に本業としての職業を持ちながら務めることが一般的である。 []
  3. UVEKの「放射性廃棄物関連研究プログラム」には、放射性廃棄物の処分概念等をテーマとする技術研究プロジェクトに加え、「サイト選定プロセス」、「倫理と法律」に関連する人文社会学的な研究プロジェクトも含まれている []

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2013年11月20日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物処分に関する世論調査の結果を公表し、スイス国民は安全性を重要視すること、処分は技術的・政治的に解決可能であること、国外処分は多数が選択肢として考えていないとの結果を得たとしている。この世論調査は2013年夏に、NAGRAが外部の世論調査会社に委託して実施したものであり、スイス国内から無作為に抽出した1,000人以上を対象としたアンケート調査が行われたものである。

NAGRAはこれまでに同様な世論調査を2003年と2005年、2007年に実施している。スイスでは2008年から、3段階からなるサイト選定が進められており、現在、第2段階にある1 。今回のNAGRAの世論調査は、サイト選定が開始された以降で初めての調査である。今回、NAGRAが世論調査結果の概要として公表した回答内容と回答者の割合は以下の通りである。

  • 地層処分場のサイト選定においては、地元による受け入れ支持の度合いではなく、安全性が最も重要である: 81%
  • 「放射性廃棄物の安全な処分は可能である」という科学者を信用する: 68%
  • 放射性廃棄物処分問題は政治的に解決可能である: 68%
  • 放射性廃棄物処分の問題は可能な限り早期に解決されるべきである: 67%
  • 近隣に地層処分場が立地することになった場合、その結果を受け入れる: ほぼ60%
    • しかし、近隣への地層処分場立地に対しては否定的な意見である: 上記回答者のうちの45%
  • 放射性廃棄物はスイス国内において処分すべきである: 81%

以前の世論調査結果と比較して、『「放射性廃棄物の安全な処分は可能である」という科学者を信用する』という回答率が徐々に高まっており(2003年:61%、2005年:65%、2007年:66%、2013年:68%)2 、NAGRAは、放射性廃棄物の地層処分に対する技術的な解決可能性に対する信頼が徐々に高まっているとの見方を示している。また、サイト選定が開始される前の2007年の調査では、「地層処分場において放射性廃棄物を可能な限りに迅速に処分すべきである」と回答した人の割合は83%であったが、今回の調査でNAGRAは「放射性廃棄物処分の問題は可能な限り早期に解決されるべきである」と回答した人の割合が67%へと低下したことを指摘している。

 

【出典】


  1. 第2段階に入った直後の2012年1月にNAGRAは地層処分場の地上施設が設置される可能性がある20カ所を提案し、現在絞り込みが行われている 。 []
  2. NAGRAプレスリリース、2004年3月16日2005年5月31日 及び 2007年7月17日 を参照 []

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)と連邦エネルギー庁(BFE)は、2013年9月16日に、地層処分場の地上施設の安全性と地下水の保護について評価した報告書を公表した。本報告書においてNAGRAは、適切なサイトを選定し、地上施設の適切な設計と操業が実施されれば、施設の安全な建設と操業は可能であり、地下水に特別な危険を及ぼすものではないと結論付けている。

2012年1月のNAGRAによる地上施設の設置区域20カ所の提案以降、地域参加を促進するためにBFEが主導して設置した「地域会議」 では、NAGRAが提案した地上施設に対して検討を加えてきた。地域会議は地上施設の安全性や事故の可能性を特に注目してきたとしている。

2012年11月にBFEは、NAGRAに対して、地上施設を設置することによる影響からの住民と環境の保護についての報告書の作成を要請した。BFEのプレスリリースによると、報告書については、地上施設に関する知見の水準が今後段階的に向上することを考慮に入れるため、BFEは個別のサイトに限定しない形で考察すべきとしたとしている。

NAGRAが報告書のドラフトを作成した後、BFE、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)、環境に関する審査機関である連邦環境庁(BAFU)は、報告書のドラフトを検討した。さらに、2013年4月から6月にかけて、州側の3つの専門家グループ(サイト地域所在州技術調整グループ1 、州安全ワーキンググループ(AG SiKa)2 、州安全専門家グループ(KES)3 )が環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)設置の処分場諮問委員会4 と協議を行った。協議の結果に基づいて、NAGRAは報告書のドラフトを修正し、報告書の最終版を2013年8月30日にBFEへ提出した。なお、今回NAGRAが公表した報告書では、原子力安全、放射線防護、操業時に原子力事故ではない通常の事故が発生した場合の安全性、建設段階及び操業段階での地下水の保護に関する予測が示されている。

NAGRAの報告書については、ENSIとBAFUが見解を表明している。ENSIは、施設の概念、操業状況の経過、インベントリについての評価は妥当であり、地上施設の安全性、住民と環境の保護、地上施設の許可が疑問視される理由はないとしている。BAFUも報告書でのNAGRAの見解に同意しており、地上施設をAu水資源保護領域5 に建設した場合でも、地下水に特別な危険を及ぼすものではないとしている。また、BFEは、今回の報告書の役割、目的、意義を説明する付属文書を公表している。

特別計画「地層処分場」に基づくサイト選定の第2段階では、低中レベル放射性廃棄物用、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場について、それぞれ2カ所以上の候補サイトの選定が行われる。候補サイトの選定は、今後実施される予備的安全評価や地上部分・地下部分・アクセス構造物の安全性の評価に基づいて行われる。なお、今回のNAGRAの報告書とENSI及びBAFUの見解は、今後開催予定の地域会議に提出される予定である。

 

【出典】


  1. 安全性、地域開発計画、コミュニケーション及び地域参加に関して一つまたは複数のサイト地域 を含む州の活動を調整する。各グループの役割については以下を参照。Members of official bodies involved in the search for suitable sites and their roles, 2013年7月24日 http://www.bfe.admin.ch/radioaktiveabfaelle/01277/05193/index.html?lang=en&dossier_id=05198 []
  2. 一つまたは複数のサイト地域を含む州に対する安全性の評価を実施・調整する。州安全専門家グループに責任を負う。 []
  3. 安全性に関する資料の評価において州を支援し、助言する。 []
  4. 地層処分場のサイト選定手続の実施においてUVEKに助言をする 。 []
  5. 利用可能な地下水領域とその境界部分を指す。 []

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)と連邦エネルギー庁(BFE)は、2013年9月5日付のプレスリリースにおいて、地層処分場の地上施設の設置区域としてNAGRAが提案していた20カ所について絞り込み作業を実施した結果、最初の1カ所として低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場の地上施設の設置区域をNAGRAが提案したことを公表した。

スイスでは全ての放射性廃棄物を地層処分する方針である。特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて、3段階のサイト選定を実施しており、2011年11月からは第2段階(低中レベル放射性廃棄物用、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場について、それぞれ2カ所以上の候補サイトの選定)が進められている。地層処分場の地上施設を設置する可能性があるエリアは「計画範囲」と呼ばれており、地下施設が建設される可能性がある6つのそれぞれの「地質学的候補エリア」から5kmの範囲内が計画範囲となっている。

第1段階では6つの地質学的候補エリアが確定しており、第2段階に入った直後の2012年1月にNAGRAは、地上施設の設置区域として合計で20カ所を提案した。地域参加を促進するためにBFEが主導して設置した「地域会議」では、NAGRAが提案した地上施設の設置区域案について検討を加えることとなっており、NAGRAの提案とは別に地域会議が独自の地上施設の設置区域案の提案をすることも可能である。今回のNAGRAのプレスリリースによると、地域会議での検討を踏まえ、NAGRAは、計画範囲ごとに1カ所の地上施設の設置区域を提案することになっており、提案するためには設置区域の調査を実施し、調査報告書を作成しなければならないとされている。

今回NAGRAは、低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場の計画範囲であるヴェレンベルグ1 について、絞り込みの結果としては初めてとなる地上施設の設置区域1カ所を提案した2 。同時にNAGRAは同設置区域に関する調査報告書3 を公表し、この報告書をヴェレンベルグに設置された地域会議「プラットフォーム・ヴェレンベルグ」の9月5日の総会に提出した。調査報告書では、提案の根拠、地上施設の配置、形態、開発案等が記述されている。また、BFEプレスリリースによれば、調査報告書は、BFEが今後実施する地層処分場が立地する地域に与える環境影響と社会影響に関する調査の基礎になるとされている

今後数週間のうちに、ヴェレンベルグ以外の5つの地域会議の総会が、地上施設の設置区域に関する見解を示す予定である。NAGRAはこれらの見解を踏まえ、絞り込みを行い、計画範囲ごとに1カ所の地上施設の設置区域を提案し、調査報告書をそれぞれの地域会議の総会へ提出することとなる。地域会議の総会の開催と総会でなされる見解表明の時期が各々異なるため、NAGRAによる調査報告書の提出及び1カ所の地上施設の設置区域の提案も別々の時期に行われることとなる。

計画範囲ごとに絞り込まれた地上施設の設置区域について、NAGRAは、建設技術に係るリスク評価を実施し、環境影響評価の仕様書を作成し、予備的安全評価及び安全性の観点からサイトの比較作業を行う。これらの作業を踏まえて、NAGRAが低中レベル放射性廃棄物用、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場のそれぞれについて、最低2カ所の候補サイト及びこれらの候補サイトに対する地上施設の設置場所を提案する予定である。

 

【出典】

【2013年10月4日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、「ヴェレンベルグ」に続いて、「ジュラ・ジュートフス」及び「ジュラ東部」における地層処分場の地上施設の設置区域の候補を1カ所に絞り込み、2013年9月26日にそれぞれの地域で開催された地域会議の総会に調査報告書を提出したことを公表した。

NAGRAの調査報告書の提出を受けて、地域会議を主導する連邦エネルギー庁(BFE)は、ジュラ東部のサイト地域の住民を対象として、絞り込み結果及び今後のサイト選定の進め方4 に関する説明会を2013年10月19日に実施するとしている。ジュラ・ジュートフスの説明会は2013年11月7日を予定している。

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「提案された地上施設の設置区域」(NAGRA、技術報告書11-01「特別計画地層処分場第2段階 地層処分場の地上施設の設置区域の配置及びその開発 別冊」、2011年12月より))〔※クリックで拡大表示〕

ジュラ・ジュートフス及びジュラ東部における地上施設の設置区域の1カ所の候補については、NAGRAが提出した調査報告書から整理すると以下の通りである。

❏ジュラ・ジュートフス

ジュラ・ジュートフスは、低中レベル放射性廃棄物用の処分場のみを立地する可能性がある地質学的候補エリアである。ジュラ・ジュートフスの地域会議は、NAGRAが2012年1月に提案した地上施設の設置区域案を拒否し、独自の提案も行わなかった。その後、NAGRAは州などと協議し、設置区域案の絞り込みを行い、最終的に右の地図にあるJS-1を選定した。

❏ジュラ東部

ジュラ東部は、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用のいずれかの処分場、または両方の種類の処分場を立地する可能性がある地質学的候補エリアである。ジュラ東部の地域会議は、NAGRAが2012年1月に提案していたJO-3の場所を若干変えるよう要請しており、NAGRAが提案した4カ所に加え、合計6カ所についてNAGRAと地域会議がこれまで検討してきた。この検討を踏まえ、NAGRAは設置区域6カ所の中からJO-3+を選定した。JO-3+では、低中レベル放射性廃棄物用処分場または高レベル放射性廃棄物用処分場、あるいはそれらの両方を共同立地して建設する可能性があるとしている5

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JO-3とJO-3+との位置関係(ファクトシート「サイト地域ジュラ東部での低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域JO-3+」及びNAGRAウェブサイトより作成)

【出典】

【2013年12月9日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2013年12月4日のプレスリリースにおいて、低中レベル放射性廃棄物用の地層処分場の地質学的候補エリアである「ジュートランデン」における地上施設の設置区域の候補を1カ所に絞り込み、2013年12月4日に開催された地域会議の総会に調査報告書を提出したことを公表した。

連邦エネルギー庁(BFE)は、ジュートランデンのサイト地域の住民を対象として、絞り込み結果及び今後のサイト選定の進め方に関する説明会を2014年5月10日に実施するとしている。なお、説明会で行う現地視察が積雪期となるため、説明会の開催を来春まで遅らせるとしている。

 

ジュートランデンにおける地上施設の設置区域「SR-4」

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「ジュートランデンにおける地上施設設置区域の地理的状況」(NAGRAファクトシート「サイト地域ジュートランデンでの低中レベル放射性廃棄物用の地上施設設置区域SR-4」より作成)

NAGRAの調査報告書によれば、NAGRAが2012年1月に提案した地上施設の設置区域の候補案(右の地図のSR-1、SR-2、SR-3)をジュートランデンの地域会議が拒否したことをうけ、NAGRAは地域会議と代替案を協議し、追加の設置区域の候補2カ所(右の地図のSR-4、SR-5)を提案した。その後、地域会議は、当初の3つの設置区域の候補案と併せたこれら5カ所について改めて検討したが、「最も不適合度が低い」場所はSR-4であるとし、「ジュートランデンに地上施設の設置に適したサイトはない」とする見解を示した。NAGRAは、地域会議及びサイト地域を含む州であるシャフハウゼン州と協議し、他の地質学的候補エリアとの比較を目的とした地上施設の設置区域として、SR-4を選定した。

 

【出典】

【2014年5月19日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2014年5月15日のプレスリリースにおいて、サイト地域である「チューリッヒ北東部」における地上施設の設置区域の候補を1カ所に絞り込み、2014年5月15日に開催された地域会議の総会に調査報告書を提出したことを公表した。

チューリッヒ北東部は、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用のいずれか、または両方の処分場を立地する可能性がある地質学的候補エリアである。

チューリッヒ北東部における地上施設の設置区域「ZNO-6b」

「チューリッヒ北東部における地上施設設置区域の地理的状況」(NAGRAファクトシート「サイト地域チューリッヒ北東部での低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域ZNO-6b」より作成)

「チューリッヒ北東部における地上施設設置区域の地理的状況」(NAGRAファクトシート「サイト地域チューリッヒ北東部での低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域ZNO-6b」より作成)

チューリッヒ北東部の地域会議は、2013年2月7日の総会において、NAGRAが2012年1月に提案した地上施設の設置区域の候補区域(ZNO-1、ZNO-2、ZNO-3、ZNO-4)を拒否した。これを受け、NAGRAは、地域会議と協議し、追加の設置区域案として、さらに4つの区域(ZNO-5、ZNO-6、ZNO-7、ZNO-8)を提示した。

その後、地域会議は2014年1月に、これらの合計8カ所について、詳細には差はあるものの、いずれも地上施設の設置には不適合であるとの見解を示した上で、他のサイト地域との比較を目的とした地上施設の設置区域を、チューリッヒ州に所在する「イーゼンブック/ベルク」地区に限ることを提案した。

これを受け、NAGRAは「イーゼンブック/ベルク」地区にあるZNO-6について、地域会議及びチューリッヒ州の関係者の意見を踏まえ、NAGRAの案の設置区域の形状を修正したZNO-6b(右図及び右下図参照)を選定した。連邦エネルギー庁(BFE)は、チューリッヒ北東部のサイト地域の住民を対象として、今回の絞り込み結果及び今後のサイト選定の進め方に関する説明会を2014年7月3日に開催する予定である。

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ZNO-6とZNO-6bとの位置関係(ファクトシート「サイト地域チューリッヒ北東部での低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域ZNO-6b」及びチューリッヒ北東部地域会議ウェブサイトより作成)

なお、NAGRAは、6つのサイト地域のうち、唯一、地上施設の設置区域の絞り込みを終えていない北部レゲレンについても、近日中に地域会議に調査報告書を提出する予定であるとしている。

 

【出典】

【2014年5月28日追記】

「NL-2とNL-6の位置関係」(ファクトシート「サイト地域北部レゲレンでの低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域NL-2」)より

「NL-2とNL-6の位置関係」(ファクトシート「サイト地域北部レゲレンでの低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域NL-2」)より

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2014年5月24日のプレスリリースにおいて、サイト地域「北部レゲレン」における地上施設の設置区域として2カ所(右写真参照)を選定し、地域会議の総会に調査報告書を提出したことを公表した。特別計画「地層処分場」に従い、以降の作業で地質学的候補エリアの相互比較を可能とするため、NAGRAは計画範囲ごとに地上施設の設置区域を1カ所以上選定することになっている。北部レゲレンでは、他の地質学的候補エリアとは異なり、地上施設の設置区域が2カ所選定された。

北部レゲレンは、高レベル放射性廃棄物用と低中レベル放射性廃棄物用のいずれか、または両方の処分場を立地する可能性がある地質学的候補エリアである。

 

北部レゲレンにおける地上施設の設置区域「NL-2」及び「NL-6」

「北部レゲレンにおける地上施設設置区域の地理的状況」(NAGRAファクトシート「サイト地域北部レゲレンでの低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域NL-2」より作成)

「北部レゲレンにおける地上施設設置区域の地理的状況」(NAGRAファクトシート「サイト地域北部レゲレンでの低中レベル/高レベル/共同放射性廃棄物用の地上施設設置区域NL-2」より作成)

NAGRAは2012年1月20日に、全体で20カ所の地上施設の設置区域案を提示していたが、このうち、北部レゲレンでは4カ所(NL-1、NL-2、NL-3、NL-4)を提示していた。北部レゲレンは、アールガウ州とチューリッヒ州にまたがっている。アールガウ州は、同州内での地上施設の設置区域の設定に否定的な見解を示し、一方、チューリッヒ州は地下水保護の観点から、これら4カ所以外の地上施設の設置区域案を提示するようNAGRAに要求した。

これを受けNAGRAは、2013年3月12日に行われた地域会議の会合において、地上施設の設置区域案を追加的に4カ所(NL-5、NL-6、NL-7、NL-8)提示する一方、地域会議側も当初の提案にあったNL-2の位置を南側に移動する案「NL-2a」を検討するようNAGRAに求めた。その後、NAGRAは地下水保護を重視するチューリッヒ州の要請に応えるため、追加の地上施設の設置区域案「NL-9」を2013年4月に提示した。

地域会議は、これら合計10カ所の地上施設の設置区域案を検討し、不適合度が低い区域案は「NL-2」と「NL-6」であるとの見解を示した。 これを受け、2014年5月24日にNAGRAは、「NL-2」と「NL-6」をともにサイト地域「北部レゲレン」における地上施設の設置区域に選定した(右図参照)。

これら2カ所の地上施設の設置区域は、いずれもチューリッヒ州が指定する地下水保護区域の内部、あるいはその辺縁にある。これを問題視するチューリッヒ州に対して、NAGRAは今後のサイト選定手続きの過程で、地域会議やチューリッヒ州などと協力しながら、解決を図っていくとしている。

なお、連邦エネルギー庁(BFE)は、北部レゲレンのサイト地域の住民を対象として、今回の地上施設の設置区域の絞り込み結果及び今後のサイト選定の進め方に関する説明会を、2014年6月16日と2014年7月7日に開催する予定である。

 

【出典】

 


  1. ヴェレンベルグでは、当時のヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)が低中レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設を提案し、1995年と2002年の二度にわたる州民投票の結果、建設を断念した経緯がある 。GNWは2003年に解散した。 []
  2. 2012年1月にNAGRAが提案したヴェレンベルグの地上施設の設置区域は1カ所であったことから、今回は同設置区域の提案を再確認する意味合いが強い。 []
  3. 作業報告書NAB13-61「ヴェレンベルグでの低中レベル放射性廃棄物用地層処分場の地上施設設置区域“WLB-1-SMA”計画調査報告書」(2013年9月) http://www.nagra.ch/display.cfm?id=101857&isAdmin=1

    []

  4. 特別計画に基づくサイト選定手続きの第2段階では、NAGRAが計画範囲ごとに1カ所の地上施設の設置区域を提案した後、低中レベル放射性廃棄物用、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場について、それぞれ2カ所以上の候補サイトを選定することとなっている。 []
  5. ジュラ東部での地上施設の設置区域は3つの場合ともに同じ場所である。 []