フランスの規制機関である原子力安全・放射線防護機関(ASNR)は、2025年12月4日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(Andra)が2023年1月にフランス政府に提出した地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書 に関して、技術審査の結果に関する意見書を公表した。今回公表されたASNRの意見書は、Cigéoの安全性に関して、これまでに3回にわたり公表されたASNRの廃棄物常設専門家グループ(GPD)の意見書 や、ASNRの意見書草案に関するステークホルダとの協議を経て決定され、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)及び原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)に提出されたものである。
ASNRは本意見書において、Andra が安全性評価のために採用した基礎データについて十分な知識基盤を構築していると評価している。また、ASNRは、この知識基盤に基づいて確立された操業及び閉鎖後段階における安全性の立証は、施設の設置許可申請の段階として満足のいくものであると評価するとともに、この安全性の立証は、パイロット産業フェーズ の操業の開始に向けて、さらに補完される必要があるとしている。
今回のASNRの意見書の提出及び国家評価委員会(CNE)や原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)等からの見解の後、公開ヒアリングが行われる。さらに、その後、各機関の見解並びに公開ヒアリングにおける意見を基に、国務院(コンセイユ・デタ)における審議を経て、政府が設置許可を政令(デクレ)として発給する予定である。
■評価の課題と経緯
技術審査は、以下の3つの主な課題と横断的課題について行われ、課題1の審査結果は2024年6月10日に 、課題2の審査結果は2025年1月16日に 、課題3の審査結果は2025年7月8日に それぞれ公表されている。横断的課題の審査結果は課題1から3の審査結果と合わせて公表されている。
- 課題1: Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価
- 課題2: 地上、地下施設の操業時の安全評価
- 課題3: 閉鎖後の安全評価
- 横断的課題: 課題1~3の検討を通じたパイロット産業フェーズでの安全性の立証の評価、廃棄物パッケージの回収可能性の操業時・閉鎖後の安全性への影響等
放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)1 及びASNRによる専門的評価は、IRSN、ASNR、ビュール研究所の地域情報フォローアップ委員会(CLIS)、全国地方情報委員会連合(ANCCLI)が推進する社会への開放の取り組みの一環として、市民社会の代表者たちとの技術的対話の対象となった。また、2025年10月3日から11月6日には、ASNRの意見書草案に関するステークホルダとの協議が実施された。
■ASNRの意見書の概要
今回の意見書に示されたASNRの主な見解は以下の通りである。
Cigéo の設置許可申請のサポート書類について
- 予備的安全報告書は、規制で要求された要素を含んでおり、Cigéoのパイロット産業フェーズの操業許可申請のために作成される安全報告書において、原子力安全性が立証されるという合理的な確信が得られる詳細度を備えている。
- Cigéo の設置許可申請書類に記載された操業段階及び閉鎖後の段階における安全性の立証は、全体として地層処分場の設置許可申請に求められる水準に到達している。
- AndraがCigéoの設計に関する研究・調査を行う際に根拠とした基準インベントリは、Cigéoでの処分が許可される廃棄物のインベントリを定義する上で強固な基盤となっている。このインベントリは、設置許可政令(デクレ)によって規定される必要がある。
- Andra が提供した予備インベントリ2 に関する情報は、Cigéo が将来的な産業シナリオに適応できるかどうかを検証するために十分なものである。これらの研究は、原子炉の運転期間を 50 年から 60 年に延長し、6 基の改良型欧州加圧水型炉(EPR2)を新設するという計画によって影響を受けるものではない。
- 現段階での廃棄物の一次パッケージの受入基準は、全体として安全性の立証と整合している。
- プロジェクトの一部の構成要素については、安全性を完全に立証するために、情報の追加や補強が必要となるが、それらは政府による発給に支障となるものではない。
- 記録保存に関するAndraによる事前調査研究は、現段階では満足のいくものである。プロジェクト開発の次の段階では、この研究を継続し、さらに検討を進める必要がある。
公開ヒアリング前に提出すべき事項について
- 公開ヒアリングに先立ち、Andra が設置許可申請書類の更新に関して提出した約束事項は、技術審査で提起された期待に応えるものである。その結果、ASNR は、Cigéo の設置許可申請書類に関し、法令3 で規定されている公開ヒアリングを実施できると判断した。
プロジェクトの進展と、パイロット産業フェーズにおける操業開始までの関連規制の指針について
- Andra が現在入手している情報を踏まえると、プロジェクトの開発スケジュールは現実的であると思われる。
- 施設の設置を許可する政令が公布された場合、今回のASNR意見書及びその付属文書に記載された補足情報の提出、ならびに関連する期限については、法令4 の規定に基づき、ASNRが定める技術的要件の対象となる場合がある。また、同法令に基づき、ASNRの同意を条件として特定の作業の実施を義務付ける停止条件の対象となる場合もある。 これらの規定や停止条件の一部については、Andra が地域情報委員会5 に報告する義務が生じる場合がある。
- Andra は、設置許可政令の公布から 10 年以内に、施設の安全報告書の更新版を提出しなければならない。この更新版には、当該期限までに調査で特定された事項、及びそれ以降の期限に関連する進捗状況と研究計画が盛り込まれる必要がある。
- ASNR は、パイロット産業フェーズの操業許可の発行は、この期限までに期待される補足情報及び補強要素並びに安全報告書や、設置許可政令の規定への適合性を評価するための要素など、全般的な規制で要求される要素が満足のいくものであることを条件とすることを改めて表明する。
- ASNR はプロジェクト全体を通じて、関係するステークホルダとの対話を継続する。この点について、ASNR は、Cigéoのパイロット産業フェーズの操業を許可する決定の案について、パブリックコンサルテーションが行われる予定であることを改めて表明する。一般市民との協議はCigéoのパイロット産業フェーズの操業許可が発行されるまで継続されることが適切であると考える。
【出典】
- 原子力安全・放射線防護機関(ASNR)、2025年12月4日付プレスリリース、地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書に関する意見書の公表
https://www.asnr.fr/actualites/lasnr-publie-son-avis-sur-la-demande-dautorisation-de-creation-de-cigeo - 原子力安全・放射線防護機関(ASNR)、2025年11月25日付意見書
https://reglementation-controle.asnr.fr/reglementation/bulletin-officiel-de-l-asnr/installations-nucleaires/avis/avis-n-2025-av-016-de-l-asnr-du-25-novembre-2025 - 原子力安全・放射線防護機関(ASNR)、2025年7月10日付プレスリリース、地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書に関する技術対話
https://www.asnr.fr/actualites/un-bilan-riche-pour-le-dialogue-technique-2023-2025-sur-le-dossier-de-demande
- Cigéoの設置許可申請当時の規制機関である原子力安全機関(ASN)は、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)に対し、Andraによる設置許可申請書の専門的評価を依頼した。IRSNは設置許可申請書の評価を進めたが、ASNとIRSNは2025年1月1日に統合され、現在の規制機関であるASNRが設立された 。ASNRの設立以降は、ASNR内の環境研究・専門知識部門(PSE-ENV)が評価作業を引き継いだ。 [↩]
- 基準インベントリがCigéoの設置許可申請の対象となる施設設計に反映され、処分が予定されている廃棄物のインベントリであるのに対し、予備インベントリは、将来の廃棄物の管理方法の変更等により、Cigéoに処分される可能性のある廃棄物インベントリとして検証されている。予備インベントリのCigéoでの処分には別途許認可が必要とされる。 [↩]
- 環境法典、法律の部、第L. 593-8 条 [↩]
- 環境法典、規則の部、第R. 593-38 条 [↩]
- 現時点では、原子力発電所や地層処分場等の原子力基本施設に関して設置される地域情報委員会(CLI)はCigéo地層処分場に関して設置されておらず、同様の役割を持つ、ビュール地下研究所に関する地域情報フォローアップ委員会(CLIS)が設置されている。地域情報委員会は、原子力基本施設が設置許可申請の対象となり次第、設置することができるため、将来設置される可能性がある。 [↩]
(post by eto.jiro , last modified: 2025-12-22 )
