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《フランス》地層処分場の設置許可申請書に関する国家評価委員会(CNE)の報告書が公表

フランスの技術的諮問機関である「放射性物質及び放射性廃棄物の管理研究・調査に関する国家評価委員会(CNE)」1 は、2025年12月9日に自身のウェブサイトにおいて、放射性廃棄物管理機関(Andra)が2023年1月にフランス政府に提出した地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書に関する評価報告書を公表した。今回公表されたCNEの報告書は、地層処分に関する法令2 に基づき、規制機関である原子力安全・放射線防護機関(ASNR)による技術審査とは独立して行われたCNEによる評価結果を取りまとめたものであり、2025年12月4日に公表されたASNRの意見書と併せて議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出されたものである。

CNEの評価は、Cigéo の実現可能性と安全性を評価するために Andra が実施、公表した研究の科学的、技術的根拠を分析することを目的としている。CNEは、設置許可申請書における安全評価の科学的根拠、特に Andra が処分施設の長期安全を評価する根拠について詳細に検討した。その結果、Andraは、処分場の安全機能の遵守を確認し、さまざまな進展シナリオに基づいて、生物圏に到達する可能性のある放射性核種の流量を計算するという国際的な方法に従って評価を実施していると結論している。なお、CNEは、放射性核種による住民の被ばく影響については評価範囲外であると説明している。

今回のCNEの報告書とASNRの意見書は議会科学技術選択評価委員会(OPECST)により評価される。OPECSTや原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)等からの見解の後、公開ヒアリングが行われる。さらに、その後、各機関の見解並びに公開ヒアリングにおける意見を基に、国務院(コンセイユ・デタ)における審議を経て、政府が設置許可を政令(デクレ)として発給する予定である。

今回公表されたCNEの報告書の章構成と主な内容は以下の通りである。

第1章 序文

第2章 安全の基本原則、体系的アプローチ(規制機関による安全指針、Andraの方法論等)

第3章 CNEによる評価の範囲と方法(安全解析の科学的根拠の評価に注力等)

第4章 設置許可申請書の科学的根拠(地質、処分場に用いられる材料等)

第5章 安全要件及び回収可能性に関する要件を満たすための処分場の構成要素の役割(高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分孔、長寿命中レベル放射性廃棄物(ILW-LL)の処分坑道、プラグ等)

第6章 横断的課題(パイロット産業フェーズ3 、モニタリング等)

第7章 まとめ

 

■CNEによる勧告

今回の報告書に示されたCNEの主な勧告は以下の通りである。

  • Andraが、現場での実証施設を計画し、その閉鎖構造(プラグ等)の概念の開発を完了すること。
  • Andraが処分施設の稼働前に、モニタリング及び監視の戦略を明確にすること。
  • 坑道のライニング等のコンクリート構造物の耐久性に関し、慎重なアプローチとして、Andraが損傷した土木構造物の修復手順を策定し、試験を行うこと。
  • ILW-LL処分坑道の熱的設計に関し、保守的な仮定による安全対策の一つが、研究結果を受けて、組織的な安全対策に置き換えられたことを確認している。CNEは、この対策が処分施設の操業期間を通じて確実に実施されることの保証が不可欠であると指摘する。この対策を詳細に文書化し、長期にわたって堅固な管理体制を整備すること。
  • Andraが提案したパイロット産業フェーズの成否の判断基準は妥当であると考える。ただし、施設で達成可能な時間軸での立証を追加すること。
  • 施設が不測の事態(配送の不備、施設の故障など)に備えた余裕を持っていることを評価し、特に現場でのバッファとなる貯蔵能力が十分であることを立証するため、パイロット産業フェーズにおいて処分される廃棄物パッケージの数及び同フェーズの期間を十分確保すること。
  • パイロット産業フェーズの終了手順(成否の判断基準とその評価方法を含む)を、設置許可政令(デクレ)で定めること。
  • Andraは、パイロット産業フェーズ終了時の報告書の審査期間中も処分作業を中断しないことを提案している。施設の運用能力の維持に悪影響を及ぼす恐れのある期間、活動が休止されることを防ぐことができるため、CNEはこの提案の受入れを推奨する。
  • パイロット産業フェーズ 終了時の報告書の公表後に実施される行政手続きに要する期間を考慮し、最初の操業許可に基づいて処分される廃棄物パッケージの数に制限を設けないこと。
  • HLWパッケージの回収能力を保証するため、HLW処分区画で採用されるものと同じ長さの処分孔を用いた試験を実施すること。
  • 予備インベントリ4 の処分への適応性に関する調査を、基準インベントリの処分のみを対象とする設置許可申請の審査から切り離すこと。
  • 地層処分場の運用開始及び パイロット産業フェーズの終了後も、地層処分に関する Andra の高水準の研究開発能力、及び現場での試験手段を維持することを強く推奨する。
  • 革新的な材料に関する研究を継続すること。こうした先見的な研究は、有用であることが証明されれば、処分概念の進化につながる可能性がある。
  • 爆発性雰囲気が形成されるリスクの管理を最適化するため、操業条件下における HLW 処分セルでの水素生成に関する研究を継続すること。
  • 知識の進展を踏まえ、将来の処分に関する評価を検討する際に、保守的な見解を再評価すること。
  • 設置許可申請書における安全評価の中で不確実性がパラメータごとに個別に扱われていることを指摘する。将来の稼働開始に向けて、マルチパラメータ処理法(モンテカルロ法など)を用いた研究を継続すること。
  • 特に将来の処分システムの最適化を見据え、処分全体またはその一部について、確率論的評価によって決定論的な安全評価を補完すること。具体的には、パラメータの確率密度関数をその変動範囲内で定義することである。
  • 設置許可申請書における環境等への影響評価は完全かつ説得力があると考えている。読みやすさを向上させるため、今後の版では、フォーマットを定めた、よりコンパクトな形式を採用すること。

【出典】

https://www.cne2.fr/wp-content/uploads/2025/12/202512_Rapport_DAC_Cigeo_web.pdf

 

  1. CNEは2006年放射性廃棄物等管理計画法により設置されており、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)、科学アカデミー、人文・社会科学アカデミーの推薦を受けた12名の専門家で構成されている。うち3名は外国の専門家を起用しており、現在はスウェーデン、ベルギー、スペインの専門家が任命されている。委員の任期は6年である。 []
  2. 2016年7月25日付法律第2016-1015号第1条、及び環境法典 法律の部 第L. 542-10-1条 []
  3. パイロット産業フェーズは、2013年のCigéoプロジェクトに関する公開討論を経て、2016年に法的に導入された。その目的は、地層処分の本格的な操業に先立ち、実際の条件下で技術的・運用的機能を段階的にテストし、施設の可逆性を確認し、特に、原位置試験プログラムを通じてCigéoの安全性を立証することである。ANDRAは、処分場の立坑や斜坑の建設並びに高レベル放射性廃棄物のうち比較的発熱量の小さなものと、長寿命中レベル放射性廃棄物の試験的処分を実施する予定である。パイロット産業フェーズの結果を踏まえて、地層処分の継続条件に関する法律が制定され、その後、地層処分場の本格的な操業許可が発給可能となる []
  4. 基準インベントリがCigéoの設置許可申請の対象となる施設設計に反映され、処分が予定されている廃棄物のインベントリであるのに対し、予備インベントリは、将来の廃棄物の管理方法の変更等により、Cigéoに処分される可能性のある廃棄物インベントリとして検証されている。予備インベントリのCigéoでの処分には別途許認可が必要とされる。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2025-12-22 )