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《米国》NRCによるユッカマウンテン処分場の安全性評価報告(SER)の全5分冊が完成

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年1月29日に、エネルギー省(DOE)が2008年6月に提出したユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書について、NRCによる安全審査の結果をまとめた安全性評価報告(SER)の第2分冊及び第5分冊を公表した。これにより、以下の表のように、5分冊から成るSERの全分冊が完成した。

安全性評価報告(SER)の分冊構成・公表日
分冊名 公表日
第1分冊「一般情報」 2010年8月23日
第2分冊「閉鎖前の処分場の安全性」 2015年1月29日
第3分冊「閉鎖後の処分場の安全性」 2014年10月16日
第4分冊「管理上及びプログラム上の要求事項」 2014年12月18日
第5分冊「許認可仕様」 2015年1月29日

今回公表された安全性評価報告(SER)のうち、第2分冊においては、DOEが許認可申請した処分場設計は、建設認可へのいくつかの付帯条件を前提として、処分場が閉鎖されるまでの期間における性能目標・要件を規定したNRCの連邦規則(10 CFR §63.111「閉鎖に至るまでの地層処分場操業エリアに関する性能目標」及び10 CFR Part 63サブパートK「閉鎖前の公衆衛生及び環境基準」)に適合しているとの結論が示されている。

安全性評価報告(SER)第5分冊においては、ユッカマウンテン処分場の許認可仕様として、建設認可の付帯条件を整理した上で、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係るDOEの許認可申請書は、土地の所有権及び水利権に関する要求事項を除いては、NRCの連邦規則の要求事項を満足しているとしている。また、第5分冊では、SER全体にわたる安全審査の結論が示されている。

なお、NRCのプレスリリースでは、安全性評価報告(SER)の完成は、NRCが処分場建設を承認するか、承認しないかについてのNRCの決定を示すものではなく、許認可手続のために現在利用可能な額を超える予算が与えられた上で、DOEの環境影響評価書の補足(SEIS)、裁決手続における争点のヒアリング、及びNRCの委員による審査の手続きが行われることにより、許認可発給に係る最終的な決定が可能となるとしている。

ユッカマウンテン処分場に係る安全性評価報告(SER)について、NRCは、2010年8月にSERの第1分冊「一般情報」を公表した後、予算上の制約を理由として、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る審査手続を2011年9月から停止していた。その後、2013年8月13日の連邦控訴裁判所判決によって審査手続の再開を命じられ、2013年11月18日に安全性評価報告(SER)を完成することなどを決定して作業が行われ、SERの第3分冊は2014年10月16日に、第4分冊は2014年12月18日に公表されていた。

【出典】

 

【2015年3月5日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年3月4日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査について、今後の活動に関するNRCスタッフに対する指示文書等を公表した。NRCの許認可申請書の安全審査については、安全性評価報告(SER)の完成、補足環境影響評価書(SEIS)の策定、関連文書データベースの整備などが2013年11月18日に決定されていたが、補足環境影響評価書(SEIS)に係る作業については、エネルギー省(DOE)がSEISを策定しない ことによる影響について評価を行うこととされていた。今回公表された指示文書では、安全性評価報告(SER)の全5分冊の完成後の2015年2月3日付けで、以下の活動方針が示されている。

  • 補足環境影響評価書(SEIS)の策定、公表

    • エネルギー省(DOE)が2002年と2008年に策定した環境影響評価書(EIS)について、NRCは、2008年に確認した地下水関連の問題に対応する補足環境影響評価書(SEIS)を策定する。
    • 補足環境影響評価書(SEIS)策定の意向通知を連邦官報で告示後、約6カ月でドラフト補足環境影響評価書を公表してパブリックコメントを開始し、その後、パブリックミーティングを実施した上で、12~15カ月後に最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表する。
ユッカマウンテン補足環境影響評価書(SEIS)のスケジュール(2月開始の場合)
実施事項 予定
補足環境影響評価書(SEIS)策定の意向通知を官報告示 2015年2月
ドラフト補足環境影響評価書(SEIS)を公表し、パブリックコメント開始 2015年8月
NRC本部とネバダ州でパブリックミーティング開催 2015年9月
パブリックコメント締切 2015年10月
最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表 2016年5月
  • 安全性評価報告(SER)の総括に係る活動

    • 安全性評価報告(SER)の準備に使用した文書のアーカイブ化を含めた文書の維持・管理
    • 安全性評価報告(SER)の策定における「ユッカマウンテン・レビュープラン」(NUREG-1804)の使用、NRCの連邦規則10 CFR Part 63「ネバダ州ユッカマウンテン地層処分場での高レベル放射性廃棄物の処分」の実施に係る報告など、許認可手続で得られた教訓に関する報告
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書のNRCデータベース(ADAMS)における公開
    • 現在ADAMSの非公開エリアに登録されているLSN文書を、検索機能が利用可能となる形で公開

NRCによるユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の安全審査は、歳出予算の未使用残高の範囲内で行われているが、NRCが利用可能な金額の約1,350万ドル(約14.6億円)に対し、今回示された活動をすべて実施した場合の費用額は約1,290万ドル(約13.9億円)と見積られている。なお、費用見積には不確実性があることから、安全性評価報告(SER)の策定から得られた教訓に関する報告は、補足環境影響評価書(SEIS)のパブリックコメントの締切まで実施しないこととされている。

また、NRCは、連邦議会の関連委員会の指示により、ユッカマウンテン許認可手続に係る月次状況報告書を提出することとされているが、次の月次報告書の提出後に、連邦議会の関連委員会の承諾が得られれば、状況報告は四半期毎に報告することに変更するとしている。

【出典】

 

【2015年3月13日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年3月12日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査に関して、補足環境影響評価書(SEIS)の策定に係る意向通知を連邦官報に掲載した。NRCは、2015年夏後半に補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトを公表してパブリックコメントを開始し、パブリックコメントの期間中に合計3回(ネバダ州で2回、メリーランド州のNRC本部で1回)のパブリックミーティングを実施した上で、12~15カ月後に最終の補足環境影響評価書(SEIS)を公表する予定としている。

補足環境影響評価書(SEIS)は、処分場サイトにおける主要な帯水層に対して、処分場から放出される物質が地下水に到達する可能性及びその影響などを評価するものである。エネルギー省(DOE)が2008年の許認可申請時に提出した環境影響評価書(EIS)に対しては、NRCが地下水関連の問題点を指摘していたが、補足環境影響評価書(SEIS)をNRCが策定することで自らの指摘に対応することになる。なお、補足環境影響評価書(SEIS)は、DOEがNRCの指摘を踏まえて改定した技術報告書「ネバダ州ユッカマウンテンでの使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物処分のための地層処分場での閉鎖後の地下水影響の解析(改定版)」を反映して策定されることとなる。

【出典】

 

【2015年8月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年8月13日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査に関して、処分場から放出される物質が地下水に到達する可能性及びその影響などを評価した補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトを公表した。これは、エネルギー省(DOE)が2008年の許認可申請時に提出した環境影響評価書(EIS)について、NRCが地下水関連の問題点を指摘したものであるが、NRC自らが補足環境影響評価書(SEIS)を検討し、放射線学的にも非放射線学的にも環境への影響は小さいとの結論を示している。

NRCは、2015年8月21日付けの連邦官報で補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトの公表が公示された以降、パブリックコメントを開始するとしている。また、パブリックコメントの期間中、2015年9月にメリーランド州のNRC本部、ネバダ州のラスベガス及びナイ郡でパブリックミーティングを実施するとともに、2015年10月初めの電話会議を通じて意見募集等を行うとしている。

NRCは、提示されたコメントに基づいて、必要に応じてドラフトの補足環境影響評価書(SEIS)を改定し、2016年初めに最終版の補足環境影響評価書(SEIS)を公表するとしている。

【出典】

 

【2015年8月24日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年8月21日付けのプレスリリース及び連邦官報において、ユッカマウンテン処分場に関する補足環境影響評価書(SEIS)のドラフトの公表とともに、パブリックコメントの募集を2015年8月21日から2015年10月20日までの期間で実施することを公表した。

プレスリリース及び連邦官報の告示では、パブリックコメントの期間中のパブリックミーティングとして、2015年9月3日にメリーランド州のNRC本部、2015年9月15日にネバダ州ラスベガス、2015年9月17日にネバダ州ナイ郡アマルゴサバレーで開催するとともに、2015年10月15日に電話会議を開催することも示されている。また、プレスリリースにおいては、NRCのパブリックミーティングの予定一覧において、今後、詳細を掲載することが示されている。

【出典】

 

【2015年12月17日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)の委員会秘書室(SECY)及び原子力安全・許認可委員会パネル(ASLBP)は、2015年12月1日付けのNRC委員宛文書において、ユッカマウンテン処分場の許認可手続に関して、過去に許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた文書(以下「LSN文書」という。)の公開作業を開始することを報告した。LSN文書は、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査再開時に、NRCデータベース(ADAMS)の非公開エリアに登録する作業が行われたが、今回、ADAMSの公開エリアに移し、検索機能が利用可能となる形で公開する作業を開始するものである。

LSN文書の公開については、2015年2月3日の指示文書において、補足環境影響評価書(SEIS)のパブリックコメント募集が終了するまでは作業を開始しないこととされていた。2015年12月1日付けのNRC委員宛文書では、補足環境影響評価書(SEIS)の策定及び安全性評価報告(SER)の総括に係る活動の費用が推定費用を超えないこと、及びLSN文書の公開に係る作業に十分な予算が残されていることを確認したとしている。LSN文書の公開に係る作業は、2016年9月までに終了の見込みとされている。

なお、2015年8月21日に公表されたドラフト補足環境影響評価書(SEIS)に対するパブリックコメント募集については、コメント募集期間が当初の2015年10月20日から1カ月間延長され、2015年11月20日に締め切られている。

【出典】

 

【2016年8月22日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2016年8月19日に、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続に関して、過去に許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)に登録されていた370万点近くの文書(以下「LSN文書」という)について、NRCのデータベース(ADAMS)において公開したことを公表した。ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続では、裁決手続による争点のヒアリングを行うとして、299の争点の有効性が承認されていたが、2011年9月に裁決手続が停止された際にLSNも閉鎖されていた

今回NRCのADAMSデータベースにおいて公開された新たなLSNライブラリには、強化された検索機能やオンラインの利用ガイドも備えられている。なお、ADAMSデータベースにも検索機能が備わっているが、LSN文書の検索は独立した専用のページから行う形とされている。

LSN文書の公開は、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決を受け、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査の再開への対応の一つとしてNRCが決定したものである。LSN文書の公開のための作業は、2015年12月から開始され、2016年9月までに終了の見込みとされていた。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )