カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(Nuclear Waste Management Organization, NWMO)は、2015年1月22日付で、オンタリオ州北部の6地域で実施していたサイト選定プロセスの第3段階第1フェーズの調査結果を公表した。サイト選定プロセスの第3段階は、机上調査を行う前期(第1フェーズ)と、現地での調査を行う後期(第2フェーズ)で構成されている。NWMOは、サイト選定要件に合致する可能性が高いと評価された4地域〔マニトウェッジ・タウンシップ(図の8番)、ホワイトリバー・タウンシップ(10番)、ブラインドリバー町(12番)及びエリオットレイク市(13番)〕で第3段階第2フェーズの調査を実施するとしている。ノースショア・タウンシップ(14番)とスパニッシュ町(15番)は調査対象から除外された。
オンタリオ州北部は森林と湖水に覆われたカナダ盾状地が広がっており、人口が集中する市街地を含む自治体は点状に分布している。こうした地理的理由から、ディストリクトと呼ばれる上位自治体が行政サービスを提供しており、ディストリクトに属する下位自治体が連盟で行政を担っている1 。ディストリクトの領域には、特定の下位自治体に管轄権が設定されていない広大な土地が存在する。こうした理由のため、サイト選定プロセスに参加している自治体の管轄領域だけでなく、その周囲に広がる土地を含めたエリアを対象として調査が行われている。NWMOは、オンタリオ州北部の6地域について、自治体の外縁部分を含めた調査対象エリアには、いずれも地質学的な観点でサイトを評価する際の要件を満足しうる広いエリアがあり、エンジニアリング、輸送、環境の観点から求められる要件も満たす可能性があると評価している。しかし、ノースショア・タウンシップとスパニッシュ町は「小規模な町」という地元特性を維持したいとの意向を持っており、これらの自治体での処分プロジェクトの実施は、地元の期待する福祉の向上に結びつかないおそれがあると分析している。
今回、オンタリオ州北部6地域での第3段階第1フェーズの調査が完了したことから、このフェーズまでの調査が未完了の地域は1つを残すのみとなった。2015年1月時点では、サイト選定プロセスの第3段階第1フェーズが完了した20自治体のうち、半数の10自治体が第3段階第2フェーズに進む結果となっている。
なお、サイト選定プロセスの第3段階第2フェーズでは、関心表明を行った自治体、その周辺自治体、及び先住民コミュニティとの対話を行い、技術的評価、安全評価、より広範な自治体の参画・福祉向上に関する調査が実施されるほか、初期フィールド調査も開始される。この初期フィールド調査は、技術的な安全要件に則して地質やサイトの適性をより詳細に評価するものであり、早期にサイト選定プロセスに参加した自治体では既に空中物理探査が行われている 。将来的には限定的なボーリング調査も実施される予定である。
《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス
【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、サイト選定計画に関するウェブサイト
http://www.nwmo.ca/sitingprocess_phase1_findings_jan2015 - 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、2015年1月22日付ニュース
http://www.nwmo.ca/news?news_id=449 - 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、第1フェーズ 予備的評価 結論と決定の要約
http://www.nwmo.ca/uploads_managed/MediaFiles/2481_summary_findings_and_decisions_-_january_2015.pdf
- サイト選定プロセスに参加しているオンタリオ州北部の6地域は、いずれも下位自治体である。右地図の4と5はケノーラ・ディストリクト、6~8はサンダーベイ・ディストリクト、9~15はアルゴマ・ディストリクトに属している [↩]
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )