諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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フィンランド

フィンランド

6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション

6.1 地層処分の安全確保の取り組み

  • 実施主体は、サイト選定の各段階及びそれに引き続く環境影響評価(EIA)、原則決定手続において、それまでに得られた研究開発成果や地質環境データ等の最新の知見に基づいて処分概念の検討と安全性の評価を行ってきました。現在、実施主体は最終処分地において地下特性調査を行うとともに必要な研究開発や設計研究を行っており、その成果に基づいて、建設・操業許可申請において処分の安全性を評価します。

安全性の確認と知見の蓄積

1980年代、当時の実施主体であったテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)がサイト確定調査を行っており、1985年に安全評価の結果をまとめました。その後、TVO社は1992年に5カ所のサイトを対象とした安全評価(TVO-92)を取りまとめ、いずれのサイトにおいても処分場の建設が可能な適切な場所を特定することができると結論づけています。

実施主体として1995年に設立されたポシヴァ社は、TVO社が実施してきたサイト調査及び研究開発計画を引き継ぎました。ポシヴァ社は概略サイト特性調査等で3カ所に絞られたサイトに加え、ロヴィーサ原子力発電所のあるハーシュトホルメンでの処分の安全性に関する中間報告書を公表しています。

さらに1999年3月にポシヴァ社は、詳細サイト特性調査を行った4カ所に対し、使用済燃料の処分を行った場合の長期安全性に関する報告書「ハーシュトホルメン、キヴェッティ、オルキルオト、ロムヴァーラにおける使用済燃料処分の安全評価(TILA-99)」を発表しました。TILA-99では、地下約500mの結晶質岩の岩盤中に建設される処分場において、KBS-3の概念を用いて使用済燃料を処分するということを前提に安全評価を行っています。その中で、

  1. 使用済燃料自身からキャニスタ、緩衝材、埋め戻し材の一部または全部を通過して地層へ至る放射性核種の移行
  2. 移行した放射性核種の地下水による地層から生物圏への移行
  3. 生物圏に移行した放射性核種による人の被ばく

という使用済燃料から人に至る経路においてさまざまなシナリオを設定し、モデルとデータに基づいて、コンピュータを用いたシミュレーションを行い、処分場閉鎖後の安全性など、処分場の性能を予測・評価しました。

シナリオとしては、通常考えられるもののほか、フィンランドの位置するスカンディナヴィア半島が、最終氷期に発達した氷床による荷重の影響により、後氷期の現在、地殻の上昇とそれに伴う断層運動等の地殻変動が生じる地域であるという特徴を踏まえたシナリオも想定されています。


最終処分場サイト決定における安全確保

1999年5月、実施主体のポシヴァ社はオルキルオトを最終処分地に選定して処分場建設計画を進めることとし、原子力法に基づく原則決定の申請を政府に行いました。

政府が原則決定を行うために必要な要件の一つは、安全性に関して放射線・原子力安全センター(STUK)が審査し、肯定的な見解を示すことです。

このため、STUK及び、STUKが編成した国際的な専門家からなる外部検証グループによる国際評価が行われました。その結果、政府が策定した一般安全規則に含まれる安全要件が満たされ、その段階のものとしては適切であるとするSTUKの見解書が提出されました。これにより、その後に提出された地元自治体の肯定的な見解書と併せて、オルキルオトが最終処分地に決定されました。

オルキルオトにおいては、2004年6月から地下特性調査施設(ONKALO)の建設が開始されています。ポシヴァ社はこの建設作業と並行して必要な研究開発や設計研究を実施しており、さらに詳細な地質環境データの取得が行われています。処分場の建設・操業許可申請においては、これらの研究成果に基づいて処分の安全性が評価されます。


6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション

  • フィンランドでは、サイト決定の原則決定手続で地元自治体の賛成が必要とされるほか、自治体・住民の意思・意見反映が制度面でも確立されています。さらにポシヴァ社は、自主的にさまざまなコミュニケーション活動を精力的に行っており、フィンランドにおける特徴の一つともなっています。

情報開示、パブリックコメント、公聴会

フィンランドでは、処分場のサイト選定過程において自治体、住民の意見を反映するために、さまざまな活動が行われたことが環境影響評価(EIA)報告書に挙げられています。これらのうち、法令で制度化されている手続きには以下のものがあります。

  • 公告・縦覧・新聞掲載などの情報開示
  • 意見書の作成・提出
  • 公聴会の開催

これらの手続は、フィンランドでは大きく分けて二つの法律で規定されています。その一つは、EIA手続法に基づくEIA手続の中で、EIA計画書の審査とEIA報告書の審査の2つの段階で住民等に対する情報開示と意見聴取が行われます。他の一つは原子力法に基づく原則決定手続で、安全性を含めた処分場の建設・操業計画について、情報開示と意見聴取の手続が定められています。


地域コミュニケーション組織と会合


制度化されたコミュニケーション方法以外にも、処分事業の計画と環境影響評価(EIA)に関し、できるだけ多くの住民に参加してもらって活発に議論してもらうため、ポシヴァ社は、さまざまな地域コミュニケーションの組織づくりに働きかけてきたことがEIA報告書に記載されています。

  • ○地元の住民向けの対話集会やワーキンググループ会合
  • ○地元自治体の職員や自治体議会の議員向けの「調整とフォローアップのグループ」
  • ○自治体を運営する参事会向けの会議
  • ○国とその地方出先機関の職員向けの会議やセミナー

これらの地域コミュニケーション組織の中で、自治体からの代表者とポシヴァ社からの代表者をメンバーとする「調整とフォローアップのグループ」は、最終処分に関する諸問題や、その計画、環境影響評価等について、ほぼ2カ月に1回の頻度で会合を行っていました。EIAの対象地域であったロヴィーサとクーモでは1997年に、ユーラヨキとアーネコスキではより早い時期に、グループが組織されました。

これらの地域コミュニケーション組織などを通じて寄せられた意見や疑問等について、ポシヴァ社がEIA計画書を作成する際に考慮したほか、EIA報告書の社会的影響の評価において検討して対応しています。



6.3 意識把握と情報提供

  • 実施主体のポシヴァ社は、処分事業の理解を得るための活動として、一方的な情報提供活動ではなく住民が情報を入手し、意見を表明できる場をさまざまな形で設けてきました。また環境影響評価の中では、住民の意識調査も行われています。

広報活動(情報提供)

地域の催しに合わせて展示会を開催
source: Posiva EIA report (1999)

トレーラーを用いた展示会の模様
source: Posiva EIA report (1999)

実施主体のポシヴァ社が行っている処分場開発のための情報提供(広報)活動については、環境影響評価書に詳しく述べられています。それによると、情報提供(広報)活動の目的は、環境影響評価(EIA)に住民が積極的に参加できるようにすることであり、具体的には、以下のことができるようにするとしています。

  • ○議論へ参加する機会があることを知ってもらう。
  • ○処分事業計画、EIA手続、進捗情報、完成レポート類の提供など、情報を入手できるようにする。
  • ○各候補地の自治体住民の間で、継続的な対話ができるようにする。
  • ○処分事業とその影響予測とその評価に関し、開かれた議論が行われるようにする。
  • ○処分事業についての報告書の内容と使用する手法の適切性、妥当性に関して、さまざまな見解を集める。

これらの目的を達成するため、ポシヴァ社は、次のような広報(情報提供)活動を行っています。

  • ○地元自治体の各世帯にEIAニュースレターを配布
  • ○ポシヴァ社現地事務所での資料閲覧・提供
  • ○パブリック・イベント(催し物)の開催
  • ○小グループ会合を開催
  • ○地元/隣接の自治体を運営する参事会向け会議を開催
  • ○自治体職員と自治体議会議員のために、調整とフォローアップのグループ作り
  • ○事業内容とEIAを説明し、またフィードバックを得るための展示会の企画・開催
  • ○地方の行政官向けの説明会
  • ○中央の行政官向けのセミナー
  • ○新聞などの論壇への寄稿

1997年のEIA協議時に発行されたニュースレター
source: Posiva EIA report (1999)

EIAニュースレターは、自治体に処分事業内容やEIA手続のことを知らせるために発行されるようになったものです。文面を分かりやすくして多くの人々の理解促進を図るだけでなく、EIAへの参加を促すこともねらって作られています。

ポシヴァ社は地元の住民に、より多くの意見を出してもらうために展示会やワーキンググループ会合を企画・開催しています。こうした会合では、ブレーンストーミング(自由討論)やその他の手法を活用して、参加者の意見等を集める取り組みが行われました。


国民意識と住民意識(主な世論調査結果)

地元住民の意識調査
source: Posiva EIA report (1999)

環境影響評価(EIA)のなかで行われた「住民の生活条件と全般的な幸福さへの影響評価」において、処分場立地を受け入れに対する地元住民の意識調査が行われています。1999年のはじめに、処分場の4つの候補地の自治体の居住者の10%を無作為に抽出して、電話による聞き取り調査が行われました。

原子力発電所が存在するユーラヨキとロヴィーサの2つの自治体では、賛成が約60%前後でしたが、クーモとアーネコスキの2つの自治体では、反対が60%前後という結果(右図を参照)でした。

またEIA報告書の中では、住民の持つ不安やリスクをどうとらえているか、原子力技術に対する意識、風評被害等さまざまな問題についての社会調査が行われています。下の表はそうした調査の中から、処分プロジェクトによる影響についての地元住民の意見を評価した結果として示されているものです。





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hlw/fi/chap6.1332339305.txt.gz · 最終更新: 2012/03/22 17:57 (外部編集)