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カナダの天然資源省は、2020年11月16日付けのニュースリリースで、放射性廃棄物政策の見直し(modernize)に向けて、公衆、先住民、廃棄物発生者、州政府などの様々なステークホルダーを含む全国民的な関与プロセス(inclusive engagement process)を開始したことを公表した。天然資源省は、カナダの放射性廃棄物政策が、今後も国際的な最良の慣行に合致するとともに、既存及び将来発生する放射性廃棄物の管理活動を牽引するリーダーシップをもたらすものとしたい考えである。また、天然資源省は、この関与プロセスの一環として、カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に対して、放射性廃棄物の所有者及び発生者、先住民、カナダ国民と協働して、低・中レベル放射性廃棄物を含めた包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発するための対話を主導するよう要請したことを明らかにした。

■放射性廃棄物政策の見直しの背景とスケジュール

カナダの現行の放射性廃棄物政策は、連邦政府が1996年に策定した「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいており、放射性廃棄物の発生者と所有者による処分のための制度と資金確保に関する責任について、以下のように定めている。

  • 連邦政府は、放射性廃棄物処分が安全に、環境面で健全に、包括的に、費用対効果の高い形で、また統合的に実施されるようにする。
  • 連邦政府は、廃棄物発生者と所有者が承認された処分計画に従って資金確保と操業の責任を果たすことができるようにするために、政策を策定し、それらの者を規制・監督する責任を負う。
  • 廃棄物発生者と所有者は、汚染者負担の原則に従い、処分やその他の放射性廃棄物に関して必要となる施設のための資金確保、組織、マネジメント及び操業に責任を負う。
  • 廃棄物発生者は、規制上の審査と承認が必要になる施設や活動に関する計画を策定して実行し、また承認を得たら、報告や遵守に関する審査に加えて、許認可で定められた要件と条件に従う。

「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいて、1997年に安全規制に関する「原子力安全管理法」が制定されたほか、2002年に使用済燃料の長期管理の枠組みを定める「核燃料廃棄物法」が制定され、使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立された

NWMOは、核燃料廃棄物法によって、使用済燃料の長期管理アプローチを開発し、天然資源大臣に提案する任務を与えられた。NWMOは、カナダ国民との関与プロセスを展開し、聴き取った意見を集約・反映して「適応性のある段階的管理」(詳しくは こちら)を提案した。NWMOが提案したアプローチは、天然資源大臣の勧告を踏まえた2007年6月の総督決定により、カナダの使用済燃料の長期管理アプローチとして決定した。NWMOは、2010年5月に使用済燃料処分場のサイト選定を開始し、現在は2カ所の自治体でサイト選定が進められている

一方、低・中レベル放射性廃棄物については、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が所有するブルース原子力発電所サイトでの地層処分場(DGR)の建設を目指していたが、プロジェクトに対する賛否を問う先住民による投票結果を受けて、OPG社は2020年1月31日、同サイトにおけるDGRの建設を断念し、代替サイトを検討する方針に転じている

このような状況から、連邦政府は今回、カナダの全ての放射性廃棄物を安全かつ長期にわたって管理するための確固とした政策と明瞭な道筋を示すため、ステークホルダーと協力し、カナダ国民と対話していく考えを表明した。天然資源省は、カナダ国民との対話に向けた特設ウェブサイトを設置しており、廃棄物の最小化(minimization)と貯蔵施設に関する情報提供を行っているほか、質問を提示して回答を求めるディスカッションペーパーを公表している。その他のトピックのディスカッションペーパーも追加される予定である。カナダ国民との関与プロセスは、2021年3月31日までを継続する。天然資源省は、関与プロセスを通じて寄せられた意見を集約した報告書を公表して、コメントを募集した後、2021年秋には最新化した政策を公表する予定である。

■包括的な放射性廃棄物管理戦略の開発

天然資源大臣は、低・中レベル放射性廃棄物を含めた放射性廃棄物政策の見直しに向けたカナダ国民との関与プロセスの開始の公表に先がけ、2020年11月13日に核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に書簡を送り、カナダにおける唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略(an integrated strategy)の開発のための対話をNWMOが主導するよう要請していた。

天然資源大臣は、現行の放射性廃棄物政策においては放射性廃棄物の発生者と所有者(以下「事業者」という)に対して、それぞれが個別に廃棄物管理計画(長期を含む)を開発するよう求めており、様々な事業者が多様な取組を検討しているものの、そのような取組が対話を通じてステークホルダーやカナダ国民に周知されなければならないと指摘している。また、事業者は自らが管理する放射性廃棄物の特性を最も良く理解しており、それらの事業者が協力して唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発しなければならないとも考えている。こうした理由から、天然資源大臣は、事業者やステークホルダー、カナダ国民との対話を始めるにあたり、これまで使用済燃料管理と公衆関与のリーダーを果たしてきたNWMOが適任であるとしている。

天然資源大臣は、今後開発していくカナダの包括的な放射性廃棄物管理戦略には、以下の要素が含まれなければならないとしている。

  • 現在と将来における廃棄物量という観点からの、カナダにおける現在の放射性廃棄物管理の状況の説明。なお、小型モジュール炉(SMR)を導入した場合に発生する廃棄物や、廃棄物の特性、場所及び所有権を考慮する。
  • カナダの放射性廃棄物の長期管理や処分方策における現行の計画と進捗のアップデート、及び対処しなければならないギャップ。
  • 現在及び将来の放射性廃棄物インベントリに対応するための概念的なアプローチ。これには、様々なタイプの放射性廃棄物の長期管理や処分のための技術オプション、及びカナダにおける放射性廃棄物の長期管理施設のそれぞれに関するオプションを含む。
  • 廃棄物の長期管理施設の計画、統合、設置及び操業に関する考慮事項。

天然資源大臣からの要請を受けたNWMOは、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関して、実用的な勧告を連邦政府に提示したいとの考えとともに、使用済燃料の長期管理アプローチの開発から実施を通じ、カナダ国民との関与に関する20年にわたる経験と知識を活用して協力する姿勢を明らかにした。

【出典】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2020年11月6日に、地層処分場(CIGÉO)の設置に関する公益宣言(DUP)について、2020年8月3日に環境連帯移行省へ申請したことを明らかにするとともに、2021年第2四半期に予定されている公開ヒアリングに向けた資料一式(下記コラム参照)を公表した。ANDRAは、地層処分場プロジェクトが環境に与える影響の防止策、地域におけるメリットを示した上で、同プロジェクトがDUPを受けるに値する公益性を持つことを主張している。

公益宣言(DUP)は、開発プロジェクトの公益性や正当性を政府が認定するものである。政府は、開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施し、申請内容の審査を行う。その後、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)の勧告を経て、政府がDUPをデクレ(政令)として発出する。DUPは、開発プロジェクトに必要な手続きの上位要素とみなされ、開発プロジェクトの都市計画への編入や、事前の工事の許認可取得に必要とされる。また、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きとしても、政府によるDUPの発出が必要とされる。なお、地層処分場(CIGÉO)の建設には、DUPとは別に、設置許可を申請し、設置許可の発給を受けることが必要となる。

ANDRAは、DUP申請に関する公開ヒアリング向けて公開した資料において、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトが環境に与えるマイナス影響の評価と影響を抑制するために講じる措置、地層処分プロジェクトによる地域へのメリット等について説明している。ANDRAは、環境へのマイナス影響について、人間の健康への影響はないとしているが、環境影響を抑制するため、以下のような措置を講じるとしている。

  • 一部森林の維持等、景観を損なわないための措置
  • 排水の汚染防止処理等、地上及び地下水源への影響を抑制する措置
  • 主に建設期間中の騒音・粉じん対策、道路の渋滞防止措置
  • 地層処分場(CIGÉO)の操業開始後の放射性排気や廃液の放射性物質の濃度を規制限度以下に抑えるための措置
  • 地域における生物多様性や生態系を維持するための措置

一方、ANDRAは、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトによって地域におけるメリットとして以下を挙げている。

  • 経済発展と雇用創出
    ANDRAやその他関連設備やインフラ等の工事を実施する事業者により、建設期間中には最大2,000人、操業期間中には600人程度の新規雇用が創出される。
  • 地域の人口構成の変化
    2030年までに、ムーズ県南部で1,000人程度の住民増(大半は15歳~64歳の現役世代)となる見通しがある。
  • 税収
    地域における税収は、地層処分場の建設から操業までの期間中に総額59億ユーロ(約7,000億円。2017年3月時点での試算値)に上る。
  • 生活枠組みの改善と地域の魅力の増大
    2019年10月に政府と地域の関係者、ANDRA、事業者等が締結した地域開発計画(PDT)では、以下の方向性が提示されている。

    • 地層処分場(CIGÉO)の建設と操業に必要なインフラ整備の実施
    • 地層処分場近傍地域における社会・経済的ポテンシャルの強化
    • 整備措置を適切に組み合わせることによるムーズ県及びオート=マルヌ県の地域の魅力の向上
    • これら2県が備える経済・環境の魅力を維持する取り組み

今回ANDRAが公開したDUPに関する公開ヒアリング向け資料は、以下の8テーマ・19の文書から構成されている。なお、ANDRAによるDUP申請については、2021年第2四半期中にも公開ヒアリングが開始される計画である。

公益宣言(DUP)に関する公開ヒアリング向け資料一覧(8テーマ・19文書)

<①地層処分プロジェクトの紹介>

  • 資料0:地層処分場(CIGÉO)に関する非技術的な紹介
  • 資料1:プロジェクトの目的や必要性に関する説明
  • 資料2:地層処分場(CIGÉO)配置図
  • 資料3:工事全体図面
  • 資料4:最も重要な構造物の主な特徴
  • 資料11:工事による道路の通行止めの防止策

<②環境:影響と影響緩和策>

  • 資料6-1:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価
  • 資料6-2:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価の非技術的な要約

<③法的枠組み>

  • 資料7:法律、行政関連情報
  • 資料8:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトについて提起された政府諮問機関等の見解
  • 資料10:公益宣言(DUP)申請に関するANDRA理事会の2019年12月12日の決定

<④公衆との協議>

  • 資料9:地層処分場(CIGÉO)プロジェクト検討への公衆参加に関する総括

<⑤経済>

  • 資料5:概算費用見積書
  • 資料13:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトで開発する輸送インフラの社会経済的評価

<⑥都市化>

  • 資料12:都市計画文書との整合性確認

<⑦国土>

  • 資料14:国土開発整備の見通しに関する総括

<⑧読者の理解を助ける補足資料>

  • 資料15:用語集及び略語集
  • 資料16:読解ガイド
  • 資料17:附属書

【出典】

英国カンブリア州のコープランド市は、2020年11月4日付のプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループを設置したことを公表した。ワーキンググループは、情報発信を目的としたウェブサイトを開設するとともに、調査エリアの特定と提案、並びに「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、コミュニティパートナーシップに参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったケースは今回のコープランドが初めてとなる。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

コープランド市には、セラフィールド酸化物燃料再処理工場(THORP)などの多くの原子力施設が立地している。同市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても、関心表明を行っており、コープランド市議会は次段階に進むことを賛成多数で可決していたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、コープランド市は当時の選定プロセスから撤退している

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている。コープランドのワーキンググループは、ウェブサイトにおいて、地層処分施設の立地に関心を示した4者とRWM社の初期対話の期間にRWM社が取りまとめた4つの初期評価レポート(Initial evaluation report)を公表している。

  • コープランド市議会(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 民間企業(対象エリア:低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)近郊の沖合)
  • 民間企業(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 個人(対象エリア:ギル・スコーア採石場と海岸の平原)

RWM社は、既存の情報に基づけば、コープランド市議会を含む4者が関心を示しているエリアはいずれも地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

 コープランド市のワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランド市ワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)


コープランド市のワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランド市ワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。コープランド市は、RWM社の初期評価レポートの提出を受け、2020年7月にコープランド市議会執行部において、以下の条件の下でワーキンググループの設置に向けて、RWM社と検討を進めることを決定した。

  • 現在、湖水地方の国立公園の敷地内にあるコープランド市の領域は、最初から検討対象として除外すること1
  • 現在コミュニティと進められているプロセスでは、GDFを沖合に設置することも可能となっていることを踏まえ、沖合も検討対象とすること
  • 市議会は、ワーキンググループの議長として、信頼できる独立した人物を任命したいと考えており、また市議会が負担するサイト選定プロセスに参加するために必要な正当な費用は全て補償されるべきであると考えていること

地層処分施設の設置に関心を示していた4者及びRWM社間でワーキンググループの設置に同意が得られたことを受けて、今回、初期のワーキンググループのメンバーのうち、自治体組織であるコープランド市からワーキンググループの設置が公表されることとなった。ワーキンググループの議長には、カンブリア州の南に位置するランカシャー州・ランカスター市議会の事務総長等を歴任してきたマーク・カリナン氏が就任する。なお、ワーキンググループのメンバーには、RWM社も含まれる。

■今後の取組

ワーキンググループは、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定と提案を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】


  1. RWM社による初期評価の対象となった場所についてサイト調査への関心を表明した、コープランド市議会以外の3者も、湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外するべきであるとの見解を示していた。 []

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が、2017年9月からサイト選定手続きの第1段階である「地上探査の対象サイト地域の選定」を進めている。BGEは2020年9月28日に、ドイツ全土から地質学的な基準・要件を満たす「サイト区域」の選定結果を盛り込んだ『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』(以下「中間報告書」という)を、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出した 。中間報告書の提出を受けたBASEは、サイト選定手続きにおける地域横断レベルの公衆参加の場となる「サイト区域専門会議」(下記コラム参照)の立ち上げに向けたキックオフ会合を2020年10月17日と18日の2日間にわたって開催した。なお、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、キックオフ会合はオンライン形式で開催された。

■サイト区域専門家会議のキックオフ会合の概要と参加方式

今回の2日間のキックオフ会合は、今後本格的な検討を行う「サイト区域専門会議」の活動のあり方について議論し、方向性を決定するため、公衆参加を推進する役割を担う連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)が開催したものである。1日目にサイト選定手続きやBGEが提出した中間報告書に関する説明が行われた後、2日目にサイト区域専門会議の今後の活動のあり方について議論が行われた。

BASEは、サイト選定法においてサイト区域専門会議の構成者と規定されているサイト区域内の自治体、各種社会組織、学術関係者の各種組織に対してキックオフ会合への参加登録を促す招請を行ったほか、2020年8月からドイツの一般市民に対して参加登録を促すキャンペーンを行っている。キックオフ会合への参加者は、オンラインで意見や質問を提示するだけでなく、事務局であるBASEが提示する議案への投票に参加できることが事前に明らかにされていた。なお、BGEが取りまとめた中間報告書では、最終処分に好適な可能性が高いとBGEが判断しているサイト区域は、ドイツ全土の約54%(約194,000km2)に及んでいる。BASEによると、最終的なキックオフ会合への参加登録者数は830名であり、1日目開始時点の参加者は334名、2日目開始時点の参加者は293名であった。

■サイト区域専門会議本格活動に向けて準備作業部会を設置

サイト選定法の規定によると、BASEが事務局として招集するサイト区域専門会議は、処分実施主体であるBGEが取りまとめた「中間報告書」に関する諮問組織として、最大3回の審査会議を開催し、その結果をBGEに答申することをもって解散することになっている(下記コラム参照)。

BASEは、サイト区域専門会議の具体的な活動の進め方は、サイト区域専門会議自体が今後決めていくべきとの考えであり、サイト区域専門会議の規約案や活動スケジュールのほか、第1回のサイト区域専門会議に向けた準備作業を行うための準備作業部会の設置を提案した。キックオフ会合の参加者全員による投票による採決が行われ、参加者の中から立候補した16名のうち、市民、サイト区域自治体、学術関係者、社会組織のカテゴリーあたり3名の代表者で構成される計12名を準備作業部会メンバーとして選出した。また、第1回のサイト区域専門会議の日程を2021年2月4日から7日に開催する予定とし、この参加者についてもキックオフ会合同様に、BASEからサイト選定法に規定された各種組織等に参加招請を行うことを決定した。

■今後の予定

今後、キックオフ会合で設置された準備作業部会が、全3回のサイト区域専門会議でのテーマやその他の作業部会の設置といった構成、及び2021年2月に開催される第1回のサイト区域専門会議のプログラムなどについて、事務局であるBASEと共に検討していくことになっている。

 

サイト区域専門会議(Fachkonferenz Teilgebiete)の位置づけ

サイト選定法では、サイト選定手続きにおける公衆参加の枠組みとして、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルの各レベルで委員会や合議体を設置することを規定している。このうち、連邦レベルの社会諮問委員会は、2016年に委員が選定され活動を行っている。今後、地域レベルの地域会議、地域横断レベルの地域代表者専門会議が、地上からの探査が行われるサイト地域の選定後に設置される予定である

サイト区域専門会議は、サイト地域が選定され、地域の関心が重要となる前の段階に設置される地域横断レベルの会議であり、公衆参加意欲を促進し、専門家の助言を提供する緩やかな話し合いの場と位置付けられている。サイト選定法では、サイト区域専門会議の参加者の数、サイト区域の代表性などについては規定されていないが、サイト区域内の自治体、各種社会組織、市民、学術関係者の代表者を参加者とすることが規定されている。また、サイト区域専門会議は、6カ月間の活動期間中に最大3回にわたりBGEの中間報告書について検討し、協議結果をとりまとめBGEに提示することが規定されている。このサイト区域専門会議の協議結果については、BGEが地上探査サイト地域の提案作成において考慮することとされている。

ドイツのサイト選定手続きにおける公衆参加の枠組み

 

 

【出典】

スウェーデンの使用済燃料処分場の建設予定地フォルスマルクがあるエストハンマル自治体の議会は2020年10月13日、エストハンマル自治体における使用済燃料処分場の立地・建設の受け入れ意思に関する議決を行った。議員総数49名のうち48名が投票を行い、賛成38、反対7、棄権3で使用済燃料処分場の受け入れ意思を表明することを可決した。

エストハンマル自治体は、1995年にスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)から使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの最初の段階である「フィージビリティ調査」(わが国の文献調査に相当)の申し入れを受諾した以降、25年にわたって処分場の立地に関わる地元や周辺自治体を含めた社会影響、処分技術の研究開発動向、スウェーデン政府の政策に対応する法整備の検討状況など、幅広い分野についての学習を続けている。SKB社は、2002年からエストハンマルとオスカーシャムの二つの自治体でサイト調査(わが国の概要調査に相当)を行い、2009年に使用済燃料処分場の建設予定地として、エストハンマル自治体のフォルスマルクを選定していた。

SKB社は、2011年3月に使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等を提出しており、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく審査が最終局面にあり、2020年10月現在は政府の判断を待つ状況にある。環境法典において地元の拒否権が規定されており、政府が許可発給の判断を行う前に、地元自治体に処分場の受け入れ意思を書面にて確認する手続きが必要になっている。

今回のエストハンマル自治体議会での議決は、政府から受け入れ意思の確認要請がなされていない状況において、自治体独自の判断で行われたものであり、今後、政府から処分場の受け入れ意思の確認要請がなされた場合、エストハンマル自治体は拒否権を行使しないことを政府に対して先行的に明らかにするものである。エストハンマル自治体は、今回の議決を行う上で十分な知識を備えているという認識を共有して議決を行った点を強調した上で、今後、政府(環境省)における審査手続きや法整備の検討が進むことを期待するとしている。

エストハンマル自治体は、自治体の最も重要な懸念事項として、処分場の閉鎖後における最終的な責任について、原子力活動の安全に関する責任を果たすことができる者がいない場合、その責任が国に移管されること等を規定した法改正パッケージ案「原子力活動に関する国の責任の明確化」(Ett förtydligat statligt ansvar för visa kärntekniska verksamheter)が2020年6月10日にスウェーデン議会(国会)で可決されたことによって解消されたものの、使用済燃料処分場の建設、操業、閉鎖などの「段階的な許認可」(step-wise licensing)手続きにおいて自治体が判断を行う必要があり、その手続きを法律において明確化するよう要望するとしている。

 

【出典】

 

フランスのエネルギー政策を所管する環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2020年9月28日に、第5版となる「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)の改定方針に関する公開協議(concertation)を実施することを公表した。公開協議は、2019年4月17日~9月25日に国家討論委員会(CNDP)が実施したPNGMDRに関する公開討論会の結果を踏まえ、環境連帯移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針について、公衆に情報提供するとともに、意見を募集することが目的である。

国家討論委員会(CNDP)が公開協議の実施を指摘

PNGMDRに関する公開討論会のためにCNDPが設置した特別委員会(CPDP)は、2019年11月に公表された実施報告書の結論において、PNGMDRの継続的な改定への公衆やステークホルダーの参加を確かなものとするため、公開討論会のフォローアップとして公開協議を実施することが望ましいと指摘していた。その後、環境連帯移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針の公表を受け、国家討論委員会(CNDP)は2020年4月の会合において、PNGMDRの改定方針を具体化する手順を熟考(elaborate)していくため、CPDPが指摘していた公開協議を行うことが望ましいとするCNDPとしての判断を決定した。CNDPは、PNGMDRの策定を担当する環境連帯移行省に対して、改訂方針に含まれる項目のうち、特に下記について熟考の必要性を強調している。

  • PNGMDRのガバナンスの変更を提案すること。
  • 特にPNGMDRの策定頻度を検討することにより、エネルギー政策の方向性とPNGMDRの関係性を強化すること。
  • 地層処分プロジェクトにおける意思決定のマイルストーンと、行われた選択を再検討できるようにするためのガバナンスを定めること。
  • 高レベル放射性廃棄物について、地層処分に代わる対策方法(alternatives)の研究を支援すること。

また、CNDPは、下記の項目をPNGMDRに含めるべきことに注意を喚起している。

  • 分野横断的な問題(環境、衛生、経済的影響、輸送の管理、地域への影響の考慮)の統合
  • 放射性物質と放射性廃棄物の間の区分の変更
  • 歴史的廃棄物の管理
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物に関するシステムの確立

環境連帯移行省による公開協議の予定

今回の公開協議は、国家討論委員会(CNDP)によって任命された保証人の監督の下で、環境連帯移行省により実施される。公開協議は、放射性廃棄物及び放射性物質管理のガバナンス、PNGMDRとエネルギー政策との関係等のテーマごとに設定された専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集、パリや地方で開催するパブリックミーティング等により構成されている。

パブリックミーティングは以下のような日程・テーマで実施予定であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、インターネット上での開催に変更される可能性もある。

日程 場所 テーマ
2020年10月27日 パリ 極低レベル放射性廃棄物管理
未定 未定 地層処分プロジェクトのガバナンスとANDRAによる情報提供・公衆参加の取組みとの関係
2020年11月16日 パリ 地域や環境面での課題についてのPNGMDRにおける考慮
2020年12月2日 グランテスト地域圏(詳細未定) 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物管理
2021年2月3日 パリ 公開協議から得られた最初の教訓

また、専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集が行われるテーマは以下の通りである。

テーマ
放射性物質及び放射性廃棄物のガバナンス
PNGMDRとエネルギー政策の関係
放射性物質の管理
極低レベル放射性廃棄物の管理
使用済燃料の貯蔵
長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理及び地層処分プロジェクトにおける論点
特別なカテゴリーに属する放射性廃棄物
放射性物質及び放射性廃棄物に関する分野横断的な問題(環境、健康、地域、経済等)

公開協議後の予定

今回のPNGMDRの改定方針に関する公開協議の結果は、2021年2月3日のパブリックミーティング後に、CNDPが任命した保証人により報告書として取りまとめられて公開される予定である。また、環境連帯移行省も、公開協議を通じて得られた教訓のPNGMDRの案への反映について報告書を作成する。その後、環境連帯移行省は、これらの結果を踏まえて、PNGMDR全体の案を作成し、環境当局(Autorité environnementale)の見解を聴取したうえで最終化することになる。その後、従来のPNGMDR策定プロセスと同様に、公的な意見聴取(consultation du public)に付した後、最終決定のため議会に提出する予定である。

【出典】

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が2017年9月からサイト選定手続きを進めている。現在は、その第1段階である「地上探査の対象サイト地域の選定」の途上にある。BGEは2020年9月28日、サイト選定法に規定されている基準のうち、地下の地質条件に関する基準をドイツ全土に適用した結果を取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』を連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出した。BGEは、今回の中間報告書は最終処分やサイト選定というドイツ社会の問題に対する公衆の関心を高めることに役立ち、公衆がサイト選定の初期段階から公式に関与するための基礎になるとしている。

ドイツ全土の母岩別のサイト区域の分布

◆サイト区域の選定

サイト選定法では、サイト選定に適用する4種類の基準・要件を定めている。サイト選定手続き第1段階では、既存の地質学的データである地球科学的な基準・要件のみを適用することになっている。

①地球科学的な除外基準

  • 一定以上の広域的な隆起が予想されないこと
  • 活断層が存在しないこと
  • 現在または過去の鉱山活動の影響が存在しないこと
  • 一定以上の地震活動が予想されないこと
  • 過去の火山活動が存在しない、または将来予想されないこと
  • 年代の新しい地下水が存在しないこと

②地球科学的な最低要件

  • 岩盤の透水係数が10-10m/s以下
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域1 の厚みが100m以上
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の深度が300m以上
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の広がりが処分場建設に可能な面積を有している
  • 閉じ込め機能を果たす岩盤領域の健全性が100万年にわたり維持されることが疑問視されていない

③地球科学的な評価基準(11項目)

  1. 閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での地下水の流動に伴う放射性物質の移行の評価に使用する基準
  2. 岩体構成の評価基準
  3. 空間的な特性調査可能性の評価基準
  4. 好ましい状況の長期安定性に関する評価基準
  5. 好ましい岩盤力学的な特性に関する評価基準
  6. 地下水流動経路形成傾向に関する評価基準
  7. 気体の生成の評価基準
  8. 温度への耐性の評価基準
  9. 閉じ込め機能を果たす岩盤領域内での放射性核種の保持能力の評価基準
  10. 地下水化学的な状況の評価基準
  11. 被覆岩による閉じ込め機能を果たす岩盤領域の保護に関する評価基準

④地域計画面に関する評価基準(11項目)

  1. 住宅地域からの距離、飲料用地下水源や自然保護地域の有無など11項目
  2. ※④の評価基準は、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』でのサイト区域の抽出では適用されていない。

連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、ドイツ国内で処分場の母岩候補とされる岩種(岩塩、粘土岩及び結晶質岩)を対象に、連邦や各州の地質調査所などが保有する全国の地質学的データを収集した。BGEは、これらのデータをもとに、上記の①地球科学的な除外基準と②地球科学的な最低要件を適用して不適格となる区域を除外して、全国から181区域を抽出し、さらに、③地球科学的な評価基準を適用した結果として、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において90区域に絞り込んでいる。BGEは、③地球科学的な評価基準11項目のうち、その多くで文献から得た岩種別(岩塩、粘土岩、結晶質岩)の一般データを使用しており、区域固有のデータが利用できる項目は岩塩・粘土岩の場合3~4項目、結晶質岩の場合2項目であったとしている。

『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において、BGEが最終処分に好適な可能性が高いと判断している90区域は、ドイツ全土の約54%にあたる約194,000km2、州単位で見た場合には、南西部のザールラント州を除いた全ての州に分布している。抽出された各サイト区域の面積は、地下の母岩候補の岩種を反映して、6 km2(岩塩ドーム)から約63,000 km2(粘土岩)まで異なっている。

母岩別のサイト区域数及び総面積(†)
母岩 サイト区域数 サイト区域の総面積(km2
粘土岩 9 129,639
岩塩 74 30,450
結晶質岩 7 80,786
サイト区域合計 90 240,874

†:母岩が異なる深度に存在し、一つの区域が複数の母岩カテゴリに重複してカウントされる場合があるため、サイト区域の合計値は、BGEが最終処分に好適な可能性が高いと判断している90区域の合計面積約194,000km2と一致しない。

 

◆ゴアレーベンはサイト区域から除外

従来、処分場の候補サイトとして探査が行われていたゴアレーベン・サイト(岩塩ドーム)については、③地球科学的な評価基準のうち、「11.被覆岩による閉じ込め機能を果たす岩盤領域の保護に関する評価基準」を考慮した結果、今回の『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』において抽出された90区域には残らず、以降の処分場選定手続きにおいては除外されることとなった。サイト選定法では、ゴアレーベン・サイトについて、他の区域・サイト等と同様に扱い、サイト区域などに含まれなかった時点でサイト選定手続きから除外されることを規定している。

◆今後の予定:公衆参加手続きの開始

サイト選定法に基づいて、サイト選定を監督し、公衆参加を推進する役割を担う連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)は、連邦放射性廃棄物機関(BGE)が取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』を受領した後、サイト区域の地域団体の代表者等からなる、地域横断の公衆参加枠組みである「サイト区域専門会議」を設置することになっている。このサイト区域専門会議の開催スケジュールについて、BASEは、2020年10月17日~18日に開催されるキックオフ会合の後、2021年前半に3回の会合を実施する予定である。BGEは、中間報告書がサイト区域専門会議の基礎になるとともに、公衆参加を推進するものになるとしている。

BGEは、サイト区域専門会議における議論の後、今回抽出した90区域を対象として、処分場システムの概念設計を含む予備的安全評価を行い、その結果に基づき、「地上からの探査を行うサイト地域」を複数選定することになっている。BGEが選定したサイト地域では、その地域毎に地域会議と呼ばれる合議体が組織される。サイト選定手続きの第1段階の目標である「地上からの探査を行うサイト地域」の確定は、連邦議会において連邦法を制定することによって行われる。

 

【出典】


  1. 人工バリアや地質工学的なバリアとともに、隔離期間に廃棄物の閉じ込めを保証する地質バリアの一部  []

ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2020年8月26日のプレスリリースにおいて、ロシア中南部のチェリャビンスク州オジョルスク市で計画している浅地中処分場に対して、安全規制機関である連邦環境・技術・原子力監督局(Rostekhnadzor)が立地・建設許可を発給したことを公表した。
NO RAO社のプレスリリースによれば、計画されている処分場の処分容量は22万5千立方メートルであり、主に同じオジョルスク市内で活動している生産合同マヤーク1 から発生する低中レベル放射性固体廃棄物を受け入れる計画である。処分場の建設は2021年から開始する予定であり、建設の第一段階では、管理棟や輸送インフラ、アクセス道路の建設等が実施されるとしている。

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(チェリャビンスク州オジョルスク市)

低中レベル放射性固体廃棄物の浅地中処分場の立地点(チェリャビンスク州オジョルスク市)

ロシアではこれまでに、スヴェルドロフスク州のノヴォウラリスク市において、国内で最初となる浅地中処分場の操業が2016年に開始されている。また、NO RAO社は、トムスク州セベルスク市において、シベリア化学コンビナートから発生する低中レベル放射性固体廃棄物を受け入れる浅地中処分場の建設も計画しており、先月2020年7月に連邦環境・技術・原子力監督局から立地・建設許可の発給を受けている

【出典】


  1. 生産合同マヤークでは、使用済燃料の再処理などが行われている。かつては軍事用プルトニウムの生産等を行っていた。 []

ドイツの放射性廃棄物処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、2020年8月21日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きの第1段階となる最終処分に好ましい地質学的な前提条件を満たす「サイト区域」の選定に関して、検討結果を取りまとめた中間報告書を2020年9月28日に連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)に提出する予定を明らかにした。また、連邦放射性廃棄物処分安全庁も、2020年8月20日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きにおける地域横断的な公衆参加の枠組みとして、「サイト区域専門会議」のキックオフ会合を2020年10月17~18日に開催すること公表した。

■3段階のサイト選定手続きと第1段階で作成される中間報告書の内容

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、2017年9月から高レベル放射性廃棄物処分場の3段階からなるサイト選定手続きが開始されている 。第1段階ではドイツ全土から地上探査サイト地域を選定し、第2段階ではサイト地域の中から地下探査サイトを選定し、第3段階では地下探査サイトの中から処分場サイトを選定していく流れとなっている(下表参照)。なお、サイト選定法では、2031年に処分場サイトを決定することを目標としている。

BGEは、2017年のサイト選定手続きの開始後、第1段階の中間目標である最終処分に好ましい地質学的な前提条件 を満たす「サイト区域」の選定に向けて、各州の地質調査所などが保有する全国の地質学的データの収集を行うとともに、地球科学的な除外基準及び最低要件の適用方法の検討等を行ってきた 。第1段階の中間報告書は、BGEによる検討の結果として「サイト区域」を提案するものである。なお、第1段階の目標である地上探査サイト地域の選定は、サイト区域を対象に行われることになっている。

BGEは、今後2020年9月28日の中間報告書の提出に向けて、動画等による一般向けの情報コンテンツの充実を図っていくほか、中間報告書の公表前から電話や電子メールを通じた問合せや意見の受付を行うなどの情報提供等の活動を行っていくとしている。

表:ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定手続き
サイト選定段階 活動
第1段階
地上探査サイト地域の選定
ドイツ全土を対象にサイト選定プロセスを開始。BGEが地球科学的な除外基準及び最低要件に基づき、対象外となる地域を除外し、サイト区域を選定。地球科学的な評価基準を適用し、好ましいサイト区域等を選定。結果を中間報告書として提出。
予備的安全評価(第1次予備的安全評価)を実施。地球科学的な評価基準等を適用し、地上からの探査サイト地域を選定。
BGEが地上からの探査サイト地域の提案及び探査計画を提出。連邦法を制定し地上探査サイト地域を確定。
第2段階
地下探査サイトの選定
BGEが地上からの探査を実施。地球科学的な除外基準・最低要件、評価基準を適用するとともに、第1段階より範囲を拡大した予備的安全評価(第2次予備的安全評価)に基づき、サイト間の比較を実施し、地下探査の対象サイトを選定。
BGEの提案に基づき、連邦法を制定し地下探査の対象サイトを確定。
第3段階
処分場サイトの提案・合意
地下探査などの処分の安全性の観点からの詳細な調査を実施。包括的な予備的安全評価を実施し、サイトの比較を実施し、処分場サイトを選定。
連邦法を制定し処分場サイトを確定。

 

■サイト選定手続きにおける公衆参加とサイト区域専門会議の開催スケジュール

サイト選定法に基づくサイト選定手続きでは、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルで公衆参加のための委員会や合議体を設置し、各段階において、住民、地元自治体などの参加を得ながら処分場サイトを選定していくこととなっている 。サイト選定手続きの第1段階においては、BGEによる中間報告書の提出後、地域横断レベルの公衆参加の場となる「サイト区域専門会議」が設置される予定である。

サイト選定手続きを監督するとともに、公衆参加の推進に責任を有する連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)は、2020年8月20日のプレスリリースにおいて、サイト選定手続きに関する情報提供として、2020年9月からジャーナリスト向けセミナーなどを開始し、BGEによる中間報告書の公表後、サイト区域専門会議の最初の会合であるキックオフ会合を2020年10月17~18日に開催するとしてる。また、2021年前半に3回の会合を開催する予定としている。

ドイツの3段階からなるサイト選定手続きと公衆参加の枠組み

図:ドイツの3段階からなるサイト選定手続きと公衆参加の枠組み

 

【出典】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2020年8月17日に、ガラス固化体をオーバーパックする施設及び使用済燃料をキャニスタに封入する施設(以下、両者を合わせて「キャニスタ封入施設」という)の立地オプションを比較する報告書を公表した。キャニスタ封入施設は、地層処分場の地上施設を構成する主要な施設の一つ1 であり、サイト選定プロセスの第3段階に残っている3つのサイト地域2 に設定されている地上施設設置区域に建設するケースをメインのオプションとしているが、高レベル放射性廃棄物の大部分が貯蔵されているヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)に建設するケースも想定されている。今回のNAGRAの報告書は、前述の2ケース以外のオプションとして、原子力発電所にキャニスタ封入施設を建設するケースなどを加えることにより、立地オプションに関する検討を充実させたものである。

検討の経緯

高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設については、地層処分場の地上施設の設置区域に設置する想定で検討が進められてきた。しかし、サイト選定プロセスの第2段階において、処分場の地上インフラ配置案を検討する過程で、チューリッヒ北東部の地域会議はNAGRAに対し、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置することのメリット及びデメリットを説明して欲しいとの要望を表明していた。これを受けて連邦評議会3 は、2018年11月のサイト選定第2段階終了時にNAGRAに対し、地域会議の要望を考慮した上で、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置する可能性を検討するよう要求した   。

この検討要求に応えるためにNAGRAは、高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設について、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地をレファレンスケースとして、②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」、③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)4 サイト内」、④「原子力発電所5 サイト内」、⑤「新規立地」の5つの立地オプションを想定して、輸送、追加で必要となる敷地面積、既存インフラや経験を有する熟練作業員の利用可能性、セキュリティと保障措置、コストといった項目の比較・検討を以下の通り行った。

  • ①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地
    長所:地層処分場の地上施設の設置区域内のキャニスタ封入施設から地層処分場への輸送のみであり、輸送の負担が非常に軽い。②や③の中間貯蔵施設サイト内での立地と比較すると、既存の施設が現時点で存在しないことから、設計上の制約が少ない。
  • ②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地
    長所:現状、使用済燃料とガラス固化体の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分が貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物用の廃棄体積み替えセルを備えている。既存のインフラを利用することにより、施設面積を小さくできる。また、熟練作業員の活用が見込める。コストの面では①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%の軽減が期待できる。
  • ③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)サイト内」での立地
    長所:ZZL同様、既存インフラを利用することによって施設面積を小さくでき、熟練作業員の活用も可能である。
    短所:現状、廃棄物の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分がZZLにあることから、ZZLからZWIBEZへのキャスク輸送を行わなければならなくなる。コストの面では、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%増大する。
  • ④「原子力発電所サイト内」での立地と⑤「新規立地」
    短所:既存インフラや熟練作業員の活用等の面では利便性はない。コストについては、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比べて20%程度増大する。

上記の検討の結果、NAGRAは、ケース①と比較してケース②と③のみ、敷地面積を小さくすることが可能であり、採用する余地があるとしている。このうち、ケース②のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設では、使用済燃料の貯蔵容器への詰め替え作業を行っているため、キャニスタ封入施設と類似する作業経験をもつ熟練作業員の活用を見込むことができる。こうした理由から、NAGRAは、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地が好適であるとした。NAGRAは今回の検討結果をもとに、地上施設の設置箇所の決定に向けて、地域会議や関係する州と議論を進めていくとしている。

 

【出典】

 


  1. 地層処分場の地上施設には、低レベル放射性廃棄物の廃棄体製作施設も含まれるが、今回のNAGRAの報告書では、その立地オプションについては検討していない。 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []
  3. 日本の内閣に相当 []
  4. ZWIBEZはベツナウ原子力発電所内に立地する []
  5. ゲスゲン、ライプシュタット両原子力発電所サイトを想定 []