諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

Learn from foreign experiences in HLW management

ユーザ用ツール

サイト用ツール


hlw:fi:chap3

文書の過去の版を表示しています。


HLW:FI:chap3

フィンランド フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物処分

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


3. 処分事業に係わる制度/実施体制

3.1 実施体制

ポイント

  • 高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は、政府、雇用経済省、放射線・原子力安全センター(STUK)であり、雇用経済省は処分事業の管理・監督、STUKは安全規制という役割を各々担っています。また、政府は処分目標(サイト選定の段階と目標時期)の決定と一般安全規則の策定を行うほか、処分場の建設・操業の許可発給を行います。
  • 実施主体は原子力発電事業者2社が共同出資して設立したポシヴァ社という民間会社です。

実施体制の枠組み

処分の実施体制
処分の実施体制

フィンランドでは放射性廃棄物管理分野における責任体制は原子力法で定められており、全般的な権限は国のエネルギー政策を作成する責任が課されている雇用経済省にあります。雇用経済省は、放射性廃棄物の管理義務要件を策定する上で、政府が意思決定するための準備も行っています。政府は、処分目標(サイト選定の段階と目標時期)の原則決定と一般安全規則の策定を行うほか、処分場の建設・操業の許可発給を行います。

規制の面では、放射線・原子力安全センター(STUK)が放射線と原子力に関する安全について、規制管理を行う独立の行政組織として存在していますが、上記のように政府と雇用経済省にも規制面での役割が課されているのがフィンランドの特徴です。

高レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業・閉鎖は実施主体のポシヴァ社が実施します。処分場の閉鎖後に、放射性廃棄物が永久処分されたことをSTUKが確認した後は、廃棄物の所有権は国に移り、廃棄物に係る全ての責任を国が有することが原子力法で規定されています。


実施主体

フィンランドでは、放射性廃棄物を処分する責任は、原子力施設の許可取得者にあると定められています。また、正当な理由があれば、原子力発電事業者が共同で処分責任を果たすことができるようになっています。2社の原子力発電事業者のうち、フォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)の使用済燃料は、もともとはロシアに返還されていました。したがって、もう1社のテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)が高レベル放射性廃棄物処分の研究やサイト選定を進めていました。しかし、1994年の原子力法の改正により使用済燃料の輸出入が禁止され、自国内で処分することになったため、2社は共同で処分を実施することとし、1995年末に、高レベル放射性廃棄物処分事業の実施主体としてポシヴァ社を設立しました。

ポシヴァ社は高レベル放射性廃棄物の処分事業を行う会社であり、その他の放射性廃棄物の処分や、使用済燃料の中間貯蔵等は、原子力発電事業者が各々の原子力発電所サイトで行っています。


安全規則

フィンランドの原子力施設に関する安全規制の文書体系は、①原子力法、②原子力令、③規則(一般安全規則)、④詳細安全規則、の4段階の構成となっています。使用済燃料の処分に関する一般安全規則は、当初は1999年に定められましたが、その後二度の改訂を経て、現在は「原子力廃棄物の処分の安全性に関する放射線・原子力安全センター(STUK)規則」として定められています。一般安全規則と詳細安全規則を定める権限は、安全規制機関の放射線・原子力安全センター(STUK)にあります。

最終処分の長期安全性に関する詳細安全規則は2001年5月に「安全指針YVL8.4:使用済燃料処分の長期安全性」として定められました。この規則は2013年12月に新しい安全指針「YVL D.5:原子力廃棄物の処分」に置き換えられました。

この安全指針YVL D.5では、放射線安全に関して下表のように、人間の被ばくの評価について十分に予測可能な少なくとも数千年間という期間については実効線量による制約条件を適用し、その後については、処分場から生物圏への放射性核種の放出放射能量に関する制約条件を適用して規制する方法をとっています。このほか、発生の可能性が非常に低く、設計で想定した状況を超える事象についての考察や動物・植物など人間以外の環境に対する防護についても規制要件を課しています。

安全指針(YVL D.5)における被ばく線量拘束値・放射性核種の放出率の拘束値

⑴ 十分予測可能な期間(少なくとも数千年間)において、人間の被ばくする可能性のある線量
・公衆の中で最も被ばくした人の1年間あたりの実効線量 0.1mSv 未満
・他の大きな集団の公衆に対する平均の1年間あたりの実効線量 0.1mSv の1/100 ~ 1/10 以下
⑵ 数千年後に使用済燃料から放出され、環境に移行すると予想される放射性核種の長期間にわたる平均量
・処分による放射線影響 最大でも地殻内の天然放射性物質から生じるものに相当する程度
・放射性核種別の環境に放出される1年間あたりの量 個別の規制値以下で、かつ各核種の放出量/規制値の比率の合計が1以下


3.2 処分に関わる法制度

法制度の全体図 法制度の全体図


事業規制

  • 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みを定めているのは、原子力法です。ただし、サイト選定を含めた基本的な処分の方針については、1983 年に政府による廃棄物管理目標に関する原則決定が行われています。
  • 廃棄物管理目標の原則決定では、処分責任、計画作成義務、資金負担義務等について、その後の原子力法での規定の骨格となる制度、及び段階的なサイト開発から処分場の操業に至るまでの目標時期も定められています。
  • 原子力関係の基本法である原子力法は、原子力利用が社会全体の利益に合致し、人間と環境に安全であることを確保するため、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や関係機関の役割等を明確に定めている法律です。
  • 原子力法では、処分場を含む重要な原子力施設の建設を行うにあたり、原則決定手続を定めています。原則決定手続とは、その原子力施設の建設が社会全体の利益に合致するという原則的な判断を、建設許可の申請よりも早いタイミングで、政府が決定するものです。この決定が有効となるためにはさらに、国会によって承認を受けることが必要とされています。この原則決定の申請を行うためには、安全評価の実施等のほかに、地元自治体からの肯定的な意見を得ることが必要と定められています。
  • 原子力令は、原子力法の規定のより詳細な手続等を定めた政令です。

安全規制

  • 安全性確保のための基本的な枠組みは、原子力法及び原子力令で定められています。
  • 原子力廃棄物処分における、処分施設の設計や安全基準等の安全性に関しては、2008 年の「原子力廃棄物の処分における安全性に関する政令」で基本的な要件の原則が示されています。さらに安全規制の細目については放射線・原子力安全センター(STUK)が定めることとされており、2013年12月発効のに新しい安全指針「YVL D.5:原子力廃棄物の処分」があります。
  • また、放射線防護全般に関わる規制は、放射線法によって規定されています。

資金確保

  • 放射性廃棄物管理のための資金確保の枠組みについても原子力法により規定されています。そこでは、放射性廃棄物管理のために特別な基金を国に設置すること、原子力発電会社による費用負担原則、費用の見積り方法と必要とされる資金の拠出方法、集められた資金の管理方法などが定められています。
  • 特に国家放射性廃棄物管理基金(VYR)については、原子力法において国家予算から独立した基金として設置するとされるとともに、より詳細な規定が「国家放射性廃棄物管理基金(VYR)に関する政令」(廃棄物基金令)等で定められています。

環境

  • フィンランドにおける放射性廃棄物の処分場の建設については、環境影響評価(EIA)が要求されています。EIA に関する手続は、EIA 手続に関する法律及びEIA 手続に関する政令に定められた評価手続に従って実施されます。
  • このEIA 手続の主要なポイントとしては、実際の評価活動に入る前にEIA 計画書が作成された段階で、地元住民や自治体等に意見書提出の機会が与えられており、ここで表明された意見は調整機関(原子力施設の場合は雇用経済省)がとりまとめ、必要に応じてEIA 計画書の修正を命じることができる制度となっています。また、評価結果に対しては、公聴会や住民意見の聴取、関係機関からの意見書を取得した上で、雇用経済省が評価の適切さに対する意見書を出すこととされています。

原子力責任

  • フィンランドの原子力損害賠償に関する法令としては、原子力責任に関する法律(原子力責任法)及び原子力責任に関する政令(原子力責任令)がありますが、これらは、第三者責任に関するパリ条約とブリュッセル補足条約及び民事責任に関するウィーン条約の国内法化を図る法令ともなっています。





全体構成
フィンランド
hlw/fi/chap3.1494052975.txt.gz · 最終更新: 2017/05/06 15:42 by ss12955jp