諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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フィンランド フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物処分

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


2. 地層処分計画と技術開発

2.1 処分計画

  • フィンランドでは、オルキルオトの地下約400mの結晶質岩中に使用済燃料を直接処分する計画です。使用済燃料を銅製容器と鋳鉄製容器の2重構造のキャニスタに封入して処分します。処分場の操業開始目標が2020年に設定されています。

地層処分対象の放射性廃棄物


銅-鋳鉄キャニスタ

フィンランドで地層処分の対象となる高レベル放射性廃棄物は、原子力発電所から発生する使用済燃料です。使用済燃料は、右の写真に示すような、外側が銅製の容器、内側が鋳鉄製の容器という2重構造の容器(キャニスタ)に封入して処分されます。外側の銅製容器が腐食に耐える役割を、内側の鋳鉄製容器が荷重に耐える役割を各々担っています。

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燃料種類別にキャニスタのサイズが異なります
source: Posiva

キャニスタは3通りのサイズを考えています。これは、原子炉形式によって異なるサイズの使用済燃料が発生するためです。右下の図に示したのは、左がロヴィーサ原子力発電所のロシア型加圧水型原子炉(VVER)から発生する使用済燃料用、中央と右がオルキルオト原子力発電所の沸騰水型原子炉(BWR)と建設中の欧州加圧水型原子炉(EPR)から発生する使用済燃料をそれぞれ封入するキャニスタです。

使用済燃料の燃焼度に応じ、BWR用及びVVER用は12体、EPR用は最大で4体の集合体を収納する設計を検討しています。使用済燃料をキャニスタに封入する施設は、処分場の地上施設として建設する計画です。


処分場の概要(処分概念)


キャニスタの定置方法のバリエーション
(左:縦置き-KBS-3V、右:横置き-KBS-3H)
source: Posiva



緩衝材の設置方法(概念図)
source: Posiva

処分実施主体であるポシヴァ社が検討している処分概念は、隣国のスウェーデンで考えられている概念(KBS-3概念)とほぼ同じです。使用済燃料に含まれる放射性核種を、使用済燃料自身、キャニスタ、緩衝材(ベントナイト)、埋め戻し材、地層からなる多重バリアシステムにより長期にわたって隔離する方法です。キャニスタの定置の方法としては、地下の処分坑道の床面に掘削した処分孔に一本ずつ定置する「処分孔縦置き方式」が考えられています。キャニスタの周囲には緩衝材(ベントナイト)を充填する計画です。なお、ポシヴァ社はスウェーデンの処分実施主体SKB社と共同で「処分坑道横置き方式」の研究開発も進めています。

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オルキルオト処分場の設置イメージ
source: Posiva

最終処分地は、ユーラヨキ自治体のオルキルオトです。ポシヴァ社は、使用済燃料量を最大9,000トン(オルキルオトとロヴィーサの原子炉全てを60年間運転する場合に発生する量)の受け入れに対応可能な処分場を、地下約400mの深さに設置する計画です。ポシヴァ社の計画では処分場の規模は、処分坑道の延長距離が42kmで、処分エリアの面積は2~3km2です(5,500トン処分の場合)。


処分場の建設予定地の地質構造

オルキルオトはフィンランド南西部のサタクンタ地域の南部に位置しています。サタクンタ地域の基盤岩は先カンブリア紀のフェノスカンジア盾状地における約8億年間(19億年前~12億年前)の地質履歴を有しています。最も古い基盤岩は古原生代にあたる19~18億年前のスヴェコフェニアン造山運動によって変形と変成を受けた表成の変成堆積岩と変成火成岩から構成されています。その後、約16億年前の中原生代の非造山期に大きな貫入性のラパキビ花崗岩がこの地域の中心部に出現しました。このマグマ活動期以降はサタクンタ堆積岩が堆積し、さらに、これらの堆積岩やそれ以前の古い岩石は約12億年前にカンラン石輝緑岩の岩脈や岩床による貫入を受けています。

オルキルオトにおける基盤岩は、主に19~18億年前のミグマタイト質の雲母片麻岩等の結晶質岩です。


処分事業の実施計画

高レベル放射性廃棄物の最終処分地は、2001年にユーラヨキ自治体のオルキルオトに決定しています。今後、実施主体のポシヴァ社が最終処分を実施するためには、原子力法に基づき、処分施設の建設許可、操業許可を順次取得しなければなりません。

ポシヴァ社は、2012年末までに建設許可申請書を政府と規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)に提出する予定です。

政府は1983年に策定した政策文書(2003年に一部修正)において、処分開始目標を2020年と設定しています。これは、使用済燃料を原子炉から取り出してから40年後に処分するという方針によるものです。ポシヴァ社は、このスケジュールに沿って処分事業の実施計画を進めており、2018年に最終処分場の操業許可申請を行う計画としています。


2.2 研究開発・技術開発

  • 実施主体のポシヴァ社は国内外の研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関に委託して処分技術や安全評価等に関する研究を進めています。また、スウェーデン等の国際協力による研究開発も進めています。国内の主要な研究機関はフィンランド技術研究センター(VTT)です。

研究機関

処分の実施主体であるポシヴァ社が、研究開発計画を作成し、実施しています。ポシヴァ社は小規模な管理、プロジェクト組織であり、その多くの研究開発業務を研究機関、大学、コンサルタント会社等の外部機関に委託しています。また、同様の処分概念を開発しているスウェーデンのほか、スイス、カナダ等と国際協力による研究開発も進めています。

ポシヴァ社を支援している主な研究機関としてフィンランド技術研究センター(VTT)があります。VTTは、雇用経済省の管轄下にあるフィンランドの総合研究所で、高レベル放射性廃棄物処分に関して規制行政機関が処分事業を管理・監督するために行う研究プログラムの研究支援も行っています。

研究計画


使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発プログラム(TKS)報告書

フィンランドでは、廃棄物管理責任者はその廃棄物管理計画(研究開発計画を含む)を3年毎に更新し、雇用経済省に提出することが義務付けられています。雇用経済省はこれらの計画書について、放射線・原子力安全センター(STUK)の見解書を得る必要があることが定められています。

2000年以降の3カ年の短期計画を示すものとしては、3年毎に作成されている「使用済燃料の最終処分のための研究・技術開発プログラム(TKS)報告書」があります。

地下研究所・地下特性調査施設

ONKALOの建設状況(2006年夏頃)
source: Posiva

:hlw:fi:onkalo-view.pngONKALOの地下レイアウト
source: Posiva

最終処分地に決定したオルキルオトの詳細なサイト特性調査のために、2004年6月から<acronym title=“オンカロ”>ONKALO</acronym>と呼ばれる地下特性調査施設の建設が開始されています。ONKALOでの調査は、わが国の処分地選定プロセスにおける精密調査に相当します。ONKALOのアクセス坑道の掘削は2010年6月に処分深度である420mに達し、2011年11月末現在、坑道の全長は約4.9km、深度は約440mに達しています。ポシヴァ社は建設作業と並行して岩盤や地下水の特性、及び掘削がこれらの特性に及ぼす影響についての調査を行っています。今後、処分トンネルやキャニスタ定置抗の掘削等の処分技術の検証も行われる予定です。ONKALOは、将来的には処分施設の一部として利用されることが考えられています。

なお、ONKALOの建設以前には、オルキルオト原子力発電所の敷地内の地下に設置されている中低レベル放射性廃棄物処分場内に、専用の坑道を設けて小規模な試験が行われていました。





全体構成
フィンランド
hlw/fi/chap2.1362646167.txt.gz · 最終更新: 2013/03/07 17:49 (外部編集)