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(簡略版)
スペインにおける高レベル放射性廃棄物処分
2020年代には処分場の操業を開始するというスペインの放射性廃棄物管理の当初計画は、1999年の第5次総合放射性廃棄物計画で見直され、高レベル放射性廃棄物の最終的な管理方針の決定を2010年まで延期することが示されました。2006年に承認された最新の第6次総合放射性廃棄物計画でも、高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設の建設が当面の重要課題として挙げられ、その処分を含む最終的な管理方針についての決定は先送りされています。
目次
スペインの処分方針
総合放射性廃棄物計画(GRWS)
スペインにおける放射性廃棄物管理の基本計画です。放射性廃棄物管理公社(ENRESA)の事業及びその資金調達・管理に関する王令(以下「事業・資金令」)の中で、GRWPの策定手順や内容などが定められており、ENRESAがGRWPの草案を策定します。最終的には政府承認及び議会への報告を経て正式な廃棄物管理に関する計画となります。これまでに、第1次GRWP(1987年策定)、第2次(1989年)、第3次(1991年)、第4次(1994年)、第5次(1999年)、第6次(2006年)が策定されています。
事業・資金令によると、GRWPは4年毎、あるいは担当大臣からの要求があった場合に策定するものとされています。同計画では、適切な放射性廃棄物管理並びに原子力施設の解体・廃止措置の確実な実施を目的として、計画の期間内に必要な措置や開発すべき技術、及びこれらを実施するために必要な経済的予測を示すこととされています。なお、事業・資金令では、GRWPにおいて示された諸活動を実施するために必要となる資金の確保方法についても規定されています。
1999年の第5次総合放射性廃棄物計画では、高レベル放射性廃棄物等の最終管理方針についての決定を2010年まで延期し、地層処分技術及び核種分離・変換の研究を行っていく方針が示されました。2006年に承認された最新の第6次総合放射性廃棄物計画では、高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設の建設が当面の重要課題として挙げられ、最終的な管理方針についての決定は先送りされ、その決定時期は明確にはされていません。研究等の方針については第5次計画を踏襲していますが、高レベル放射性廃棄物等の最終管理の実施に向けた社会的な議論を実現するための意思決定プロセス等に関する知見の蓄積が新たに加えられています。
なお、使用済燃料の再処理は禁止されていませんが、一部過去の海外再処理委託契約によるものを除いては、使用済燃料の再処理は行わずにそのまま直接処分する方針がとられています。そのため、スペインにおける高レベル放射性廃棄物には、使用済燃料と海外での再処理実施によって返還されるガラス固化体が含まれます。
第6次総合放射性廃棄物計画
地層処分を含む最終管理方策の決定は先送りされていますが、地層処分を有力なオプションとして位置付けています。同計画は、最終管理方策に地層処分が採用された場合として、2040年に処分場の建設開始、2050年から処分場の操業開始というスケジュールを提示しています。また、当面の課題として、集中中間貯蔵施設を2010年に操業できるようにサイト選定を進める必要性も同計画で示されています。
集中中間貯蔵施設の立地選定
第6次総合放射性廃棄物計画(2006年)で重要課題とされた集中中間貯蔵施設については、2009年12月よりサイト選定に向けた公募が行われ、複数の自治体が応募を表明しました。2010年2月には、これらの中から9つの自治体が正式に承認されました。その後、自然保護区域の関係から除外された1つの自治体を除く8つの自治体の中から、ビジャル・デ・カニャス自治体が集中中間貯蔵施設の受け入れ自治体として2011年12月に選定されました。
処分の実施体制
高レベル放射性廃棄物処分に関わる規制行政機関は産業・観光・商務省(MITYC)ですが、安全性については原子力安全と放射線防護に関する唯一の機関である原子力安全審議会(CSN)が設置されています。
スペインでは、放射性廃棄物の発生者に管理責任があると定められていますが、放射性廃棄物管理の実施については、放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が法律に基づいて設立されています。ENRESAの株式は全て政府系金融機関が保有しています。
ENRESAは、高レベル放射性廃棄物の最終処分の実施主体である他、廃止措置を含めた全ての放射性廃棄物の管理及び関連する調査研究を行うものとされています。また、総合放射性廃棄物計画(GRWP)の草案を策定するほか、放射性廃棄物管理や廃止措置のための基金の管理も行っています。この基金への拠出金は、2005年3月分までの費用については電気料金の一部として配電会社から徴収され、それ以降の分については発電会社から直接徴収されます。
処分事業経緯
スペインでは、1984年にENRESAが設立され、高レベル放射性廃棄物の処分場建設を含む放射性廃棄物管理全般にわたる活動を開始しました。当時計画されていた処分方法は、一部の例外を除いて使用済燃料を直接スペイン国内の深い地層内に最終処分するというものでした。
1986年からは複数の地層を対象としたサイト選定プロジェクトも開始されました。サイト選定は、花崗岩、岩塩、粘土質岩の各地層を対象とした好適地層のリスト作成から始まり、地方レベル(ERAプロジェクト)、地域レベル(AFAプロジェクト)、地区レベル(ZOAプロジェクト)と段階的に進められましたが、1995年の各地域レベルでの反対運動を受けて、1998年に方針を変更し、サイト選定活動は中断されました。
この方針変更を受けて、199年策定の第5次総合放射性廃棄物計画では、高レベル放射性廃棄物等の最終管理方針についての決定を2010年まで延期し、地層処分技術及び核種分離・変換の研究を行っていく方針となり、その間はサイト選定活動を凍結することになりました。
2006年の第6次総合放射性廃棄物計画でも、最終的な管理方針の決定は先送りされていますが、地層処分を有力なオプションとし、採用された場合の計画として、建設及び操業開始時期が示されています。
処分動向・事業のまとめ(年表)
- 1986年
-
花崗岩、岩塩、粘土質岩の地層を対象として処分場好適地層のリストを作成
(IFAプロジェクト) - 1987年
- 第1次総合放射性廃棄物計画を承認
- 1988年
-
IFAプロジェクトの結果を受け、サイト選定第1フェーズ(広域地域調査)実施
(ERAプロジェクト) - 1989年
- 第2次総合放射性廃棄物計画を承認
- 1990年
-
サイト選定第2フェーズとして望ましい地域の調査を実施
(AFAプロジェクト) - 1991年
- 第3次総合放射性廃棄物計画を承認
- 1994年
- 第4次総合放射性廃棄物計画を承認
- 1995年
- 望ましい地区の検討(ZOAプロジェクト)。社会的に受け入れられず、1998年に中断
- 1999年
- 第5次総合放射性廃棄物計画を承認。2010年まで代替オプションを含めた調査研究を行うこととし、サイト選定活動は中断
- 2006年
- 第6次総合放射性廃棄物計画を承認。調査研究方針は第5次計画を踏襲しているが、最終管理方針の決定は先送り
今後の予定
- 2040年
- 最終処分施設の建設開始
- 2050年
- 最終処分施設の操業開始
〔参考資料〕
スペインの原子力発電利用状況
電源別発電電力量の変遷
電力需給バランス
2015年 スペイン | 単位: 億kWh (=0.01 x GWh) |
総発電電力量 (Total Production) | 2,810.20 |
---|---|
- 輸入 (Imports) | 149.56 |
- 輸出 (Exports) | -150.89 |
国内供給電力量 (Domestic Supply) | 2,808.87 |
国内電力消費量 (Final Consumption) | 2,320.38 |
source: «Energy Statistics 2017, IEA» Spain 2015:Electricity and Heat
原子力発電の利用・導入状況
-
稼働中の原子炉数 7基, 712.1万kW(2018年1月)
source: World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements (WNA, 世界原子力協会)
原子力関連施設
スペインの主要な原子力関連施設の立地点
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