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(簡略版)
ベルギーにおける高レベル放射性廃棄物処分
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ベルギーでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する方法論の確立を目的とした研究開発が1970年代から行われており、2000年までに得られた研究成果から国内の粘土層が地層処分に適していると評価されています。
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高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針については現在検討が行われているところであり、放射性廃棄物管理を所管するベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が2011年9月に取りまとめた国家廃棄物計画を判断材料として、連邦政府が方針を決定する予定です。
目次
ベルギーの処分方針
ONDRAF/NIRASが2011年9月に取りまとめた
国家廃棄物計画
地層処分施設の概念図(検討段階)
source: ONDRAF, rapport NIROND 2011-02
ベルギーでは、これまで高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針はこれまで決まっていませんでしたが、放射性廃棄物管理について責任を持つベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)によって2009年に検討作業が開始されました。
ONDRAF/NIRASは2011年9月に高レベル放射性廃棄物及び長寿命低中レベル放射性廃棄物の長期管理に関する国家廃棄物計画を取りまとめ、連邦政府に提出しました。この国家廃棄物計画では、国内外の研究成果を踏まえて地層処分及び長期中間貯蔵を含む複数オプションについて比較評価を行った結果から、国内の粘土層での地層処分が推奨されるとの結論が示されています。
連邦政府は、ONDRAF/NIRASによる国家廃棄物計画を判断材料として、高レベル放射性廃棄物及び長寿命低中レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針を今後決定する予定です。
なお、ベルギーでは1970年代から地層処分の研究開発が行われており、高レベル放射性廃棄物及び長寿命低中レベル放射性廃棄物を単一の処分場で処分(併置処分)するという概念で技術検討が行われています。
処分の実施体制
ベルギーでは、国内の全ての放射性廃棄物管理を一元的に行う機関としてベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が1980年に設置されています。ONDRAF/NIRASは、廃棄物発生者から拠出された基金の管理も行います。なお、電力会社が拠出する原子力発電所の廃止措置及び使用済燃料管理のための引当金については民間のシナトム社が法律に基づいて管理を行っており、処分のために廃棄物がONDRAF/NIRASに引き渡される際に、引当金から処分費用がONDRAF/NIRASの基金に対して支払われます。
放射性廃棄物管理に関する規制行政機関は連邦原子力管理庁(FANC)であり、その支援機関(Bel Vと呼ばれる機関)とともに安全規制を担当しています。
原子力分野における研究機関として、非営利の公益財団であるベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)があります。SCK・CENは、ベルギー北部のモルにあるHADES地下研究所をONDRAF/NIRASと共同で運営しており、粘土層での高レベル放射性廃棄物処分に関する研究開発を行っています。
処分事業経緯
ベルギーでは、国内の粘土層での高レベル放射性廃棄物及び長寿命低中レベル放射性廃棄物の処分に関する安全性と実現可能性を評価し、その方法論を確立することを目的として、1970年代から研究開発が行われています。
粘土層での地層処分に関する研究開発は、1974年にモルにあるベルギー原子力研究センター(SCK・CEN)によって開始されました。1976 年に連邦政府の原子力評価委員会は粘土層での処分が最も好ましいと評価したことを受けてSCK・CENは、1980年からベルギー北部モル・デッセル地域の地下約180~280mに分布するブーム粘土層における地下研究所(HADES地下研究所、地下約225m)の建設と地下での研究を開始しました。同じ1980年にベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が設立されたことを受けて、ONDRAF/NIRASとCK・CENが協力して研究開発を行うことになりました。
研究開発は、1974~1988年までの第1段階、1989~2000年までの第2段階、そして2001年から現在実施中の第3段階に区分されています。1989年にONDRAF/NIRASは、第1段階の研究成果をまとめた安全評価・実現可能性中間報告書(SAFIR)を公表しており、ブーム粘土層が処分場の母岩として適していることが確認されました。2001年には、ONDRAF/NIRASが第2段階の研究成果をまとめた安全評価・実現可能性第2次中間報告書(SAFIR2)を公表しました。このSAFIR2では、地下約240mのブーム粘土層に処分場を建設することを想定した性能評価が行われています。
第3段階の研究開発は、地層処分の方法論確立から事業化段階に移行する段階と位置付けられており、この転換点における重要な研究として、坑道の掘削及び廃棄物の発熱による粘土層への複合的影響の評価を目的としたPRACLAY試験が行われています。また別の粘土層(ドール地域に分布するイプレシアン粘土層)での処分場建設を想定した検討も行われます。
ONDRAF/NIRASは、第3段階の研究成果を基に、2014年末に「安全性・実現可能性報告書(SFC-1)」を、2020年に「安全性・実現可能性第2次報告書(SFC-2)」をそれぞれ取りまとめる予定です。ONDRAF/NIRASは、これらの報告書の公表後にサイト選定や処分場の設計を開始する予定としていますが、連邦政府が高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する方針を決定していないため、第3段階の研究開発以降のスケジュールは確定していません。
処分動向・事業のまとめ(年表)
- 1980年
- ベルギーにおける全ての放射性廃棄物管理を一元的に行う機関として、ONDRAF/NIRASが設置される。
- モル(ベルギー北部、フランデレン地域の地名)でHADES地下研究所の建設開始。
- 1989年
- ONDRAF/NIRASが『安全評価・実現可能性中間報告書』(SAFIR)を取りまとめ。
- 1993年
- 憲法改正(連邦制国家となる)。
- 新規の再処理契約を凍結。再処理と直接処分のバックエンド戦略の比較検討を行うことを議会決議。
- 1995年
- ONDRAF/NIRASが「粘土層処分の予備的実証試験」(PRACLAY)プロジェクトを開始(~2015年まで)
- 2001年
- ONDRAF/NIRASが『安全評価・実現可能性第2次中間報告書』(SAFIR2)を取りまとめ。
- 2003年
- 原子力発電からの段階的撤退に関する法律が可決。新規原子炉の建設禁止、運転期間を40年に制限。
- 2006年
- 戦略的環境アセスメント(SEA)法の制定。
- 2009年
- 連邦政府、2015年閉鎖予定の原子炉3基の運転期間を10年間延長。WNA Reactor Database
- 2011年
- ONDRAF/NIRASが『国家廃棄物計画』(Plan Déchets pour la gestion à long terme des déchets radioactifs conditionnés de haute activité et/ou de longue durée de vie et aperçu de questions connexes, rapport NIROND 2011-02 F, 2011)を策定。
〔参考資料〕
ベルギーの原子力発電利用状況
電源別発電電力量の変遷
電力需給バランス
2015年 ベルギー | 単位: 億kWh (=0.01 x GWh) |
総発電電力量 (Total Production) | 706.48 |
---|---|
- 輸入 (Imports) | 237.14 |
- 輸出 (Exports) | -27.15 |
国内供給電力量 (Domestic Supply) | 916.47 |
国内電力消費量 (Final Consumption) | 817.14 |
source: «Energy Statistics 2017, IEA» Belgium 2015:Electricity and Heat
原子力発電の利用・導入状況
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稼働中の原子炉数 7基, 594.3万kW(2018年1月)
source: World Nuclear Power Reactors & Uranium Requirements (WNA, 世界原子力協会)
原子力関連施設
ベルギーの主要な原子力関連施設の立地点
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