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韓国

韓国産業資源部(MOCIE)は、2006年6月28日付けのプレスリリースにおいて、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)地域に建設する予定の中低レベル放射性廃棄物処分施設の処分方式として、第1段階のドラム缶で10万本分の処分については「岩盤空洞処分方式」を採用すると発表した。今回建設される処分施設は、第1段階として200リットルドラム缶10万本を処分可能な規模で建設し、その後、80万本を処分可能な規模まで施設を段階的に増設する予定となっている。なお、今後増設される約70万本分の処分施設の処分方式については、中低レベル放射性廃棄物の発生状況や処分技術の変化など、今後の状況によって柔軟に決定することになったとしている。また、同時に、韓国水力原子力株式会社(KHNP)の慶州市への本社移転について、2006年8月末までに用地を選定し、2010年7月末までに移転を完了する計画であることも公表された。

同ニュースリリースによると、今回決定した岩盤空洞処分は、地下80mの岩盤中に垂直円筒状の空洞を建設し、廃棄体を処分する方式であることが示されている。また、地上施設として、一時貯蔵設備、検査設備、処理設備などが建設される予定とされている。今回発表された処分施設建設事業の概要は、面積が約210万㎡で総事業費が11,445億ウォンであるとされている。

今回処分方式が決定された中低レベル放射性廃棄物処分場に関しては、2005年11月に慶州市陽北面奉吉里に建設されることが決定していた。処分場の処分方式選定については、2006年4月4日に韓国水力原子力株式会社(KHNP)が設置した処分方式選定委員会によって、「浅地中処分」又は「岩盤空洞処分」のどちらを採用するか検討が進められてきた。同プレスリリースの参考資料によると、処分選定委員会の概要及び活動は、以下のようになっている。

委員会の位置付け 韓国水力原子力株式会社社長の諮問機関(委員長:ファン・ジュホ、総計16人)
構成 慶州市及び市議会(3人)、地域住民代表(3人)、専門家(10人)
運営 社会環境分科委員会(9人)、技術分科委員会(7人)及び全体会議で運営
期間 2006年4月4日~2006年6月28日
活動 合計13回の会議(分科会9回、全体会議4回)を開催、海外の放射性廃棄物処分施設への訪問調査(2006年5月)を実施
社会環境分科委員会 主に住民の受容性、文化財への影響、環境影響、災害時の住民の安全対策について評価
技術分科委員会 主に地質調査結果の分析、廃棄物の特性、許認可計画、処分施設建設及び運営による経済性及び安全性などを評価

また、同プレスリリースによると、処分方式選定委員会では、2つの処分方式に対して安全性に関する1次評価と、5項目(技術・操業性、許認可、住民の受容性、環境親和性、経済性)からなる2次評価が実施されたとしている。1次評価では、2つの処分方式は共に安全基準を満たしていると評価されたが、2次評価の結果として、岩盤空洞処分方式が採択され、KHNPに勧告が行われ、同社はこれを受け入れたとしている。

更に、同プレスリリースの参考資料によると、中低レベル放射性廃棄物処分施設に関する今後の計画は、以下のようになっている。

  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設の建設計画の確定(2006年12月)
  • 基本設計、環境(放射性)影響評価、サイト特性調査などの完了(2007年5月)
  • 実施計画の承認(2007年10月 暫定)
  • 放射性廃棄物処分場の建設許可(2007年12月、韓国科学技術部(MOST))
  • 部分竣工(回収、貯蔵設備、2008年12月)
  • 最終竣工(ドラム缶10万本規模、2009年12月)

【出典】

  • 韓国産業資源部(MOCIE)2006年6月28日付けプレスリリース

韓国水力原子力株式会社(KHNP)は、2006年5月8日付けのプレスリリースにおいて、中低レベル放射性廃棄物処分施設誘致地域支援特別法に基づき、慶州市(キョンジュ市)に支給することになっていた特別支援金3,000億ウォン(既報)を全額支給したことを明らかにした。

これは、産業資源部(MOCIE)と慶州市の間で進められてきた特別支援金の支給時期及び方法に関する協議がまとまり、2006年4月20日に産業資源部が韓国水力原子力株式会社に30日以内の支給を指示したことを受けたものである。

産業資源部の2006年4月20日付けのプレスリリースによると、産業資源部と慶州市の合意内容は以下のようになっている。

  • 韓国水力原子力株式会社は、特別支援金3,000億ウォン全額を慶州市名義で開設された預託勘定口座1 に入金する。
  • 慶州市は、預託勘定口座に入金された特別支援金のうち、2007年10月に予想される処分施設建設の実施計画承認時に1,500億ウォン、2008年12月に予想される処分施設の操業開始時に残りの1,500億ウォンを慶州市の特別会計に振り替える。
  • 預託金から発生する利息(年間約120億ウォン)は、慶州市の特別会計として随時振替可能とする。

また、産業資源部のプレスリリースなどによると、慶州市陽北面奉吉里(ヤンブク面ポンギル里)に建設される中低レベル放射性廃棄物処分施設の建設事業については、以下の通り、当初の計画に沿って着実に推進されていると説明されている。

  • 2005年11月に住民投票によって選定された慶州市については、2006年1月2日に陽北面奉吉里一帯(約200万平方km)が、関連省庁の局長クラスが委員を務める電源開発事業推進委員会の審議を経て、産業資源部によって電源開発事業予定区域に指定され、告示された。
  • 現在、2006年初めより約1年半の予定で、韓国水力原子力株式会社及び国内外の専門機関によるサイト特性調査、環境影響評価、放射線環境影響評価、安全解析などの各種調査及び処分施設・輸送船舶の設計作業が行われている。
  • 今後の見通しとして、2007年半ばに産業資源部による実施計画の承認及び科学技術部(MOST)への建設・操業許可の申請を予定しており、2007年下半期に基盤施設工事に着手し、2009年末には第1段階として200リットルドラム10万本規模の処分施設を完成し、貯蔵施設の飽和が近い蔚珍(ウルチン)原子力発電所からの廃棄物に備えて、優先的に2008年末に部分操業を行う計画としている。
  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設の処分方式(浅地中処分又は岩盤空洞処分)の選定については、2006年4月4日に韓国水力原子力株式会社が処分方式選定委員会を設置し、国内外の専門機関の技術検討結果を踏まえて、自治体、地域住民、国内外の専門家などの意見を十分反映する形で安全性、環境への負荷、経済性などを検討し、2006年6月末までに処分方式を決定する予定としている。

産業資源部は、2006年3月末、韓国水力原子力株式会社の本社移転計画についても2006年8月までに確定するとしており、2005年12月の陽子加速器事業の協約締結、今回の特別支援金の支給と共に、誘致地域への支援事業が当初の計画通り順調に進んでおり、慶州市の経済活性化及び住民の福祉向上などに大きく寄与するものであるとしている。

【出典】

  • 韓国水力原子力株式会社(KHNP) 2006年5月8日付けプレスリリース
  • 韓国産業資源部(MOCIE)2006年4月20日付けプレスリリース
  • 韓国産業資源部(MOCIE)2006年1月2日付けプレスリリース

  1. 勘定口座に入金された資金を特定の事実が発生した場合にのみ引き出すことの可能な預金口座。 []

中低レベル放射性廃棄物処分施設誘致住民投票結果(2005年11月2日)

韓国産業資源部(MOCIE)は、2005年11月3日付けのプレスリリースにおいて、中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致申請を行っていた4自治体で2005年11月2日に実施された住民投票の結果、慶州市(キョンジュ市)が 89.5%の賛成で処分施設サイトとして決定したことを発表した。

今回の住民投票は、2005年8月31日までに中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致申請を行った4つの自治体(慶州市、群山市(クンサン市)、浦項市(ポハン市)、盈德郡(ヨンドク郡))に対して、2005年9月15日に産業資源部長官が行った実施要求(既報)を受けたもので、2005年11月2日に4自治体で同時に行われた。

投票の結果は、各自治体とも住民投票の有効性の要件である有権者数の1/3を超える投票率を得、いずれも有効投票数の過半数の得票で誘致を可決した。そのため、2005年6月の公告で示されていたように、複数の自治体が可決した場合に有効投票数に対する賛成の比率の最も高い自治体に決定するとの取り決め(既報)により、89.5%の賛成を得た慶州市に決定されることとなった。

各自治体の投票結果
自治体
有権者数
総投票者数
(不在者投票者数)
投票率(%)
賛成率(%)
慶州市
208,607
147,636
70,521
70.8
89.5
群山市
196,980
138,192
65,336
70.2
84.4
盈德郡
37,536
30,107
9,523
80.2
79.3
浦項市
374,697
178,586
63,851
47.7
67.5


この結果を受けて、慶州市が予定している陽北面奉吉里(ヤンブク面ポンギル里)(既報)に中低レベル放射性廃棄物処分施設が建設されることになる。

【出典】

  • 韓国産業資源部(MOCIE)2005年11月3日付けプレスリリース

誘致申請書を提出した4つの自治体

韓国産業資源部(MOCIE)は、2005年9月1日付けのプレスリリースにおいて、8月31日に中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致申請の期限を迎え、慶州市(キョンジュ市)、群山市(クンサン市)、浦項市(ポハン市)、盈德郡(ヨンドク郡)の4自治体が地方議会の同意を得て、最終的に産業資源部に誘致申請書を提出したことを発表した(慶州市については既報)。

これらの申請を行った自治体では、2005年6月の公告に基づき、地元住民を対象に事業内容及び誘致効果について、公聴会、討論会、国内及び海外施設の視察、自主的な世論調査などが実施され、こうした活動を基に地方議会に誘致同意案が提出され、可決していた(慶州市、群山市については既報)。

誘致同意案に対する各地方議会の議決結果は、慶州市(賛成22、反対0)、群山市(賛成18、反対8)、浦項市(賛成21、反対12、棄権 1)、盈德郡(賛成5、反対4)で可決されたのに対し、同じく誘致同意案を議会に提出していた蔚珍郡(ウルチン郡)(賛成5、反対5)、三陟市(サムチュク市)(賛成4、反対7、棄権1)は議会の同意を得られず、誘致申請を断念した。また、2003年の公募の際に誘致申請を行ったものの、その後の反対運動による混乱で事実上保留扱いとなっていた扶安郡(プアン郡)(既報)については、2005年8月23日に誘致申請書を産業資源部に提出したが、議会同意書に議長印がないなどの不備があり受理されず、2005年8月31日の締め切りまでに地方議会の同意を得られなかったために申請することができなかった。

サイト選定委員会は、今回誘致申請を行った4自治体の処分施設誘致予定サイトは、地質学的適性については予備的な調査結果ではあるものの問題がないことを発表している(慶州市、群山市、盈德郡については既報)。今後は、地質学的適性及び文化財、上水源保護区域などの存否、輸送の容易性、自然及び社会、経済環境などといった事業推進環境などを含めたサイト適合性を最終評価することになっている。

産業資源部長官は、同結果を基にサイト適合性が認められる地域に対し、2005年9月15日に住民投票の実施を要求する計画である。住民投票が行われる場合は、住民投票法に規定された手続きに従い、自治体首長による住民投票の発議を経て、遅くとも11月中旬までには(複数自治体の場合は同時に)実施されることになっている。


誘致自治体の現況(2005月8月30日現在)
自治体名
現況
慶州市(キョンジュ市) 人口:276,060人(有権者数:209,099人)
2004年度予算及び財政自立度:4,148億ウォン/33.4%
予定サイト:陽北面奉吉里(ヤンブク面ポンギル里)
群山市(クンサン市) 人口:266,541人(有権者数:195,519人)
2004年度予算及び財政自立度:3,919億ウォン/27.6%
予定サイト:少龍洞(ソリョン洞)ピウン島
浦項市(ポハン市) 人口:508,937人(有権者数:375,704人)
2004年度予算及び財政自立度:6,383億ウォン/49.3%
予定サイト:竹長面上玉里(チュクチャ面サンオク里)
盈德郡(ヨンドク郡) 人口:45,372人(有権者数:37,410人)
2004年度予算及び財政自立度:1,713億ウォン/11.4%
予定サイト:丑山面上元里(チュクサン面サンウォン里)


注)財政自立度:日本の自主財源比率に類似する指標で、以下のように定義される。
財政自立度(%)=(地方税+税外収入)/地方自治体の一般会計歳入総計


【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年9月1日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年8月30日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年8月23日

【2005年9月22日追記】

2005年9月15日、韓国産業資源部(MOCIE)はプレスリリースで、4つの誘致申請地域について、サイトの地質学的適性及び事業推進環境の評価を行った結果、いずれも候補サイトとして適するとの結果が得られたことを公表した。これを受けて、2005年6月の公告で示されたスケジュールに従い、2005年9月15日に産業資源部長官は誘致申請を行った4自治体に対して住民投票の実施を要求した。今後、この4自治体は、産業資源部による住民投票要求の事実を直ちに住民に公表し、地方議会の意見収集を経て、住民投票を実施することになる。また、同公告で求められた住民投票の同時実施のために、4自治体の首長が共同で日程を協議した結果、住民投票の発議は10月4日以降、住民投票は11月2日に実施することを決定したことも公表された。4自治体の首長は、誘致地域支援特別法、住民投票法など、関係法令が定めるところに従い、透明かつ公正に住民投票を行い、その結果による候補サイト選定結果を受け入れることで一致したとしている。
・韓国産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年9月15日

今後の住民投票に向けた手続き


韓国産業資源部(MOCIE)は、2005年8月16日付けのプレスリリースにおいて、慶州市(キョンジュ市)が中低レベル放射性廃棄物処分施設の候補サイトの選定に向けた誘致申請書を同日、産業資源部に提出したことを発表した。今回のサイト選定の手続は、2005年6月16日の公告によって開始されたもので、中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致を行う地方自治体首長は、2005年8月31日の期限までに地方議会の同意を得た上で、産業資源部に申請することになっている(既報)。

慶州市については、2005年3月2日に市議会が自治体として初めて中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致に賛成する議決を行い、特別委員会を設置するなどの活発な誘致活動を通じて、地元住民の意見を収集してきた。2005年8月11日に慶州市長は誘致申請を行うことを公表、慶州市議会に同意案を提出し、市議会では2005年8月12日に在籍議員24人の内22人が出席し、満場一致で同意案を可決していた。

慶州市の誘致申請において想定しているサイトは、月城(ウォルソン)原子力発電所の近くに位置する慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)サイト(下図参照)であり、2005年6月16日の公告の際に、サイトの適合性評価について、地質条件が比較的良好との暫定的な確認がなされている。(既報

産業資源部は、今回の慶州市の誘致申請について、これまで地域レベルでのみ活発に行われてきた誘致に関する議論が、初めて自治体レベルで公式に誘致申請の形に漕ぎ着けたものと評価している。申請された奉吉里サイトのサイト適合性が最終的に認められれば、次の段階として文化財、上水源保護区域であるか否かの確認、経済性などの事業推進環境の評価を行うことになっている。事業推進環境を含むサイトの適合性が確認された場合、産業資源部長官は2005年9月15日までに慶州市に住民投票法第8条(国家政策に関する住民投票)に基づく住民投票の実施を求めることになる。自治体首長が住民投票の発議を行った場合、2005年11月22日までに自治体で住民投票が(複数の場合は同時に)実施され、住民投票権者数の1/3以上の投票率及び有効投票数の過半数の賛成票の得票で可決となる。複数地域が競合する場合は賛成得票率の高い地域が最終候補サイトに選定されることになっている。(既報

なお、慶州市の他に、群山市(クンサン市)もすでに2005年7月18日に市議会で誘致同意案を可決しており、蔚珍郡(ウルチン郡)、浦項市(ポハン市)も地方議会に誘致同意案が上程されている。さらに、盈德郡(ヨンドク郡)、三陟市(サムチョク市)は、2005年8月中に世論調査を行い、住民の民意を確認した上で、誘致申請の是非を決定する方針とされている。産業資源部は、今回の慶州市の誘致申請によって、中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致に関心を示しているその他の自治体の誘致に向けた動きにも拍車がかかるとの見方を示している。

慶州市の位置
外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/index.html)より作成

【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年8月16日

韓国産業資源部(MOCIE)は2005年6月16日付けのプレスリリースにおいて、韓国の中低レベル放射性廃棄物処分施設の設置のための新たな候補サイト選定などに関する公告を行った。同公告は2005年3月に可決した中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域支援に関する特別法(誘致地域支援特別法) に基づくもので、新たなサイトの選定の手続き、複数地域が競合する場合の候補サイトの選定方式および誘致地域に対する具体的な支援内容などを示したものである。

公告の概要は以下の通りである。

1) サイト選定の手続き

  • サイト選定手続きの公正かつ透明な管理のために、人文・社会、科学・技術分野の専門家および言論界、法曹界、市民団体の代表者などの17名で構成されるサイト選定委員会を2005年3月に設置。
  • 自治体の誘致申請については、誘致地域を管轄する基礎自治体(市・郡または特別市および広域市の自治区)(以下、管轄基礎自治体)の首長が地方議会の同意を得て、2005年8月31日までにMOCIE長官に申請を行う。
  • 誘致申請を行った自治体が2ヶ所以下である場合、サイト選定委員会は必要に応じて、世論調査を通じ住民投票の実施対象地域を新たに定めることができる。
  • 住民投票の発議については、住民投票の実施対象地域に対し、住民投票法に基づく国家政策に関する住民投票の実施をMOCIE長官が要求し、同法の関連手続きに沿って、自治体の首長が受け入れるかどうかを決めて発議する。住民投票の発議は2005年10月22日に締め切る。
  • 住民投票は発議時点で定められた日に複数地域で同時に実施し、遅くとも11月22日までに完了する。

2) 複数地域が競合する場合の候補サイトの選定方式

  • 処分施設サイトについては、サイトの適合性、事業推進環境、施設に対する地域のコンセンサスの三つの要素を段階毎にそれぞれ評価し、各段階で適合した地域のみを次の段階へ進めることとする。
  • サイトの適合性と事業推進環境については、サイト選定委員会によって、遅くとも住民投票の発議時点以前までに適否を評価し、管轄基礎自治体に通知する。住民投票は、サイト適合性の評価によって適合とされた地域に限って実施し、候補サイトは住民投票の結果で、賛成率が一番高い地域を選定する。
  • 選定された候補サイトについては、電源開発促進法の規定に基づき、電源開発事業予定区域に指定し告示する。

3) 誘致地域に対する支援

  • 誘致地域に対しては、2005年3月に制定・公布された誘致地域支援特別法に基づいて、韓国水力原子力株式会社(KHNP)による3,000億ウォンの特別支援金による支援を、施設の操業開始前に管轄基礎自治体などに行う。
  • 処分施設の操業段階で施設に搬入される中低レベル放射性廃棄物の量に応じて徴収される年平均約85億ウォン規模の搬入手数料を、管轄基礎自治体などに納付する。
  • KHNPは、施設に対する電源開発事業実施計画の承認時点から3年間以内に、誘致地域に本社の移転を完了する。
  • 陽子加速器事業は、誘致地域を管轄する広域自治体(特別市・広域市・道)の知事が管轄基礎自治体の首長と協議し、陽子加速器の誘致機関を決定する。
  • 誘致地域支援特別法に基づき、首相を委員長とする誘致地域支援委員会を設置し、政府を上げて誘致地域の支援体制を構築し、地域開発特例制度の導入などを通じ、地域開発事業を支援する。

なお、サイト選定委員会の小委員会の一つとして、委員4名と地震、地質構造、地盤、地下水、環境分野の専門家5名などで構成されるサイト適合性小委員会が設置されている。本小委員会は、候補サイトの選定後に長期間実施されるサイト特性調査および環境影響評価などの調査に先立って行われる予備サイト調査に対する専門的な検証および評価を行う。今回、サイト適合性小委員会は、KHNPが自治体との協議を通じてサイト調査に着手した4市・郡の5サイトについて、調査結果の検証と現地訪問調査を実施したことを同時に発表した。サイト適合性小委員会は、4市・郡の5サイトおよび現在調査を進めているサイト(下表を参照)に対して、住民投票を実施要求する前までにサイト適合性評価を終了する予定としている他、今後サイト調査を希望する自治体に対しても、既存の調査地域と同一の基準に沿ってサイト適合性評価を行う計画であることを表明している。

誘致地域支援特別法に基づく 新しいサイト誘致選定手順

表 サイト適合性小委員会のサイト適合性評価の状況

調査地域
調査結果
備考
郡山市少龍洞(クンサン市ソリョン洞)ピウン島 地質条件が比較的良好
慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里) 地質条件が比較的良好
慶州市陽南面(キョンジュ市ヤンナム面)サンラ里 熱水変成による軟弱帯が幅広く不規則的に発達し、一般的な工学的補強では安全の確保が困難
盈徳郡蒼水面(ヨンドク郡チャンス面)シン里 地質条件が比較的良好 丑山面(チュクサン面)一帯での追加サイト調査を実施
蔚珍郡北面(ウルチン郡プク面)ソコク里/サンタン里 地質条件が比較的良好 北面(プク面)の調査地域をコモク里まで拡大
浦項市竹長面(ポハン市チュクチャ面)サンオク里一帯 サイト調査実施中
三陟市遠徳邑(サムチュク市ウォンドク邑)イチョン里一帯 サイト調査開始

【注1】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市、郡、特別市および広域市の自治区)があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑、面、洞がある。

【出典】

  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設の候補サイト選定などに関する公告
  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設サイト選定の手続きおよび基準(公告資料)
  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設事前サイト調査暫定評価結果(公告資料)

【2005年7月12日追記】

2005年7月6日、韓国産業資源部(MOCIE)はプレスリリースで、7月6日、8日にそれぞれ慶尚北道(キョンサンプクト)、全羅北道(チョルラプクト)において、MOCIE、科学技術部(MOST)、行政自治部による政府合同説明会を開催することを公表した。同説明会は誘致地域支援特別法に基づき、地元住民に中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定手順、誘致地域に対する支援内容などを周知するために行われる活動の一環であり、市・郡などの基礎自治体の首長または地方議会が要請した場合は、市・郡単位の説明会も行われる予定とされている。

・韓国産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年7月6日

韓国産業資源部(MOCIE)は2005年3月2日付けのプレスリリースで、韓国の第252回臨時国会において、政府が提出した中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域支援に関する特別法案(以下「地域支援特別法案」という。)が本会議で可決されたことを発表した。同法案については、誘致地域に対する政府の支援意思を明確にすることを目的として政府内で準備が進められていたもので、法案の公開および意見聴取のための立法予告が2004年7月に行われ、2005年1月25日に国務会議(閣議に相当)で政府案として議決されていた。

今回の地域支援特別法の大きな特徴としては、今までのサイト選定過程で地元住民が要求してきた経済的支援についての法的な根拠の付与、政府が昨年から重きを置いて進めてきた透明かつ民主的な手続きに関する規定の盛り込み、中低レベル放射性廃棄物処分施設と使用済燃料中間貯蔵施設の分離・推進に関する2004年12月の原子力委員会の決定の立法化などが挙げられる。政府は同法について、これまでのサイト選定の推進過程での地元住民との約束を包括的に反映し、政府の確固たる意思を示すことにより、信頼性向上および処分施設の誘致を希望する地域のコンセンサス形成にも大きな影響を与えるものとして位置付けている。

同法の主な内容は以下の通りである。

  • 地域経済の活性化および雇用増への貢献を念頭に置いた、特別支援金(3,000億ウォン程度(約286億円)と推定)支給、廃棄物の搬入手数料(50~100億ウォン程度(約5~10億円)と推定)の導入、および韓国水力原子力株式会社の本社移転の明文化。(特に特別支援金の支給対象については、施設から5km以内に位置する地方自治体に加え、その他の市、郡、区の邑、面、洞にも拡張可能。)
  • 誘致地域に対する支援事業に係る事業費を確保し、これを合理的に運用するための特別会計、国公有財産の貸付、国の補助金の引き上げ、住民の優先雇用など、地域発展に向けた特例制度の導入。
  • 使用済燃料関連施設が、中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域に建設されることを禁止する規定の明文化。
  • サイト選定手続きにおいて住民投票を法的に義務付け、選定計画、サイト調査結果、選定過程などの全過程について透明性を確保して進め、地元住民向けの説明会、討論会の開催を義務付けることにより、民主的な手続きを保証。

産業資源部は、今回の地域支援特別法の国会での可決で確保された経済性、安全性、手続きにおける民主性をもとに、地域住民、市民団体および各界の有識者の意見集約を通じて、民主的かつ透明性のあるサイト選定手続きを設定し、処分施設がスムーズに建設できるように事業を進めていく方針としている。

【注】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。

【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年3月2日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2005年1月25日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
  • 中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域支援に関する特別法
  • 韓国政府は、2004年12月17日付けの韓国産業資源部(MOCIE)のプレスリリースにおいて、同日開催された第253回原子力委員会(委員長:首相)で、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地するこれまでの放射性廃棄物管理政策を見直し、これを分離して推進することを議決したことを発表した。

    同プレスリリースでは、今回の原子力委員会の決定は、政府がここ18年間進めてきた放射性廃棄物管理政策の基本的な枠組みを変更した画期的な政策転換であると位置付けており、すでに国際的に安全性が立証され、管理経験の蓄積された中低レベル放射性廃棄物処分場のみを優先的に建設することで、今後の施設の誘致を行うことになる自治体の負担が大きく緩和されるものと期待すると述べられている。また、使用済燃料の中間貯蔵施設については、中低レベル放射性廃棄物処分場のサイトには建設を行わず、時間的余裕をもって十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスを得た上で最適な解決策を模索するとしている。

    また、同プレスリリースでは、韓国では中低レベル放射性廃棄物のサイト内貯蔵容量の余裕がないため、廃棄物処分場がスムーズに建設できない場合、電力供給の40%を占める原子力発電に影響が生じるおそれがあるとしている。そのため、MOCIEはサイト内貯蔵容量の飽和が予想される2008年までに中低レベル放射性廃棄物処分場を建設するように最善の努力を傾けるとしている。

    さらに、MOCIEは中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定に向けた新たな手続きを策定する過程で、地元住民、市民・社会団体、学会、関連のある専門家などの意見を十分に聞き、透明性のある手続きとすると同時に、住民の受容性の向上および混乱の解消に向けた多角的な方策を講じることも打ち出している。

    韓国では、これまでは中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を組み合わせたサイト選定を行ってきており、2004年2月に発表された新たな候補サイトの誘致公募手続きに基づき、2004年5月31日の地域による誘致請願の期限までには7市・郡10地域が請願を行った。しかし、2004年9月15日に期限を迎えた誘致の予備申請を行った自治体は無く、政府は早々にサイト選定手続方式についての新たな案を策定し、地元住民、社会・市民団体などとの十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスが得られるような透明性のある手続きを通じて、放射性廃棄物の管理事業を進めたいとの考えを示していた

    なお、2003年のサイト選定によって激しい住民間の対立が生じた扶安(プアン)郡に対して、政府は住民投票の実施は事実上困難との見解を示していた。今回、政府は同プレスリリースで、政府を挙げての迅速な混乱の解消および地域経済の活性化策などを策定していく計画であることを表明している。

    【注】
    韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。

    【出典】

    • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年9月16日
    • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
    • 放射性廃棄物処分施設誘致地域支援などに関する特別法(案)

    2004年9月16日付けの韓国産業資源部(MOCIE)のプレスリリースにおいて、同年9月15日に締め切られた韓国の中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設に関する誘致の予備申請について、申請を行った地方自治体は無かったことが発表された。中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設の候補サイトの選定については、2004年2月に発表された公告に沿って、住民投票を組み込んだ新しい方式で公募が開始され、同年5月末の時点で誘致請願を行った地域は7市・郡の10地域であった

    政府は今回の結果を、自治体が自主的に下した決定であり謙虚に受け止めるとしている。また政府は、放射性廃棄物の処分施設の必要性をあらためて強調するとともに、今後は早々にサイト選定手続方式についての新たな案を策定し、地元住民、社会・市民団体などとの十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスが得られるような透明性のある手続きを通じて、放射性廃棄物の管理事業を進めたいとの考えを示している。

    一方、2003年7月24日に立地候補地として一旦選定された扶安郡蝟島(プアン郡ウィド)については、2004年2月の告示で、住民投票が実施されて可決した場合には、本申請が完了したものと見なされることが示されているが、政府はこの住民投票の実施は事実上困難と考えている。政府はウィドについて、新たな放射性廃棄物処分施設の推進策を策定する過程で、プアン住民、自治体などと緊密な協議を行うなど、解決策作りに取り組む方針を示している。

    なお、2004年5月31日の誘致請願以降の動きとして、誘致地域に対する政府の支援意思を明確にする目的で、「放射性廃棄物処分施設の誘致地域への支援などに関する特別法」についての立法予告が2004年7月12日付けのMOCIEのプレスリリースにおいて発表されている。この立法予告においては、支援対象地域の市、郡、区単位の行政区域への拡大、廃棄物の搬入手数料の新設、誘致地域に提供される特別支援金(約3,000億ウォン(約270億円))の根拠の明確化、誘致地域支援委員会及び誘致地域実務委員会の設置などが示されており、誘致に向けた法制度の整備が進められていた。

    【注】
    韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。

    【出典】

  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年9月16日
  • 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
  • 放射性廃棄物処分施設誘致地域支援などに関する特別法(案)
  • 2004年6月1日、韓国産業資源部(MOCIE)は前日に期限を迎えた中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設のサイト選定のための地域住民による誘致請願受付の結果を発表した。それによると、以下の7市・郡の10地域からの誘致請願書が受理されている。

      有権者数(人) 署名者数(人) 署名率(%)
    慶尚北道(キョンサンプクト)  
      蔚珍郡近南面(ウルチン郡クンナム面) 3,025 1,263 41.75
    蔚珍郡箕城面(ウルチン郡キソン面) 3,091 1,364 44.13
    蔚珍郡北面(ウルチン郡プク面) 6,413 2,467 38.45
    全羅北道(チョルラプクト)  
      高敞郡海里面(コチャン郡ヘリ面) 3,323 1,308 39.36
    群山市小竜洞(クンサン市ソリョン洞) 10,370 4,196 40.48
    群山市沃島面(クンサン市オクト面) 3,200 1,245 38.91
    全羅南道(チョルラナンド)  
      霊光郡弘農邑(ヨングァン郡ホンノン邑) 6,455 4,400 68.16
    莞島郡生日面(ワンド郡センイル面) 973 356 37.00
    長興郡蓉山面(チャンフン郡ヨンサン面) 2,607 926 35.52
    仁川広域市(インチョングヮンヨッシ)  
      江華郡西島面(カンファ郡ソド面) 581 215 37.00

    誘致請願を行った10地域
    外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/index.html)より作成

    今回の誘致公募手続きは、2004年2月4日の告示によって示されたもので、2004年5月31日までに邑・面・洞(日本の町村に相当)の有権者の1/3以上の賛成署名を添付した誘致請願が産業資源部長官に行われた場合は、産業資源部長官から当該地域の地方自治体首長に通知されることになっており、今回誘致請願を行った10地域は、この手続きを経たものである。今後は、2004年9月15日までに当該地域の地方自治体首長が産業資源部長官に予備申請を行うことが可能である。また、今回請願を行わなかった地域についても、邑・面・洞の有権者の1/3以上の賛成署名を添付して地方自治体首長に直接要請を行った場合、あるいは当該市・郡・区議会が決議の下、地方自治体首長に要請した場合は2004年9月15日までに予備申請が可能となっている

    予備申請が行われた場合には、当該地方自治体住民を対象にした住民投票が実施され、有権者の1/3以上の投票、有効投票数の過半数の賛成を得た場合に、地方自治体首長は2004年11月30日までに産業資源部長官に本申請を行うことができる。なお、2003年7月24日に立地候補地として一旦選定された扶安郡蝟島(プアン郡ウィド)については、住民投票が実施されて可決した場合には、本申請が完了したものと見なされることになっている

    産業資源部長官は、本申請を完了した地方自治体を対象に、「サイト選定委員会」での審査を行い、2004年12月31日までに施設予定区域の候補サイトを選定することになっている。産業資源部は、サイトの選定に当たり、住民の自治と参加の原則に従い、サイト調査や安全性検証等に関する地域住民の参加を保証し、エネルギー円卓会議、エネルギー政策官民合同フォーラム等を通じて市民環境団体との対話努力も並行して進めていくなど、透明かつ公正に手続きを進める計画である。

    サイト選定の手続き

    【注】
    韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体首長は基礎自治体の長を指す。

    【出典】

    • 産業資源部プレスリリース、2004年6月1日 http://www.mocie.go.kr/notice/news/report_view.asp?num=6442&keyfield=&key=&startday=&endday=&jungchak_menu=0&page=9
    • 産業資源部プレスリリース、2004年5月31日 http://www.mocie.go.kr/notice/focus/focus_view.asp?num=2885
    • 韓国水力原子力株式会社プレスリリース、2004年5月31日 http://www.khnp.co.kr/press/press.html