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韓国政府が「使用済燃料管理対策推進計画」を策定

2012年11月20日付の韓国教育科学部(MEST)のプレスリリース及び翌日の政府広報によれば、11月20日に開催された第2回原子力振興委員会1において、「使用済燃料管理対策推進計画」が審議・議決を経て確定され、今後の使用済燃料管理方策の策定に向けた議論の枠組みとスケジュールが示された。また、同日の委員会では、「原子力施設廃止措置技術開発計画」も確定され、関連する中核技術に関する今後の研究開発方針が示された。

政府広報及びMESTのプレスリリースでは上記の議決内容に加えて、政府広報では「使用済燃料管理対策推進計画」について、MESTでは「原子力施設廃止措置技術開発計画」について、上記の第2回原子力振興委員会を経て確定されたそれぞれの計画内容や関連する補足情報が報道資料として公表されている(政府広報での補足情報に関する報道資料は韓国知識経済部(MKE)が作成)。

使用済燃料管理対策推進計画

放射性廃棄物管理法は、韓国知識経済部(MKE)長官に放射性廃棄物管理基本計画の策定を要求している。MKEのプレスリリース等によれば、今回確定された使用済燃料管理対策推進計画は、国民的なコンセンサスを得て使用済燃料管理計画を策定すべきとした2004年の原子力委員会(現原子力振興委員会)の議決を踏まえてMKEが策定したものである。具体的には、使用済燃料管理方策を含む放射性廃棄物管理基本計画(基本計画)を2014年までに策定することを目標として、基本計画策定の方針、策定までの議論の枠組みならびにスケジュール等について、次のように計画している。

  1. 基本計画の策定方針として(特に使用済燃料管理方策について)、安全性を最優先として、短・中期的対策と長期的対策を区分した取組を計画する。関係する管理施設の新設等に関連して、地域住民と将来世代に対する社会的負担に対して、国民が共感できるレベルでの支援方策を講ずる。
  2. 基本計画の今後の具体化においては、社会的コンセンサスを得るために、放射性廃棄物管理法の規定に基づく「公論化委員会」を2013年上半期に設置する。
    • 公論化委員会は政府から独立した民間諮問機関として、人文・社会科学、技術工学分野、市民・社会系ならびに原子力発電所の地域代表などで構成される。
    • 公論化委員会では、討論会、説明会、公聴会などの多様なプログラムをとおして、国民に対する公論化を推進する。
    • 公論化委員会における議論のテーマは限定されないが、使用済燃料管理に関する中間貯蔵に先立つ乾式の暫定貯蔵の実施など、主に短・中期的な現実的対策案の検討が集中的に行われることが想定される。

    ※MKEから公表されている使用済燃料管理対策推進計画によれば、放射性廃棄物管理法に基づいて政府から独立した民間の諮問機関として設置される公論化委員会には、右図のような独立的な権限と責任が付与される。また、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)、韓国水力原子力株式会社(KHNP)、韓国原子力安全技術院(KINS)、韓国原子力研究所(KAERI)ならびに韓国原子力文化財団(KNEF)などで構成される公論化支援団体が公論化委員会の活動を支援する予定である。

  3. 公論化委員会の活動結果は、2014年までに政府への勧告として原子力振興委員会及びMKEに提示され、MKEは同勧告を反映して、関連する新たな管理施設等に関するサイト選定計画及び投資計画を含む基本計画を同年中に策定する。

 

今回確定された使用済燃料管理対策推進計画に関する公論化のプロセスを中心とした上記計画の工程は以下のとおりであり、MKEは、2014年に「放射性廃棄物管理基本計画」を策定した後、2015年以降にサイト選定などの関連の手続に着手するとしている。

  • 公論化の事前準備(2012年12月~2013年3月):公論化推進に係る詳細な方策の策定、公論化支援団体の設置など
  • 公論化委員会の設置・運営(2013年4月~2014年):中間貯蔵の方法(位置、運営期間、方法など)、サイト選定手順、誘致地域の支援方策などを含む政府への勧告案の作成
  • 「放射性廃棄物管理基本計画」の策定(2014年):放射性廃棄物管理施設のサイト選定計画及び投資計画などを含めた、放射性廃棄物管理法に基づく基本計画の策定
  • 公論化委員会の勧告を反映して、必要に応じてサイト選定などの関連施策への着手 (2015年以後)

図1 使用済燃料管理対策推進手順(案)

 

なお、韓国では2011年11月に「使用済燃料政策フォーラム」を設置し、使用済燃料の管理政策や管理政策の策定のための公衆協議の方法などに関する議論が行われていた。使用済燃料管理対策推進計画によれば、使用済燃料政策フォーラムは2012年9月に政府への勧告書を取りまとめ、韓国知識経済部(MKE)に提出していた(後述の「参考」に勧告内容を整理)。同フォーラムによる14項目の勧告のうち次の2つの項目について、今後公論化委員会によって本格的な議論が行われる予定である。

  • 2024年までに使用済燃料の中間貯蔵施設の建設を完了すること
  • 暫定貯蔵施設の設置、暫定貯蔵方法(フォーラムは暫定的な貯蔵施設として、モジュラー型の乾式貯蔵施設を勧告)、サイト選定手順の作成など

 

原子力施設廃止措置技術開発計画

韓国教育科学部(MEST)のプレスリリースによれば、第2回原子力振興委員会では、「原子力施設廃止措置技術開発計画」の審議・議決も行われ、計画が確定されている。同計画は、2025年以降に拡大が見込まれる国際的な廃止措置市場への参画を目指して、関連研究開発を長期的な観点から体系的に推進し、廃止措置技術分野における先進国との競争力を向上させる方針である。具体的には、これまでの10年間の研究開発成果も踏まえた現状の技術レベルの評価を踏まえ、今後10年間の研究開発の方針や取組を次のように計画している。

  • 廃止措置市場への進出に必要となる中核基盤技術として抽出された38項目の技術のうち、先進国の技術レベルに達していない21項目の技術について、2012年からの10年間で1,500億ウォン(政府1,300億ウォン、民間200億ウォン)を投資して技術開発を完了させ、廃止措置に関する中核技術を先進国のレベルに引き上げる。
  • 原子力先進技術センターの指定などを通して人材を養成する一方、400億ウォンを投資して産学研が共同で活用できる「原子力廃止措置技術研究センター」を設立する。

 

参考:使用済燃料政策フォーラムの勧告

韓国における使用済燃料の管理政策や、管理政策の策定のための公衆協議の方法などについて議論するために、2011年11月に使用済燃料政策フォーラムが設置された。使用済燃料政策フォーラムは、議論の結果を基に、2024年までに使用済燃料の中間貯蔵施設を建設完了するための使用済燃料の管理方策及び公論化の方向性に関する政府への勧告案を取りまとめ、2012年8月に韓国知識経済部(MKE)及び原子力振興委員会に提出した。

使用済燃料の管理政策の策定原則、公論化の推進、公論化のテーマ、原子力発電所の立地地域の補償など、全14項目で構成される使用済燃料政策フォーラムの政府への勧告は以下のとおりである。

<使用済燃料の管理方策に係る勧告(6項目)>

  • 管理政策は、透明性と説明責任を基本に関連手順により決定。
  • 管理政策を中間貯蔵と恒久的な処分に区分して策定し、暫定貯蔵(サイト内貯蔵)は中間貯蔵のための準備段階とする。
  • 中間貯蔵方策の策定のために安全、保安、可逆性、費用に対する基準を設定し、最適な方策を導出。
  • 中間貯蔵施設の建設・運営に必要な規制基準を法制化して、貯蔵期間及び手順を早急に決定。
  • 2016年には暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設が満杯になるとして、2024年以前に中間貯蔵施設の建設を完了。
  • 暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設から中間貯蔵施設までの運搬経路・容器に対して十分に検討して技術開発に着手。

<公論化の勧告(6項目)>

  • 管理政策決定の緊急性を考慮して、早急に公論化に着手、このために公論化委員会を構成。
  • 公論化委員会は、使用済燃料に関する正確な事実を国民に伝え、社会的な熟慮を基に最善の管理方案を導出。
  • 公論化委員は、使用済燃料の管理及び社会との意思疎通に学識と経験がある者で構成され、原子力発電所の地域代表の参加が原則。
  • 公論化の議論テーマは、議論の効率性のために、中間貯蔵を中心テーマとして扱うが、他の管理方策に対する議論を制限しない。
  • 公論化委員会は、使用済燃料の管理問題に対する認識を共有し、乾式の暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設の設置、中間貯蔵方法・サイトの選定手順と制度などに対して議論。
  • 公論化の統合性、独立性、透明性を考慮して、公論化委員会の地位を格上げ。

<その他の勧告(2項目)>

  • 管理政策決定のための主要事項を法律で定めて関連制度を整備。
  • 地域住民及び将来世代が負うことになる社会的負担に対して、国民が同意できるレベルでの補償又は支援。

 

【出典】


    1. 原子力振興委員会は、原子力振興法に基づき原子力政策に関する重要事項を審議議決する組織であり、委員長となる国務総理と、財政・外交・教科・知識経済部の各長官及び民間委員4名の委員で構成される。2011年に従前までの原子力法が改正され、原子力の安全管理に関する「原子力安全法」と原子力の利用(研究・開発・生産・利用)に関する「原子力振興法」とに分離された。この改正を受けて、原子力法に基づき設置されていた「原子力委員会」は「原子力振興委員会」へと改組された。 []

(post by emori.minoru , last modified: 2013-07-03 )