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《韓国》使用済燃料公論化委員会が「使用済燃料管理勧告(案)」を公表

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)が設置した使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)は、2015年6月11日のプレスリリースにおいて、「使用済燃料管理勧告(案)」(以下「勧告案」という)を公表した。今回の勧告案は今後、国会での議論を反映させたのち、MOTIE長官に提出する予定としている。

韓国では、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地する放射性廃棄物管理政策を見直し、これらを分離して推進することとしており 、現在、使用済燃料の管理方策を検討する段階にある。公論化委員会は、使用済燃料の管理方策に対する様々なステークホルダー、一般市民、専門家などからの意見を取りまとめるため、放射性廃棄物管理法 に基づいて2013年11月に設置された政府から独立した民間諮問機関であり、人文社会・技術工学分野の専門家、原子力発電所立地地域の代表、市民社会団体の代表からなる15名により構成されている。

公論化委員会が2013年に策定した公論化実行計画 によれば、国民を使用済燃料から安全に保護する方策のすべてが議論の対象となりうるとしつつも、処分場サイト選定や地域振興など、使用済燃料の管理方策の決定後に議論すべき事項については基本的な原則程度の議論にとどめ、処分前の貯蔵など中・短期的な現実的解決手段について集中的に議論するとしていた。今回の勧告案は、これらの事項について、討論会、円卓会議、タウンミーティング、アンケート、インターネット等の方法を用いて、専門家、市民・環境団体、原子力発電所立地地域住民、一般国民から聴取した意見に加え、「使用済燃料管理方策の課題導出のための専門家検討グループ」による意見書 に基づいて進められた議論を取りまとめたものである。

「使用済燃料管理勧告(案)」において公論化委員会が提言した使用済燃料管理フロー

図1「使用済燃料管理勧告(案)」において公論化委員会が提言した使用済燃料管理フロー

今回の勧告案において公論化委員会は、韓国における使用済燃料管理方策に関する10項目の勧告を行っている。公論化委員会は、使用済燃料の処分施設の操業開始を2051年とすることを勧告しており、その実現に向けて、2020年までに処分施設のサイト、または処分施設のサイトと類似条件の地域を地下研究施設(URL)のサイトとして選定し、2030年には地下研究施設の操業・実証研究を開始(図1)するのが望ましいとしている。また、公論化委員会は、2020年から地下研究施設のサイトで「処分前貯蔵施設」の建設を開始し、現在は各原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料を一カ所に集中して貯蔵可能にすることを勧告している。

今回の勧告案には、今後の使用済燃料管理方策の策定・実施に関するロードマップも含まれており、2015年中に韓国政府が「放射性廃棄物管理基本計画」を策定し、関係法令を整備した上で、2016年には政府、民間事業者、国民が共同で出資する「使用済燃料技術・管理公社(仮称)」を設立することが提案されている。

公論化委員会の勧告案に示された10か条の勧告は以下のとおりである。

  1. 使用済燃料の管理方策の最優先原則は国民の安全である。
  2. 現在、各原子力発電所のサイト内の臨時貯蔵施設に貯蔵されている使用済燃料は、貯蔵容量が上限を超えたり、操業許可期間が満了したりするよりも以前に、安定的な貯蔵施設を整備し、移転させることを原則とする。
  3. 政府は2051年までに処分施設を建設し、操業を開始すること。そのために、処分施設サイトまたは処分施設サイトと類似のサイト条件を持つ地域において、地下研究所(URL)用サイトを2020年までに選定して建設に着手し、2030年より実証研究を開始することが望ましい。
  4. 使用済燃料処分施設および地下研究施設が立地する地域に、地域住民のハザード監視のための住民参加型「環境監視センター(仮称)」を設置する。立地地域には、関連研究機関の設置による雇用創出と地域経済の活性化、使用済燃料処分手数料の自治体への納付、および地域都市開発計画策定を支援し、開発初期費用を特別支援金により負担するなどの支援を行うこと。
  5. 処分施設の操業までの間、地下研究施設サイトには処分前貯蔵施設を建設して処分前の使用済燃料を貯蔵可能とすること。ただし、やむを得ない場合には各原子力発電所サイト内に短期貯蔵施設を設置し、処分までの間は貯蔵することも許容する(図1参照)。また、国際共同管理施設の立ち上げのためには緊密な国際協力も必要である。
  6. 各原子力発電所サイト内に短期貯蔵施設を設置する場合には、地域に「使用済燃料貯蔵費用」を支払うこと。透明性が高く、効果的な資金の積み立てのため、住民財団(仮称)を設立・運営する。現在すでにサイト内に貯蔵されている使用済燃料についても、合理的な費用の支払いについて政府・立地自治体間で具体的な協議を行うこと。
  7. 使用済燃料貯蔵、輸送、処分、有害性の低減、減容のための技術開発の優先順位を定め、段階的な細部計画を策定して研究を進めること。このためには規制機関による規制基準策定が急がれる。技術開発を主導する仕組みとしての技術開発統合システムも必要である。
  8. 使用済燃料管理の安全性に加え、責任、安定性、効率性、透明性が担保されることが望ましい。このため、政府、民間事業者、国民が共同で出資する「使用済燃料技術・管理公社(仮称)」を設立することが適切である。
  9. 使用済燃料管理の透明性、安定性、持続可能性を担保し、政策の信頼性を確保するため、「使用済燃料特別法(仮称)」を速やかに制定し、必要に応じ現行関連法を改正すること。
  10. 使用済燃料管理政策を速やかに策定・実行するため、省庁横断的意思決定機関である「使用済燃料政策企画会議(仮称)」および実務推進機関である「使用済燃料政策企画団(仮称)」を政府組織内に設置・運営すること。

 

【出典】

使用済燃料公論化員会 2015年6月11日付プレスリリース、
https://www.pecos.go.kr/activity/news.asp?idx=2387&state=view&menu=10

【2015年7月3日追記】

使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)は、2015年6月11日に公表した「使用済燃料管理勧告(案)」について、2015年6月16日に国会討論会を開催し、その結果を受けて最終案を取りまとめ、2015年6月29日に最終的な勧告「使用済燃料の管理に関する勧告」(以下「最終勧告」という)として産業通商資源部(MOTIE)長官に提出した。

最終勧告では、当初の勧告案(第10条)において政府組織内での設置が規定されていた2つの機関名が改められた。具体的には、省庁横断的意思決定機関の名称が「使用済燃料政策企画会議(仮称)」から「使用済燃料管理長官会議(仮称)」へ、実務推進機関の名称が「使用済燃料政策企画団(仮称)」から「使用済燃料管理対策推進団(仮称)」へとそれぞれ改められた。

公論化委員会は最終勧告において、「政府は使用済燃料管理政策を策定、推進する過程において、必要な情報を正確かつ迅速に提供し、健全なコミュニケーションを継続し、国民及び立地地域住民が関連政策について理解し、合理的に判断できる環境を整えなくてはならない」としている。また、政府が実質的な努力を速やかに進め、政策の推進に必要な信頼を確保することが重要だと強調している。

公論化委員会は、最終勧告の提出をもって20か月にわたる活動を終え、解散する。

【出典】

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )