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英国

英国南東部に位置するシェップウェイ市は、英国政府が進めている高レベル放射性廃棄物等の地層処分場のサイト選定プロセスへの関心表明を行うかを検討していたが、2012年9月19日の市議会において関心表明をしないことを賛成多数(賛成:21票、反対:13票、棄権:4票)で議決したことを自身のホームページで公表した。

図1 シェップウェイ市の位置及び同市の領域において地上施設の設置可能性のある地域

図1 シェップウェイ市の位置及び同市の領域において地上施設の設置可能性のある地域(シェップウェイ市議会の展示会資料より作成)

シェップウェイ市の南部ロムニーマーシュ地域にはダンジネス原子力発電所があり、ダンジネスA発電所で2基の原子炉が廃止措置中、ダンジネスB発電所で2基が運転中である。今回の議決に先だって、2012年9月11日に市議会資料「ロムニーマーシュ地域における原子力研究・放射性廃棄物処分施設に対する関心表明に対する報告書」が公表され、その翌週に開催された市議会で議決が行われた。

この報告書によれば、ダンジネス原子力発電所の廃止措置に伴う、雇用及び経済規模の縮小という問題に対処するための方策として、高レベル放射性廃棄物等の地層処分場のサイト選定プロセスへの関心表明を行うか否かの可能性について、2012年2月からプロジェクトチームを設置して検討を開始したとしている。なお、この検討を開始する以前からシェップウェイ市はダンジネスC発電所の新設を模索していたが、2012年2月に政府との協議において、この可能性が極めて低いことが示されていた。

シェップウェイ市は、2012年5月にメディアやウェブサイトで地層処分に関する情報を公表し、主要なステークホルダーとの対話を始めた。同市は、ロムニーマーシュ地域にある約1万世帯、約650の企業、市内全ての自治組織、その他潜在的なステークホルダーに対して、説明用リーフレットと意見表明フォームを同封したニュースレターを送付し、7月26日までの10週間以上にわたって意見募集を行っている。意見募集期間に同市は、関心のある団体等からの要求に応じて説明会や展示会を開催しており、サイト選定プロセスに関して責任を持つエネルギー・気候変動省(DECC)及び、地層処分事業の実施主体である原子力廃止措機関(NDA)の参加協力を得て、住民が直接、地層処分事業の関係者と話が出来るように配慮したとされている。

同報告書によれば、意見表明フォームを通じて得た回答は3,328件(うち、ロムニーマーシュ地区の住民または企業からのものが94%)あり、シェップウェイ市が関心表明を行うべきかとの設問に対し、賛成が33%、反対が63%であった。

シェップウェイ市は、今回の関心表明を行わないという決定の公表とともに、ダンジネスC発電所の新設に向けて、種々の活動を行っていく意向を示した。

【出典】

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ1 (以下「パートナーシップ」という)は、2012年7月20日付プレスリリースにおいて、2012年7月19日に開かれた会合で、高レベル放射性廃棄物等の地層処分のサイト選定プロセスに関心表明を行っているカンブリア州、カンブリア州のコープランド市及びアラデール市の議会に対する、パートナーシップの意見及び勧告・助言をまとめた最終報告書を作成したことを公表した。

パートナーシップでは、2011年11月に、高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する重要な論点についての意見などを示した協議文書を公表し、2012年3月まで、公衆やステークホルダーからの意見を求める公衆協議を実施していた。今回作成された最終報告書は、公衆協議において寄せられた意見を反映し、取りまとめられたものである。

プレスリリースによると、公衆協議の結果により最終報告書に対して大きな変更が加えられたとしている。最も重要な変更点は、サイト選定プロセスへの参加決定に先立って、「放射性廃棄物の安全な管理プログラム」の主要な部分である地域の撤退権について、特に処分場の建設が開始されるまで、地域がプロセスから撤退する権利に対して法的拘束力を持たせると政府が確約すべきであると勧告したことである。パートナーシップは、政府からこの確約を取り付けているとしている。また、その他の変更点として、地質調査のような技術的な活動への独立したレビューについて、地域に代わって実施することができるよう、政府からの資金提供が行われるべきであるとする勧告を追加したとしている。

また、プレスリリースでは、200ページ以上に及ぶ最終報告書では幅広い論点に関するパートナーシップの意見・勧告・助言が示されているとしているが、これらは複雑な課題であり、より詳細な作業が実施された場合にのみ適切に検討することが可能であるため、単純な回答は示されていないとしている。

プレスリリースでは、例として以下のような最終報告書でのパートナーシップの意見及び勧告・助言を示している。

  • 処分対象となる放射性廃棄物の範囲2 の決定に対して、地域社会が確実に関与できるようにするため、事前協議する枠組みを検討してきた。この枠組みの適用に関する政府との合意については、十分な進展が得られている。
  • 西カンブリア地域の地層が処分場の設置に適しているかという点について、専門家の間で意見が異なっている。パートナーシップは、本質的に現段階で適切なサイトが見つかるか定かではなく、そのため、さらなる地質学的調査が必要であり、できるだけ早く調査を開始すべきであるとの見解を有している。しかし、最終報告書では、地層処分場のサイト選定プロセスに参加する決定を下す前、または後に更なる地質学的調査を実施すべきかパートナーシップ内で異なる見解があるとしている。
  • 地層処分場の立地地域に及ぼす影響と恩恵に関して、建設時の騒音や粉塵、交通、景観や環境面の他、観光業への影響、投資や雇用への影響などプラス及びマイナスの影響の可能性がある。現時点では、これらの点について、マイナスの影響を評価・低減し、プラスの影響を最大とする、地域社会が受け入れ可能なプロセスがサイト選定において実施可能であると判断できる。
  • 処分場を受け入れた地域社会に対する地域支援方策について、英国政府と将来の交渉のための原則に合意しており、これらの原則は、公衆協議の結果によりさらに強化されている。このことにより、地域社会が受け入れ可能な地域支援方策を獲得できるかについては、一定の見通しがあると考えられる。しかし、地層処分場を受け入れる最終決定は、英国政府、またはその後の将来の英国政府が、地域支援方策に関する義務・約束を履行すると確信できる場合にのみ行うべきである。

今回作成された最終報告書については、パートナーシップのウェブサイトにおいて数週間のうちに公表される予定となっている。今後、最終報告書は、カンブリア州、カンブリア州コープランド市及びカンブリア州アラデール市の議会に送られ、今秋中にも議会においてサイト選定の次の段階に進むかどうか決定が下される見込みとされている。

【出典】

【2012年8月17日追記】

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、自身のウェブサイトにおいて、カンブリア州、カンブリア州のコープランド市及びアラデール市の議会に対する、パートナーシップの意見及び勧告・助言をまとめた最終報告書を公表した。

最終報告書は、以下のURLからダウンロード可能である。

http://www.westcumbriamrws.org.uk/documents/306-The_Partnership’s_Final_Report_August_2012.pdf

【出典】


  1. 西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、地層処分場サイト選定プロセスに関心表明を行ったカンブリア州、カンブリア州アラデール市及びカンブリア州コープランド市が合同で設立した諮問組織であり、関心表明を行った州議会・市議会の他、カンブリア州内の他の市議会、カンブリア州地方議会連合、全国農業者連盟(NFU)、地方労働組合やステークホルダーグループなどによって構成されている。自治体にサイト選定プロセスへの参加に関する判断材料の提供などの支援を行っている。 []
  2. 現状、英国では、使用済燃料、プルトニウム、ウランなどは放射性廃棄物と見なされていないが、将来、それ以上の用途がないと決定された場合、地層処分する必要が生じる可能性のある放射性物質が存在する。 []

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2012年6月29日付プレスリリースにおいて、一般的な条件での処分システム・セーフティケース(gDSSC1 )に対する規制機関による5つのレビュー勧告について、対応を取りまとめた報告書を公表した。

NDAの放射性廃棄物管理局(RWMD)は、2011年2月に、高レベル放射性廃棄物等の処分に係る輸送、操業及び環境に関する安全性を説明するものとして、一般的な条件での処分システム・セーフティケース(gDSSC)を公表していた。この「gDSSC」のレビューは、原子力規制局(ONR)とイングランドとウェールズの環境規制機関(EA)(以下、両者を合わせて「規制機関」という)が、NDA/RWMDとの自主的な協定のもと、RWMDの要請を受けて実施したものであり、規制機関がレビュー報告書を2011年12月に公表していた。レビュー結果については、処分システム・セーフティケースには規制要件を満たさなくなるような問題点は見当たらなかったとした上で、5つの事項が勧告されていた。NDA/RWMDは、今後NDA/RWMDが規制機関の要件に沿ってDSSCを開発していく上で、規制機関の勧告を役立てる意向を表明していた。

今回NDA/RWMDが取りまとめた報告書は、規制機関がレビュー報告書で勧告した5つの事項のそれぞれについて、NDA/RWMDの見解と取り組み、今後の対応を簡潔にまとめたものである。NDA/RWMDが取りまとめた報告書においてNDA/RWMDは、将来の活動に規制機関の勧告がどのような影響を与えるのか議論し合意するため、規制機関とさらに協力を続けたいとの意向を表明している。

規制機関が示した5つの勧告に対するNDA/RWMDの対応の概要は下表に示すとおりである。

規制機関による勧告 放射性廃棄物管理局(RWMD)の対応
1. 「gDSSC」を今後どのように活用していくかを説明し、DSSCをサイト固有なものへと発展させるかを示したルートマップを作成すべきである。 「gDSSC」は、広範囲の地質条件及び処分概念を取り扱ったものであるため、サイト固有のセーフティケースの基礎として活用し、サイト選定の進捗に伴い、開発を行う考えである。
2. 「gDSSC」を構成する複数の文書を通して見た場合、多くの繰り返しや重複が見られる。RWMDは、様々な読者のニーズに対応しつつ、文書の構成が確たるものとしてセーフティケースを作成できるように、バランスを検討すべきである。 「gDSSC」を改訂する際に、文書の提示方法、様々な読者のニーズに対するバランスの取り方、重複の低減方法について、規制機関や他のステークホルダーの意見を得た上で、慎重に検討する。
3. 幅広い読者が合理的にセーフティケースを利用できるように努力を続けるべきである。 3つのセーフティケースのメインレポートに対して、専門用語を多用しない概要版や総括ダイアグラムを作成することは、読者の文書へのアクセスの改善につながるため、将来的にこれらを作成するつもりである。
4. セーフティケースの構成及び文書の変更管理を行う方法を明確化すべきである。 文書の変更管理手順が「gDSSC」に対して適切であるよう手順のレビューを実施しており、特に効率性を向上させる方法を検討している。改訂版の文書変更管理手順を2012年中に策定し導入する予定である。今後も放射性廃棄物の安全な管理プログラムの各段階の目的に適うような手続きのレビューを継続する。
5. 「gDSSC」の今後の改訂において、廃棄物インベントリの不確実性について、より詳細な調査をすべきである。 2013年の放射性廃棄物インベントリ2の改訂に向け、サイトの操業者と協力して不確実性について調査する。改訂されたインベントリ等への対応として、ベースラインインベントリと最大インベントリがどのように変化するか、政府と協議の上で決定する。

【出典】


  1. gDSSC: generic Disposal System Safety Case []
  2. 英国では、放射性廃棄物のインベントリを3年ごとに改訂しており、現在の最新のものは2010年のインベントリで2011年3月に公表されている。 []

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ1 は、2012年5月22付ニュースリリースにおいて、地層処分場サイト選定プロセスへの参加に関する世論調査結果を公表した。今回の世論調査は、同パートナーシップが調査会社に委託したもので、2012年3月8日から5月16日の間に、電話インタビューにより実施された。電話インタビューは、カンブリア州アラデール市の住民1,452人、同州コープランド市の住民1,412人、同州の2市以外の住民1,398人の合計4,262人の住民を対象として行われた。

世論調査結果によると、アラデール市の場合、住民の51%がサイト選定プロセスへの参加に賛成しており、37%が反対であった。一方、コープランド市の場合は、68%が賛成、23%が反対であった。また、カンブリア州の他の地域については、50%が賛成、35%が反対であった。

ニュースリリースによると、同パートナーシップは、カンブリア州のうち、アラデール市及びコープランド市の領域内に地層処分場が設置される可能性があるため、特に両市の住民がサイト選定プロセスへの参加に対して、どのような意見を有しているかということが重要であるとしている。

同パートナーシップは、サイト選定プロセスへの参加に関する意見等を募集するため、2011年11月から2012年3月まで公衆協議を実施していた。今後、今回の世論調査の結果及び公衆協議の結果を考慮した最終報告書を2012年夏頃にカンブリア州、同州コープランド市及びアラデール市の各議会に対して提出する予定である。

【出典】


  1. 西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、地層処分場サイト選定プロセスに関心表明を行ったカンブリア州、同州アラデール市及びコープランド市が合同で設立した諮問組織である。自治体にサイト選定プロセスへの参加に関する判断材料の提供などの支援を行っている。 []

英国のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2012年3月12日に、地層処分場の候補地の特定及び評価の枠組みを示した文書を公表した。同文書は、地層処分場サイト選定プロセスの第3段階においてサイト選定プロセスへの参加を決定した自治体について、第4段階で実施される机上調査1 での検討の進め方、第5段階へ進む候補地を特定し、評価するための方法などを定めたものである。DECCは、同文書の決定に先がけ、2011年6月に協議文書を公開して意見を求めていた。なお、既に関心表明を行っているカンブリア州のコープランド市、アラデール市は、サイト選定プロセスへの参加の是非について検討を行っているところである

同文書では、机上調査の目的を下記の2点とし、下表に示した7つのステップにより候補地を特定するとしている。

  • 参加を決定した自治体から候補地を特定する。
  • 第5段階で詳細調査(ボーリング調査等を含む地上からの調査)を行う候補地を選定するための判断材料として、特定された候補地を評価する。

サイト選定プロセスの第3段階における参加決定から候補地の特定までの7ステップ

第1ステップ 地方自治体の意思決定機関がサイト選定プロセスへの参加を決定
第2ステップ 意思決定機関が、候補地の特定及び評価に地域のステークホルダーが関与することが可能となるよう地域立地パートナーシップ(以下「パートナーシップ」という)2 を設置
第3ステップ パートナーシップが、地域固有の基準及び国の基準3 を取り入れた枠組みの下で地域ごとの候補地を特定するプロセスを確立
第4ステップ パートナーシップ及び原子力廃止措置機関(NDA)が協力し、適性を有する可能性のある母岩及び地表エリアを特定するため、合意した基準を適用
第5ステップ パートナーシップが候補地周辺の代表者との関与を開始
第6ステップ 第5ステップと並行し、NDAがパートナーシップとの協力の下、適性を有する可能性のある母岩及び地表エリアの組み合わせ、及び異なる組み合わせによる安全性、環境への影響及び費用を検討
第7ステップ 第6ステップでの検討後、候補地を特定して評価段階へ移行

また、候補地の特定では広範囲にわたる検討を実施するため、地域固有の基準及び国の基準に基づいたアプローチを適用する。地域固有の基準については、パートナーシップ及び意思決定機関が選定するものとしている。また、同文書では、国の基準が以下のように示されている。

  • 地質学的条件
  • 人間に対する潜在的影響
  • 自然環境及び景観に対する潜在的影響
  • 地域の社会経済影響
  • 輸送及びインフラ設備の準備
  • 実施の費用、期間及び容易さ

候補地が特定された後、NDAによる国の基準を適用した多基準意思決定分析(MCDA)を用いたアプローチにより、候補地の評価が行われる予定である。この評価結果は、第5段階の詳細調査に進むかの判断を行うための地域の意思決定プロセスにおいて重要な情報となる。また、意思決定プロセスでは、パートナーシップが地方自治体の意思決定機関に候補地を推薦し、意思決定機関が候補地を決定する。その後、政府が詳細調査に進む候補地を確定することになっている。

【出典】


  1. 机上調査とは、候補地に関する既存情報を用いて調査を行うことであり、ボーリング調査などは含まれない。 []
  2. 地域立地パートナーシップは、自治体代表、地域住民、実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)などから構成され、参加メンバーの連携や協議を主導し、意思決定の支援などの役割を果たすこととされている。 []
  3. 国の基準とは、IAEAの安全基準文書、放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の推奨した基準により、国が策定した基準である。 []

原子力廃止措置機関(NDA)は、2011年12月22日付プレスリリースにおいて、地層処分スケジュールを前倒しする可能性について、暫定的な検討結果を報告書として取りまとめたことを公表した。この検討は、エネルギー・気候変動省(DECC)が2011年6月に、地層処分の開始目標を2029年末とすることが可能かどうかなど、処分スケジュール全体の前倒しについて検討するよう指示していたことを受けて実施されたものである。

英国における現行の地層処分スケジュールは、2008年の白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」及びその後の検討経過を踏まえたものであり、中レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物1 の処分開始を2040年頃、高レベル放射性廃棄物や使用済燃料の処分開始を2075年頃と想定されている。また、新規の原子炉が導入される場合、その使用済燃料の処分は、既存の原子炉からの高レベル放射性廃棄物等の処分が完了する2130年以降から開始することになっている。

今回NDAが取りまとめた報告書は、地層処分場に放射性廃棄物を定置する時期を、技術的観点から可能な限り前倒しするオプションを検討したものである。今後の議論のため、NDAは、これらのオプションを組み合わせた3つのシナリオに整理している。

  • シナリオ1
    サイト調査作業の開始時期を早めるとともに、廃棄物のパッケージ方法を変更することにより、輸送面の合理化や処分場の地下空間の利用率向上を図るシナリオ。
  • シナリオ2
    サイト調査作業の開始時期を早めるとともに、処分する廃棄物の総量が明確な廃棄物(高レベル放射性廃棄物、短寿命中レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物)を対象として地層処分場を建設・操業し、残りの放射性廃棄物(使用済燃料、長寿命中レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物)の処分場区画については別途の許可プロセスにより、建設・操業するシナリオ。
  • シナリオ3
    シナリオ2で採用するものとは異なる処分方法を用いるシナリオ。高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)については、大深度ボーリング孔内処分を採用する案を提示している。使用済燃料については、処分場の地下施設で中間貯蔵を実施し、発熱量が低減するのを待って具体的な処分方法を検討するとしている。短寿命中レベル放射性廃棄物及び一部の低レベル放射性廃棄物については、浅地中(深度200メートル以浅)で処分する可能性も考慮するとしている。

NDAは、地層処分事業を前倒しすることによるメリットについて、地上で実施されている放射性廃棄物管理に伴う危険性を早期に低減できるほか、地層処分事業の実施に伴う地元での便益も早くから発生することになることを挙げている。地層処分場への最初の廃棄物の定置開始を2029年とするためには、シナリオ1のような現行計画の工程の組み直しだけでは対応できず、より革新的なアプローチが必要であるとの見方を示している。

いずれのシナリオにも、地層処分場のサイト選定プロセスの変更、規制基準等の整備を急ぐ必要があるなど、NDA以外が担当・実施する作業の見直しが必要なため、関係機関との議論が必要であるとしている。シナリオ2と3では、処分場の建設・操業に関する許可プロセスが2段階に分かれるため、地元自治体が処分事業からの撤退権を行使できるタイミングに関わる問題があることも挙げている。このため、NDAが「信用できるオプション」を提示するためには、主要なステークホルダーとの議論や多くの技術的課題の解決が必要であるとしている。

NDAは、スケジュールの前倒しに伴って地層処分事業に生じるリスクはシナリオ1が最も少ないことから、不確実性への対応や追加の支援情報を提供するため、当面はシナリオ1のオプション開発に集中し、シナリオ2と3に関する開発は進めない考えである。

NDAのプレスリリースによると、政府は、今後、NDAの報告書のピアレビューを実施するとともに、同報告書についての放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)の見解を求める予定としている。

【出典】


  1. 一部の低レベル放射性廃棄物とは、浅地中処分に適さない低レベル放射性廃棄物のことを示す。例えば、半減期の非常に長い放射性核種を含む低レベル放射性廃棄物など。 []

イングランドとウェールズの環境規制機関(EA)は、2011年12月21日、地層処分事業の実施主体となるNDAの内部組織である放射性廃棄物管理局(RWMD)が作成した、高レベル放射性廃棄物等の地層処分場に関する『一般的な条件での“処分システム・セーフティケース”』(gDSSC)1 に対するレビュー報告書を公表した。このレビューは、原子力規制局(ONR)とEAが合同で実施したものである。レビュー報告書において、将来RWMDが作成を計画している、実際の地層処分場に対して作成される輸送、操業及び環境のセーフティケースが、規制要件を満たさなくなるような問題点は見当たらなかったとの評価結果を述べている。

『gDSSC』(一般的な条件でのDSSC)は、英国で見つけられるような地質環境を想定し、サイトを特定しないで作成したセーフティケースであり、放射性廃棄物の輸送、処分場の操業及び数十万年にわたる環境保護に関連した安全性について、処分実施主体のRWMDがどのように対応するかを示すものとして、2011年2月にNDAが公表していた

今回のレビューは、EA及びONR(以下、両者を合わせて「規制機関」という)とNDA/RWMDとの自主的な協定のもと、RWMDの要請を受けて実施されたものである。レビュー報告書には、RWMDがレビューを要請した際に、以下の点について、特に、規制機関がコメントするように依頼を受けたことが記されている。

  • 地層処分場のセーフティケースの作成を妨げるような、本質的な問題点の有無
  • 今後、RWMDが特定のサイトを対象としたDSSCを作成することになるが、それに向けての助言及びガイダンスの提供
  • RWMDが注力すべき特定分野

『gDSSC』に対するレビューは、輸送と処分施設操業の安全性についてはONRが、環境についてはEAが担当しており、規制機関の内部専門家により実施されている。レビュー報告書において、規制機関は次のような結論を示している。

  • 『gDSSC』を構成する報告書について、対象範囲や文書間のリンクの全体的な構成は受理可能なものであり、文書は全般的に品質の高いものである。
  • 評価すべきサイトが選定され、RWMDが規制機関の懸念事項などに対応し、今後も継続して協力することを前提にすると、地層処分場に対して作成される輸送、操業及び環境のセーフティケースが、規制要件を満たさなくなるような問題点は見当たらなかった。

また、規制機関は、RWMDに対し、以下の5つの勧告を示している。

  • 一般的な条件でのDSSCを今後どのように活用していくかを説明し、DSSCをサイト固有なものへと発展させるかを示したルートマップを作成すべきである。
  • 一般的な条件でのDSSCを構成する複数の文書を通して見た場合、多くの繰り返しや重複が見られる。RWMDは、様々な読者のニーズに対応しつつ、文書の構成が確たるものとしてセーフティケース文書を作成できるように、バランスを検討すべきである。
  • 幅広い読者が合理的にセーフティケース文書を入手できるように努力を続けるべきである。
  • セーフティケースの構成及び文書の変更管理を行う方法を明確化すべきである。
  • 一般的な条件でのDSSCの今後の改訂において、廃棄物インベントリの不確実性について、より詳細な調査をすべきである。

規制機関のレビュー報告書の公表を受けて、NDA/RWMDは、2011年12月21日のプレスリリースにおいて、RWMDの要請による規制当局のレビュー作業に感謝の意を表すとともに、今後RWMDが規制機関の要件に沿ってDSSCを開発していく上で、規制機関の勧告を役立てる意向を表明している。

【出典】


  1. gDSSC: generic Disposal System Safety Case []

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、2011年11月21日、自身のウェブサイトにおいて、地層処分場のサイト選定プロセスへの参加に関する公衆協議文書を公表し、2012年3月23日まで公衆協議を実施することを発表した。同パートナーシップは、英国政府が実施しているサイト選定プロセスに関心表明を行ったカンブリア州、同州内のアラデール市及びコープランド市が合同で設立した諮問組織である。同パートナーシップは、公衆やステークホルダの意見を広く集め、各自治体がサイト選定プロセスへの参加に関する判断材料を提供することによって、自治体を支援することを目的としている。

同パートナーシップは、公衆協議において寄せられた意見を検討し、カンブリア州、同州コープランド市及びアラデール市の議会に対して、同パートナーシップの意見をまとめた最終報告書を2012年に提出する予定である。これらの議会は、この最終報告書の内容を考慮した上で、サイト選定プロセスへの参加の判断を行うことになっている。

同パートナーシップは、今回公表した協議文書において、地質条件、地層処分施設の安全性、対象廃棄物、地域への影響、地域に生まれる利益などの重要な問題に関するこれまでの議論の内容と見解を整理している。同時に、論点を質問形式にまとめており、これらの質問に対する回答の形で、公衆やステークホルダからの意見の表明を求めている。

また、同パートナーシップは、協議文書の概略版やDVDも用意している。概略版を2012年1月に西カンブリア地域の全世帯に配布するとともに、情報提供イベントの開催を企画している。

なお、サイト選定プロセスへの関心について、カンブリア州のコープランド市が2008年7月、カンブリア州が2008年12月、同州のアラデール市が2009年2月にそれぞれ政府に表明している。その後、これら2市全域を対象にした初期スクリーニングが行われ、その結果が2010年11月に公表されている。今回公表した協議文書では、この初期スクリーニングの結果に関する情報も提供している。

【出典】

【2012年4月17日追記】

西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、2012年3月27日付のニュースリリースにおいて、地層処分場のサイト選定プロセスへの参加に関する公衆協議が終了したこと、その実施概要、今後の予定などを公表した。

同プレスリリースによると、公衆協議は2011年11月から2012年3月23日まで行われ、この間、西カンブリア地域やカンブリア州内の他の地域などの約1,300人が意見を寄せたとしている。また、今回の公衆協議では、コミュニケーション及び公衆関与のための活動として以下が行われたとしている。

  • 地元新聞へ記事を2度掲載
  • カンブリア州内の全世帯へ配られる州の広報誌に6ページの記事を掲載
  • 公衆協議文書の概略版及びニュースレターを西カンブリア地域の世帯、図書館、議会事務所やレジャーセンターへ配布
  • 様々な情報をウェブサイトに掲載、また、ツイッターやフェイスブック上で定期的に情報を更新
  • 西カンブリア地域の掲示版やバスに広告を掲載
  • カンブリア州内で12回の情報提供イベントを開催
  • オンラインでの議論を実施
  • 学校に対して教育パックを提供
  • 学校や他のグループで約50の討論会を開催
  • 若年層に関心を持たせるための企画のコンペティションを実施

今後、西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、公衆協議で寄せられた意見を慎重に検討し、最終報告書を作成することとしている。パートナーシップの最終報告書は、2012年夏頃にカンブリア州、同州コープランド市及びアラデール市の議会に対して提出され、年内にはサイト選定プロセスへの参加が正式に決定される見込みである。

【出典】

英国のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2011年6月28日に、放射性廃棄物の安全な管理(MRWS)プログラムの2010年次報告書を公表した。DECCは、従来から、高レベル放射性廃棄物等の地層処分を2040年に開始するとしていたが、この中で、詳細なサイト選定プロセスの作業工程を示す一方で、地層処分の開始目標を2029年末とし、この目標を達成するように調査等を加速することが可能かを検討するよう、処分実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)に指示したことを明らかにした。

NDAが策定している現時点におけるMRWSプログラムのスケジュールによると、NDAは、今後、机上調査に4年、地上からの調査に10年の期間を見込んでおり、この調査結果に基づいて、2025~26年に最終処分地を決定するとしている。また、その後、地下施設の建設及び調査に15年を要し、2040年に放射性廃棄物の処分を開始する計画となっている。処分開始を2029年に早める場合、NDAは約11年間の期間短縮の可能性を検討することになる。

また、DECCは、2011年6月28日に、地層処分場サイト選定プロセスの第4段階で実施する机上調査について、サイトの特定方法及び評価方法についての公衆協議(パブリックコンサルテーション)文書を公表した。この協議文書には、関心表明を行っている自治体内から、机上調査によって地上からの調査を行うエリアを特定するとともに、特定したエリアを評価する方法について提案が含まれている。協議文書に対する意見を2011年9月30日まで募集している。

【出典】

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2011年2月23日付プレスリリースにおいて、処分システム・セーフティケース(DSSC)を作成したことを公表した。DSSCは、地層処分場の操業前(2040年操業予定)に許可申請と共に提出するものであり、処分の安全性に関連する事項を説明したものである。DSSCでは、廃棄物の輸送、処分場の操業及び数十万年にわたる環境保護に関連した全ての安全性に対する懸念ついて、どのように対応するかを示しているとされている。NDAが今回作成したDSSC1 は、現在、処分サイトが決定していない段階のため、広範な環境及び処分場の設計を考慮に入れた、サイトを特定しない一般的な条件とされている。

NDAウェブサイトによると、DSSCは、①輸送セーフティケース(放射性廃棄物の輸送の安全性)、②操業セーフティケース(地層処分場の建設・操業の安全性)及び③環境セーフティケース(地層処分場の閉鎖後における長期安全性)の3つのセーフティケースから構成されている。また、これらのセーフティケースは、複数の安全評価報告書、様々な分野の研究報告書及びその他のサポート文書が基礎となっている(下図参照)。

DSSCの概要報告書によれば、NDAは、将来、適切に選定されたサイトについて、セーフティケースを作成することができるとしているが、選定されたサイトで研究及び調査を実施することにより、解決が見込まれる以下のような重要な課題が存在するとしている。

  • 処分サイトでの地下水系の理解
  • 処分場で発生したガスの地下水への溶解、または周囲の岩盤からの移行
  • 処分場の詳細な設計開発

また、閉鎖後安全評価に関しては、環境セーフティケースの中で取り扱われている。環境セーフティケースを構成している閉鎖後安全評価書では、特に長期的な安全性を立証する上での不確実性をどのように取り扱うかが示されている。この閉鎖後安全評価書では、放射性核種による将来の放射線学的リスクが生じると考えられるものとして、地下水経路の定量的分析や地層処分場内で発生するガス影響の可能性についての現在の知見をまとめている。さらに、閉鎖後安全評価書では、偶発的な人間侵入及び臨界につながる核分裂性物質の集積の可能性という2つの異なるシナリオを用いた評価及び検討を行っている。さらに、サイト選定が進むに従い、この一般的な条件での閉鎖後安全評価を特定のサイトにおける安全評価に発展させていく手法についても説明している。

DSSCを構成する報告書

DSSCを構成する報告書

【出典】

【2011年3月25日追記】

英国の原子力廃止措置機関(NDA)及びエネルギー気候変動省(DECC)は、2011年3月22日、最新版である2010年版の放射性廃棄物インベントリ報告書を公表した。この報告書は、2010年4月1日現在で英国内に存在する放射性廃棄物、原子力施設の運転や廃止措置などで将来発生すると予測される放射性廃棄物のインベントリの他、使用済燃料などの現在は放射性廃棄物と見なされていない物質のインベントリを示したものである。

英国の放射性廃棄物インベントリは3年毎に更新されており、前回は2008年に公表された。なお、今回の報告書では、2007年版放射性廃棄物インベントリに比べ、低レベル放射性廃棄物は1,200,000m3増加、中レベル放射性廃棄物は51,000m3増加、高レベル放射性廃棄物はほぼ変化なし、放射性廃棄物全体では1,300,000m3増加していることが示されている(下表)。

英国の放射性廃棄物インベントリ
    2007年版報告書   2010年版報告書
 低レベル放射性廃棄物 3,200,000 m3 4,400,000 m3
 中レベル放射性廃棄物 240,000 m3 290,000 m3
 高レベル放射性廃棄物 1,100 m3 1,000 m3
     合計 3,400,000 m3 4,700,000 m3

※廃棄物は調整済の状態を想定したものであり、表の数値は2007年4月1日及び2010年4月1日時点の物量と2100年までに発生すると想定される物量を合計したものである。

【出典】


  1. NDAが今回作成したDSSCは、英国で見つけられるような地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []