英国政府は2016年2月10日に、原子力産業から発生する低レベル放射性廃棄物の管理戦略(以下「管理戦略」という)を公表した。本管理戦略は、①「廃棄物の段階的管理方法」(以下「廃棄物ヒエラルキー」という)の適用1 、②既存の低レベル放射性廃棄物の管理及び処分関連施設の最善利用、③新たな廃棄物処理方法及び処分ルートの開発・利用の3部で構成されており、廃棄物発生者にこれらの管理戦略の実施を求めるものである。ここで「廃棄物ヒエラルキー」とは、廃棄物発生の回避・最小化・再利用・リサイクル・処分のことを意味している。前回の管理戦略は、2010年に策定されている。既存の低レベル放射性廃棄物処分施設としては、カンブリア州西部のドリッグ村近郊にある、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)がある。
英国政府は2014年4月から、前回2010年に策定された管理戦略のレビュープロセスを開始し、2015年1月に新しい管理戦略の協議文書を公表するとともに、2015年4月まで公開協議を行っていた。今回公表された管理戦略は、公開協議の結果を反映したものとされている。英国政府は今回の管理戦略のレビューの結果、低レベル放射性廃棄物の管理に関して、以下のような進捗があったとしている。
- 従来は低レベル放射性廃棄物として低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)での処分が想定されていたが、廃棄物特性評価が行われることにより、極低レベル放射性廃棄物、あるいはクリアランス廃棄物として区分できることが判明し、LLWRでの処分予定量の低減が図られている。
- 低レベル放射性廃棄物の管理・処分関連事業者による代替処理方法と代替処分ルートの開発と利用が行われている。
- 廃棄物発生者による廃棄物ヒエラルキーが実施されるようになっている。
- 低レベル放射性廃棄物の管理を改善するための機会の特定、及び良好事例・知見の共有が行われている。
- 低レベル放射性廃棄物の管理プロセスにおいて、幅広いステークホルダーが関与していること。
上記のような成果が得られたことから、前回2010年で策定した管理戦略の3つのテーマを変更せず、今回の管理戦略でも継続するとしている。英国政府は、本管理戦略を成功させるには、廃棄物ヒエラルキーの適用において、以下の点が重要であると指摘している。
- 廃棄物ヒエラルキーの適用は、低レベル放射性廃棄物の管理における良好事例であると認識する。
- 英国政府の方針において、廃棄物ヒエラルキーをより高いレベルで実現すべきこと認識する。
- 低レベル放射性廃棄物処分場の処分容量を貴重な資源と捉え、むやみに処分場への処分に頼らないようにする。
- 低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)や他の処分サイトの操業期間を延長させるため、処分以外の廃棄物管理を行う。
- 廃棄物発生者は実施可能な限り、より早い段階で廃棄物ヒエラルキーの適用を開始すべきである。
【出典】
- 英国政府ウェブサイト、Consultation outcome, Consultation on an update of the UK Strategy for the Management of Solid Low Level Radioactive Waste from the Nuclear Industry、2016年2月10日、 https://www.gov.uk/government/consultations/consultation-on-an-update-of-the-uk-strategy-for-the-management-of-solid-low-level-radioactive-waste-from-the-nuclear-industry
- 英国政府ウェブサイト、UK Strategy for the Management of Solid Low Level Wastes form the Nuclear Industry、2016年2月、 https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/497114/NI_LLW_Strategy_Final.pdf
- 2007年の「低レベル放射性廃棄物の長期管理に関する政策文書」では、処分オプションを検討する前に、発生の抑制、利用する放射性物質の量の最小化、リサイクル及び再利用を通じて、低レベル放射性廃棄物の発生量の低減を図ることを廃棄物発生者に求めている。 [↩]
(post by f-yamada , last modified: 2016-02-18 )