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《英国》ドリッグ処分場内の新たな施設での処分計画に関する公開協議が開始

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場が所在するイングランドの環境規制機関(Environment Agency、EA)は、環境セーフティケース(ESC)が安全規制要件等を満たすものであるとのレビュー結果を示した上で、低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)からの許可申請を承認する決定案を2015年5月28日に公表するとともに、意見提出期限を2015年7月23日までとする公開協議を開始した。カンブリア州西部で1959年より操業を行っているドリッグ処分場は、既に処分の許可を得ている施設が満杯であることから、処分場を操業するLLWR社は、同処分場内の新たな施設での処分の許可申請とともに、処分場全体の安全性や環境影響などに関する環境セーフティケース(ESC)を提出していた。

英国で発生する低レベル放射性廃棄物は、ドリッグ処分場のほか、スコットランド北部にあるドーンレイ処分場で処分されている。LLWR社は、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する原子力施設の操業・廃止措置等をNDAとの契約に基づいて実施するサイト許可会社(SLC。原子力施設法に基づいて原子力サイトとする許可を受けた者)であり、ドリッグ処分場を操業する事業者である。

■ドリッグ処分場の現状と今後の計画

ドリッグ処分場では1959年の操業開始以降、7つのトレンチ処分施設で80万m3の低レベル放射性廃棄物が処分されてきたが、1988年以降はコンクリートボールト施設での処分に切り替えられている。8号コンクリートボールト施設として1988年より処分を開始した20万m3の容量をもつコンクリートボールト施設は既に満杯であるため、新たな施設での処分の許可が必要であった。なお、既に9号コンクリートボールト施設が完成しているが、処分施設としての許可は取得していないため、現在は一時貯蔵施設1 として利用されている。

新たな施設での処分の許可に関するLLWR社の申請では、ドリッグ処分場内に9号から20号までの新たな12のコンクリートボールト施設を増設し、2010年から2130年までに発生が見込まれる440万m3の低レベル放射性廃棄物を処分する計画である。

■英国における放射性廃棄物処分の許可及び環境セーフティケース(ESC)の提出

使用済燃料や放射性廃棄物の管理及び処分施設を含む、原子力施設の建設や操業などについては、原子力施設法に基づき、原子力規制局(ONR)から原子力サイトとしての許可を取得する必要がある。また、原子力サイトにおいて放射性廃棄物を処分するためには、イングランド及びウェールズでは環境許可規則、スコットランドと北アイルランドでは放射性物質法に基づいた許可をそれぞれの環境規制当局から取得する必要がある。

※環境規制機関(EA)、天然資源ウェールズ(NRW)、スコットランド環境保護局(SEPA)、ならびに北アイルランド環境省(DoENI)。

上記の環境規制当局の連名により策定された「放射性固体廃棄物を対象とする陸地における浅地中処分施設:許可要件に関するガイダンス(GRA)」は、浅地中処分施設の操業許可申請者に、規制当局が求める要件を満たしていることを示す処分施設に関する環境セーフティケース(ESC)を提出することを要求しており、ESCで示されるべき放射線防護要件などをGRAで規定している。ESCは、放射性廃棄物の処分の安全性や環境影響などについて説明するものであり、公衆の健康と環境が適切に防護され、放射性廃棄物を安全に処分できることが示されなければならない。また、操業期間中に行われる定期的なレビューの際には、ESCの更新版が提出されなければならない。

■今回の公開協議までの経緯

9号コンクリートボールト施設での処分を含むドリッグ処分場に関する環境セーフティケース(ESC)は、2002年9月に環境規制機関(EA)に提出された。これに対してEAは、ESCのレビュー結果として、例えば、海岸部の浸食や氷河作業の影響の詳細な評価や処分場全体としてのより包括的な評価の必要性など、いくつかの懸念が残されたことから、2006年2月に8号コンクリートボールト施設での処分継続は許可したものの、新設された9号コンクリートボールト施設での処分は許可を発給しなかった。

環境規制機関(EA)は、レビューで指摘した懸念などに対処した環境セーフティケース(ESC)の更新版の提出をLLWR社に求め、同社は更新版を2011年5月に提出した。このESCの更新版では、9号だけではなく、将来の20号までのコンクリートボールト施設での処分計画が含められた。EAは、ESC更新版について、レビューを実施するために必要となる追加資料の提出を2013年10月までLLWR社に要求し続けた。

このような経緯を経てLLWR社は、2013年10月28日に、ドリッグ処分場での処分許可の範囲を拡大する許可申請を環境セーフティケース(ESC)の更新版とともにEAに提出した。EAは、2013年11月から2014年2月にかけて申請内容の検討及びESCのレビューを実施し、今回、許可申請を承認する決定案について公開協議を実施することとした。

■EAによるECS更新版のレビュー結果

環境規制機関(EA)は、環境セーフティケース(ESC)の更新版及び追加資料のレビューにおいて、特に以下の観点から評価を実施したとしている。

  • 最終的に処分施設の表面を覆う設計となっている8号コンクリートボールト施設に関する、廃棄体露出の潜在的可能性やその場合の影響の評価
  • 処分場サイトの沿岸域の海水による浸食あるいは施設への人間侵入に伴う影響の評価(成分や組成の異なる廃棄体の混合の影響など)
  • 非放射線学的影響の評価(化学毒性など)
  • 影響が合理的に達成可能な限り低く抑えられることを立証するための工学設計と最適化

また、環境規制機関(EA)はレビューの結果として以下の3点を示している。

  • LLWR社が提出した環境セーフティケース(ESC)の更新版及び追加資料から、同社は、許可要件に関するガイダンス(GRA)の要件及び環境許可要件を満たしている。
  • ドリッグ処分場での今後の処分に対して、環境許可を発給するに足る適切な水準かつ品質の証拠が示されている。
  • ESCの更新版及び追加資料が、今後のドリッグ処分場での放射性廃棄物の処分について、現在及び長期の双方の面で人間や環境にとって安全なものであることを立証していることにEAは満足している。

【出典】

【2015年10月30日追記】

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場が所在するイングランドの環境規制機関(Environment Agency、EA)は、2015年10月29日に、操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)が提出した処分場内での増設施設における処分の許可申請について、承認する決定を行ったことを公表した。

環境規制機関(EA)は、2013年10月28日にLLWR社から提出された許可申請書及び処分場全体の安全性や環境影響などに関する環境セーフティケース(ESC)について、2013年11月から2014年2月にかけてレビューを実施した。2015年5月28日に環境規制機関(EA)は、レビュー結果を示した上で、許可申請を承認する決定案を公表し、2015年5月28日から2015年7月23日まで同案に関する公開協議を行い、寄せられた見解を踏まえて、今回の決定に至ったものである。

環境規制機関(EA)による許可では、公衆の健康と環境が適切に防護されるため、以下のような制限・条件が付されている。

  1. 廃棄体の劣化を最低限に抑え、環境への放射性物質の放出を最小限とするため、最終的に処分施設の表面を覆う設計となっている8号コンクリートボールト施設と新設された9号コンクリートボールト施設について、廃棄体の保護方法に関する提案、及び9号以降のコンクリートボールト施設における長期的な廃棄体の保護プログラムを含んだ計画を環境規制機関(EA)に提出すること
  2. 環境セーフティケース(ESC)が変更される場合、その変更が処分場の管理に対して、重大な影響を及ぼしうるか否かを決定する方法を策定すること
  3. 過去に処分された廃棄体内にあって、将来的に外部に露出し、多量の放射性物質を放出する可能性がある廃棄物等についての最適な管理方法を示した報告書を環境規制機関(EA)に提出すること
  4. 環境セーフティケース(ESC)の継続的な改善と実施に向けた、包括的な作業計画を環境規制機関(EA)に提出し、実施すること
  5. 8号と9号コンクリートボールト施設に定置されている廃棄物の処分方法を詳細に示した計画書を環境規制機関(EA)に提出すること
  6. 2011年版の環境セーフティケース(ESC)の環境規制機関(EA)によるレビュー結果を踏まえ、非放射線学的な水文地質学的な観点からのリスク評価のアップデート版を提出すること
  7. 環境規制機関(EA)が示した「放射性固体廃棄物を対象とする陸地における浅地中処分施設:許可要件に関するガイダンス(GRA)」の最新版に規定している全ての要件を満たしていることについて、ドリッグ処分場についての環境セーフティケース(ESC)のアップデート版を提出すること

また、9号以降のコンクリートボールト施設に廃棄体を処分する場合には、事前に環境セーフティケース(ESC)に沿って各施設が建設されていることの証明などを含む報告書を環境規制機関(EA)に提出し、承認を得なければ、処分を開始できないとしている。

【出典】

【2015年11月5日追記】

英国のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は、2015年11月3日のウェブサイトにおいて、1990年都市田園計画法に基づいて、処分場の増設施設の建設等の計画申請(planning application)をカンブリア州に行ったことを公表した。

低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)が申請した主な計画は、以下の通りである。

  • 8号コンクリートボールト施設と9号コンクリートボールト施設に仮置き中の放射性廃棄物を処分すること
  • 3つのコンクリートボールト施設(9a号コンクリートボールト施設(9号コンクリートボールト施設の増設に相当)、10号コンクリートボールト施設及び11号コンクリートボールト施設)の新規の建設
  • 既存の1~7号トレンチ処分施設、8号コンクリートボールト施設、新規に建設するコンクリートボールト施設の最終的な覆土(cap)の施工

低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)は、計画申請に対する許可が発給されれば、9a号コンクリートボールト施設の建設を2016年中に開始し、約4年で建設を終了するとしている。なお、LLWR社は、最終的には最大で14のコンクリートボールト施設を建設する計画である。

【出典】

【2016年7月19日追記】

英国のドリッグ村近郊の低レベル放射性廃棄物処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は2016年7月15日に、1990年都市田園計画法に基づいてカンブリア州に申請していた処分場の増設施設の建設等の計画申請(planning application)(2015年11月5日の追記を参照)について、同州に承認され、計画許可の発給を受けたことを公表した。LLWR社は、計画していた9a号コンクリートボールト施設等の新設・増設の作業を2017年から開始するとしている。

また、今回の計画許可により、処分場は2050年頃まで操業が継続できることになる。LLWR社は地元の雇用維持に加えて、新たに建設関連の雇用創出に貢献するとしている。

【出典】

  1. 放射性廃棄物の貯蔵に関しては、原子力規制局(ONR)からの許可取得が必要である。 []

(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )