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《英国》ドーンレイで新たな低レベル放射性廃棄物処分施設が廃棄物の受け入れを開始

英国のドーンレイサイト復旧会社(Dounreay Site Restoration Limited,DSRL)は、2015年5月19日付のプレスリリースで、同サイト内に新たに建設した低レベル放射性廃棄物処分施設において廃棄物の受け入れを開始したことを公表した。DSRLは、原子力廃止措置機関(NDA)が所有する原子力施設の操業・廃止措置等をNDAとの契約に基づいて実施するサイト許可会社(SLC。原子力施設法に基づいて原子力サイトとする許可を受けた者)であり、スコットランド北部に位置するドーンレイサイトの廃止措置及び環境修復を実施する事業者である。

DSRLはサイト内に最終的に6つのコンクリートボールトを建設する計画であるが、今回、廃棄物の受け入れを開始した処分ボールトは、第1期の2つの処分ボールト部分であり、残りの4つの処分ボールトについては、今後、第2期及び第3期に分けて段階的に建設・操業する計画である。最終的には、175,000m3の低レベル放射性廃棄物を処分することとしており、このうち、33,000m3は過去に同サイトで処分した廃棄物を回収することによって今後発生するものである。

なお、英国では地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、ドーンレイサイトがあるスコットランドでは、スコットランド政府がその管理方針を決定している。英国政府は、操業中のドリッグ低レベル放射性廃棄物処分場(浅地中処分)で処分ができない低レベル放射性廃棄物を含む高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針であるが 、スコットランド政府は地層処分する方針を採用しておらず、地表近くに設置した施設で長期管理を継続することとしている。

■ドーンレイでの新たな低レベル放射性廃棄物処分場の操業開始までの経緯

ドーンレイサイトでは、高速炉などの原子炉や再処理施設等の廃止措置によって発生する低レベル放射性廃棄物を処分する必要があり、同サイトの廃止措置プログラムの一環として、長期管理方策の検討が1999年より開始された。DSRLは、当時の施設所有者である英国原子力公社(UKAEA)とともに、ステークホルダーや公衆との協議を経て、2005年に「ドーンレイにおける低レベル固体放射性廃棄物に関する全体戦略」を策定し、サイト内に新たな浅地中処分施設を建設する方針とした。DSRLは、2006年に、ドーンレイの地元であるハイランド自治体の議会に対して、環境影響評価書とともに、低レベル放射性廃棄物の処分に関する計画申請書を提出した。

上記の計画申請書については、スコットランドの環境規制当局であるスコットランド環境保護局(SEPA)による評価を経て、2009年4月にハイランド自治体から計画許可が発給された。これと並行してDSRLは、2008年に放射性物質法に基づく処分に関する許可をSEPA1 に申請し、2013年1月に許可を取得している。

DSRLは、新しい浅地中処分施設の建設及び操業を3期に分けて実施する予定であり、その第1期として2つの処分ボールトの建設を2011年11月に開始し、2014年5月に完成した。そのうちの1つは、ドーンレイサイトにある原子力施設の解体によって発生する瓦礫など、比較的放射能レベルの低い廃棄物専用の処分ボールトである。

第2期として、ドーンレイサイトの廃止措置計画の進捗を踏まえて、2020年までにさらに2つの処分ボールトを建設する予定としている。また、第3期では、さらに2つの処分ボールトの建設を予定しているが、今後の低レベル放射性廃棄物の発生スケジュールや総量の見通しを踏まえて、その必要性に関する評価を行うとしている。いずれの処分ボールトも、定置が終了した時点で閉鎖し、覆土等で覆って元に近い状態に戻すとしている。

なお、ドーンレイサイトを所有するNDAと地元ハイランド自治体は、地域振興を目的として、処分施設の建設開始時に100万ポンド(1億8,200万円)、操業開始から10年間にわたり毎年30万ポンド(5,460万円)の合計400万ポンド(7億2,800万円)をNDAがハイランド自治体に支払う取り決めを交わしている。このような資金は、地域の経済活動の再構築を支援するために設置された基金を介して活用される。

【出典】

  1. 放射性廃棄物を処分するための許可は英国の各自治政府の環境規制機関が発給する。 []

(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )