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《フランス》原子力安全機関(ASN)が、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)に対し、地層処分場の操業時リスク管理に関するレビュー結果を提示

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2015年4月24日付プレスリリースにおいて、地層処分場の操業時のリスク管理に関する原子力安全機関(ASN)の2015年4月7日付の書簡を公表した。今回のASNの書簡は、ANDRAが2013年12月にASNに提出していた地層処分場の操業時におけるリスク管理に関して、研究開発の進捗報告書に対するレビュー結果を示したものである。レビュー結果としてASNが示す要求事項・見解は、ANDRAが進める地層処分場の設置許可申請に向けた研究開発を方向付けるものとなる。なお、ASNは、2006年以降、ANDRAが実施している地層処分関連の研究開発状況をレビューしており1 、今回のASNの書簡も、こうしたレビューの一環で提示されたものである。

今回のASNの書簡によると、ANDRAは、2013年12月にASNに提出した研究開発の進捗報告書において、放射性物質の拡散リスク、廃棄体から発生した水素ガスに起因する爆発リスク、火災リスク、地下施設における処分活動と建設活動の同時進行に伴うリスク、地上施設と地下施設との連結によるリスク管理に重点を置いた研究開発の進捗状況を報告していた。ASNは、以下の点について、操業時のリスク低減に寄与する有意な進展があったとの見解を示している。

  • ASNの要求に基づく火災リスクを低減するための要求事項をまとめた「火災基準」の策定。
  • 長寿命中レベル放射性廃棄物用の処分坑道への超高性能フィルタの設置を伴う動的閉じ込め機能の確保。この措置は、2010年に提出したANDRA報告書のレビューにおいて、廃棄体による静的閉じ込め機能の不具合の場合に対応するため、動的閉じ込め機能を確保する措置の提示を求めたASNの要求に沿ったものである。なお、コンクリート構造の地下施設に設置する設備は、通常の環境よりも早いペースで閉塞を起こす可能性があるため、設置許可申請書と合わせて提出する補助文書において、設備の保守に関する事項を明確にする必要がある。
  • 施設全体の設計が進展しており、放射線管理区域と建設区域の分離を徹底することにより、操業時のリスク管理の容易化が図られている。これは、地下施設における操業活動と建設活動が同時進行することによるリスク分析を補完するよう求めたASNの要求に沿ったものである。

一方、ASNは、操業時のリスク管理との兼ね合いから、設置許可申請書と共に提出する「安全証明」に関する文書において、特に以下の点に注意を払うべきと指摘している。

安全証明アプローチと安全要件

  • 安全機能と主要パラメータ
    設置許可申請書の補助文書では、地層処分場の閉鎖後安全性の範囲を規定し、操業中に監視する主要パラメータ及び操業中の安全性の範囲を規定しなければならない。また、施設の操業安全及び閉鎖後安全に照らして、廃棄体の受け入れ時及び操業中も監視する主要パラメータについて、逸脱を確認した場合に講じる是正措置を提示しなければならない。
  • 施設の設計とサイト内緊急時計画(PUI)において採用する設計基準シナリオの選定方法
    安全オプションに関する資料2 では、深層防護レベル及び原子力基本施設(INB)に関する2012年2月7日付アレテの規定と整合する形でシナリオを分類して示すのが望ましい。一部の廃棄体内部で発熱反応が急速に進むシナリオについても提示しなければならない。
  • 放射線防護目標
    安全オプションに関する文書では、事故・事象発生の状況下で放射線管理区域にいる職員に適用される放射線防護上の目標の最終決定に向けた最適化アプローチを提示しなければならない。

資料等で説明すべきリスク

  • 火災リスク
    安全オプションに関する資料では、供用部分または長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道のハンドリング用セルで火災が発生した場合、火災発生区画を発生源とする放射性物質の放出を抑制する措置を説明しなければならない。
    設置許可申請書の補助文書では、火災リスクの分析に使用する計算シミュレーションツールを提示し、その使用分野における有効性を立証すること。また、経験のフィードバックや専門家の判断も考慮したうえで、同ツールと地層処分場の特性との整合性を立証する要素について提示しなければならない。
  • 爆発リスク
    火災リスクと同様に、ANDRAが「爆発基準」を策定することが有益である。
  • 放射性物質の拡散リスク
    設置許可申請書の補助文書では、高レベル放射性廃棄物処分孔の排水の管理方法を明示するとともに、廃棄体の移送ケージにハッチが存在する可能性を考慮しなければならない。
  • 作業の同時進行に関するリスク
    設置許可申請書では、施設の安全性に関して影響を与える人間活動を特定する。また、地層処分場の建設開始から操業期間にわたり、関与する企業間の責任所掌を詳細に定めなければならない。

施設の操業

  • 事故・事象発生の状況下での介入と避難
    設置許可申請書の補助文書では、目標とする期限内に事故・事象発生の状況に介入できるよう、採用する技術的・組織的措置を提示しなければならない。
  • 廃棄体の回収
    ANDRAは、地層処分場の操業段階で廃棄体の回収可能性を実証するために慎重なアプローチを採用しなければならない。また、回収可能性オプションに関する研究は、操業中にとどまらず長期的な視野で、安全と放射線防護の観点から種々のオプションの長所と短所を評価しなければならない。

事故・事象発生後の処分場の各種機能の回復

安全オプションに関する資料では、深層防護の原則を適用し、事故・事象発生後の処分場の各種機能の回復について、処分作業の継続、廃棄体の回収、処分場の閉鎖の可能性を区別したうえで、安全面での課題を提示する。また、設置許可申請書では、これらの課題を考慮し、その対応について提示する。

 

【出典】

  1. 原子力基本施設及び原子力安全・放射性物質輸送管理に関する2007年11月2日のデクレ(2007-1557)の第6条に規定。原子力施設の設置許可申請に先立って、安全オプションをASNに提出し、その見解を求めることができるとされている。ASNは見解において、設置許可申請を行う場合、申請までに事業者が実施しておくべき補完的な研究や証明についても特定することができる。 []
  2. ANDRAは地層処分場の安全オプションに関する資料を2015年中にASNに提出する方針である []

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )