エネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2015年4月16日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の地下施設内で2014年2月14日に発生した放射線事象 について、事故調査委員会(AIB)による2回目となる「事故調査報告書(フェーズ2)」を公表した。事故調査報告書(フェーズ2)では、事故調査委員会の調査結果として、2013年12月にロスアラモス国立研究所(LANL)で処理した1本の廃棄物ドラムについて、処分されたドラム中での有機物質と硝酸塩との混合による発熱化学反応が放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因と結論づけている。
DOEの環境管理局(EM)のニュースリリースにおいて、事故調査委員会は、WIPP及びロスアラモス国立研究所での徹底的な調査が実施され、放射線事象の発生原因の調査の他、同様な事故の再発防止などに必要な安全対策、管理統制の特定を実施したとしている。また、事故後の化学的、放射線学的及び火災の科学的分析に基づいて、放射線事象及び放射性物質の漏洩の発生原因が究明されたとしている。さらに、2014年2月5日の火災事故 は、放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因ではなく、また、関連性もないと結論づけられたとしている。
今回公表された事故調査報告書(フェーズ2)では、放射線事象及び放射性物質の漏洩の直接原因がロスアラモス国立研究所(LANL)から運び込まれた廃棄物ドラム番号68660にあること、今回の事象に限った根本原因としてロスアラモス国立研究所での有害廃棄物施設許可の理解・実施及びカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)による管理に欠陥があったことを挙げている。また、管理システムとしての根本原因としては、危険物の適切な処理に係る手順書の作成、レビュー・承認、実施における欠陥を挙げている。さらに、放射線事象につながった寄与要因の12項目を列挙した上で、24項目の結論・問題点(CON)、40項目の措置必要事項(JON)が示され、一覧表で整理されている。
今回の事故調査報告書(フェーズ2)については、2015年4月16日のタウンホール・ミーティングにおいて、事故調査の様子を視覚的に示した説明用のスライドなどで概要が説明された。
【出典】
- エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)ニュースリリース(2015年4月16日)
http://energy.gov/em/articles/doe-issues-wipp-radiological-release-phase-ii-investigation-report - エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)、WIPP放射線事象の事故調査報告書(フェーズ2)、2015年4月
http://energy.gov/sites/prod/files/2015/04/f21/WIPP%20Rad%20Event%20Report%20Phase%202%2004.16.2015.pdf - エネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)、カールスバッド・タウンホール・ミーティング資料(2015年4月16日)
http://www.wipp.energy.gov/Special/Phase_2_AIB_Slides.pdf
【2016年7月4日追記】
米国ニューメキシコ州で廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を操業するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2016年6月30日に、WIPPにおける廃棄物受入基準(WAC)の改訂版を公表した。今回の廃棄物受入基準では、2014年2月に発生した放射線事象 に関する事故調査委員会(AIB)の事故調査報告書で示された確認事項に対応するための改訂が行われている。
改訂版の廃棄物受入基準は、2016年7月5日に発効する。改訂版の廃棄物受入基準に適合することが確認されるまでは、DOEのTRU廃棄物発生サイトでの認証プログラムは停止される。改訂版の廃棄物受入基準では、TRU廃棄物発生サイト及びWIPPでの認証プログラムとして、廃棄物発生サイト技術審査及び品質保証の監査を受けることが必要とされている。
放射線事象の発生以前に認証され、WIPPでの処分が行われていない廃棄物容器は、WIPPへの搬出を行う前に改訂版の廃棄物受入基準への適合を検証することが必要となる。一部の廃棄物容器は処理及び再封入が必要となる可能性があるが、その見極めには数カ月を要するとされている。DOEは、新しい廃棄物受入基準に適合する廃棄物容器は全米で約1,000本あり、仮に一部の廃棄物について処理・再封入が必要とされた場合でも、WIPPの操業再開のスケジュールには影響しない見込みとしている。
改訂版の廃棄物受入基準の主な変更点は、以下の通りである。
- WIPPの管理・操業契約者を廃棄物受入基準遵守プログラムの責任主体に追加
- 受入可能とするための情報(AK)に関する要件の強化
- TRU廃棄物の充填物管理に係る承認済み手法の各種文書等における用語を他の承認文書等と整合するよう変更
- 臨界管理オーバーパック(CCO)と呼ばれる新たな「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)の容器の追加
- プルトニウム239当量放射能量(PE-Ci)の限度を超える廃棄物容器の取り扱い
- 線量当量率要件を満たす廃棄物容器について合理的な範囲での遮へい
- ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物とTRU廃棄物を含む廃棄物容器における視認可能な液体の取り扱い
- 核分裂当量重量等に関する適合方法として10 CFR Part 71.15を追加
- CH廃棄物と「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)のラジオアッセイを含む形で添付書類Aを「TRU廃棄物のラジオアッセイ要件」として拡張
- 添付書類F「CH廃棄物の環境保護庁(EPA)基準適合のためのラジオグラフィー要件」の改訂
- その他(用語集への追加、インターネットリンクの更新、など)
【出典】
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )