放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2010年6月25日付プレスリリースにおいて、2006年から2009年までに行われた放射性廃棄物処分の科学的な調査研究活動に関する報告書を公表した。ANDRAは4年間にわたる調査研究によって、放射性廃棄物管理研究法に基づき1991年から2005年にかけて実施された研究の成果 を確認するとともに、さらに精緻化することができたとしている。
2006年に策定された「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画」(PNGMDR)及び同国家計画の施行令は、ANDRAが2009年末までに次の事項について政府に提案することを定めており、今回の報告書は、これらの一部を含めたこの4年間の調査研究活動を概要版として取りまとめたものである。
- 処分場の建設に適した制限区域(30km2)の選定
- 設計、操業安全及び長期安全、可逆性に関するオプション
- 対象となる廃棄物のインベントリモデル
- 処分場を補完する貯蔵施設のオプション
同プレスリリースによれば、公表された報告書は、ANDRAが行った放射性廃棄物処分に関する全ての調査研究分野をカバーしたものであり、廃棄物パッケージの物理的、化学的特性を踏まえた地質及び環境に関する研究や、大規模な空間的、時間的スケールでの数値シミュレーションに関する研究の成果が示されている。また、ANDRAは特に注目すべき事項として次のことを挙げている。
- 地層処分場の設置が検討されているムーズ及びオート=マルヌの両県にわたる地域において、2007年から2008年にかけて実施されたボーリング調査 により、詳細な地質環境の把握が行われた。この調査結果に基づきANDRAは、今後詳細な地下の調査を行う30km2の区域(ZIRA)1 を2009年末に政府に提案し、2010年5月から同区域を対象とした3次元地震探査が実施されている 。
- 地層処分場の地下人工構築物の状態や複雑な相互作用を再現することができる実験装置が開発された。同装置を用いた鉄、ガラス、粘土の相互作用に関する実験結果に基づき、高レベル放射性廃棄物の処分環境における鉄の腐食速度やガラスの劣化速度をより正確に評価することが可能となる。更に、この実験結果は、鉄の腐食に伴う水素の発生と移行に関するプロセスのモデリングに必要となる入力データを提供する。これらの実験から得られる知見は、地層処分場設計の最適化や(特に材料構成)、関連するインフラ施設の規模決定の際に考慮される。
- 処分場開発における可逆性を担保すべき期間、更には、処分場の最終閉鎖後の数千年の期間に起こりうる、水、熱、応力及び化学に関する現象のより良い理解が得られた。
- ビュール地下研究所において2005年から2009年にかけて実施された拡散実験等により、カロボ・オックスフォーディアン粘土層における放射性核種の移行速度に関する詳細な評価が可能となった。
- 処分環境における、酸化還元条件、酸性度及び温度の影響を受ける化学的要素に関する挙動パラメータを整備した熱力学データベースの改善が継続的に行われている。
- 性能評価の信頼性向上に資するソフトウェア等の改善が行われている。
- 地層処分の可逆性概念を確立するために、2008年より社会科学分野における研究活動が進められている。
【出典】
- 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、2010年6月25日付のプレスリリース
- 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)「2006年から2009年までの放射性廃棄物管理研究に関する成果報告書」、«2006-2009 : quatre années de recherches scientifiques pour le stockage des déchets radioactifs»
- Zone d’Intérêt pour la Reconnaissance Approfondie [↩]
(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )