放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は自身のウェブサイトにおいて、2009年10月に政府に提出(エネルギー、環境及び研究担当大臣宛)していた報告に含まれる地層処分サイトの提案内容を公表した。ANDRAは、2009年末迄に政府にサイトを提案するという「放射性物質及び放射性廃棄物管理国家計画(PNGMDR)」に基づき、既に9月の段階で1次案として4つの候補サイトを公開し、地元関係者との協議を含む政府への提案準備を進めていた 。
政府への提案は地層処分サイトに関して以下を特定したものであり、科学的・技術的基準に基づき、更に、地域の意向などにも配慮したものであるとしている。
- 今後詳細な地下の調査を行う、地層処分場の地下施設の展開が予定される約30km2の区域
- 地上施設を配置する可能性のある区域(複数の地上施設の配置案に対応可能な区域)
ANDRAは2005年の研究成果報告において、地上及びビュール地下研究所での調査から、同地域の深度約500mに位置するカロボ・オックスフォーディアン粘土層が地層処分に適しているとして、ビュール地下研究所と同等の特性を有する区域として、地下研究所を含む周辺約250km2を互換区域として特定していた 。今回、ZIRA(今後詳細な地下の調査を行う区域)1 と称して特定された地層処分場の地下施設の展開が予定される区域は、上記の互換区域や地質特性等の情報を含めて、地図上に明示されている。これらは、ANDRAの下記ウェブサイトで閲覧が可能である(フランス語のみ)。
http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_1_1_1&art=5312
ANDRAのウェブサイトの情報によれば、今回のサイト提案の主要なポイントとして以下をあげている。
- 第1に、科学的・技術的基準に基づくものである
- 地質及び安全な処分の観点から望ましい区域(粘土層の深度及び厚さ、断層の有無)
- 2009年の研究成果に基づくレファレンス処分場の建設が可能なこと
- 地元議会議員や地域情報フォローアップ委員会(CLIS)等の意向にも配慮したものである。
- 地下処分施設までの傾斜トンネルによる、オート=マルヌ県側からのアクセスを可能とする
- 村民の居住区域を避ける
- 森林区域における主要アクセス立坑の掘削を可能にする
地上施設を配置する可能性のある区域については、望ましい区域として6つの区域が提案されている。これらは、上記のZIRA(今後詳細な地下の調査を行う区域)と整合されたものであり、環境や社会環境等の分析(居住区域、氾濫原[洪水時に浸水する地域等]、航空機落下リスク、輸送ルート等の制約)に加え、地域計画に関連する地域の要望にも整合が図られている。
また、今後の直近の予定として、今回のANDRAの提案に対する、国家評価委員会(CNE)、原子力安全機関(ASN)、更には地域情報フォローアップ委員会(CLIS)の評価等を踏まえた政府の判断の後に、ANDRAはZIRA(今後詳細な地下の調査を行う区域)における詳細な地質調査と地上施設に関する調査を開始し、2013年には地上施設を含む地層処分サイトが特定されるとしている。
なお、本件に関して、地域情報フォローアップ委員会(CLIS)は自身のウェブサイトにおいて、上記のANDRAの提案内容を概説した資料を公表している。同資料では、今回のANDRAの提案に対する政府の判断の前に、政府が国家評価委員会(CNE)、原子力安全機関(ASN)、及び、地域情報フォローアップ委員会(CLIS)に対して意見提示するよう要請したことも伝えており、この政府の判断は、地下施設のみに関連するものであり、地層処分場の許可(或いは建設しない)に向けた手続きにおける1つのステップに過ぎないとしている。
※地域情報フォローアップ委員会(CLIS)の下記ウェブサイトのトップページから「ZIRA 5」と表記された部分をマウス・クリックすることで上記文書のダウンロードが可能(フランス語のみ)。
http://www.clis-bure.com/
【出典】
- 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイト、
http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_1_1_1&art=5312 - 地域情報フォローアップ委員会(CLIS)公表資料
【2010年1月18日追記】
原子力安全機関(ASN)は2010年1月13日付けのプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による地層処分サイトの提案に関して、ASNが政府に2010年1月5日に意見書を提出したことを公表した。同プレスリリースで公開されたASNの意見書は、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の意見も踏まえたものであり、ANDRAが提案した地層処分サイト(今後詳細な地下の調査を行うZIRAと称される区域)が安全性及び放射線防護の観点から十分なものであると評価している。
なお、上記のIRSNの意見書が2009年12月22日にASNに提出されていることがIRSNのウェブサイトで紹介されている。IRSNの意見書では、2007年から2008年に実施された調査等に基づきANDRAが特定したZIRAが、その特定において採用された基準や安全性の観点から妥当なものであると評価している。
【追記部出典】
- 原子力安全機関(ASN)の2010年1月13日付プレスリリース、
http://www.asn.fr/index.php/S-informer/Actualites/2009/Zone-restreinte-d-investigation-pour-le-stockage-reversible-profond - 原子力安全機関(ASN)の2010年1月5日付意見書、
http://www.asn.fr/index.php/content/download/23286/138264/file/2010-AV-0084.pdf - 放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の2009年12月22日付意見書、
http://www.irsn.fr/FR/expertise/avis/Documents/Avis_IRSN_ZIRA_22122009.pdf
【2010年4月1日追記】
ANDRAは自身のウェブサイトにおいて、2009年10月に提案していたZIRA(今後詳細な地下の調査を行う区域)について、政府の了承が得られたことを公表した。ANDRAはこれを受けて、下記目的に資する同区域を対象とした3次元地震探査等の地上からの詳細な調査を開始するとしている。
- 設計の最適化や地層処分の実現に資するため、既に得られているカロボ・オックスフォーディアン粘土層に関する知識の補完
- カロボ・オックスフォーディアン粘土層の上下に存在する石灰岩層の幾何形状と特性の把握
- モデルと数値シミュレーションの改善に向けた追加情報の収集
ANDRAは地震探査に必要な機器等の設置を2010年5月から開始する予定であり、これらの詳細な調査を経て、2012年末迄に政府に地層処分サイトの提案を含む報告書を提出する予定であるとしている。この報告書は、2013年に予定される公開討論会の基本資料の作成に資するものであり、ANDRAは政府への報告書の提出後に、公開討論会の準備に着手する予定である。
【追記部出典】
- フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)ウェブサイト、
http://www.andra.fr/index.php?id=actualite_1_1_1&art=5339
【2010年5月21日追記】
ANDRAは自身のウェブサイトで、2010年5月19日よりビュール地下研究所の北方3kmにある約37km2の区域を対象とした詳細な地質調査を開始したことを公表した。この調査は2010年3月に政府によって了承されたZIRA(詳細な地下の調査を行う区域)を対象としたものであり、ANDRAは今後4カ月間にわたる地震探査やボーリング調査を行い、地層に関する情報(厚さ、深さ、均質性に関するメートル単位の精度での情報)を取得するとともに、小さな断層が存在しないことを確認する予定である。
【追記部出典】
- フランス放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の2010年5月19日付プレスリリース、http://www.andra.fr/download/andra-meuse-fr/document/presse/100519.pdf
- Zone d’Intérêt pour la Reconnaissance Approfondie [↩]
(post by emori.minoru , last modified: 2023-10-11 )