Learn from foreign experiences in HLW management

《スイス》BFEが地上施設を設置する可能性のある「計画範囲」の案を公表

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2009年12月10日付のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)(詳細はこちら)の方針部分 に基づく処分場サイト選定手続において、地上施設が設置される可能性のある地点を示した「計画範囲」の案を設定したことを公表した。

スイスでは、2008年10月に、廃棄物処分義務者である 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が地質学的候補エリアを提案した 。これは、地質学的な基準のみを考慮したものであるが、処分場へのアクセスには約 5 kmの長さのアクセス坑道が使用されるため、サイト地域の周囲 5 kmの範囲で地域開発計画の観点から、どの地域に地上施設を設置することができるかが検討されていた。この検討の結果が今回、「計画範囲」の案として公表された。今後、地下施設の設置の可能性がある地質学的候補エリアに含まれる自治体と、地上施設の設置の可能性がある「計画範囲」に含まれる自治体と、さらには「計画範囲」に隣接し、経済や観光の点で特別な関係を有する自治体とで、地域参加プロセスが構成される。

また、同プレスリリースによると、今回公表された「計画範囲」の案は、関係する州及びドイツの代表の協力の下、地域開発計画の基準に基づいて設定されたものであり、3段階で行われるサイト選定の第1段階の最終段階で「計画範囲」の確定が行われるとされている。なお、2010年春には、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の地質学的候補エリアの提案に対する安全技術的な審査が完了し、地質学的候補エリアの案が決定する予定である。第1段階のスケジュールは次の通りである。

  • 2008年10月:放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が複数の地質学的候補エリアを提案
  • 2009年12月:「計画範囲」の案を公表
  • 2010年春:地質学的候補エリアの提案に対する安全技術的な審査が完了し、地質学的候補エリアの案を決定
  • 2011年:連邦評議会が複数の地質学的候補エリア及び「計画範囲」を確定

一方、今回の連邦エネルギー庁(BFE)による「計画範囲」の案の公表を受けて、地質学的候補エリアが含まれる7つの州 のうち、ニドヴァルデン州、シャフハウゼン州及びアールガウ州が2009年12月10日付でプレスリリースを出している。これまでに2度の州民投票でヴェレンベルクにおける低中レベル放射性廃棄物処分場の調査に係る許可発給が否決 されたニドヴァルデン州は、今後、できる限りの手段を用いて、ヴェレンベルクが地質学的候補エリアから外されるよう努力するとしている。また、シャフハウゼン州は、州に影響を及ぼす地質学的候補エリアでの処分場建設を阻止するため、特別計画に基づくサイト選定手続に今後とも建設的かつ批判的に参加するとともに、州内の「計画範囲」以外の自治体も参加プロセスに参加する必要があるとしている。なお、地質学的候補エリアであるジュートランデンはシャフハウゼン州に属しており、またチュルヒャー・ヴァインラント及び北部レゲレンの「計画範囲」の案には、シャフハウゼン州の自治体が含まれている。さらに、アールガウ州は、今回の「計画範囲」の案の設定により、アールガウ州で影響を受ける可能性のある自治体数が、これまでの33か所から91か所に増大したとしており、該当する自治体のすべての家庭に処分場に関する冊子を配布するなど情報提供を行っていくとしている。

【出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2009年12月10日付プレスリリース、http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=30630
  • 特別計画「地層処分場」(2008年4月2日)
  • ニドヴァルデン州政府、2009年12月10日付プレスリリース、
    http://www.nw.ch/de/aktuelles/aktuellesinformationen/welcome.php?action=showinfo&info_id=5203&ls=0&sq=&kategorie_id=&date_from=&date_to=
  • シャフハウゼン州政府、2009年12月10日付プレスリリース、
    http://www.sh.ch/News.316.0.html?&tx_ttnews[tt_news]=634&cHash=f70d2f96d9
  • アールガウ州政府、2009年12月10日付プレスリリース、
    http://www.ag.ch/medienmitteilung/de/pub/medienmitteilungen.php?controller=Mitteilung&MitteilungsId=5243&navId=Medienmitteilungen

【2010年7月16日追記】

連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年7月1日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が、「計画範囲」内に設置される地上施設の設置場所の提案の準備のため、2010年7月からフィールド調査を実施することを公表した。この調査の対象は、地形、地盤、開発状況、地域開発計画、景観などであり、州や自治体への事前の情報提供の後に調査が開始されるとしている。

特別計画「地層処分場」に基づく3段階のサイト選定では、第1段階において地質学的な基準のみを考慮して地質学的候補エリアが確定される。第1段階における安全規制当局の審査は終了しており 、2011 年半ばの連邦評議会の決定などにより第1段階は終了する。第2段階では、少なくとも2カ所の候補サイトが選定される。NAGRAは、第1段階の終了から約 1カ月後に、地上施設の設置場所を地質学的候補エリアごとに提案することになっており、今回の調査は、サイト選定の第2段階の準備と位置付けられている。地上施設に関するNAGRAの提案は、地域参加プロセス(既報を参照)において検討されることとなっている。

【追記部出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2010年7月1日付プレスリリース、
    http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=34078
  • 特別計画「地層処分場」方針部分(2008年4月2日)、
    http://www.ensi.ch/fileadmin/deutsch/files/Konzeptteil_Sachplan.pdf

(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )