スペインの産業・観光・商務省(MITYC)は、2009年12月23日付のプレスリリースにおいて、建設が計画されている使用済燃料等の集中中間貯蔵施設(ATC)及び同施設に隣接される関連技術センターを受け入れる候補自治体選定のための公募開始について、政府の承認が得られたことを公表した。同施設の公募開始はエネルギー担当大臣の下に設置されている省庁間委員会 の決議により採択されていたものであり、今回の政府承認を経て公募が開始されることとなる。
なお、政府承認を受けた集中中間貯蔵施設(ATC)のサイト選定に関する省令が12月29日付で公開され、これをもって公募が開始されている。同省令では、公募期間は1ヶ月とされ、関心自治体は事前に自治体議会の同意が必要であることが示されている。
同プレスリリースによれば、ATCの建設は次の3段階で実施される。
- 第1段階:5年間と見積られるこの期間に、第1貯蔵建屋及び技術センターが建設され、基礎となるインフラ整備が行われる。これらの施設の建設後に運用が開始される。
- 第2段階:第2貯蔵建屋の建設が行われ、建設後は6年間の操業を予定する。
- 第3段階:第3貯蔵建屋の建設が行われ、建設後は14年間の操業を予定する。
スペインで計画されている集中中間貯蔵施設(ATC)は、オランダの高レベル放射性廃棄物等の貯蔵施設であるHABOGを参考としたものとされている 。2006年7月7日には、第6次放射性廃棄物計画と共に承認された王令によって、ATCが遵守すべき基準の策定を行うとともに、その基準等に基づいて関心のある自治体の中からATCの候補地の選定を行うための委員会が設置されていた 。その後、2006年7月27日から施設建設に関する情報が公開されており、産業・観光・商務省(MITYC)のウェブサイトでは、同プロジェクトに関するウェブページが開設されている 。
放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が公開したATCの概説資料によれば、同施設では、スペインの原子力発電所からの7,000トンの使用済燃料、一部の使用済燃料の再処理に伴う高レベル放射性廃棄物等、並びに、約1,900m3におよぶ原子力発電所の解体廃棄物が管理される予定である。また、同プレスリリースによれば、本事業の投資総額は約7億ユーロ(約930億円)と見積られており、第1段階では1日あたり300名、ピーク時には500名の労働者が施設建設に従事すると見込まれている(1ユーロ=133円として換算)。
なお、スペインにおける使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の最終管理方策の決定は第6次放射性廃棄物計画でも先送りされているが、地層処分を有力なオプションとして、採用された場合の計画として、建設開始(2040年~)及び操業開始(2050年~)の時期が同計画で示されている。
【出典】
- 産業・観光・商務省(MITYC)、2009年12月23日付プレスリリース、 http://www.mityc.es/es-ES/GabinetePrensa/NotasPrensa/Paginas/reformanuclear231209.aspx
- 放射性廃棄物管理公社(ENRESA)、2009年12月23日及び29日付プレスリリース、 http://www.enresa.es/actualidad/weblog/post/luz_verde_del_gobierno_a_la_convocatoria_del_almacen_temporal_centralizado , http://www.enresa.es/actualidad/weblog/post/boe_convocatoria_seleccion_candidatos_atc
- スペイン官報、2009年12月29日付 http://www.emplazamientoatc.es/NR/rdonlyres/FB5E0606-64CD-4848-9AFB-3B8C5395B264/0/BOEConvocatoriaATC.pdf
- 集中中間貯蔵施設に関するウェブサイト、 http://www.emplazamientoatc.es/
【2010年2月4日追記】
産業・観光・商務省(MITYC)は、2010年2月3日付のプレスリリースにおいて、集中中間貯蔵施設(ATC)サイトの公募に13の自治体が応募したことを発表し、応募自治体名を暫定的に公表した。同プレスリリースによれば、後日、正式な応募自治体のリストを公開するとしている。
【追記部出典】
- 産業・観光・商務省(MITYC)、2010年2月3日付プレスリリース、
http://www.mityc.es/es-ES/GabinetePrensa/NotasPrensa/2010/Paginas/nplistaprovisionalatc.aspx
【2010年2月24日追記】
産業・観光・商務省(MITYC)は、2010年2月22日付のプレスリリースにおいて、集中中間貯蔵施設(ATC)サイトの公募で正式に承認された9自治体名を公表した。
今回のATCサイトの公募では、最終的に14の自治体が応募し、省庁間委員会が検討した結果、公募で定められた要件を充たしていなかった5自治体が除外され、最終的に9自治体が正式な応募自治体として承認されたとしている。今回承認された正式な応募自治体は以下の通りである。
- アルバラ(カセレス県)
- アスコ(タラゴナ県)
- コンゴスト・デ・バルダビア(パレンシア県)
- メルガル・デ・アリバ(バジャドリド県)
- サンテルバス・デ・カンポス(バジャドリド県)
- トルビア・デ・ソリア(ソリア県)
- ビジャル・デ・カニャス(クエンカ県)
- ジェブラ(グアダラハラ県)
- サラ(バレンシア県)
【追記部出典】
- 産業・観光・商務省(MITYC)、2010年2月5日付プレスリリース、
http://www.mityc.es/es-ES/GabinetePrensa/NotasPrensa/2010/Paginas/nplistaprovisionalatc050210.aspx - 産業・観光・商務省(MITYC)、2010年2月22日付プレスリリース、
http://www.mityc.es/es-ES/GabinetePrensa/NotasPrensa/2010/Paginas/listaatcdefinitva220210.aspx - 放射性廃棄物管理公社(ENRESA)、2010年2月23日付プレスリリース、 http://www.enresa.es/actualidad/weblog/post/municipios_optan_almacen_temporal_centralizado
- 集中中間貯蔵施設に関するウェブサイト、
http://www.emplazamientoatc.es/NR/rdonlyres/5D4EAD8A-70B9-4F08-B7A5-5B0AB080D368/0/Listadefinitivadecandidaturasadmitidasyexcluidas.pdf
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