Learn from foreign experiences in HLW management

《フランス》放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が公開討論会の総括報告書公表を受け、地層処分プロジェクトの継続に関する今後の方針を決定

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2014年5月6日付のプレスリリースにおいて、地層処分プロジェクトに関する公開討論会の結果、市民会議、政府関係機関の意見等を反映し、新たに「パイロット操業フェーズ」を導入するなどの4つの改善案を含む今後のプロジェクト継続計画を取りまとめて公表した。ANDRAは、プロジェクト継続計画に含めた改善案の実現に向けて、政府と協議するとしている。

2006年放射性廃棄物等管理計画法では、地層処分場の設置許可申請に先立って国民からの意見収集を行うことが規定されており、そのため、ANDRAから付託を受けた独立した行政委員会である公開討論国家委員会(CNDP)が地層処分プロジェクトに関する国家討論会を2013年5月から約7カ月間にわたって開催していた。CNDPは、2014年2月12日に公開討論会の総括報告書等を公開しており、この報告書等を受けてANDRAは、地層処分場プロジェクトの継続に関する方針を決定し、公開討論会で寄せられた市民からの要望等に応えるための提案を政府に提出するとしていた

■地層処分プロジェクト継続に向けた4つの改善案

ANDRAは、CNDPが取りまとめた公開討論会の総括報告書で示された見解・勧告等を踏まえ、地層処分プロジェクトの継続に当たって、市民の要望等に応えるために次の4つの改善事項の導入を政府に提案するとしている。

①「パイロット操業フェーズ」の導入

ANDRAは地層処分場の操業について、政府による承認を得られることを前提として、「パイロット操業フェーズ」を導入する考えである。パイロット操業フェーズの導入については、公開討論会の総括報告書の勧告に含まれていたものである。パイロット操業フェーズを導入する意図についてANDRAは、処分場操業に関するリスク管理のための技術的措置、定置後の放射性廃棄物パッケージの回収能力、モニタリング・センサー、坑道等のシール技術等、地層処分場のあらゆる機能について、実際の環境で試験を行うことを可能にするためとしている。ANDRAは通常の操業フェーズに移行する前に、パイロット操業フェーズの総括を行う意向である。

②地層処分場の「処分操業基本計画」に対する定期レビュープロセスの導入

ANDRAは、地層処分場の「処分操業基本計画」をステークホルダーと協議して新たに策定し、定期レビューを受ける制度の導入を提案している。公開討論会の総括報告書において、ANDRAとは独立した安全性の立証などを求める仕組みの強い要望があったことが背景となっている。処分操業基本計画は政府の承認を得る必要があるものと位置付け、地層処分場の操業期間を通じて、プロジェクトの遂行ツールとしたい考えである。

③地層処分場の設置許可申請の審査プロセスとスケジュールに関する提案

ANDRAは、当初の2015年に設置許可申請を行う計画を変更し、次のような2段階とすることを提案している。

  • 2015年:「処分操業基本計画」を政府に提出し、規制機関である原子力安全機関(ASN)に地層処分場の安全オプションと回収可能性の技術オプションに関する資料を提出
  • 2017年末:全ての設置許可申請書の完成

このような提示がされた背景には、2006年放射性廃棄物等管理計画法において、2015年に設置許可申請を行うことが規定されているが、「パイロット操業フェーズ」の導入によって当初の設置許可申請の提出スケジュールに余裕がないことが公開討論会において指摘され、当初のスケジュールの修正を含めた検討がなされていたことが挙げられる。

2006年放射性廃棄物等管理計画法において、設置許可の発給は、可逆性が保証される場合にのみ発給されることとなっているため、設置許可申請後に予定される可逆性の条件を定める法律の制定以降となる。また、ANDRAは、可逆性を担保するため、段階的なアプローチを採用する方針である。これに従って、定置後の放射性廃棄物パッケージの回収能力に根拠を与えうる主要な技術オプションを2015年に原子力安全機関(ASN)に提示するとしている。なお、「可逆性」と「回収可能性」の用語について、以下のような定義を提案している。

可逆性:
処分場の閉鎖、または放射性廃棄物パッケージの回収も含めた長期的な放射性廃棄物管理について、次世代に選択の機会を与えることができること。このような可能性は、段階的で柔軟な地層処分場開発によって担保することができる。
回収可能性:
地層処分された放射性廃棄物パッケージを回収できること。

ANDRAは、2020年に設置許可が発給されるとした場合、地層処分場の操業開始までのスケジュールは次のようになるとしている。

  • 2015年以降:変電所の設置、道路整備等、地域レベルでの建設・操業準備の開始
  • 2020年:地層処分場の建設開始
  • 2025年:パイロット操業フェーズの開始

④市民社会の参画機会の提供

公開討論会では、市民の信頼を得るために、国内外の独立した専門知見も活用するガバナンス体制を再構築する必要性が提起された。ANDRAは、それを受け、「処分操業基本計画」の策定及びその見直しに際して、市民社会との協議を行うこと、放射性廃棄物管理に関する多元的な専門的知見を導入してプロジェクトの発展に貢献していくことを決定した。

 

■ANDRAの責務

ANDRAは、プロジェクトを継続するに当たって、次のような3つの責務を果たしていくとしている。

  • 安全確保の最優先
    2006年放射性廃棄物等管理計画法により、地層処分場の設置は、原子力安全機関(ASN)及び放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)に対して、 ANDRAのリスク管理能力を立証しなければ許可されないこととなっている。ANDRAは、管理能力の立証に関連して、2015年に地層処分場の主要な技術オプション及び放射性廃棄物パッケージの受入基準案をASNに提示する予定である。
  • 立地地域の保全・地層処分関連施設の開発
    ANDRAは、地層処分場の設置許可が発給された後、ムーズ県及びオート=マルヌ県を中心とする立地地域における地層処分場建設に必要な土地の整備計画の策定、地層処分プロジェクトによる社会経済的影響の評価等に積極的に関与する方針である。なお、放射性廃棄物パッケージの輸送に関しては、ANDRAは鉄道によって地層処分場に輸送する方針を決定した。ANDRAは放射性廃棄物の輸送に関する情報提供を強化するため、地層処分場の設置許可申請に先立って輸送基本計画を事業者と協力して策定する方針である。
  • コスト管理
    ANDRAは、安全性を損なうことなくコストを最適化するための検討を、地層処分場のパイロット操業フェーズ中も継続する。また、現在ANDRAは、公開討論会が終了する以前の2013年12月27日のデクレ(政令)により、公開討論会の結果及びコスト最適化の検討状況を踏まえたコスト評価を2014年6 月末までに提出するよう指示を受けている。新たなコスト評価の結果は、エネルギー担当大臣の評価を受けた後、公表される予定である。

 

【出典】

(post by yokoyama.satoshi , last modified: 2023-10-11 )