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《フランス》公開討論国家委員会(CNDP)が公開討論会の総括報告書等を公表

フランスの公開討論国家委員会(CNDP)は2014212日に、地層処分場の設置に関する公開討論会について、総括報告書、議事録1 及び市民パネルの見解書(201423日付け)を公表した。

この公開討論会は、2015年に予定される地層処分場の設置許可申請に先立って、国民からの意見収集を行うために2013523日から20131215日の7カ月間にわたって開催されており、フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が、独立した行政委員会である公開討論国家委員会(CNDP)に国会討論会の開催を付託していたものである。公開討論会の初期において、集会形式の公開討論会が反対派の妨害により中止を余儀なくされたため、意見収集方法を小規模な地元会合やインターネット会議に代え、公開討論会の期間を当初予定より2カ月間延長されていた。また、この期間の終了後に、締め括りとして、無作為に選出された17名の市民パネルによる市民会議が201312月~20142月に企画・開催された。公開討論会の終了までに、公開討論会の専用ウェブサイトには76,000件を超える接続があり、1,508件の質問、497件の意見表明がされたとしている。

CNDPは、総括報告書に以下のような「結論と提言」をまとめている。

  • 公開討論会の間に表明された見解は数多く、よく議論された内容であった。集会形式の公開討論会が一部の参加者によって妨害されたことは遺憾であるが、討論会は適切に実施されたと言える。
  •  多くの市民は、意見を表明することへの無力感や、自分の意見が軽視されたと感じていることが明らかとなった。これらの市民は、20052006年の放射性廃棄物管理に関する公開討論会で示された、地層処分オプションと長期貯蔵オプションを並行して検討すべきであるとの結論等が政府によって考慮されなかったと考えている。さらに、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が公開討論に付されている地層処分プロジェクトに関する契約を締結したことは、地層処分場の設置が規定路線であるかのような印象を抱かせてしまっている。これにより、公開討論会において表明される市民の意見・見解は重要性がなく、プロジェクトは十分な時間をかけずに急いで実施されるとの市民の感情を強めることになった。
  • 公開討論会において損なわれた市民、専門家、ANDRA及び政府関係機関の間の信頼関係を再構築することが急務であり、必要不可欠である。
  • 信頼回復のためには、政府関係機関やANDRAは、公開討論会において市民から寄せられた疑問に耳を傾け、真実を伝え、責任を持ち、慎重に地層処分プロジェクトあるいはその他の代替プロジェクトを実施することが必要である。
  • 公開討論会の参加者や専門家の多くは、2006年放射性廃棄物等管理計画法に規定された現行のスケジュールはタイトであり、地層処分プロジェクトの安全性に関する追加的な証明がなされるべきであるとの見解で一致している。この場合、サイトにおける地層処分場の安全性を立証する重要な要素を確認できるのは設置許可申請が予定されている2015年以降になるため、複数の専門家は2025年の操業開始というスケジュールとも相容れないとしている。
  • 地層処分場のパイロット操業期間を考慮した新たなスケジュールに基づいてプロジェクトを実施するため、現行の法規制の変更措置が必要である。公開討論会において、地層処分場のパイロット操業期間を考慮した新たなスケジュールが提示されたことは大きな前進である。このパイロット操業段階は、リスクの管理が可能であることを確認し、パイロット操業が失敗した場合には、定置された廃棄物パッケージを回収することも可能とするものである。このようなパイロット操業期間を経た後で初めて、地層処分場の建設・操業を最終決定できるようになる。
  • 政府が策定を進めているエネルギー政策転換に関する計画法案2 において可逆性の問題を扱う方針は、より長い時間枠で新たなスケジュールを設定しようとする公開討論会で示された目標と矛盾している。
  • 地層処分場に処分される放射性廃棄物インベントリに関しては、現時点では使用済燃料は含まれていないが、将来的な政策転換によって使用済燃料を処分する必要性が生じる複数のシナリオを想定して検討する必要がある。また、原子力安全機関(ASN)の要請の如何に関わらず、地層処分場の設置許可申請には、使用済燃料の処分に関する補完的な安全証明も提出することが重要である。
  • 地層処分場に処分される放射性廃棄物に関する火災リスクについて検討することが必要である。その検討には、100年後に様々なリスク、機能不全、ヒューマンエラーが同時発生する可能性も考慮する必要がある。
  • 複雑な研究活動の全ての内容を一般公衆が理解できるようにするための取組みを継続すべきである。市民からは、ANDRAの知見に基づくものではなく、別に独立した安全性の立証などを求める強い要望があったためである。また、それを担保するため、専門家や市民から提起されたプロジェクトの安全性に関する重要なテーマについては、全ての関係者によって、透明性が確保された形で議論が行われるべきである。
  • 市民の信頼を得るために、国内外の独立した専門知見も活用するガバナンス体制を再構築する必要がある。現在、原子力安全機関(ASN)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)、地域情報フォローアップ委員会(CLIS3 、地域情報委員会全国協会(ANCCLI4 、国家評価委員会(CNE)、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)などによる充実した組織体制が存在するが、組織内外の知見の活用が不十分である。この再構築は、必要な資金が与えられた上で、CLISANCCLIを中心に実施することが可能であると考えられる。より多元的な専門的知見を確保することは市民の信頼回復に不可欠である。
  • 規制機関や政策決定機関は、地元の環境保護団体等の意見聴取を公開で実施すべきである。
  • 公衆に対して、可逆性の費用も含めた地層処分プロジェクトに関する費用と資金確保方法についての情報を提供することが必要不可欠である。
  • 市民会議を開催した結果、専門的な知識を持たない一般市民でも、多様な観点を反映した情報提供を受けることで、複雑なテーマについて政策決定者が考慮に値する的確な意見・見解を示すことができることが証明された。なお、市民パネルが公開討論会の結論と近い見解を示したことは注目に値する。

 なお、ANDRAは、総括報告書の公表を受けて、地層処分場プロジェクトの継続に関する方針を決定し、公開討論会で寄せられた市民からの要望等に応えるための提案を政府に提出予定であり、その内容は2014515日までに公開されることとなっている。

【出典】

 

  1. 議事録は地層処分場の設置に関する公開討論会を主導する特別委員会(CPDP)が取りまとめたものである。 []
  2. 2012年に発足した現社会党政権は、原子力発電の縮減、再生可能エネルギー開発の促進、省エネルギーの実現等を目標に掲げており、201211月~2013年7月にかけてエネルギー転換に関する全国規模の討論会を実施した。その結果をふまえ、現在エネルギー転換に関する法案を策定している。 []
  3. 2006年放射性廃棄物等管理計画法で設置され、地下研究所または地層処分場のある地域において、実施主体と地元住民との間の情報の仲介、放射性廃棄物処分に関する研究の監視、情報提供、協議に関する全般的な使命を担う組織である。 []
  4. ANCCLIは、地域情報委員会(CLI)の全国組織であり、CLI相互あるいは政府機関に対するCLIの代表としての役割を担っている。CLIは原子力施設ごとに設置され、事業者、政府機関、地元住民などの原子力施設の立地地域におけるステークホルダー間のコミュニケーションを仲介している。CLIは1981年の首相通達によって導入された制度であるが、2006年の原子力安全情報開示法に基づいて設置や活動の枠組みが整備された。 []

(post by yokoyama.satoshi , last modified: 2023-10-11 )