
フェノヴォイマ社が地質学的研究を行う2自治体の位置
フィンランドにおいて新たに原子力発電事業に参入し、原子炉新設に向けたプロジェクトを進めているフェノヴォイマ社は、2016年6月22日付のプレスリリースにおいて、新規原子炉から発生する使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省(TEM)に提出したことを公表した。フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(下図参照)によれば、同社は調査を2030年代半ばまで実施した後、環境影響評価書の作成を行い、2040年代に使用済燃料処分場のサイトを選定する計画である。
- 使用済燃料処分場のサイトに関してフェノヴォイマ社は、原子炉建設プロジェクトを進めているピュハヨキ自治体と、ポシヴァ社が使用済燃料処分場を建設するエウラヨキ自治体の2カ所を対象として、今後、地質学的研究(Geological studies)を実施する。
- フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社の子会社ポシヴァ・ソリューションズ社と10年間の業務提携契約を締結した。ポシヴァ・ソリューションズ社は親会社のポシヴァ社が培ってきた専門性を活かして、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分に向けた計画策定や研究開発、及びサイト選定の面で協力する。10年後には次のステップの実施に向けた別の協定を結ぶことも可能となっている。

フェノヴォイマ社の使用済燃料処分事業のスケジュール(フェノヴォイマ社環境影響評価計画書を基に作成)
雇用経済省の2016年6月22日付プレスリリースによると、同省のレーン経済大臣は、フェノヴォイマ社とポシヴァ・ソリューションズ社との協力により、フェノヴォイマ社の使用済燃料処分プロジェクトにおいてポシヴァ社が有する専門的知識が活用されるとして歓迎の意を表明した。また、フィンランドの原子力に関する安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)も2016年6月22日にプレスリリースを公表し、今回の両社の協力は、これまでのポシヴァ社の経験を活かすことによって、フェノヴォイマ社が計画している使用済燃料処分の安全性にとって好ましいとする見解を表明した。また、フェノヴォイマ社が今後実施する環境影響評価について、STUKは処分の計画の実施、処分概念、処分による放射線影響の評価に主に取り組んでいくこととしている。
フェノヴォイマ社の使用済燃料処分計画をめぐるこれまでの動向
フェノヴォイマ社は、フィンランドの原子力発電事業に新たに参入した企業であり、同社が新規原子炉建設事業に関して2009年に原則決定(詳細はこちら)の申請を行った際には、使用済燃料管理に関してはエウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている処分場に共同で処分する計画としていた。なお、その当時、フェノヴォイマ社はポシヴァ社やその親会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツゥム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)と経済的な面での協力関係はなかった。フェノヴォイマ社の原則決定申請に対して政府は2010年5月に原則決定を行い、2010年7月には国会が政府原則決定を承認していた。政府による原則決定文書では、フェノヴォイマ社は2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。
フェノヴォイマ社は、ポシヴァ社及びその親会社2社(TVO社、FPH社)と使用済燃料処分に関して協力関係を構築するよう調整を行っていたが、ポシヴァ社はオルキルオトに建設予定の処分場は親会社が運転する原子炉から発生する使用済燃料のためのものであるとして、フェノヴォイマ社との協力関係を拒否し続けていた。
その後、FPH社の親会社であるフォルツム社が、2015年8月にフェノヴォイマ社のプロジェクトに出資し、フェノヴォイマ社のプロジェクトに参加することとなった。なお、フェノヴォイマ社は2015年に新規原子炉(ハンヒキヴィ1号機)の建設許可申請を行っている。
今回のポシヴァ社によるプレスリリースでは、ポシヴァ社は引き続き、親会社であるTVO社とFPH社の原子力発電所で発生する使用済燃料の処分場建設に集中していくものであり、フェノヴォイマ社との業務契約締結には、フェノヴォイマ社の原子力発電所で発生する使用済燃料をポシヴァ社が建設を進めているオルキルオトの地層処分場において処分することは含まれていないとしている。
フィンランドにおける環境影響評価について
フィンランドでは、1994年に環境影響評価手続法が制定されている。環境影響評価は、環境に重大な影響が生じる可能性がある事業について、市民を含むステークホルダーが情報を事前に入手し、計画策定や意思決定に参加する機会を増やすことを目的とした制度となっている。最終処分場を含む重要な原子力施設の建設事業に関しては、原子力法に基づく原則決定手続きの申請に先だって、事業者は環境影響評価(EIA)を実施し、その評価書を原則決定申請書に添付することが規定されている。
EIAは、狭い意味での自然環境に対する影響だけではなく、景観、社会生活への影響、経済的な影響を含めた総合的な評価をすることが規定されている。
また、環境影響評価(EIA)は、計画書の作成(EIA計画書)、評価の報告書(EIA報告書)をまとめる段階から構成されている。
原子力施設に係る事業に関しては雇用経済省が環境影響評価の監督官庁となり、対象地域住民を含めた関係者や関係省庁に意見を求めることとなっており、その一環としてこれまでの原子力施設に係る環境影響評価において、雇用経済省はSTUKにも意見書の提出を要求している。
【出典】
【2016年7月13日追記】
フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年7月12日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書が、同社の新規原子炉建設事業に関する2010年の原則決定の付帯条件を満たしていることを承認したことを公表した。これにより、同社が2015年に提出していたハンヒキヴィ原子力発電所1号機の建設許可申請の審査が継続されることになる。
フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に関する原則決定申請に対して、政府は2010年5月に原則決定を行っていた。原則決定文書では、フェノヴォイマ社が2016年6月30日までに、同社が既存の処分実施主体であるポシヴァ社と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを付帯条件としていた。
また、同プレスリリースによれば、今後、雇用経済省(TEM)は環境影響評価の調整機関として、関係行政機関や、候補サイトの自治体とされているエウラヨキ、ピュハヨキの両自治体にフェノヴォイマ社の環境影響評価(EIA)計画書に関する意見照会を行うほか、その一環として公聴会を開催する計画である。
【出典】
【2016年8月24日追記】
フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年8月23日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が提出した使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に関する公聴会を、エウラヨキ、ピュハヨキ両自治体において、それぞれ2016年9月21日、9月22日に開催することを公表した。
環境影響評価手続法に基づいてTEMは、環境影響評価の調整機関として、関係行政機関及び候補サイトの自治体にEIA計画書に関する意見照会を行うほか、公聴会を開催することが規定されている。同プレスリリースによると、EIA計画書に対する関係行政機関及び候補サイトの自治体から意見照会を行う期間は2016年9月12日から2016年11月9日とされ、収集した意見を踏まえて、TEMは2016年末までに見解書を公表する予定としている。
【出典】
【2016年12月19日追記】
フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2016年12月16日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書に対する意見書を公表した。TEMは意見書において、フェノヴォイマ社のEIA計画書は包括的であり、環境影響評価手続法の要件を満たしているとの見解を示している。
フェノヴォイマ社のEIA計画書について調整機関である雇用経済省(TEM)は、2016年9月12日から11月9日にかけて自治体や関係機関等、及び関係国に対して意見聴取を行った。その結果、合計で63の意見が寄せられたが、多かった意見としては、EIA評価の期間が非常に長いこと、事業に関するコミュニケーションが重要であることなどのほか、EIA評価の期間中における評価プログラムに関する最新情報の提供についての要求があったとしている。
雇用経済省(TEM)は、今回の意見書においてフェノヴォイマ社に対し、現時点で放射性廃棄物管理義務を有している原子力発電事業者との協力を継続すること、及び2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めている。フェノヴォイマ社が追加で提出する計画書では、エウラヨキ自治体で実施する調査の対象となる地域の選定方法と選定時期のほか、エウラヨキ・ピュハヨキ両自治体の調査地域での調査の実施方法、及び公衆参加の枠組みに関する詳細を示さなければならないとしている。そのほか、雇用経済省(TEM)は、フェノヴォイマ社の原子炉から発生する使用済燃料については、商業契約に基づく協力により、ポシヴァ社の処分場で処分するのが最も望ましい解決策であり、フェノヴォイマ社がそのための努力をすべきであるとの見解を示している。
【出典】
【2018年2月2日追記】
フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2018年1月30日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が2016年6月に提出していた使用済燃料の処分に向けた環境影響評価(EIA)計画書について、追加説明資料を雇用経済省に提出したことを公表した。雇用経済省は2016年12月にフェノヴォイマ社のEIA計画書に対する意見書を発出しており、その中で、2018年1月31日までに使用済燃料処分プロジェクトのより詳細なスケジュールを示した計画書を追加で提示するよう求めていた。
雇用経済省のプレスリリースによれば、フェノヴォイマ社は、ピュハヨキ自治体のシュデネバ(Sydänneva)と呼ばれる森林地帯で処分場設置の適合性確認を目的とした地質調査を実施するとしている。また、エウラヨキ自治体では、地質調査を実施する地区を選定するに至っていないが、調査地区選定の検討を自治体全域を対象として実施しているとしている。また、フェノヴォイマ社は、予備的な調査計画をすでに作成しており、エウラヨキ自治体の調査地区を選定した後、エウラヨキとピュハヨキの両自治体の調査地区において同時に、表層地質調査等の追加的な調査を実施する予定としている。
【出典】
フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、「原子力廃棄物の最終処分の安全性」を含め、原子力施設の安全性等に関する5件の安全規則を策定し、2016年1月1日より施行した。
フィンランドでは、2015年5月22日に原子力法が改正 され、同法で規定された27の技術的項目ごとにSTUKが規則を策定し、従来、政令として定められていた一般安全規則を置き換えることとなっていた 。今回、27の技術的項目を含むものとして、以下の5件の安全規則が策定された 。
- 原子力発電所の安全性の確保 STUK Y/1/2016
- 原子力発電所の緊急時の救護活動 STUK Y/2/2016
- 原子力利用時の核物質防護 STUK Y/3/2016
- 原子力廃棄物の最終処分の安全性 STUK Y/4/2016
- ウランまたはトリウム採掘や鉱石処理作業の安全性 STUK Y/5/2016
STUKの2016年1月7日付プレスリリースによれば、今回策定された原子力廃棄物の最終処分の安全性に関する規則では、使用済燃料処分場の建設を計画しているポシヴァ社が2012年に提出していた処分場建設許可申請書に対する安全審査や、その他の原子力廃棄物処分場の規制経験などを基に、従来の規則では不十分であった部分の補足や重複部分の単一化などを行ったとしている。また、これまで原子力発電所に対する重大事故に関する詳細な規則が存在している一方で、使用済燃料処分場における重大事故に関する詳細な規則が存在しておらず、今回策定された規則では重大事故に関する規則を導入したとしている。
【出典】

使用済燃料処分場のイメージ図(出典:Posiva Oy)
フィンランド政府は2015年11月12日付のプレスリリースにおいて、同日、エウラヨキ自治体オルキルオトに計画されている使用済燃料処分場について、処分実施主体のポシヴァ社に処分場の建設許可を発給したことを公表した。使用済燃料処分場に対する建設許可の発給はフィンランドが世界初となる。
使用済燃料処分場は、フィンランド南西部のエウラヨキ自治体オルキルオト島内に建設される予定であり、地上のキャニスタ封入施設と地下400~450mに設置される最終処分場で構成される。使用済燃料の処分は、外側が銅製で、内側が鋳鉄製の2重構造の容器(キャニスタ)に封入した上で、その周囲を緩衝材(ベントナイト)と岩盤からなる多重バリアによって安全性を確保するものである。

使用済燃料の処分概念(出典:Posiva Oy)
フィンランド政府のプレスリリースによれば、建設許可を発給した処分場において最大6,500トン(ウラン換算)の使用済燃料を処分することを認めている 。また、建設許可には許可条件として、今後予定されている処分場の操業許可の申請において、申請書に以下の事項を含めるよう求めている。
- 処分施設が環境に及ぼす影響に関する解析
- 使用済燃料の回収可能性
- 輸送リスク
- 事業に影響を及ぼす可能性のある要因
フィンランドにおける使用済燃料の処分実施主体であるポシヴァ社は、2012年12月に使用済燃料処分場の建設許可申請書を政府に提出していた 。原子力に関する監督機関である雇用経済省は建設許可申請を受け、原子力法・原子力令に規定されている意見聴取手続きに従って、エウラヨキ自治体及び周辺自治体などに対して意見書の提出を求めていた。その一環として、安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2015年2月に処分場を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出していた 。雇用経済省は提出された意見書を元に、政府による発給に向けて、建設許可の許可条件に関する検討を行っていた。
建設許可の発給を受けてポシヴァ社は、2015年11月12日のプレスリリースにおいて、今後、処分場の建設段階に進むこと、使用済燃料の処分を2020年代初めに開始できるよう計画していることを明らかにした。
フィンランドにおける使用済燃料処分の経緯
フィンランドでは原子力発電から生じる使用済燃料を再処理せず、高レベル放射性廃棄物として地層処分する方針としている。使用済燃料の処分場のサイト選定は1983年に開始され、ポシヴァ社は1999年にオルキルオトを処分地として選定し、同年、原子力施設の建設がフィンランド社会全体の利益に合致することを政府が判断する「原則決定」と呼ばれる原子力法の手続きに基づいて(詳しくはこちら)、オルキルオトに使用済燃料の処分場を建設することについて、政府へ原則決定の申請を行った。政府はポシヴァ社の申請に対して2000年に原則決定を行い、翌2001年に国会が政府の原則決定を承認したことにより、オルキルオトが処分地として決定していた。
ポシヴァ社が使用済燃料の処分を開始するためには、原則決定の後に政府から処分場の建設許可、及び操業許可の発給をそれぞれ受ける必要がある。ポシヴァ社は建設許可の申請に向けて2004年には地下特性調査施設(ONKALO)の建設を開始し、並行して建設許可申請に必要な岩盤や地下水等のデータ取得や、坑道の掘削による地質環境への影響等について調査をしてきた。これまで調査施設として利用されてきたONKALOは、今後は処分場の一部として利用される予定である。
【出典】
フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2015年5月22日付のプレスリリースにおいて、同日付けで原子力法及び放射線法の改正が大統領により承認されたことを公表した。今回の法改正は、一部を除き2015年7月1日に発効し、これにより、STUKの規制権限と独立性が一層強化されることとなる 。
今回の法改正により、STUKに対して、原子力安全に関して法的拘束力を有する技術的な安全要件を定める権限が付与された。フィンランドの原子力安全に関する規制体系は一般安全規則と詳細安全規則で構成されるが、従来は一般安全規則を政府(雇用経済省)が政令として定め、一般安全規則の規定を満たすための指針としてSTUKが詳細安全規則を策定していた。法改正後は、一般安全規則と詳細安全規則の両方をSTUKが策定することになる。今回改正された原子力法では、STUKが安全要件として定めるべき27の技術的項目が規定された。
また、今回の原子力法の改正では、原子力施設の許可発給プロセスにおけるSTUKの意見が重視されるようになる。従来どおり原子力発電所、放射性廃棄物処分場などの重大な原子力施設の建設・操業等に係る許可発給は政府が行うが、法改正により、STUKが意見書で提示する許可条件を政府が考慮しなければならないことが明確化された。改正前の原子力法では、重大な原子力施設の許可手続きにおいて、STUKの意見書が必要と規定されているのみであった。
なお、ポシヴァ社による使用済燃料処分場の建設許可申請書に関しては、政府による許可発給に向けて、現在、雇用経済省が建設許可の発給に関する検討を行っている。STUKは、2015年2月11日に、ポシヴァ社による使用済燃料処分場の建設許可申請書に関する審査意見書を雇用経済省に提出している。この審査意見書においてSTUKは、原子力法第19条で許可発給の基準とする10の項目について審査結果を示している 。今回の法改正により、政府による許可発給におけるSTUKの意見の考慮について法的な担保がされたことになる。
【出典】
フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2015年2月12日付のプレスリリースにおいて、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の地層処分の建設許可申請について、キャニスタ封入施設及び地層処分場を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出したことを公表した。建設許可申請書 は、実施主体であるポシヴァ社が2012年12月28日に政府に提出していたものである。
放射線・原子力安全センター(STUK)が雇用経済省に提出した2015年2月11日の審査意見書によると、ポシヴァ社が処分するのは、フィンランドで運転中の4基、建設中の1基及び計画されている1基の合計6基の原子炉で発生する、最大で9,000トン(ウラン換算)の使用済燃料とされている。ポシヴァ社が建設許可申請書を提出した以降、STUKは安全審査を実施してきており、2013年4月には、安全審査の第一段階が完了していた 。STUKの安全審査が完了したことにより、今後は雇用経済省が建設許可の発給に関する検討を行った上で、最終的に政府によって建設許可が発給されることとなる。また、地層処分場の操業開始の前に、政府により発給されるキャニスタ封入施設と地層処分場の操業許可が必要とされ、ポシヴァ社による操業許可申請は2020年に行われるものと見込まれている。
放射線・原子力安全センター(STUK)の審査結果を受けてポシヴァ社が公表したプレスリリースによれば、今回の建設許可申請の審査に当たっては、STUKのみならず、その他のフィンランドや国際的な専門家が起用されたとしている。
放射線・原子力安全センター(STUK)の審査意見書においては、原子力法第19条で許可発給の基準とする以下の10点に対する審査結果が示されている。
- 施設に関する計画が、原子力法に基づく安全要件を満たしており、操業計画の策定時点で作業員及び住民の安全に対する配慮が適切になされているかどうか
- 施設のサイトが、計画されている操業の安全性の観点で適切に選定されており、また、操業計画の策定時点で、環境保護が適切に考慮されているかどうか
- 操業計画の策定時点で、核物質防護が適切に考慮されているかどうか
- サイトが、土地利用・建築法に基づく地域詳細計画において原子力施設の建設のために留保されているか、また、申請者が施設の操業のために必要となるサイトを所有しているかどうか
- 放射性廃棄物の最終処分及び施設の廃止措置を含め、放射性廃棄物管理のために申請者が利用できる方法が、十分かつ適切であるかどうか
- 申請者による使用済燃料管理のための計画が、十分かつ適切であるかどうか
- フィンランド及び国外において、原子力法第63条第1項3)によって規定されているSTUKによる管理の実施のための申請者の準備、及び第63条第1項4)によって規定されている管理の実施のための申請者の準備が十分であるかどうか
- 申請者が、必要な専門技術を有しているかどうか
- 申請者が、事業を実施し、操業を行うのに十分な資金的条件を備えているかどうか
- 申請者が、安全に、かつフィンランドの国際的な契約上の義務を順守しつつ、操業を行うための前提条件を備えていると考えられるかどうか
上記の許可発給の基準のうち、4.は、放射線・原子力安全センター(STUK)の管轄外であるため他の機関によって審査されることとされている。4.以外の9点、及びその他の関連する原子力法の規定に従って審査した結果、計画されている使用済燃料処分が政府による原則決定における社会全体の利益に合致していること、原子力の安全な利用のためには長期的には処分が不可欠であること、原子力法による建設許可発給のための条件が満たされていることから、STUKは、ポシヴァ社が使用済燃料のキャニスタ封入施設及び地層処分場を安全に建設することができると結論付けている。ただし、1.での原子力法で定められた安全要件への適合性に関しては、地層処分施設の閉鎖後のセーフティケースの審査において、さらなる信頼性の向上が必要との指摘を行ったとして、別途、STUKがポシヴァ社に示した改良点を考慮して操業許可申請を行うようにとの指示がされている。
今後、政府が建設許可を発給した場合、放射線・原子力安全センター(STUK)は、地層処分施設の建設を監督するとともに、必要に応じて承認された設計の変更をポシヴァ社に対して要求していくことになる。
【出典】
フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)処分の実施主体であるポシヴァ社は、2014年4月30日付のプレスリリースにおいて、最終処分地のオルキルオトに設置している地下特性調査施設「ONKALO」について、最深部に至る全ての立坑の掘削が完了したことを公表した。(図参照)
立坑は、排気用、給気用、人員用の3本があり、このうち排気用立坑については2012年初期に掘削が完了していた。今回、給気用立坑と人員立坑のうち、残っていた深度290mから455m部分までの掘削が完了し、すでに掘削済みのアクセス坑道 を含めて、ONKALOで予定されていた掘削作業の大部分が完了したことになる。今回の掘削部分では、立坑と亀裂帯が交差していることから、掘削過程で低アルカリ性セメントとシリカコロイドを用いたグラウトを行っている。ポシヴァ社は、先に掘削済みの排気用立坑を含む3本の立坑について、2014年後半にも補強作業を開始するとしている。このほか、ONKALOを安全に使用するために必要な設備の設置、地上部分の建設作業も2014年後半まで継続する予定である。

ONKALOの掘削状況(2014年3月14日時点、ポシヴァ社ウェブサイトより引用した図に一部加筆。赤点線部分が今回掘削された部分。)(クリックで拡大)
ポシヴァ社は、2004年のONKALO建設開始以降 、建設と並行して、岩盤に関する特性調査を実施し、2012年12月の処分場の建設許可申請に必要なデータを収集してきた。ONKALOでは、建設許可申請書の提出後も、岩盤の調査や地下での処分技術に関する開発実証が行われることとなっている。また、建設許可申請の審査段階での手続きにより、最終的にONKALOを原子力施設である処分施設の一部として統合するとしている。

写真 換気立坑(給気)(ポシヴァ社ウェブサイトより引用)(クリックで拡大)
【出典】

新しいYVL指針の構造(STUK2012年年次報告書より引用)
フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2013年11月28日付のプレスリリースにおいて、原子力に関する安全指針(YVL指針)を全面改訂したことを公表した。新安全指針は2013年12月1日に発効した。
YVL指針は、原子力発電、核燃料の取扱い、原子力に関連する放射線防護、放射性廃棄物の処分等の原子力の全ての分野について、STUKが策定する詳細安全規則である。今回の全面改訂は2008年の原子力法改正により、一般的な安全及び防護原則が法律に追加されたことに基づいて改訂作業が行われた。約70あった旧YVL指針は44の新たなYVL指針に置き換えられた。同プレスリリースによると、今回の全面改訂では、オルキルオト原子力発電所3号機の建設に係る経験、西欧原子力規制者会議(WENRA)等を通じた原子炉新設に係る知見、福島第一原子力発電所事故の教訓などを取り入れたとしている。
新しいYVL指針体系は、AからEまでの指針グループに分類されており、放射性廃棄物の処理・処分に関する以下の指針はYVL Dシリーズ「核物質と廃棄物」に含まれている。(図参照)
- YVL D.4 低中レベル放射性廃棄物管理と原子力施設の廃止措置
- YVL D.5 原子力廃棄物の処分
また、YVL D.5「原子力廃棄物の処分」は、従来の3つの指針―原子力発電所の操業からの低中レベル放射性廃棄物の処分(YVL 8.1)、使用済燃料処分の長期安全性の指針(YVL8.4)、使用済燃料処分施設の操業安全性の指針(YVL8.5)―を置き換えるものであり、使用済燃料の処分と原子力発電所の運転廃棄物の処分の安全要件を一つの指針で定めている。
なお、新YVL安全指針が発効する以前の2012年12月に、使用済燃料の処分実施主体であるポシヴァ社は、使用済燃料の地層処分場の建設許可申請を行っている 。ポシヴァ社は建設許可申請においては、STUKの事前の了解のもとで、新たなYVL指針(YVL D.3とD.5)のドラフト版に基づいて提出書類を作成しており、新指針で示されている規制要件は織り込み済みとなっている。
【出典】
フィンランドの安全規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)は、2013年4月23日付のプレスリリースにおいて、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社が2012年12月28日に政府へ提出していた使用済燃料処分場の建設許可申請書 について、安全審査の第一段階を完了したことを公表した。
プレスリリースによると、STUKは、法令の規定に従って、使用済燃料のキャニスタ封入施設と最終処分施設に関するポシヴァ社による建設許可申請書に関して、記載すべき事項の十分性と内容の適切さの審査を実施した結果、次段階の詳細な審査プロセスを行う上で、建設許可申請書の一部について補足文書が必要であるとしている。STUKは、建設許可申請書の主要な資料については次の詳細な審査プロセスに回す一方で、補足が必要な文書については、ポシヴァ社から補足文書の提出を受けるまでは次の審査プロセスに着手しないとしている。なお、補足が必要な文書の例としては、キャニスタ封入施設や最終処分場の操業中における過渡的あるいは仮想的な事故の解析、施設設計に要求される安全分類の根拠を挙げている。
また、プレスリリースによれば、ポシヴァ社はSTUKに対して、建設許可申請書に添付すべき最終処分の長期安全性に関するセーフティケースに関して、欠落があることを事前に通知していたとしている。STUKは、セーフティケースの安全審査について、未提出部分の報告書が揃ってから審査を行う意向であり、ポシヴァ社に対して補足文書や改訂文書の提出スケジュールを明らかにするよう求めているとしている。
STUKはプレスリリースにおいて、安全審査の第一フェーズの完了時点での今後の審査作業の見通しについて、当初予定していた18カ月(1年半)の期間ではスケジュールが極めて厳しいとの認識であることを明らかにしている。
【出典】
【2013年12月3日追記】
放射線・原子力安全センター(STUK)は、2013年11月25日付プレスリリースにおいて、ポシヴァ社が提出した使用済燃料処分場の建設許可申請書に関する安全審査の進捗状況を公表した。ポシヴァ社が2012年末に建設許可申請を行った時点では「最終処分の長期安全性の立証に関するセーフティケース」(以下「セーフティケース」という。)の一部の資料が未提出であったが、2013年10月に提出されたことを受け、STUKはセーフティケースの資料に必要な記載事項が含まれているかどうかを審査した。
審査の結果、STUKは、一部の資料に不備があるものの、セーフティケースの資料が包括的であることを確認し、セーフティケースについても詳細な審査プロセスに回すことを表明した。
不備があると指摘された資料は、長期安全性に関する論拠の背景資料、背景データ、オリジナルデータの報告書であり、STUKは、長期安全性の論拠の背景資料及びその他のSTUKが要求した追加報告書の提出予定が明らかになった時点で、再度評価を実施するとしている。
なお、STUKは、ポシヴァ社の資料提出が遅れたため、当初予定していた2014年中頃までに安全審査を完了するスケジュールについては、非常に厳しいものとなったとしている。
【出典】
【2014年6月30日追記】
放射線・原子力安全センター(STUK)は、2014年6月25日付プレスリリースにおいて、ポシヴァ社が2012年末に提出した使用済燃料処分場の建設許可申請書に関してSTUKが行っている安全審査について、雇用経済省(TEM)への審査意見書の提出が当初予定の2014年6月末より半年ほど遅れるとの見通しを示した。雇用経済省(TEM)は、2013年の初頭に、建設許可申請書に対するSTUKの審査意見書を、2014年6月末を期限として提出することを求めていた。
同プレスリリースによると、STUKは審査期間の延長の要因として、ポシヴァ社による技術資料の提出が建設許可申請を行った2012年末までに全て提出されていなかったこと、及び未提出の資料が2013~2014年に提出されたことを挙げている。また、STUKは、安全審査に関連して、ポシヴァ社に対して建設許可申請書に関連する多くの補足資料の提出を要請したことも延長の要因の1つとして挙げている。さらにSTUKは、2013年12月に発効した新安全指針 によって補足資料を追加する必要性が出たことも指摘している。
同プレスリリースによれば、STUKは、ポシヴァ社が今後必要な補足資料等を両者が合意したスケジュール通りに提出した場合、2014年12月までに安全審査を完了し、2015年1月には雇用経済省(TEM)に意見書と補足資料の安全評価書を提出できるとの見解を示している。
【出典】