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《スイス》ENSIがNAGRAの地質学的知見に関する報告書に対する評価を公表-地球科学的調査を実施せずに予備的安全評価が可能と判断

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)の2011年3月28日付プレスリリースによると、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2010年11月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した報告書 に対する審査結果として、原子力法に基づく許可が必要となるボーリング調査等の地球科学的調査を実施しなくても予備的安全評価が可能であるとの結論を公表した。ENSIは、既に得られている知見と第2段階で得られる知見に加えて、ENSIが補足を要求した項目1 をNAGRAが明らかにすることにより、予備的安全評価が可能としている。

スイスでは、2008年4月に連邦政府によって策定された特別計画 に基づいて、3段階からなるサイト選定手続が進められている。特別計画によれば、第2段階では、第1段階で選定された地質学的候補エリアから、2カ所以上の候補サイトが選定される。そのために、第2段階においては、予備的安全評価とサイトの比較が実施されることとなっている。

特別計画は、処分義務者が、第2段階で予備的安全評価を実施するために、地球科学的調査などの必要性を、第2段階の開始に先立ってENSIとともに検討すべきことを規定している。この必要性の検討のため、NAGRAは、2010年11月に地質学的候補エリアに関して現在有する地質学的知見の充足度を取りまとめた報告書をENSIに提出した。NAGRAの報告書では、現時点で既に有している知見に加えて、第2段階で新たに得られる知見により、全ての地質学的候補エリアに関する予備的安全評価とサイトの比較が可能であるとする結論を示していた。

プレスリリースによると、ENSIは、NAGRAが報告書において示した安全性に関係するプロセスとパラメータは検証可能なものであり、現時点では適切であると評価しているとしている。さらに、第2段階での予備的安全評価と安全性の観点からサイトの比較を行う上で、NAGRAが提示したプロセスは、構想として十分なものであるとしている。その上でENSIは、NAGRAが第2段階で得られる知見に加えて、ENSIが補足を求めた項目について明らかにすることにより、第2段階での予備的安全評価とサイトの比較に必要な地質学的知見の水準を達成することができると結論付けている。この結論により、ENSIは、第2段階では地球科学的調査は必要ないとしている。なお、ENSIは、概要承認 の発給によりサイトが決定される第3段階では、地球科学的調査が必要になるとしている。

プレスリリースによれば、現在、NAGRAの報告書は、原子力安全委員会(KNS)と州安全専門家グループによって審査されている。また、放射性廃棄物管理委員会(KNE)のウェブサイトには、同委員会のNAGRAの報告書に対する2011年3月28日付の見解が公表されている。

参考:予備的安全評価の内容と要求される解析及びデータ

特別計画に基づくサイト選定の第2段階で行われる予備的安全評価及びサイトの比較の詳細について、ENSIは2010年4月に、「予備的安全評価と安全性の比較に係る要件」を策定した。この中で、予備的安全評価で明らかにすべき点として次の7項目を挙げている。

  • バリアの機能とその長期的な変遷
  • 放射性廃棄物の地層処分に適用される指針ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」に基づく防護基準の遵守
  • サイトの比較
  • 第3段階で現地調査が必要となった場合の調査内容
  • 母岩の位置、形状及び特性
  • 構造技術的な設計が安全性に及ぼす影響
  • 生物圏

また、予備的安全評価の実施に当たっては、再現性、不確実性、及び情報の確からしさの3点に留意すべきとしている。さらに、予備的安全評価に必要な解析及びデータとして、次の5点を挙げている。

  • 母岩及び枠組み岩石の特性評価
  • 水文地質学と放射性核種の移行のメカニズム
  • 地球化学的な条件
  • 地球力学面での長期的な変遷
  • 生物圏及び被ばく経路

【出典】

  1. ENSIが公表した、審査結果を取りまとめた報告書には、ENSIがNAGRAに対して第2段階における補足を要求している41の項目が示されている。 []

(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )