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《カナダ》低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場の環境影響評価書(EIS)が提出

カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、2011年4月14日に、計画中の低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場に関して、環境影響評価書(EIS)、予備的安全評価書等を連邦政府の合同評価パネル(JRP)に提出したことを公表した。EISによると、OPG社が提案している低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場が環境に大きな影響を与える可能性は低いとしている。

EISは、カナダ環境評価法に基づいて、連邦政府が管轄するプロジェクトに必要とされるものであり、低・中レベル放射性廃棄物処分場に関するカナダ原子力安全委員会(CNSC)の許認可プロセスの一環として提出が求められていたものである。CNSCは、2006年12月に、低・中レベル放射性廃棄物処分場のEISのレビューを合同評価パネル(JRP)が行うことを提言し、2007年6月に環境大臣がJRCへの付託を決定していた。また、2009年1月には、CNSC及びカナダ環境評価局(CEAA)により、EISのガイドラインが公表されていた

EISによると、2009年1月に、OPG社とカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)とは、本プロジェクトに関する許認可プロセスをNWMOが担当する契約を締結しており、EISの作成はNWMOが実施したとされている。EISは、完全性、追跡可能性のある以下のようなステップで実施されている。

  • プロジェクトについての説明する
  • 現在の環境条件の特性を示す
  • プロジェクトと環境との間の潜在的な相互作用を特定する
  • 環境への無視できない影響があるかを判断するため、プロジェクト及び環境の相互作用をさらに評価する
  • 環境への無視できない影響があると判断されたものについて、環境に影響を与えるかどうか決定する。影響を与えるものについては、影響を取り除き、緩和するための対策を検討し、対策の実施後の残留影響については、他のプロジェクトとの複合的な影響についても評価する
  • 影響の緩和策の実施後の残留影響が重大であるかを評価する

また、EISでは、評価対象となる環境を以下の8つに分類して評価している。

  • 地質
  • 水文及び地表水の質
  • 陸上環境
  • 水環境
  • 放射線及び放射能
  • 大気環境
  • 先住民の利害
  • 社会経済環境

EISによると、これらの要素についての評価結果から、影響の緩和策の実施後の残留影響がいくつか特定されたが、これらの残留影響についての重大性の評価により、大きな影響はないと評価されたとしている。また、残留影響について他のプロジェクトとの複合的な影響についても評価が行われたが、影響はないと評価されたとしている。OPG社は、これらの評価結果を考慮すると、同プロジェクトが作業員の健康や安全性、公衆や生物への影響はなく、地域の社会経済には有益な結果をもたらすとして、環境に大きな影響を与える可能性は低いと結論付けている。

また、OPG社では、EISにおいて使用された仮定と評価結果の正確性及び影響の緩和策の効果を確認し、新たな対策の必要性を確認するため、処分場の建設・操業中に補足的な監視活動を実施するとしている。

EISによると、今後、JRPはEISのレビューに際してパブリックコメントや公聴会を実施し、評価結果を環境大臣に報告する予定である。また、低・中レベル放射性廃棄物処分場の操業開始を早ければ2018年前後とされている。

【出典】

【2012年1月26日追記】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)とカナダ環境評価局(CEAA)は、2012年1月24日付の共同プレスリリースにおいて、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が提案している低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場プロジェクトを審査する合同評価パネル(JRP)の委員3名が任命されたことを公表した。

2009年1月にカナダ原子力安全委員会とカナダ環境評価局との間で締結された合同評価パネルの設置に関する協定 において、合同評価パネルは、環境影響評価法及び原子力安全管理法に基づいて、プロジェクトの環境影響評価書(EIS)、サイト準備・建設の許可申請に関して評価・審査を行うこととされている。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )