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《米国》連邦議会下院の歳出委員会が歳出予算法案を採択 -使用済燃料の早期受入れなどが必要として対要求比増額

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2005年5月18日、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係等の2006年度1 予算の歳出法案を採択した。歳出法案に盛り込まれたユッカマウンテン処分場関連予算の金額は、約6億6,145万ドルと、連邦エネルギー省(DOE)の要求額を1,000万ドル上回っている。歳出委員会がまとめた報告書(以下「歳出委員会報告書」という)によると、この増額は、ユッカマウンテン処分場の許認可手続きに遅れが見られることから、集中中間貯蔵などによる使用済燃料の早期受入れを図るためとされている。

下表は、歳出法案におけるユッカマウンテン関連の歳出予算案について、前年度決定額および2006年度要求額(詳細はこちら)との対比を示したものである。

民間分 国防分 合計
2005年度歳出予算額(a) 3億4,323万 2億2,915万 5億7,238万
2006年度DOE要求額(b) 3億 3億5,145万 6億5,145万
2006年度歳出法案(c) 3億1,000万 3億5,145万 6億6,145万
前年度比(c-a) △  3,323万 +1億2,230万 + 8,907万
要求比(c-b) +  1,000万 ±     0 +  1,000万
(単位:USドル)

※ :2005年度のエネルギー・水資源歳出法によって認められた当初の歳出予算は5億7,700万ドルであり、 ここに示した金額は修正後のものである。

歳出委員会の報告書では、さまざまな要因が重なったことによってユッカマウンテン処分場の操業開始は早くて2012年と当初予定から遅れていること、1年間の遅れは連邦政府にとって約10億ドルの負担増になること、原子力発電所などに分散して貯蔵することは安全保障上の問題があることなどから、連邦政府が民間の使用済燃料を早期に引取り、DOEのサイトなどで集中中間貯蔵をすべきであるとしている。このための予算を確保するものとして、DOEの要求に対して1,000万ドルの増額が行われている。また、ユッカマウンテンの許認可手続きがさらに遅れる場合には、この使用済燃料対策に予算を再配分する要求も支持するとしている。

さらに、歳出委員会報告書では、エネルギー長官は歳出法案の施行後120日以内に、民間使用済燃料の早期受入れ、DOEサイトへの輸送、集中中間貯蔵についての実施計画を議会に提出する必要があり、2006年度中には実際の使用済燃料の輸送を開始すべきとのDOEに対する指示が示されている。

また、放射性廃棄物処分の歳出予算に直接含まれるものではないが、早期受入れとともに対応すべき使用済燃料対策として、使用済燃料リサイクル・イニシアチブの必要性も歳出委員会報告書では示されている。歳出委員会報告書によれば、DOEは、先進再処理技術の選択やリサイクル関連施設のサイト選定を含め、統合使用済燃料リサイクル計画の2007年度実施に向けて準備することが必要とされている。

歳出委員会報告書では、使用済燃料の再処理等は、処分対象の高レベル放射性廃棄物の量を減らすなど、ユッカマウンテンにおける放射性廃棄物処分に関連する問題の改善につながることも示されている。

【参考:米国における歳出予算法の制定手続き】

米国では、歳出予算承認に当たって、13の分野別の歳出法が制定されることとなっており、高レベル放射性廃棄物処分を含むエネルギー関係では「エネルギー・水資源歳出法」が制定されることとなる。

歳出予算の審議は、伝統的には下院から先に開始され、下院歳出委員会の下に設けられた分野別の小委員会が歳出法案を起草する。歳出法案が歳出委員会で了承されると、歳出委員会報告書とともに下院本会議に提出され、審議が行われる。下院は原則として6月末までに審議を行うこととされており、その後は上院が原則として下院で可決された法案を検討する形で審議を行う。ただし、近年、上院の歳出委員会は、上院独自の歳出法案を策定するようになっている。上院の審議が終わった段階で両院の見解が一致しない場合は、両院協議会の場などで調整が行われる(最近の歳出予算決定状況:2005年度2004年度2003年度)。

予算の使用方法の詳細などは報告書に示されている。報告書に示された指示には法的拘束力は無いが、連邦機関は通常は報告書の内容に従うこととされている。

【出典】

【2005年5月26日追記】

2005年5月24日、歳出予算法案(HR.2419)は、連邦議会の下院本会議において416対13で可決された。なお、DOEによる集中中間貯蔵の実施や再処理に係る検討のための歳出予算増額に反対する修正案も出されたが、110対312で否決されている。

【2005年6月15日追記】

2005年6月14日、連邦議会上院の歳出委員会エネルギー・水資源小委員会は、独自の歳出予算法案を採択した。上院歳出委員会のプレスリリースによれば、ユッカマウンテン関係の歳出予算案は前年度と同じ5億7,700万ドルで、DOE要求額より6,400万ドル少なく、下院案で示された中間貯蔵は織り込まれていない。

  • 連邦議会上院歳出委員会プレスリリース(2005年6月14日) (URL:appropriations.senate.gov/hearmarkups/06-13-05EWSubcommittee2.htm)

【2005年6月20日追記】

2005年6月16日、連邦議会下院の科学委員会エネルギー小委員会は、使用済燃料の再処理に関するヒアリングを実施した。これは、下院の歳出予算法案の中でDOEが2007年までに再処理技術の選択を行う必要があるとした点について、専門家およびDOEの見解を求めたものである。

  • 連邦議会下院科学委員会エネルギー小委員会プレスリリース(2005年6月16日)(URL:www.house.gov/science/press/109/109-93.htm)

【2005年7月4日追記】

2005年6月30日、ユッカマウンテン関係の歳出予算案を5億7,700万ドルとする歳出法案は、上院本会議で92対3で可決された。下院の歳出予算案と乖離があるため、今後は両院協議会での検討が行われる。

  1. 米国における会計年度は前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2006年度予算は2005年10月からの1年間に対するものである。 []

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )